時を操る婦人像 瓦解編 V
考える猶予をあたえなかったつもりだったが、こいつもアイリのことがすきだったんだなとおもうと、すこし哀れみを感じて手が緩んだ。
マコトの前に召喚された名刀が自動で胸を守った。
同時に胸ポケットにいれていた六葉のクローバーが三つに切れた。
『あわわわ、なんてことだ!僕のクローバーが!』
『ふざけるな!ふざけるなぁふざけるなぁああ!』
『ぶちきれちまったぜ、ひさひざによ』
屋上へいこうぜというような顔をしていった。
『ところどころネタをはさんでくんじゃねぇ!こっちは真剣なんだよ!!』
オルアァァと、ふりぬいたとおもうと意識が裏へととんだ。
文字通り暗転した。
気絶だ。
『ふぁーなんか頭がスッキリしてるなぁまたここにきちまった』
『ソワール?エスポワール?じゅぽぽぽでR』
『よう、変なおっさん。おれ今は気分がいいんだ』
『ボンボヤージュ?シルブプレでR』
『なにがいいてえんだ?相変わらずとらえどころのないやつだぜ』
『ゆうきよ。アイリを守りたくば時を操る婦人像を眷属にせよ。さすれば道は開かれん』
『は?婦人像をどうやって眷属にするんだよ』
意識のなかで朧気で希薄なイメージのようにかすんでいく幸運卿。
『ときがKREVA賢くなって理解できyoでR』
『おい!待てって話はすんで・・・!』
カハッといきを大きくはいて目が醒めた。
『じねぇぇぇええええ』
『うぉっぶねぇー』
鍔迫り合いの最中に意識が飛んでいたのだ。
幸運卿の魔力の残滓がゆうきに希望、エスポワールをあたえた。
希望、旅路。エスポワール、ボンボヤージュ。
『ぐぬぬぬぬ』
『しねろやぁぁぁあゆうきぃいいいい』
『黙れ糞変態やろうがぁあああ』
変態は俺だったかと言葉のブーメランが胸に刺さりつつマコトとゆうきは押し合う。
意地と、執念と信念のぶつかりあいがいままさに起きていた。
『アイリの笑顔がみたいんだろぉおおならしねええええ』
『どうしてそうなる!?』
ぐぉおおおと押し引きを繰り返すうちにゆうきの焔がマコトの剣を溶かし始めた。
再召喚!
距離を取るとマコトは武器を新しく出した。
名刀、村雨。あまつゆが吹きしのぶがごとく刀から水がでることで知られている。
『火には水がよかろうなのだぁ』
『馬鹿だけど間違ってねえのが腹立つ!』
『おらおらおら』
『糞、この変態やろうバフがきれちまう。とんでもねえメンタルとフィジカルだ。羨ましくすら思えるほどに強い。俺たちにできないことを易々とやってのける!流石変態!だが、そこにしびれもしないし憧れもしない。ただ殺す。今はひたすらに押す!』
『焔切!!』
二度三度とうちこまれては村雨の水が蒸発し、部屋をサウナのようにした。
『あちぃい』
『ゼーハーゼーハーゆ、ゆうきはやくたおれろ』
『おまえがな!!』
二人の死線が交わる時間が1分を過ぎた。




