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星屑日記(三)

作者: たのすけ

 すっかり書くことから離れてしまっていた。一月十九日の試合に集中していたということもあるが、それは理由の10000000万分の1くらいで、実のところその理由のほとんどは、相も変わらずのタノスケの怠惰である。なにせこのタノスケという男、〝スリーイヤーズスリープタローの星〟の下に生を受けており、完全に三年寝太郎体質なのである。二度寝どころか三度寝、四度寝、五度寝、六度寝、七度寝、八度寝の常習犯で、そんな蓑虫風〝無限蠢きムーブ〟を繰り返しているうちに顔に当たる陽射しも強くなり、それは目にも頬にも痛いほどで、仕方ないそろそろ起きるかと遂に起きたはいいが、寝過ぎて全身ダルく、なんだか体調が悪いような気すらしてきて、やる気もぜんぜん出ない。んで、

━━そうだお菓子でも食べながらネットフリックスでも見よう。今日は〝僕だけレベルアップな件〟の最新話がアップされているはずだし。さすが僕だな。天才的ひらめきだ━━

 なぞ思いながら視聴を始め、十口くらいお菓子を頬張り、甘いカフェオレでそれを流し込んだところでまた瞼が重くなる。んで、そこからどれだけ時間が経ったか、

「……イタタ。腰、痛」

 と体勢がキツくて目が覚め、画面を見るとそこには〝僕だけレベルアップな件〟の視聴が終わっていることが表示されている。んで、はて自分はどこまで観て、どこで寝落ちしてしまったものかと再び最新話を最初から再生して確認してみるが、それは開始五、六分のところ。話の導入の、視聴者の興味関心をひく仕掛けが満載のところ。それを確認するとタノスケは

「うむ。どんなフックにも引っかからねえ僕は、やはりさすがと言うべきだな。その辺の、何万年も相も変わらず釣り針にひっかかっている魚なぞとは一味も二味も違わあなあ」

 なぞ、バカ面でもって魚にマウンティングして悦に入り、直後、悦の緩みからプッと臭いオナラが一つ出る。これが妻子に捨てられ、孤独を極めているタノスケの偽らざる日々の一景である。どこまでも退廃的な灰色の一景である。

 んな話はいい。

 ともかく、そんなぐうたらでバカなタノスケでも、一応やらなければならぬことは自覚していて、それが〝書く〟ということなのである。

 そして、何を〝書く〟か、といえば、キャラクター紹介に通じるような文章をである。『ドブ底中年がプロレスを始めた理由』という駄文を書き始めたのも、タノスケの素人プロレスラーとしてのキャラを伝えるためである(キャラというか、現実の、そのままのタノスケだが)。 これは本当だが、プロレスではキャラが大事である。普通の格闘技では強さ、そして勝利が一番大事だが、そういうものよりもプロレスでキャラ伝達が一番大事だとタノスケは思うのだ。極論、タノスケの目指すレスラーは、強くなくてもいいし、試合に勝たなくてもいいのだ。もちろん、弱く、試合に負けてもいいとしても、プロレスにおける真の勝利を摑む、ということは目指さねばならないのだが、その、真の勝利とやらを摑むには、キャラを伝える必要性がどうしてもあるとタノスケは考えるのだ。

 だからコツコツ書く必要性に迫られ、なんとかここまで書いてきたというわけで、これからも書かねばならぬというわけなのである。

 改めて強く思うが、あらゆる手を尽くし、真の勝利に向かわなければならない。真の勝利を手中にすることは、それは何よりも、今は離れて暮らす最愛の妻子に対し愛を伝えることになる! そうタノスケは信じているのである! まさに愛の戦士!

 なぞ、お菓子を食いながら、そしてメロンソーダ飲みながら久しぶりに書いていたら、再び眠くなってきたタノスケなのであった呆。

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