1.4 プロローグ アルスの場合
......zzz
「ーーアルスー!もう昼近くよ!!そんなに寝てるとご飯にありつけないわよー!」
ふいに自分の階段の下から怒鳴り声が聞こえ、目が覚めた。
......。
......なんだ......もうそんな時間なのか...。
俺は伸びをして、涙が出たまぶたを指で擦った。
......おー!!!......すげぇ!!
窓の外から何やら歓声が聞こえた。
海を見ることができる窓へ目を移すと、遠くに大勢の人がいるのが見える。
なんだ......あれ......。
何が起こっているのかよく分からないまま、ボーッとしていると下からまた母さんの声が聞こえた。
「......アルスー!だから早く起きなさい!!」
「分かったって!今起きるよー!」
......まあいいか。
俺は遅めの朝ごはんを食べに、階段を下りた。
「いやーそれでさー.....」
リビングに着くと、兄貴が母さんに事情を話してるようだった。
兄貴は1日中寝ていたからか、それとも元々の回復力の高さのせいなのか、いつも通りの元気さに戻っていた。
「......周りのみんながビクビクしてるしさー、やっぱり俺が行かなくちゃなって」
「それもあるけどやっぱり楽しみだったんだよなぁ、俺......召喚やるの」
続けて兄貴が話す。
「それで先人を切ってやらせてもらったのよ。したらさ、なんかもうやばいのよ。体から魔力がどんどん出ていって!」
「やばいー!死ぬー!!って思っちゃって。その後先生が助けてくれて、1回は持ち堪えられたんだけど、結局後で気を失っちゃってさ」
母さんが心配した顔で言う。
「あんた本当に気をつけなさいよ...。」
「私は訓練校に行ってないから召喚について口出しできないけど、先生方から何かアドバイスは無かったの?」
「先生は、1番大切なのはイメージだって。今回の俺はあまり考えずに唱えちゃったから、イメージが漠然とした、大きなものになっちゃってたんだって」
兄貴が言う。
「あらそうなの。」
「......いつもあなたに言ってるけど、勇気と蛮勇は違うのよ。後先をしっかりと考えた上で行動しないと。今回も先生方に迷惑かけて」
「あとでしっかり謝りに行きなさいよ」
「分かってるよ母さん。学校に戻ったら先生に謝りに行くって」
兄貴が少し恥ずかしくなったのか、食べる速度を上げた。
「うぅっ......水......」
ほら、言わんこっちゃない。
俺は喉を鳴らしながら水を豪快に飲む兄貴を横目で見ながら、遅めの朝ごはんを終わらせた。
部屋に戻り服を着替え、出発の準備をする。
......よし。今日も行くか。
「それじゃ、行ってきます。」
俺は家のドアを開けて、イストのいる鍛冶屋に向かった。
イストとは、今日も入学試験のための練習を一緒にする予定だった。
それに今日こそ、イストが鍛冶屋と魔法訓練校のどちらを選ぶのか聞かないと。
俺が鍛冶屋の入り口までたどり着くと、すぐさまドアが開いた。
「アルス!遅いよ!!」
イストがドアを開けたようだった。
続けてイストが喋る。
「ねぇねぇ!アルスも見た!?今日の海辺での出来事!?」
海辺のでの出来事......?
「いや、知らない」
「えええぇ!!あれを見逃すってアルスは残念だったね!!僕なんて見た時思わず声をあげちゃったもの!」
海辺......大声......?
あぁ!もしかして......。
「俺遅くまで寝ててさ。何かあったの?」
イストがさらに興奮した目つきで言った。
「あのね!今日僕初めて見れたんだ!召喚!!」
「今日海で魔物が現れたんだけど、その時バレットさんが皆を守ってくれたんだよ!」
体に電流が走ったように感じた。