2: 森のウルフマン一族 ①
『――ボス! またです! また仲間がやられていました!』
『むぅ……これで三度目だぞ』
森を支配するモンスター、ウルフマン一族は苛立っていた。
三日前から、何者かの襲撃を受けている。
襲われた仲間は全て、身体の一部だけを残して消えた。
まるで獲物の食べかすのように、無残に捨てられていた。
これは一族の危機だ。
すぐに襲撃者を殺さなくてはならない。
ウルフマン一族のボスは、全ての仲間を集め、呼びかけた。
『誰か襲撃者の姿を見たやつはいないのか!!』
一族は首を下げ、返事するやつは一人もいない。
敵はモンスターか?
それとも魔族か?
どちらにせよ、このウルフマン一族の縄張りに素足で入り込んだ愚かな害虫だ。
絶対に生かしては帰さない……。
ガササッ。
そのとき。
茂みから物音がし、一族全員がそこに注目した。
そこから現れたのは……。
『……なんだ、スライムかよ!』
『こんなときに驚かせんなよな、この雑魚モンスターが!』
ぷるんぷるんと、小さなスライムが迷い込んできた。
全員がイライラしている中、そのスライムは少しずつこっち近づいてくる。
こんなときに、非常に邪魔くさい存在だ。
『いや、待てよ』
ボスはスライムを見つめる。
スライムには目がない。
だが、なぜかスライムに見つめ返されている気がする……。
雑魚モンスター、スライムはよく草原にあふれている。
たまに森の中でも見かけることはあるが、それでも基本群れて動いている。
だが、こいつはどうだ。
茂みの奥に他のスライムがいる様子もない。
こいつ、なぜ単体なんだ?
『……』
『どうしたんすかボス? まさか、あのスライムを疑って……?』
『考えすぎですよボス。スライムなんてどこにでもいるじゃないすか』
『集会に水を差しやがって! オレが始末しときやす!』
一匹の同志がスライムに敵意を向けた。
スライムはぷるぷる震えるのを止めたが、逃げる様子はない。
まるで待ち構えているように。
考えすぎだと?
いや、違う!
『待て! 不用意にそいつに手を出すな!!』
ボスの警告が遅く、同志は牙をスライムに突き立てた。
突如。
スライムの身体が、同志の頭をスッポリと飲み込んだのだ!
『『……!?』』
『グガッ、ガボボボ――……』
ジュゥゥゥゥウと骨まで溶かされる音。
首を失った同志がドサッと倒れた。
一族に戦慄が走る。
スライムは上機嫌に跳ねていた。
『……ぷるるんぷるるん、ウルフマンの肉、うまうまっ』
『――――全員、戦闘準備だ!! この襲撃者を何としてでも殺せぇッ!!』
スライム Lv:10
ウルフマン一族 Lv:12~20