1: 始まりのスライム
スライム。
それは、この大陸で一番弱いモンスター。
スライムは冒険者や子供に練習で狩られるくらい弱い。
経験値も少ない。
役に立たない存在。
人間からしてみれば、スライムはモンスターの内には入らない。
その辺の虫と変わらない。
だが動く生き物ではあるし、いくら倒しても人間に損害がないからか、成りたて冒険者の練習台にはなる。
生まれては殺され、また生まれてはまた殺される。
それが、スライムの運命。
先程、生まれたばかりのスライムも、すぐ仲間と同じように狩られていくことを知っていた。
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一匹のスライムが草原でぷよぷよしていたら、ついにその時が来たのだろう。
草原に二人の子供がやってきたのだ。
「――あ、スライムだ! 丁度いいぞ!」
「新しい剣の試し切りだ! おりゃー!」
冒険者ですらない子供の短剣がスライムに降りかかる。
スライムは恐怖もしないし、後悔もしなかった。
スライムの最期なんて、どれもこんなものなのだと理解していた。
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――キーン!
―――バリバリバリバリッ!!
その時。
晴れているはずの空から雷が落ちて、子供に当たった。
「――う、ウワァアアア!?」
黒焦げになった子供を見て、もう一人の子供は逃げ出していった。
スライムはただ、ぷるぷると困惑し、震える。
『――――食べろ』
その声はなんの呼びかけなのか、それともスライム自身の本能なのか。
黒焦げの子供をスライム液で消化し、食べた。
力がみなぎってくるのを、スライムは感じた。
他の中型モンスターも消化できるほど、身体が大きく膨れる。
そしてスライムは。
『ボク』という知能を、手に入れた。
スライム Lv:2