別の場所でいきるツノバヤシ
マコトというツノバヤシがいた。
26歳で黒い長髪を後頭部で結った長身痩躯の男だ。
彼は額の角をながいかみでかくして生きているのだが、少々無理がたたって自分が覚醒者であるとばれつつあった。
複数の女性と関係をもち、不貞行為がばれるのと同時に自身がツノバヤシであるということが暴露され秘密にしていた存在があかるみにでたのだ。
マコトの力は魔力によって刀を異空間から召喚して自在に扱うというもので、数は100を越える名刀をぬすみつかっている。
虎徹と正宗という刀があった。
マコトはふたつのそれを純然たる悪意からうみだした魔物に喰わせた。不倫ではらんだ子供を胎児の状態ではらからきりだし殺したのだ。
そうして産み出した魔物はベビーへイズとよばれる不確かな存在であり、霧にまみれてあらわれては化け物のような口でわらいなきしながら霧で溺れ殺すという怪奇現象をひきおこす。
マコトは自分がうみだしたベビーへイズをすぐに殺してみせた。霧が霞を作り出し変異する魔物にたいして刀を100本召喚し串刺しにしたのだ。
そこから産まれたのが霞の虎徹と霧の正宗だった。このふたつは妖刀とよばれるたぐいのものだ。
両刀使いのマコトとよばれるようになったのはこの事件がきっかけだった。
マコトはアイリをまちで見かけるとひとめぼれして愛を伝えた。
『きみの瞳にうつりたい。そうおもった。愛してる』
アイリは直情的ですぐに嫌悪感をかんじ暴言をはいた。
『きもっしねばいいのに、なんでいきてるわけ?あんたツノバヤシでしょ。しかも無認可の』
ツノバヤシは国へ届け出をだして特殊な許可をもらわないと公共の場をあるいてはいけないのだ。危険だからである。
ぎりりっと歯ぎしりをして癖の爪を噛む。
『糞女コロス、コロス。絶対に許さない。なんなんだよあいつ、むかつく。コロスコロス』
マコトは自分になびかないアイリをみてきれた。逆上した彼は標的にアイリを選んだ。いつ殺そう。いつおかそう。マコトはアイリのことでいっぱいに染まっていった。
時間をかけてなぐさみものにしてやるというのがマコトの意思だった。
世にもおぞましい覚醒者のツノバヤシが爆誕した瞬間であった。