百鬼夜行というなの、密売会
マフィアと極道がいちどうに会する祭りの日がきまっていた、それは大騒ぎする人類がみな新時代の到来に胸中ときめく大晦日だ。
百戸会といわれるつどいで、人種出生言語問わず、かきねをとりはらい会合し、情報と物の取引を行う大商いがねんにいちどおこなわれる。
警察側では百鬼夜行とよばれているまつりのような催しだ。
『はいよっここにあるのが、最近話題のつのばやし!みてさわってあじわってちょぅだいよ!』
行商人がそういいながらテントの闇のなかから薄暗い笑みでこちらのようすをうかがっていた。
勇気は潜入捜査を行っている最中であり、同胞にであえたきぶんになっていた。
商品のように展示されている美少女はアイリとユキとよばれるふたりのつのばやしだった。
奴隷のように隷属させられており、額にはあおあざができていた。
『こイツァ捕まえるのに苦労しやしたぜ!みためは一級品性能も一流最高のつのばやしだよ!』
まつり囃子が木霊するなか勇気はみおぼえのあるかおにぞっとして快感を思い出していた。
(顔面にひざをぶちこんでくれた女がいるじゃないか)
脳内で声が聞こえる。
『馬用の鎮静剤をうちこんでようやくおちつかせたじゃじゃうまよ!』
『値段は?』
『3000万エゾ』
『ちょっとたかいな、まけてくれ』
『兄ちゃん!こんな上玉そうそういないよ!ひやかしならかえっとくれ!』
どんっと5000万エゾをだす。
『横の人とセットでくれ』
にまりとする行商人は『あれれとおかしいな値段をまちがえたみたいだ』といった。
『ぶっこほすぞぉ』
歯がかけてうまくしゃべれないようでアイリはいたいたしかった。
『商品がしゃべるんじゃないよ』
アイリの顔面にパンチをぶちこむと勇気ははぎしりした。
『かあちゃんは女にだけはてぇだすなつってた・・・』
考えるより早く手がうごいていた二発目のパンチをそっとてでとめて、行商人に腰のはいったフックをおみまいした。
テントのおくまでふっとぶ行商人のかげから強面のスキンヘッドの巨漢があらわれた。
『ありきたりだな』
ひたいをかくしていたラーメン屋のタオルをはずすとちいさなコブをさすった。
突如去来する快感にみを震わせ全身の筋肉があたたまりひきしぼられる。
ぱんと破裂音。
種が水面にしずんで破裂したような感覚、これって
(世界じゃないの?)
脳内でそうささやく。
赤くはれたコブがみゃくうつたびに、視界がにじむ。
(快楽にみを委ねろ)
(疑心はいらない)
(純粋に感じろ)
エンジンがいきなりフル回転になるように、反動というなの衝撃波が周囲に起こる。
ドクンっ。
どくっどくっどくっ
百鬼夜行で騒動がおきようとしていた。