二郎系ましましの闇と通の刑事
戦争はなにも世界大戦だけがすごいわけじゃない。
経済効果、人の生死、領土の利権。さまざまな争いによって起こる効果がある。
ここ、東京都足立区のラーメン屋でも、つのはやしによる戦争がおころうとしていた。
ラーメン屋といっても、二郎系にぞくする闇のふかい店だが、ここでは裏で薬物の取引もおこなわれている。そこに捜査員の徹刑事はぶかとともに捜査にきていた。
店主が裏メニューのマシマシいつもの濃いめバリカタの2乗とたのまれると違法薬物をさしだしてくるというたれこみがあったのだ。
そこに偶然いあわせたのが勇気であった、病院からにげだしたあとお腹がすいていつものラーメン屋にきていたのだ。
『店主!マシマシいつもの濃いめバリカタで!アブラもついかで!』
徹刑事はなにかにきづいた。
こいつは薬物の取引現場にちがいないと。
アブラも追加でとはなにかの隠語かと脳内でかんがえていると、店主がラーメンをさしだした。
『へいっおまちマシマシいつもの濃いめバリカタあぶら追加だよっ!』
徹はさっした。
薬物がねりこまれているのだと。
たべおわったあとにそっとさしだすパターンもありえると。
長年の刑事の感がそうつげていた。
『店主。こっちにもそいつをくれ』
『はいよ!』
曇りのひとつもない眼でそうこたえた店主はもくもくと作業をはじめた。
(しかしこいつ、ラーメンを麺からいくつもりか。若造めなにもわかっておらん)
スープの豊潤なかおりをしたにまとわせてからすする麺と具のハーモニーがひとつのオーケストラのようにうまみをかなでるのだということにきづいていないといいたいのだ。
(所詮は子供、ギャングの一員だとしても人生経験がものをいうラーメンのくいかたはまだまだひよっこだな)
徹にもおなじラーメンがだされた。
(まずはスープからだ。まるで獣たちが薬味の草原でワルツをおどっているかの如く彷彿させる!)
『店主、酢をください』
(酢っ酢だとぉ!?なにをかんがえている。それじゃぁ戦争の銃撃戦のさなか一人聖書をかかえてたちすくんでいるラーメン教徒の一員ではないか!?)
(まさかっっラーメン屋は戦場だということにきづいていないのか!?)
そうか、と一人で納得した徹。
(こいつ役者だ!!ひとくせもふたくせもある演技派の舞台役者にちがいない。それをあらわしているのがあの優雅な食べ方の一足一投にあらわれている)
『店主おあいそっ』
『あいよっ』
満面の笑みでそう答える二人に徹はやれやれとたちあがっていった。
『うごくな!警察だ!』
こうしてラーメン屋でのちいさな戦争のまくがいまひらかれたのであった。