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七話

俺の名前は九条 昌樹、どこにでもいるただの男子高校生だった。ちょっとアニメとかラノベが好きなね。そんな俺には可愛い幼なじみがいた。その娘とは幼稚園からずっと一緒で、同じ高校に通っている。高校生になってさらに可愛いさが増し、いつもドキドキしていた。毎日くだらない事を話しながら一緒に帰る。とても充実した日々。まさにリア充だ。

俺は彼女のことが好きだ。好きだった。


ある放課後、俺の幸せは跡形もなく崩壊する。


「ごめん、◯◯先輩に告白されて付き合うことにしたの、これからは先輩と一緒に帰るから」


まさに、晴天の霹靂。寝耳に水。頭が真っ白になり、去り行く彼女の後ろ姿を見つめ続けた。

どれぐらい時間が過ぎたのか、俺はふと廊下に長時間突っ立っている事に気づく。


「帰ろう…」


力強い無く校門を出て、カバンからヘッドホンを取り出す。いつもは幼なじみと途中で別れてから付けるこのヘッドホンも、今日から学校を出てすぐ付けるのか。とても惨めな気持ちになった。せめて自分の好きな曲を聞き、元気をだそう。

今までの幼なじ みとの思い出が走馬灯のように駆け巡る。

何でこうなった?決まっている、一緒にいることに満足していた。満足してしまった。

今まで一緒にいたのだからこれからも一緒なのは当たり前。そう思っていた。

これは自分のミスだ、幼なじみも俺を好きでいると勝手に思い込んでいた俺の。

…今からでも遅くない。何も伝えずこのまま終わりたくない。せめて、俺の気持ちを伝えよう。

…でも、迷惑だと拒絶されないか?もし拒絶されたら?彼女から避けられてこのまま過ごすのは嫌だ。

でも、彼女が俺じゃない他の男と見つめ合いながら歩くのはもっと嫌だ。

俺はその光景を想像し、胸の内に苦しいモヤモヤが渦巻くのを感じる。

このままじゃ駄目だ!俺は彼女の隣に居たい、隣に居て欲しい。

俺は立ち止まり、彼女の自宅の方角を見る。そして、全力で走った。彼女にこの想いを伝えたくて。彼女の隣に居たくて。必死に走った。聞こえてくる音楽が俺に力をくれる。彼女との未来が俺に活力を取り戻してくれる。

そして、彼女を見つけた。隣にはまさに、イケメンの男。あの顔を、殴ってやりたいと思った。俺の掛替えのない大切な女性を奪ったあいつを。



そして、俺は転んだ。


「あでぇぇ!?」


壊れた側溝を踏みつけ、片足を落としたのだ。足に鋭い痛みが走り、道路に転んでしまった 。痛みに悶えながらも立ち上がろうと前を見ると車のタイヤが見えた。

プーーーと車のクラクションと、「キャァァァ」と聞き慣れた女性の悲鳴が聞こえて俺の意識は途絶えた。





そして、気付いたら目の前に肌色の風船があった。俺は何故かその風船に吸い付いて、液体を飲んでいる。風船を触ると暖かく、とても柔らかくて何故か幸せな気持ちになる。

そして、上を見上げると白髪のとても美しい女性が聖母のような笑顔を俺に向けていた。

一瞬飲むのをやめ、思考が停止したのちに飲んでいた液体を鼻から吹き出す。

まさに阿鼻叫喚。女性が「♯@@@@@、@§〒###!!」と悲鳴をあげる。俺は何故あんな美女のおっぱいに吸い付いてんだ?!何言ってるか分かんねぇ??、何で俺赤ちゃんなんだ!?てか鼻がいてぇぇ!!




これが俺、九条昌樹、享年16歳がこの世界にアルヴィンとして転生した話だ。

…正直トラウマである、高校生の俺が何が悲しくてあの美女のおっぱいをぺろ…ゲフン、飲まねばいけないのか。

思うように動かせない身体。あの美女から笑顔でオシメを交換される、かいか…違う辱しめ。聞いたことのない言語。

何か新しいことに目覚めてしまった幼少期はホントに辛かった。





そして、現在。


「じゃ帰りましょうか?アルヴィンさん」


ヴェラこと、佐藤玲奈と共に俺たちは神へ会いに行くことに決めた。理由が知りたいのだ。何も知らずそのままではいけない気がするから。

ちなみにだがヴェラの転生理由は、男をとっかえひっかえしていたが。どれも違う感じがして、その中の一人に刺されて死んだらしい。痴情のもつれってやつだ。…まぁ俺も異性関連で死んだから、同士ってやつらしい。


「あぁ、帰ろう。新しいスキル習得してないかなー。」


俺達二人は地上へと戻る。


視界が切り替わり、ドームの中へと戻ってきた。

俺は前に進んでバッシュを見つける。どうやら帰還の受付をしているようだ。受付の上にある時刻を見ると午後を少し過ぎたあたりだ。…もう少しゆっくりでも良かったのに。


「…一応確認するかな。」


俺は受付近くにあるテーブルへ向かう。そこには手の形をしたプレートと、それに繋がるように黒い箱があり、箱の上に長方形の窪みがある。

これは鑑定台と呼ばれ、ギルドやダンジョンの受付に設置されている魔道具だ。手をプレートに置いて、ギルドカードを窪みにはめると、ギルドカードに現在のスキル、ステータスが刻まれる。



ギルドカードは等級によって材質が変わり。俺のは銅で出来ているため、銅級だとわかる。


ギルドカードを窪みにはめ、手をプレートに乗せる。すると窪みから光りが漏れて、ゆっくり消えてゆく。

ギルドカードを取り出し裏を見ると。




アルヴィン 銅級


年齢 18歳


スキル


戦闘技能系


体術 上級


通常技能系


農耕


ユニークスキル


強盾 内包スキル

バインド フローティングシールド

セイントウォール


ステータス


力(力の強さ) 126

魔力(魔力の量) 393

体力(スタミナ) 241

素早さ(動きの俊敏さ) 167

精神力(精神力の強さ) 170



スキル、ユニークスキル、ステータスと表示された。

スキルには種類があり、戦闘技能、補助技能、生産技能がある。


戦闘技能系のスキルは階級がある。下から、初級、中級、上級、超級、王級、聖級の6つとなっていて、熟練度を表している。

で、俺の持っている体術は、素手での格闘スキル、農耕は単純に農業のスキルだ。ユニークスキルの強盾だが、スキルの中にスキルが入っている特殊なモノで、複合スキルと呼ばれる。

ステータスについてだが、成人した男性のステータスが大体100前後であり、俺のステータスは冒険者としては普通の値だ。


「はぁー…、スキル増えてないな。」


スキルは何度も練習すると獲得することがある。剣を振りつづければ剣術を、槍を振り続ければ槍術を、いつかは獲得出来る。だが、人には向き不向きがあり、どんなに練習しても獲得出来ないスキルはある。子供の頃からずっと剣の練習を続けても、俺は剣術スキルが獲得出来ないように。


「何もスキルは獲得出来なかったようですね?ドンマイです。」


「…簡単に手に入ったらこんなに苦労してないよな。」


ヴェラが慰めの言葉を掛けてくる。心に染みるな。ヴェラも同じように鑑定をし、見せてきた。


「私も変化なしね。」


ヴェラ 鋼鉄級


年齢 15歳



スキル


戦闘技能系


弓術 中級

魔弓師

短剣術 初級


補助技能系


追尾

気配察知

気配隠蔽

遠視


通常技能系


調理

料理

房中術


ステータス


力 93

魔力 194

体力 161

素早さ 150

精神力 151


女性らしく料理スキルをもってるな、房中術は…俺には縁遠い話だな。


「受付が終わったからギルドに向かうぞ。」


バッシュが戻ってきた。ダンジョンで入手した素材はギルドで素材を買い取りしてくれるので向かう。


ギルドに入ると、冒険者が結構いて賑やかだ。冒険者達はみな、勇者を見るのが楽しみだ、聖女はやはり美人なのか?など勇者達の話しで持ちきりだ。


買い取りカウンターへ向かう。そこには男性の職員がおり、俺達に気づくと一礼をしてくる。


「お疲れ様です。ご用件は?」


「こんにちは、こちらの買い取りをお願いします。」


俺は受付の男性に挨拶をすると、今日ダンジョンでとれた素材を渡す。


「はい、お預けりします。…魔石と、フォレストキャットの毛皮ですね。査定いたしますので少々お待ち下さい。」


受付の男性が素材を持ち、奥に入り査定を始める。


「査定が終わったら飯でも食いにいくか。」


バッシュが昼飯の話しを始める。


「そうっすね。結構腹も減ったし、どこか食堂いきます?」


「賛成ー、私も~お腹すいてきましたし~。」


「私はバッシュさんとならどこでも構いません。」


「そっ、そうか。ヴェラ引っ付かないでくれ。」


みな腹が減ってるようだ。ヴェラはあからさまにバッシュの腕を組んでアプローチを仕掛けている。

…けっ!

かくいう俺も腹が減ってきたな。


「この時間はどこも混んでるんじゃないか?パレードもあるわけだし。」


「うっ、確かに。じゃ、屋台を食い回りするか?」


「私はバッシュさんが一緒なら構いません。」


「出来れば座って食べたいのですが、仕方ないですね。」


「なんでも構いませ~ん」


マルサスは基本的に立ち食いをしない。かならず座って食べたいらしい。ポリシーってやつか。

ヴェラは本気でバッシュを狙ってるからずっとくっついている。あっバッシュに夢中の受付嬢が睨み付けてる。…頼むから前世と同じ末路は辿るなよ。


「査定が終わりました。小サイズの魔石26、中サイズの魔石1、フォレストキャットの毛皮1枚で査定額が金貨6枚、銀貨4枚、大銅貨5枚になります。」


バッシュが受付から金を受けとる。


さて、貨幣の価値を説明すると。


鉄貨 一円

銅貨 百円

大銅貨 千円

銀貨 一万円

金貨 十万円

白金貨 百万円


となる。

今日の売り上げは日本円で換算すると64万5千円になる。一人頭12万9千円だ。

この世界の一般家庭では金貨1枚で十分生活出来るので、いかに冒険者が儲かるかがわかる。

とはいえ、今回の売り上げの大半がフォレストキャットの毛皮、約金貨5枚なので参考になるかは微妙であるが。


「じゃ、今日の稼ぎをみんなに分けるぞ。」


リーダーであるバッシュがみんなに均等に分け前を手渡す。


「じゃ、パーティーの積み立てとしてアルヴィンに大銅貨を5枚渡してくれ。」


今度はパーティーの諸経費の回収を始める。ポーションの類いはメンバーの積み立てでまかなう。


「すみません次はこちらをの買い取りをお願いします。」


次に、俺が預かっているポーションを売る。ポーションには使用期限がある。期限が近付くと劣化し、効果が薄まるため適度に入れ替えなければいけない。ギルドでは初心者冒険者のために古くなったポーションを買い取り、初心者のみに格安で販売する。出来るだけ多くの冒険者を育てるためだ。


「はい、少々お待ち下さい。」


ポーションを渡すと直ぐに職員は奥にいき、虫眼鏡でポーションを見始める。あの虫眼鏡は鑑定の効果を有しいて、ポーションの効果を判定している。


「はい、ライフとマナポーション合わせて18本、買い取り額は金貨5枚、銀貨4枚です。」


えーと、そうすると一本が約銀貨3枚か。各種ポーションは銀貨5枚ほほどなので金貨3枚と銀貨6枚を補てんしてポーションを買いに行かないとな。

ポーションは一年ほどの使用期限がある、半年ほどで売却するのが一般的だ。

積み立てはかなりあるから問題ないな。


「じゃ、屋台巡りにいくか。」


バッシュがヴェラをくっ付けたまま外に向かう。いいご身分だこと。マルサスとリズも二人で仲良く話しながら後を付いていく。独り身はつらいよ。

俺は買い食いを押さえないといけないな、夜のお楽しみに使うためにね。…あれ?なんで昨日行ったのに今日も行きたいと思ったんだ?確かにフェルトちゃんに来てねと言われたけど、さすがにそんな散財はしたくない。

酔った勢いってやつか。いやっ、焦燥感もあったよな、たしかボスを倒した後ぐらいで焦燥感が薄れたような気がする。

まっ、今日の夜はバッシュと軽く飲んで帰るか。たまにはガルフェンとも飲みたいしキャスティーと一緒に誘うか。


俺は夜の予定を考えていると、声を掛けられた。


「よう、荷物持ちの盾バカ。今日もダンジョンで盾の影に隠れて、見方頼みの戦いしてたのか?」


嫌みったらしく俺に声を掛けてきたのは、槍を担いだ、青い髪の男性で名前をハドック ・カルケスト、青蛇の二つ名を持つ銀級冒険者で青蛇の一突きのパーティーリーダーだ。


「…うっせぇ、お前に関係ねぇだろ」


「おいおい、元パーティーメンバーにそんな態度はないんじゃないか?」


てめえの態度は問題ないのか?毎回俺を見かけるたび突っかかってきやがって。どこまで根にもってんだ。

俺は以前こいつとパーティーを組んでいた、他にはガルフェンとキャスティー、今こいつとパーティーを組んでいるカタリナ・バークウェイ、そしてシエラという女性の六人組だった。だが、シエラがとある事件で死んでからパーティーは解散し、俺はいくつものパーティーを転々とすることになる。

こいつは解散の原因になった俺をよく思ってないんだろう、こうやってよく嫌味をいってくる。


「そりゃ悪かったな、忙しいからさっさと退散させてもらう。」


「はっ!パーティーの雑用で忙しいもんな!どうだ?俺のパーティーで荷物持ちやらないか?特別にいれてやる。」


「嬉しい申し出を毎回ありがとう、丁重にお断りします。」


こいつは毎回パーティーに誘ってくる。大方いじめ倒すためだろう。カタリナがそんなこと絶対許さないだろうに。そういえば、カタリナが見当たらないな?あいつも美人だから目立つんだよな。いると、こいつを押さえてくれるから助かるんだけど。


「カタリナはどうした?愛想尽かされたか?御愁傷様。ざまぁ」


「はっ!あいつは女友達と勇者のパレードを見にいくって大通りにいるさ。」


「そうですか。じゃ忙しいからさらば。」


「おい、お前勇者のパレード見に行くのか?」


「バッシュ達が見に行くっていうからな、これも人付き合い…、あっ!」


「どうした?」


「いや、忘れもん思い出した。」


そういえば、ガルフェン達に行く時に声かけるって約束してたな。すっかり忘れてた。バッシュも忘れてそのまま行ってるしな。ガルフェン不憫なやつめ。

ガルフェン達は…居たなテーブルで飯食ってる、買ってきたのか?


「おい、俺を無視すんなよ。」


「あっ?まだいたのかよ、しっしっ!」


「てんめぇ、人を虫みたいに払ってんしゃねぇ。」


「俺は今からガルフェン達誘って勇者見に行くんだから忙しいんだよ、お前なんかに構ってる時間が勿体ない。」


「おっ!じゃぁ俺も一緒に行くかな。」


来んなよ!ただでさえ気が乗らないのにてめぇまで来たらマジでストレスマッハだ。


「いや、遠慮しときます。」


「いや、付いていく。」


ちっ、引かねえな。こいつの小言をこの後も聞かなきゃいけないとかどんな罰ゲームだよ。


「はぁ…ガルフェンに聞いたらどうだ?」


「まぁ、確かにそうだな。お前に意見なんてどうでもいいしな。」


くそっ、もしかして夜の飲み会も付いてこないよな?来たらすぐ宿に帰ろうかな…。

ガルフェン達のもとに歩いていき声を掛ける。


「よう、ガルフェン。今からパレードを見に行くか?こっちの面子はもういってるけど。」


「おう!行くか!」


「あら?ハドックと一緒なんて珍しいわね。」


「はっはっ!こいつが寂しそうにしてるからな、一緒にいてやったのさ!俺も一緒にいっていいだろ?」


ぶん殴りてぇ…


「おっ!いいぜ。やっぱ祭りは人が多いほど盛り上がるからな!」


俺はテンションだだ下がりです。帰りたい、凄く帰りたい。


「よっしゃ!ガルフェン達が食い終わったらいこうぜ!」


はぁ…ストレスで髪の毛抜け落ちないよな?我慢するしかないか。もし、あいつにあったら更にストレスが溜まるな。


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