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魔法訓練校の日記  作者: アトリ
8/10

1.8 プロローグ アルスの場合


 俺は自室を出て、抜き足で兄貴の部屋に近づく。


 もう一度耳を澄ませて兄貴のイビキを確認する。



 ......。


 よし。確かに兄貴は寝ている。



 俺は兄貴の部屋のドアを静かに開け、そっと忍び込んだ。





 ......うわっ、汚ねぇ。



 兄貴の部屋はものが乱雑に置かれているだけで無く、大量のゴミが足元に散らばっていた。



 ......これは気をつけないとな。



 足元に注意しながら兄貴の部屋を物色する。


 辺りは薄暗く、何が置いてあるのか見えづらい。




 兄貴が家に帰ってきた時の服は......これか。



 俺は床に無造作に置かれた服のポケットを弄り、何が入っていないか確認した。



 ......無いな。



 服には糸くずのようなものしか入っておらず、メモ類は無いようだった。




 しょうがない。他にありそうな所といえば......。



 俺は周りを見渡すと、部屋の奥に机があるのが分かった。



 次はあそこを見るか。


 俺は近寄り、机の上を確認した。



 ......。



 机の上は家族が写っている写真と時計、その他には財布などしか置いていない。





 ......そうなると、後は机の中しか探す所が無いな。



 俺は引き出しに手をかけた。






 ガタッ!!



 えっ!!!!???


 俺はびっくりして体をじっと静止させた。




 息を潜め、後ろを確認すると兄貴が寝返りを打ったようだった。




 なんだ。よかった......。


 安心して引き出しをもう一度開けようとした。






「......なにしてんの?」


 兄貴だった。




 どうしようどうしようどうしようどうしよう......!



 心臓がバクバクと早鐘を打つのを感じた。



「えっ......と......」


 何か考えろ!俺!!




 俺は口を開いた。


「兄貴、実技の内容教えてくれなかったじゃん?それで俺、自分なりに魔法について勉強しようと思ってさ......」


「それで俺は魔法の原理の本とか一度も持ってないし、兄貴なら何か持ってるかと思って......」


「......ごめん、勝手に部屋に入っちゃって」



 俺は精一杯の言い訳を言った。




「......なんだ、そんなことか。それなら勝手に入らないで俺に相談すれば良かったのに」


 寝起き声で兄貴が言う。




「ごめん」



「それで兄貴の部屋に入って探したんだけどそれっぽいの何にも無くてさ......兄貴の部屋になんか教科書はないの?」


 少しずつ心臓の音が小さくなり、頭に考える余裕ができ始めた。



 これで兄貴の部屋に召喚についての教科書があるかどうか探る事ができる。


 あるんだったらまた今度、兄貴が外に出た際に見ればいい。




「......教科書類は全部寮だなー」


 兄貴が言う。



「......そっか」


 心臓がさっきとは打って変わって、静まり返っていった。




「ちょっと待ってろ」


 兄貴は立ち上がり、頭をかきながら机に近づいた。



 引き出しを開けると、薄い何かの本を取り出し、俺に渡した。



「これ、俺が入学する時に親父から貰った本。教科書じゃないけど魔法の原理について軽く書いてある。」


「初心者に向けての本だし、俺はもう読まなくても大丈夫だからお前にやるよ。」




 父さんが兄貴にあげた本...?


 魔法の教科書じゃないけど少しは何かの役に立つかもしれない...。


「ありがと、助かる」




「そっか、良かった」


 兄貴は俺の顔が少し明るくなったのに気づいたのか嬉しそうだった。




「......それじゃ兄貴、俺部屋に戻るよ」


 俺は廊下に出るドアへと近づき、手をかけた。


 光が兄貴の部屋に差し込む。


 

 手に持った本を見ると、使用感はあるが丁寧に扱われていたように感じる。





 収穫があったのかどうかは微妙だけど。


 ......とりあえずこれでいいか。





 俺はドアから1度手を離し、兄貴の方へ振り向いた。


「それじゃ兄貴、おやすみ」




「おう、おやすみ」



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