葛藤の末導きだされた現実
ヤン教授が血の涙をながしてまで堪えていた、ゴブリン化や魔物の発生による人間の浅ましい本質的な悪意に辟易とした感情を抱いていたのだ。
『辛抱ならんのだ、人ですらないものにしてしまう悪意にみちたこの世界が!』
『いっそ滅んでしまえばいい・・・』
学園では教室に優秀な生徒が老若男女問わず集まり切磋琢磨しているが、ヤン教授はかれらを触媒にすることをかんがえはじめていた。
単位をとるのにひっしになってこびる小心者や悪意にみちみちた笑みで商売のはなしをしかけてくる行商人などもいたのだが、どれも精神を磨耗させる言動しか行わず、自己を高めようとはなしなかった。
ヤン教授はゴブリンに堕して誅伐することで自己の欲求をみたすように考え始めたのだ。
『これより、悪魔の祝宴を行う』
教室に集めた生徒達を麻痺薬のはいった飲料をのませ苦痛だけをあじわえるように調整し、魔方陣をかいた教室で殺戮の限りを尽くした。
ヤン教授の額からは角がはえ、赤くかがやいていた。
『昂るぞ、感情をいさめよ、いま始めるは世紀の大発見にちがいないのだから、自身の落ち着きが重要だ』
魔力が高揚感に比例して増幅していく。
『きたっ!かぎりない感覚!滾る!漲るぞ!』
魔方陣が青く光るとヤン教授は重罰断罪で生徒皆殺しにした。鏖殺というのが相応しかった。
角がのびきりツノバヤシの覚醒者となった。
『なんだ・・・こんなに・・・気持ちいいなんて・・・考える必要なんてなかったんだ』
ヤン教授はツノバヤシの覚醒者になることであらゆるしがらみから解き放たれたと感じた。
学舎が倒壊すると巨大になった推定5mはあるであろうヤン教授が姿を表した。
ユキからやつぎばやにゆうきへと電信が入る。
『ヤン教授は殺人犯として特殊指定ツノバヤシに認定せれたわ』
特殊指定ツノバヤシの用件は発見時、速殺傷処分となっている。
『どうなってんだよこれ!?』
戸惑うゆうきを尻目に現状を把握し、本部への報告と対応をきめる藤堂。
『トクツノに指定されたヤン教授を討伐するぞ!』
緊急クエストとして国から発令されたのはデモンのヤン教授を討伐することだった。報酬は学園にある遺物と装備、金銭の7割であった。