時を操る婦人像 奪取編 lV
『なんだか人気のない場所だなぁ、まあそらそっか』
ひとりごとを呟きながらゆうきは防護服のなかで袖をはずしてうちポケットにあるチューブから補水し、クッキーをたべた。
『ナイトリーくんもこんな場所にはきたくないよなぁ。でも金のためだし』
『そうトリぃー』
迷いコンドルのナイトリーと共に約束の場所へきたのだが、まだ他の人たちはきていないようだ。
『トリぃー、感じるトリぃー』
『ん?どした?』
ゴゴゴと動き出した砂地の地面がたてに割れた。
自動で開くシャッターのようだ。
階段がつづいていたのでおりていくことにする。
一歩二歩。
いやな感じがする。
たぶんきのせいだ。
そうおもいこませつつ根拠のない不安におしつぶされそうになったとき、アイリの笑顔と熱いディスりを思い出して興奮することで精神の安定を保った。
『ようこそ、元政府の方舟へ』
『なんだ?』
最下層につくには2分ほどかかったが、音声が流れると扉が開いて白い空間がひらけた。
『ようこそ、方舟へ。あなたはえらばれた新たな人類です。まずは食事をどうぞ』
ぽつんと丸いテーブルがおかれており他にはなにもない空間だ。20畳くらいはある。
『空気もすんでるようだし、金もいいみたいだしいい待遇だな!』
わらにもすがるようにか細い論拠を精神の支柱にしていた。
一通り食事をおえると、アナウンスがきこえた。
『床で横になってまちたまへ』
『なんたかねみぃ』
『ねむいトリぃー』
ゆうきとナイトリーは床に寝そべって睡魔のおもむくままねた。
何時間かたった頃。
『おはよう、被験者一号君、あとなぞの魔物』
(なんだこれ・・・!動けねえししゃべれねえ)
縛り付けられてくらい部屋に閉じ込められている。
『きみには飛行機体の体感重力の実験につきあってもらおうとおもってね』
(まさか本当に実験体に・・・!)
『では、はじめようか』
全身にすごい重力がかかっていくのが分かる。
通常、人は魔力を数ミリの厚さに見えない程度にしか帯びていないにも関わらず、今回は1センチの厚みを帯びて可視化するまで人体に付与したのだ。
質量を増した人体は重力の影響をうけることになる、フライアーマーの起動時の搭乗者への負荷を計る実験のようだ。
(ぐあぁああ)
声にもならない悲鳴が木霊する。
組織が破壊され異常な速度で人体が回復していく。
『すばらしい!なんというデータだ!これほどまでの環境にひとがたえられているとわ!』
(ふごおぉぉおおおお)
目と鼻からは血がとびちり聴覚がやられ、三半規管がこわれたことにより、目眩を起こす。
暗闇のなかで苦痛と目眩と不安にさらされ続けた。
『さらに負荷をあたえてみよう!つぎは30G以上の負荷と想定してみるとしよう!』
私たちが地球からうけている重力と同じなのが1Gであり30はとてつもない数字だ。
スペースシャトルでも3.5Gから6Gでしか実験しないという、非人道的なことが今行われていた。
『相手はツノバヤシだ、へへぇ。遠慮は、い、いらないよなぁ』




