時を操る婦人像 瓦解編 XIl
『幸運の芳香』
ゴーンゴーンと荘厳な鐘の音がなった。
神の降臨する瞬間であった。
玉座が天からふってきた。
『そわーる?神にさとられたのでR』
空白の玉座から声が聞こえる。
『相応しき王を選べ』
『王など不要なのでアール、であるからして消えるのでR』
幸運の鐘の音がなりやむと、玉座に鐘が落ちてきた。
『どうなってんだこれわ!』
『ふむ、状況を理解し難いですな』
神と神の右席が対陣している現状を理解できないのは通常の人間であればわかるが、ツノバヤシたちにはわかったのだ。
本能的に理解したのだ。
介入する余地のない絶対的存在がバベルの塔の
ようにそびえたっている存在感をひきたてていた。
『剛三!逃げるぞ』
『承知!』
『プランD、いわゆるピンチってやつです』
幸運鄕は幸運の芳香の発動条件をみたしたので、すぐに神からにげだした。
発動条件は10秒間鐘を鳴らすこと、効果はその場に存在したものに幸福をもたらす。
『地球動物園』
神にとっては地球は動物園にすぎないのだ。
創造し神の心情や思想を発露させ自由と物理現象をあたえた。
不幸にも滅びた恐竜たちの絶滅は神のメテオによってひきおこされた寒冷期によってリセットされた賜物である。
だが、それをよしとしない者もいた。
神秘主義思想の否定。
神の感情次第で恐竜絶滅や人類滅亡までひこおこすのでは、これのくりかえしとなる。
人類を補完しなければならないと考えた幸運鄕は神に反逆をしたのだ。
ツノバヤシという生命体を送り込み魔力を発現させた。
神は憤った。
憤慨したのだ。
神の物語には不要な存在。
神と神のちからもった存在の一時的な争いが終幕を迎えた。
神はシェイクスピアに天啓で世は舞台、ひとは皆役者とつたえたことがある。幸運鄕はピラミッドを建てるさいに物理的援助をしたがこれにもいみがあった。
ピラミッドの頂点から魔力を電波状にしてとばす方法をみつけたのだ。
それにより蠍は猛毒をもち、砂漠にはオアシスができ、ひとの営みを支え文明を発達させていったのだ。
神は地震や津波によって大地を撹拌し、地脈の力、龍脈をコントロールしていた。
宇宙のなかには地球ににた天体は存在していても知的生命体はわずかにしかいないのだ。
レアなモデルケースを手に入れた神は地球のリセットを行うさい、呪文を唱えるように条件をもうけた。
それが地球動物園であった。




