ギルティ佐野とブレイブメン矢野の絆
『力が漲る、存外わるいもんでもないのぅ』
佐野は矢野とキングヴェルゼブブからの力をえていい気になっていた。それも傲慢すぎるほどに。
『矢野ぉ、きいてくれ。俺は自我が分離しかけている、そのうちきみを誰かわからなくなってしまうかもしれない』
ずぶりと自分の集合体の核となる部分に腕をえぐりこませ、魔石をとりだすと矢野に渡した。
『これで自分をまもるんだ、だがわたし、おれ、わし、わっち、わいは俺たちはひとつとなる』
『ぁあきもちえぇぞぉ!たまらんなぁ世界がてのうちにあるかのようだ。すこぶる充実感が滾る』
藤堂がゆうきに指示するがゆうきはあたまに血がのぼっておりなかなか聞き入れにくい状態になっている。
『佐野ぉ!いい加減にしろソイツはソウシさんの仇なんだよ!』
『知ったことではないぞ!このブリ虫が!』
『まぁいい、共に死ね!ひとごろしになってもかまわん!大義名分はある!』
互いに拳を握りしめる。
血がでるほどに。
『焔・・・切!!』
一閃、空気をゆらし歪ませ切断する。
佐野キングヴェルゼブブは真っ二つになり切断面がこげるがすぐに分離したにたいがくっつきひとつとなった。
『空間切断』
佐野がそういうと風がかまいたちのように一本の衝撃波となって空気の刃が飛んできた。
『二重奏!連破炸裂弾』
アイリが特注のガンソードでダムダム弾に魔力をこめて放つ。質量が異常なまでに増加したダムダム弾は空気の刃に触れると弾頭が炸裂し、空気を失速させた。
『弾劾してやる!おまえのやってることは正義への冒涜だ!ゆるさん!』
『葉虫のごとく矮小な人間ぞ!死ぬがいい無様にみじめに悲惨に悉く無惨になぁ!』
『罵られるとノン気からでも萌えるもんがあるなぁ!魂に火が灯されたぞ魔物め!』
罵倒されるとそれが誰であっても魔力が増幅する変態、興奮する、それがゆうきである。
『おらぁ!てめぇがしねろやぁ!』
焔切を連続で繰り返すゆうき。
残影をきりきざむかのようにスパスパときるがダメージがわずかにしか入っていないように感じた。
『ゆうき!そいつ本体を攻撃しても意味がないようだ!分析しながらたたかえ!むきになるな!心は熱く頭はクールにが鉄則だ!』
『押忍!師匠!』
頭から血がひいていくのをかんじた。
冷静だ、でも心は熱く!
『かならずたおす!矢野!そいつをよこせ』
『嫌よ!これがないとだめだって佐野がいったんだもの』
『自分のために渡したんだ!きみのためじゃない!目を醒ませ!』
『なんで!わたしのためだっていったのに!』
信じられないという風に膝をついて頭を抱える矢野。
『すまねぇが切らせてもらう!お前と矢野のうすっぺらな絆ごとたちきってやる!』
『やめてぇぇええ!』
なきながら矢野は魔石をまもろうとしたが、天叢雲剣の先でついて魔石をこわそうとした。
瞬間であった。
佐野が身を呈して矢野をまもろうとしたのだ。
焼きこげる匂いが周囲を包み込む。
『これでいいんだ・・・世界が・・・きみが欲しかった』
『さようなら』
やけ炭となって魔石がちりぢりなってきえていく。老朽化した化石が腐敗してくずれていくように。
『逝ったか。どしがたいものだな』
灰となった佐野キングヴェルゼブブは最後に自我をだし、その他のいしきより優先して矢野まもったのだ。これが二人の絆だった。




