蝿の王ヴェルゼブブ
場所はかわって。
『くさいなぁ、くさいぞぉ、匂う臭う。ツノバヤシの繁殖の匂いだ』
蝿の王ヴェルゼブブ、悪意によって殺戮されつづけた蝿が魔物へと進化した姿だ。
純粋に人間を嫌悪していたが、その人の糞をたべるのだからなんともいえない感情に陥るのだ。
『糞がッ!糞を食べてるときにカレーの話をするな!気分が悪いッ人間を殺すぞ』
『はっ申し訳御座いませんヴェルゼブブ様』
蝿の王の配下が下水管の水のない場所で交尾をしながらのたまう。
『この糞は未消化のコーンと椎茸が非常によいアクセントとなっております。ご賞味ください』
『もう飽きたわ!フンショクふんしょく糞食いつまでたっても糞じゃねーか!』
『はっ申し訳御座いません』
蝿の王ヴェルゼブブは飽きていた。
同じ返事しかしない部下に糞しかたべられられない現状に。
『あぁ!ここをでる!どこか遠くにいく。このDNAに刻まれたツノバヤシと人間の味わすれられん!よは美食家ぞ!』
下水管を飛び出していったさきにあったのは人が乱雑に入り乱れるスクランブル交差点だった。
ここはコンビニの下水管の上にある交差点。
『我がヴェルゼブブぞ!人間よ平伏せよ!』
『なんかきこえなーい?ぷーんとするわね』
『よの話を聞け!』
ヴェルゼブブは羽を硬質化させると高速で飛翔して声の聞き取れない人間の首を切り裂いた。
『きゃーーー!』
ちまみれになるアスファルト。
『人間の脳は美味と相場がきまっている』
食べようとしたその瞬間。
『なんかくさくねーか!なぁ蝿の魔物!』
トクトウカクサンカのユキに恋するツノバヤシ、ソウシだ。
ソウシは義理堅く人情味あふれる男の中の漢である。
総合格闘技経験者でツノバヤシのトクトウカクサンカにはいっている彼は拳がぶきだった。
『無礼者!しねっ!』
『カチーンときたぜ』
拳をにぎりしめるとえぐりこむようにして打った。
『えぐりこむようにして打つべし!打つべし!』
パンパンと破裂音が数回するとハエが数匹しんでいた。
『かなしみぞぉ!!!哀しみ悲しみぃい!』
『つたわってくるぞぉ!同胞のなき魂がさけんでいるこえが!かなしみぞぉ!』
『うるせえやつだな、さっさと死ね』
『号泣ぞぉーーー!』
ヴェルゼブブはなきながら前足で目をこすった。
ソウシの焔拳がヴェルゼブブに炸裂する。
ぱちんこだまのように弾かれると角にぶつかりながら泣いた。慟哭した。鳴いたのだ。
『ソウシさん!はやくにげてください!強力な魔力を感じます!』
重低音の衝撃波がブゥンと周囲をさわがせた。




