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奇妙な味の恋物語  作者: 冨井春義
麻衣と悟
1/16

麻衣

悟さん、ありがとう。麻衣は幸せでした。


今度の日曜日、悟さんが18歳の誕生日をお祝いしてくれるって言ってくれたので、麻衣はとても楽しみにしていました。


でも、もう無理なようです。


麻衣は幼いころから身体が弱くて、10代になってからのほとんどをサナトリウムで過ごしました。


だからほとんど外のことを知らずに育ったのです。


悟さんが初めてサナトリウムの職員として来てくれた日、麻衣は生まれて初めて胸がときめくのを感じました。


恥ずかしいけど、麻衣に恋なんて一生訪れないと思ってたののですよ。


でも背が高くてハンサムな悟さんを一目見たとき、これが恋なんだと確信しました。


麻衣のような病弱な娘に思われて、悟さんはご迷惑かもしれませんね。


でも、どうかお許しください。麻衣の人生でただ一度きりの恋なのです。



今の麻衣は体中にいろんな管を付けられて、一日中起きているのか寝ているのかもわからなくなってきました。


今日は少しだけ具合が良いので、こうして看護婦さんがテープレコーダーに麻衣の声を録音してくださっているの。


上手に声が出ないので、まるでお婆さんみたいですね。


このテープを聞いて、悟さんが幻滅しなければ良いのだけど。


こんなにやせ細った麻衣に


「麻衣ちゃんはとてもチャーミングだ」


と言ってくれた悟さん。ほんとうにうれしかった。


短い人生だったけど、悟さんの言葉だけが麻衣の生きる支えだったのですよ。


日曜日まで生きていたかった。


大好きな悟さん、さようなら。

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