八話
ちょっと急いで書いたのでおかしな所あるかもです。もし変な所があればご指摘ください。皆さんに楽しんでいただけるよ改善していきます。
ちなみにですが、まだプロローグみたいなところです。
「ところでアルヴィンお前、勇者嫌いなのに良く見に行くな?それとも聖女目当てか?」
俺達は今、パレードが行われるという大通りに向かって歩いている。…ハドックの奴、嫌なことしか聞けないのか?
「ふざけんな、バッシュ達が行きたいっていうから付いていってるだけだ。」
「また~、ホントは美人の聖女が目的なんだろぅ?認めろよ~。」
イライラするなー、聖女が目的?ふざけんな!俺は聖女に会いたくないんだよ。あいつを見たら自分が更に惨めに感じるからな。
「頼むから俺に話し掛けるな、うぜぇ。鬱陶しすぎるぞ。」
胸にどす黒いモヤが渦巻くのを感じる。思わず低い声でハドックを突き放す。
「おっ、おう。わるい。」
ハドックも俺の機嫌がかなり悪いことに気付いたのか、謝ってくる。…まぁ、こいつも俺の都合なぞ知らんだろうからな、悪気は八割ほどだったんだろうな。あれ?こいつ結構悪意の塊だな。
「ほら、ハドック久しぶりに昔のパーティーが集まってんだから、あんまギスギスさせんな。カタリナいないけどな。がははは!」
ガルフェンは相変わらずだな。キャスティーは無関心そうだし。ちなみにガルフェンの他のパーティーメンバーは家族とパレードを見に行くらしく帰ったそうだ。人望ないなガルフェン。
「ハドックさん!お久しぶりです!4日ぶりですね、どこにいってたんですか?」
「おう、マル坊久しぶり。なに、南の村でオーガが目撃されてな、討伐依頼受けてきたんだよ。」
マルサスがハドックに話しかける。助かった。マルサスよナイスだ、いつもの不遜な態度はこれで少しは許してやる。今後は敬語とさんをつけろよデコ助。
「オーガですか!凄いですね!手強かったですか?」
オーガ、成人男性より一回り大きい凶悪な魔族の一種だ。魔物と違い、ある程度の知能があり群れを作ったりする。人を襲って食料にしたり、人間の女性を拐って数を増やしたりする。人間とのハーフはデミオーガと呼ばれ、ほぼ人間の姿だが頭に角が生え、力もかなり強い。オーガに育てられると人間を襲うが。人間に育てられると文明的になり、人間と同じように生活する。実際、デミオーガの村が何ヵ所か存在するし、デミオーガの冒険者もいる。デミオーガの冒険者は強く、かなり人気でもある。
「あぁ、今回は青鬼だったからな、結構速かったぜ。」
「青鬼ですか。でも、ハドックさんの方が速いですよね!」
「もちろんだ、奴も俺の速さに付いてこれなくてな。ズタズタにしてやったさ。」
オーガにも種類がある。力が強い赤鬼、速さが売りの青鬼、皮膚が鎧のように硬い白鬼、魔力の塊を放つ遠距離攻撃が得意の黒鬼。それぞれ特色があり、どれも金級冒険者推奨の強さを誇る。
「まさか、ハドックさんお一人で?」
「あぁ、二匹いてな、一匹はカタリナ達が相手していた。俺一人で丁度いい相手だったよ。」
「流石です!ハドックさん!」
この戦闘狂め、相変わらず無茶が好きだな。いや、こいつの場合は無茶でもないか。
俺の元パーティーメンバーは正直いってどいつもこいつもチートだ。
ガルフェンの斧の一撃は容易く地面を抉り、鎧など知るかとばかりに叩き切る。
ハドックは青蛇と言われる所以の青い残像を残しながら駆け抜け、獲物をズタズタにし、極めつけは魔装具である、槍の電撃ビームだ。
キャスティーは魔術師として天才的で、並列思考による複数魔術の弾幕は阿保かと。以前ガルフェンがキャスティーを怒らせた時は絶対に怒らせてはいけないと心に誓った。
最後にカタリナだが。最初見たときは特に突出した所がないように感じるがそれは違う。
あいつは、堅実な戦い方で長期戦に強い。堅盾という硬盾の上位スキルをもち、信仰魔術で自身を回復と防御を固め。流れるような美しい剣術で相手を痛め付ける。火力馬鹿三人にはない安定した戦いをする。
みな今は銀級だが。白金級を超え、いずれはミスリルに至ると評される強さだ。…俺なんて万年銅級だっていつも言われてるのにな。つくづく自分が惨めになる。…もしあいつにあったらもっと自分の劣等感が大きくなりそうだ。お家帰りたい。
「マル坊、お前だってすぐに俺達みたいに強くなれるさ。まぁ、こいつは含まないけどな~はははっ!」
ハドックが俺を指差し笑ってきた。もう殴るかこいつ。ボコボコにしてやる。
ちなみに、ここにいるメンツはみんな俺に素手での殴り合いには勝てない。子供の頃に化け物人間に鍛えられたからな。最終的には格闘だけは化け物だなと化け物人間達に言われたっけ。
「なぁ、ハドックよその自尊心バキバキにへし折られたいならそう言えよ?いつだってやってやるぜ。」
「うぐっ、悪かったよ。」
ハドックはギルドに自慢の槍を預けてある。今、俺とやりあえばどうなるか分かるんだろうな。過去にボコしたトラウマあるだろうし。
「ほら、お前ら早くいくぞ腹が減ってんだ。」
黒髪の美女、ヴェラを侍らせたバッシュが急かしてきた。くそムカつく。なんだあのお似合いカップル。まだ付き合ってはないんだろうけど。
「あっすみませんバッシュさん。」
ハドックがバッシュに謝る。基本的にここにいる連中はバッシュには頭が上がらない。バッシュは冒険者歴8年とベテランだ、オレたちの倍も冒険者をやっている。教えられることが多いのだ。
俺だけはバッシュとは親友として対等に付き合ってる。最初は敬語でさん付けをしていたのだが、パーティーを組んで一月ほどで。
「これからは敬語をやめてくれ、さん付けもな。是非、お前とは対等に付き合いたい。どうか向き合ってくれ」
トクン。なにこのイケメン。告白されちゃった。駄目、俺は男だ、ノーマルだ。トキメいちゃ駄目だー!
まぁ、パニクっていろいろおかしな事考えたけど。てか言い方悪いよ。そういう意味じゃないのわかるけど。
そんなやり取りがあって今や親友だ。だから朝食は常に一緒に食べるし、一緒にギルドへ行く。お互い信頼しあってる、まさに相棒だ。あいつと見比べられると心にヒビが入るけど。
あーだこーだしているうちに露店が見え始め、人の数も増えてきた。あっ、やっぱりダンジョン周りの露店商が何件かあるな。商売根性逞しいよ。
大通りはまだ一時前だというのに、人でごった返している。…うわっ、ほんとに人に酔いそう。
「あっ、あれ旨そうだな。」
「あっ、バッシュさ~ん」
バッシュが露店に走っていく。それを急いで追いかけるヴェラ。仲が宜しいこって。モゲロよマジで。
「ねぇ、マル~あっちにあるの食べたいな~。」
「おっ!いいね、行こう。」
…ちっリア充どもめ。マルサスとリズも露店に走る。
「ガルフェン、あそこのドリンク美味しそう。」
「へいへい、キャスティー様。買いにいきますか。」
ガルフェン、月夜ばかりと思うなよ。死神は突然背後に立つこともあるんだからな。
あれ?俺もしかてハドックと二人きり?喧嘩はじめたら大変なことになるよ?
「きゃ~!ハドックさん~!お久しぶりです!帰って来たんですね!」
後ろから黄色い声が聞こえ、振り向くとハドックが街むすめ達に囲まれてる。まぁ…バッシュやマルサスがイケメン過ぎて目立たないけど、あいつも普通にイケメンだからな。
不思議だ、今は心が何も感じない。きっと世界の理不尽、不条理、格差社会が俺の心を粉々に砕き、擦り潰し、塵取りでとってゴミ箱になげたんだろうな。
俺は一人天を仰ぎつーと涙を流す。
俺の心を少しずつ回復させながら露店を周り、腹を満たす。今は少し休憩が必要だ。
もうじき、パレードが始まる。あいつの顔を見ると多分更に心がおかしくなりそうだから路地裏で休もう。
「はぁ…彼女ほしい。」
俺が切実な思いで下を向きながら路地裏を歩く。すると。
「まずい!遅れちゃう!」
どこか聞き覚えがある女性の声が聞こえる。相当なダメージを受けた心が震える。忘れようとしても忘れられない声。劣等感を大きくさせる存在。もはや憎しみしか湧かないあの声。
「きゃっ!!…いたー。あっ!ごめんなさい急いで…て…」
「ルー…ナ」
そこには、淡い赤髪の女性が尻餅を着いていた。キレイな白い肌。最後に見たときは幼い顔で可愛らしかった、だが今は大人の女の顔。胸は全然なかったのに、今は程よく大きい。昔は保護欲を掻き立てる魅力は、しかして今や男の劣情を駆り立てる美しさになっていた。
忘れたくても忘れられない、俺が愛した。もう二度と同じ失敗はしないと誓った。彼女と共にならこの厳しい世界でも歩んでいけると思った。だが、今や運命に従い、こいつは勇者の妻となった。俺を捨て、勇者を選んだ。俺の劣等感の一つ。
地獄の光景を思い出す。こいつが!レスターとジェシカとこいつがいれば!!俺の親父とお袋も村のみんなも、死なずに済んだかもしれない!!!こいつらがいれば!!!!
胸の中にドロドロと黒い何かが渦巻く、酷く気持ち悪い。憎い、肝心な時に居なかったこいつらが。憎い、約束も守れずのうのうと生きる自分が。憎い、あの時いたあいつと黒い狼が。
俺は目の前の女を見て、忘れようとした気持ち、記憶を思い出し、憎悪の眼差しを向ける。
そう、かつて愛し、結婚すると約束した元恋人。魔術の聖女ルーナ。勇者の妻ルーナへと。
コメントいただきありがとうございます。アルヴィンは二度寝取られてます。しかも二度目はとんでもないトラウマまで後から付いて。あとでそのトラウマも乗せます。この物語の重要な部分ですので。
あと、この物語のヒロインはまだ当分でて来ません。