三話
気づいたらブックマークが90越えてました。ビックリです。
自分の下手な文を読んで頂いてとても嬉しいです。ありがとうございます。
ロゼッタの予想外の強さに驚愕して一夜明け。俺達は今日もダンジョンへと潜っていた。
今回は2階層踏破が目的だ。出現する魔物は1階層と同じなので、何の問題もなく進める見込みだ。
とにかくスムーズな連携を組めるように色んなパターンを試行していくが、ロゼッタの能力は優秀で、ここら辺の魔物では練習にすらならない。
恐らくは5階層のボスに行ってもあっという間に終わってしまうだろう。
ちなみに、5階層のボスはフォレストウルフだ。一体しか出ないので、かなり余裕ではある。ただし、初心者を除くが付くけど。
部屋の床は極端な起伏があり、冒険者の移動を妨げ、フォレストウルフの動きをサポートする役割がある。
起伏をピョンピョンと、器用に跳ねながら高速で移動されると、最初は焦って対処が出来なかったりする。
「魔物ってこんな簡単に倒せるんだね」
ロゼッタがスパイクラビットから剣を引き抜き呟く。その発言は危ういな。どんな魔物でも油断をしてはいけない、これは冒険者の鉄則だ。
「ロゼッタ。ダメだよ、魔物は小さくて弱くても甘く見てはね。どんな魔物も人を殺す力はあるんだから」
ヴェラが注意を促す。その通りだ。冒険者の死因の多くが実は、弱い魔物を相手に油断して、死んでるのだ。
「そうだな。ロゼッタ、人そのものは魔物より弱いんだよ。だから、油断だけはするなよ。スキルも装備も無しに素で殴りあったら、魔物には勝てないんだから」
人の体は弱く脆い。このスパイクラビットのほうが丈夫だと言えるほどに。
でも、人にはスキルがあって魔術がある。特殊な効果が付いた装備だって作れる。これらがあってはじめて魔物と渡りあえるのだ。
だから、油断してはいけない。例え雑魚と言われる魔物も、噛み付かれたらケガは当たり前だが、簡単に殺されることもある。
「うん、分かった。ところでアルヴィンはなんでマジックポーチに素材を入れないの?」
あ!馬鹿!ここでマジックポーチのこと言うな!ヴェラには言ってないんだから!
「マジックポーチに?あれ?アルヴィンさんの盾の分程度の要領しかないんですよね?」
「ああ!そうだよ!何を言ってるんだロゼッタは!アハハハ!」
「え?無制限だよ?何言ってるのアルヴィン?」
駄目だ!こいつは理解してくれない!俺はヴェラ達にマジックポーチの容量を誤魔化していた。こんなヤバい物を持ってるなんて広まったらトラブルになる。
「……」
ヴェラさんが半目でジーと見つめてくる。半目でもキレイだなぁ…。
「…ごめんなさい…」
俺は謝り、地面に座ってヴェラさんにマジックポーチの説明をした。…目力には勝てなかったよ。
「…いや、話さないのは仕方ないよ。私も同じ立場なら隠すと思うし…お母さんの形見なら大切にするのは分かるから…」
「…はい。」
「…私達は仲間でも他人だからね。完全に信用は出来ないよね」
やはりそう判断するか。いや、確かに信用出来る人にしか言わないのは事実だけど。面倒事に巻き込みたくないって気持ちもあっんだよ。余計な情報は、面倒を呼び込むのが目に見えてるから。
「…いや、その…。信用してなかった訳じゃなくて…」
「…気にしないで。仕方ないから…」
うぐ!ヴェラがすんごい落ち込んでるぞ。ヤバい!女の子を悲しませるのはよくない!下手に弁明しても信じてくれないだろうし、どうしたら…
「あのね!ヴェラ!別にアルヴィンはヴェラを信用してなかった訳じゃなくて!多分、厄介事とかに巻き込みたくなかったはずなんだよ!」
よし!いいぞ!ナイスアシスト、ロゼッタァ!お前は出来る女の子だ!
「だから!アルヴィンが何か隠し事してたら、おもいっきり蹴ったり、殴ったりしたらいんだよ!すんごいスッキリするから!」
「なんで!?」
うぉい!お前が俺を殴ったりするのはスッキリしたいからか?ちょっと家族会議しないといけないかな?
「…そっか。分かった!今度からやってみる!」
「待って!おかしい!俺はパンチングマシーンじゃないよ!?やめてぇ!!」
「じゃぁ、今度からは隠し事は無しね?いい?」
理不尽な暴力は反対と抗議してると、ヴェラが微笑みながら和解策を提案してくる。
「もし、破ったら?」
「お尻は鞭がいい?バット?それとも、こん棒?」
「勘弁して!」
ヤバい!お仕置きの道具が物騒になってくし!お尻が壊れちゃう!
「…はぁ…冗談はさておき、別に怒ってませんよ。…ただ、出来るだけ、言えることは行ってね。…仲間外れは寂しい」
「…はい。今度からは気を付けます」
あぁ、ロゼッタが知ってて、自分だけが知らないってのは寂しいもんな。仲間外れと感じるのは確かだな。…逆にロゼッタに言ってないこともあるけど…それはまだ言わないほうがいいか。証拠もないから言っても信じられない。
そこからはスムーズに進んで2階層を踏破した。連携の練習は魔物が弱くてまともな練習ができなかった。流石にハンデを付けて練習すると変な癖が付きそうなので、6階層以降で連携の練習をすることにしよう。
気になったのはヴェラの表情が暗かったことか。マジックポーチの一件から暗い。…うーん、まずったな、やっぱこのパーティーになって直ぐに言うべきだったか。
とりあえず、フォローしないとな。…大切な仲間なんだ、落ち込んでる姿は見ていたくない。
転移陣を踏み、ダンジョンの出口にもどり、受付けへ帰還報告を済ませるとギルドへ向かい、魔物の素材を納品して報酬を受けとる。昨日もこんな感じだが、ダンジョンを探索する冒険者の日常はこんなもんだ。
「…じゃ、お疲れ様でした」
ヴェラは暗い顔のまま帰ろうとする。…このまま帰しては駄目だな。仕方ない。
「待てヴェラ、この後は予定って決まってるのか?」
「え?…ううん、帰ってご飯を食べるだけ」
「じゃあ、一緒に飯でも食いにいかないか?」
「え?」
「ふぇ?!」
後ろでロゼッタが驚いてる。…あれ?これってデートの誘いか?何も考えずに誘ったな…てか、初めて女の人を食事に誘ったぞ。
「どうだ?…後、別にやましいことはしないからな?」
「…付け加えると怪しいよ…いいよ。帰ってもつまらないから…」
「そうか、悪いけどロゼッタは家に帰って、ローガンさん達に外で食べると伝えてくれ」
「えぇ!……私もいく!」
ロゼッタ、何か目が怖いよ?がっしりと俺の腕を掴んで離さない。そんなにヴェラと飯が食いたいか…パーティーメンバーで親睦を深めるのも大事だからな。
「分かったよ。…一旦家に戻って外で食べるって伝えないとな」
「やった!」
「ふふ…」
ヴェラが少しだけ元気になった。ヴェラとは前のメンバーと一緒に何度か食事はしているけど、何が好物かわかんないんだよな。
「とりあえず、家に行ってから何処で飯を食うか決めよう」
「はい」
「はーい」
家に戻ると、店には例の如く客が溢れていた。とはいえ、日に日に客が減っていて、この間のような行列はない。
ローガンさんは忙しいと判断して、裏口から入って、工房に回り、ジリアンさんへと声を掛ける。
「ジリアンさん。悪いんだけど、今日の晩飯は外で食べるから。ロゼッタも一緒に」
「……あら!もしかしてデート?」
ジリアンさんは武器の研磨をしていて、騒音が凄いので俺の声が聞こえないと思ったが、返事をくれた。凄いにたにたしてる。確かに今のは勘違いするかもな。
「違うって。パーティーメンバーと食べにいくんだよ。ヴェラって子と三人でさ」
「なんだ、そうかい。…あ、なら内で食べたら?」
思わぬ提案だな。いや、迷惑掛けるのも気が引けるしな…
「…ウ~ン、ちょっとジリアンさん達に悪い気がするなぁ」
「気にしないの!一人増えようが二人増えようが大して変わんないんだから」
「…ヴェラに聞いてみるよ」
ヴェラがいいと言えばここで食べてもいいか。ジリアンさん達の料理は美味いからな。
リビングで待ってるであろうヴェラのもとへと向かい、話し掛ける。
「ヴェラ、今日はここで食べないか?」
「え?…でも、迷惑じゃ…」
「本人が良いって言ってんだ。厄介になろう」
「そうだよ!お母さんの料理は美味しいんだから!」
「…じゃぁ、ご馳走になるね」
「よし!伝えてくる」
俺はジリアンさんのもとに戻って、ヴェラの分も頼んで、俺はローガンさんの手伝いへと回る。
夕方まで手伝うと、俺はリビングへと戻り、ヴェラ達の雑談に混ざり、暫くするとジリアンさんが料理を作り始める。
それに気付くと、ロゼッタも手伝いに向かい、ヴェラも料理に興味があるのか見に行った。
俺?お前は料理のセンスなんてないから作るな!と怒られたからキッチンには行かない。
料理が出来上がると皆集まり、食事を開始する。ヴェラがスープをスプーンで掬い、口にすると驚いた表情をする。
「すごい!美味しいです!」
そう言いながらスープを口に運ぶ。ジリアンさん喜んででるな。自分の料理を誉められるとこの人喜ぶからな。
「この料理も美味しい!」
ジリアンさんの料理をどんどん食べる。俺も最初はそうだったな。おいしくてつい、夢中になる。
「ははは!美味いだろう!俺の自慢の嫁さんだからな!」
ローガンさんが笑いながら飯を食べる。…飛び散るかもしれないからやめて欲しい。
「お父さん、汚い。笑うなら口に含むな」
ロゼッタが鋭い視線をローガンさんに送ると、縮こまって大人しくなる。…厳つい顔のおっさんが切なそうにすると結構哀れだな。
「ごめんねぇ、この馬鹿は行儀が悪いから」
ジリアンさんが笑顔で侮蔑の言葉という刃でローガンさんを切りつける。顔からはいつもの威厳は皆無だ。
「え…い、いえいえ。大丈夫です」
戸惑うよね。ただ、いくら外では厳つい顔をしても、家庭内じゃ立場が弱いってのはどこも同じなんだなって思う。俺のこっちの親父もそうだったし。
「なぁ、ヴェラは悩みとかあるか?」
あまりヴェラとそういった会話をしてこなかったので、気になって聞いてみた。まぁ、皆がいる前じゃ話しづらいかな?
でも、俺じゃどうしようもないことが、他の人なら解決出来るかもしれないからな。
「…悩み…か。…少し…寂しいことかな…」
「寂しいってのは…この間の事か?それとも、マルサス達か?」
バッシュのことは直接言いたくない。食事の時ってのもあるが、何か抵抗があるんだよな。
「マルサス達も、バッシュさんもそうなんだけど。…最近は一人で居ることが結構増えたから…」
そうか、マルサス達が別のパーティーに行ってからは、俺達と別れたら一人なのか。…やべ、そこまで頭回んなかった。ヴェラのアフターってあまり知らないからな。
「ヴェラちゃんの家族はこの街に居ないの?」
えっとヴェラの家族は確か北にある小さな村だったよな?作物がそこそこ取れる、普通の村だって聞いたけど…そういえばアークス教に壊滅させられたんだよな。
「…家族は居ないんです…私一人だから、時折寂しくなって…」
「…あら…ごめんなさい。悪いことを聞いちゃったね」
「気にしないで下さい。…でも、こうしてご飯を食べるのはいいですね。とても温かくて、懐かしくなります」
そうか、家族が居ないから一人でご飯を食べる訳で、俺は一人飯も好きだからいいけど、それが毎日だと寂しくなるかもな。
「そう…遠慮しないで食べてね、ヴェラちゃん」
「あ、はい。ありがとうございます」
「ん?じゃ今は一人で暮らしてるのか?」
ローガンさんが話しに加わる。家族の冷えきるような視線に落ち込んでたけど、回復したか。父は強いな。いや、図太いだけか。
「はい、宿で一人です」
マルサス達と同じ宿だろうけど、今は絡むのも気まずいだろうからな。
「…そうか。その年でその生活は寂しいな…」
前世込みで30半ばなはずだがね。…おっと!ヴェラさんが鋭い目付きで睨んでくるぞ。女ってのは皆勘が鋭いんだな。
「…そうですね。慣れなければいけないのは分かるんですけど…」
「ヴェラの村は俺と同じで、村その物が壊滅してるからな…寂しい気持ちはよく分かるよ」
カルダー村が消滅した時は本当に辛かった。寂しさと、約束を守れなかった絶望。頼れる人が居なくなった時の不安はとても言葉では言い表せない。
…そうか、俺にはローガンさん達が居たから、立ち直れたんだよな…。ヴェラにはそういった人達が居ないのか。
「そうなのか?それはまた…」
ローガンさんが同情の表情をする。ジリアンさんにロゼッタも悲しそうな表情だ。
「…ねぇ、良かったら、この家に住まない?部屋も余ってるし、同じパーティーメンバーならその方が都合がいいんじゃない?」
「おお!そうだ!いちいちどっかで待ち合わせをする手間も省けるぞ!」
あら、それは確かにいいな。でも、迷惑を掛けるのも申し訳なくて悩むんだよな…俺がそうだったし。だからこの家を一度出て、宿暮らしをしたわけだ。
「…お気持ちは嬉しいですけど…ご迷惑を掛けるわけには…」
そりゃそうだ。しかも今日初めて会った人だからな。普通は遠慮する。…でも、それじゃ駄目なんだな。
「ヴェラ、俺はローガンさん達とは血縁じゃない。俺の両親が友達で、その子供だから住まわせて貰ってるだけだ。あまり難しく考える必要はないぞ、俺とロゼッタのパーティーメンバーで、ロゼッタの数少ない女友達。しかも身寄りがないってなら、ここに住んだって誰も文句言わないだろうさ。多分、時折店を手伝えって言われるぐらいでさ」
「…」
ヴェラが悩む。日本人としての思考を持つヴェラはどうしても遠慮しがちになるよな。今のヴェラは孤独なんじゃないかな。俺達とダンジョンに潜るといっても、それは仕事としてだから、ここで人と触れあうのが必要だと思うんだよな。
「私も…ヴェラと一緒に暮らすのはいいかも。ギルドで待ち合わせしなくて済むのは助かるなぁ」
ああ、ロゼッタにとってもメリットはあるな。しかもこの二人は可愛いからな、余計に野郎どもの視線を集めて、ロゼッタが辛いだろうし。
「…では、お言葉に甘えていいですか?」
「おうよ!女の子が一人宿暮らしなんて、心配だからな!それにロゼッタとアルの仲間なら大歓迎だ!よろしく!」
「よろしくねヴェラちゃん。ふふふ、子供は三人ぐらい欲しかったから、嬉しいわね」
ジリアンさんとローガンさんが喜んでる。ヴェラもどこか嬉しそうだな。
良かった、寂しいなんて悩み、俺じゃ簡単には解決出来ない。ローガンさん達には感謝だな。
晩飯を食べ終えて、風呂に入って皆で雑談をする。ローガンさんは武器への術式付与があるから、工房に籠って仕事をしてる。
「今日はどうするの?泊まってく?」
ジリアンさんがヴェラにどうすらか訪ねる。でも、ヴェラは泊まりの用意とかしてないよな。
「今日は宿に帰ります。明日から宜しくお願いします」
「うん、でも、夜道には気を付けるのよ?ヴェラちゃん」
「はい」
「俺が送るから大丈夫だ」
「私もいく!」
それから少しゆっくりして、ヴェラの宿へと向かう。時間は既に夜の9時を過ぎ、街灯が当たらない箇所は漆黒が支配している。
ロゼッタには申し訳ないが、こういときはロゼッタのユニークスキル、想伝が役に立つ。なにせ、不審な輩が暗闇から不穏な事を考えても、察知出来るからだ。
「…二人共、ありがとう。…久しぶりに温かい食事だったよ」
「いいんだよ!ご飯は皆で食べると楽しいし、おいしいから」
二人は並んで雑談しているのを眺めながら、俺は後ろを付いていく。女子トークに混ざれる気がしない。
「でも、これからヴェラも一緒かぁ、賑やかになっていいね!」
「ふふ、私も嬉しいかな。…帰って人が居るのは」
村が壊滅して、帰る場所がないってのがどれ程辛いのか。それがよく分かるからこそ、今のヴェラの気持ちが理解出来る。
「…着いたね。…ここまで送ってくれてありがとう。明日から宜しくね」
「うん!宜しくヴェラ!」
「あぁ、宜しく。…明日はダンジョンに潜るのをやめて、ヴェラの引っ越しをするか」
1日休んだところで特に問題もないだろうからな。
「そうだね!」
「ありがとう。お言葉に甘えて、明日はお願いね。…お休みなさい」
「お休み」
「お休みなさい!」
ヴェラと別れ、俺達は帰路に付く。夏の夜、酒に酔った人たちの喧騒が何処からか聞こえてきて、まだまだ夜は長いんだなと思わせる。
「…ねぇ、アルヴィン」
「なんだよ」
「…アルヴィンは…ヴェラの事をどう思う?」
どう思う?…難しいな…、何て答えればいいんだろ…。それに抽象的だよな。人としてか、仲間としてか、或いは女性としてか…
「…いい奴ではあると思う。俺には辛辣なとこもあるけど、気を使ってくれたりもするからな。根は優しいんだろうな。お前とのやりとり見てるとよく思うよ」
「…そっか。…女の子としてはどうなの?」
ロゼッタが不安そうな表情で聞いてくる。…なんだよ、もしかして、俺がヴェラを好きになって、パーティーがギクシャクするかもとか思ってんのか?…まったく。
「あぁ、ヴェラはキレイだもんな」
「うぅ!」
俺が呟くと、ロゼッタが悲しそうな表情をする。おいおい、ちゃんと最後まで聞けよ。
「でも、俺は仲間としか認識してないぞ。あっちも、俺のことはあくまで仲間って感じだろうし。お前が気にしてるようなギクシャクした関係なんて、起きないと思うぞ。それに、俺はあいつの好みじゃないって前から言われてるからな」
「そう…」
ロゼッタは顔を下に向け、俺達は静かに帰った。




