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59 再会(2)

「遠慮すんなって、俺のおごりだからさ!」


目の前には今まで見た事もないような料理が並んでいる。


串に刺して焼いた肉や真っ赤な色のスープ、何かを皮で包んでこんがりと焼いたようなものからは香ばしい香りが漂ってくる。樽のようなコップに注がれた泡の立った飲み物を目の前の人物はぐいっと一気に飲み干した。


アリーシアはひっそりと周りを見回す。


外は閑散としていたのに、この店の中は人で溢れてがやがやと騒がしい。けれど不思議とそれは不快ではなくなぜかホッと安心できる空間だった。


今のアリーシアは黒いローブを羽織っている。黙って借りたが、目の前の人物が男なのか女なのか判別できない。ただ、なぜか悪意のある人間ではないように思えた。


馬車を探していることを伝えると、


「うーん、そいつぁ夜は避けたほうがいい、ま、とりあえず俺についてきな」


そう言って腕を掴んで引っ張っていく。


あまりに強引すぎて警戒する暇もなくこの酒場にアリーシアは連れてこられた。


さすがに親切すぎるのでアリーシアは黙って目の前の料理を眺めている。それに構うことなく、目の前の黒髪の人物は串を一つ手に取りかぶりついた。


豪快な食べ方にアリーシアは少し目を丸くしたが、それにならって同じように串にかぶりつく。すると香ばしい香りと肉汁が口の中でじゅわっと溢れて、ぴりっとした辛みが肉の臭みを消し、ほどよい弾力があってとても美味しい。アリーシアは目を見開きながらもぐもぐとその白い頬を膨らませた。


突然、それを眺めていた黒髪の人物が噴き出す。ひとしきり声を抑えて笑うのを、アリーシアは串にかぶりつきながらいぶかし気に見つめた。


「いや~わりいな、あんまり美味そうに食べるからさ」


そう言って笑ったせいか涙目になった目元を指ですくった。あらたに注文した樽ビールをまたぐいっと飲み干す。


「俺の名はジェットっていうんだ。…あんたの名は?」


ごくんと飲み込んで答えた。


「アリーシア」


そうして今度は皮に包まれた料理に手を伸ばす。


ジェットの瞳はまっすぐにアリーシア見据えかすかに揺らいだ。


「…そうか、あんたアリーシアっていうのか…」


ふっ、と息を吐く。


「あんたにぴったりの美しい名だ」


その笑顔は、かつての少年のような面影は微塵もなくただ、穏やかで優しく、どこか寂しさに満ちていた。


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