第27話
新王国歴7268年11月7日
「ぐっ!」
「わっ⁉︎」
「きゃあ!」
被弾すれば艦は揺れる。それは当然のことでしかない。
しかしアーマーディレストのシールドを貫き、この大質量艦をここまで揺らすとなると相当な出力のはずだ。
そう考え、光学カメラ見ると……右舷を光の柱が貫いていた。あの規模で惑星規模要塞の主砲以上の貫通力とは……!
「シェーン、艦体を安定させろ!損害報告!」
「……了解……!」
「敵砲撃は右舷に接触、シールド全て貫通されました!」
「被弾部の第1、第2装甲消滅!」
「第3装甲は掠めたのみ、内部への貫通はありません。当艦の人的損害無し」
「被弾部および貫通部の武装とシールド発生器は全て消失。余波により周囲で動作異常多発」
「第14戦術艦隊旗艦大破!死傷者多数!」
「第9戦術艦隊旗艦中破、負傷者は多いものの死者は無し。後方へ撤退を開始」
「戦闘艦の1.8%が消滅、スティアレグラ級とニーランレント級が1隻ずつ大破。他に要塞艦4隻が中破」
「第2および第7戦略艦隊に被害発生。スティアレグラ級2隻およびニーランレント級1隻が轟沈、しかし脱出者あり。フォルスティン級も含め8隻が大破」
「海軍より通信、1ヶ艦群が消滅したとのこと。他にも多数の被害が存在」
密集隊形が仇になったか……射線はほぼ直線だったがあのサイズだ。掠めて被害を受けた艦がいくつもある。
また30本ほどは収束しておらず、様々な方向に散らばっていた。規則性が無いため、恐らく失敗したのだろうが……今回に限って言えば成功と言えるだろう。
メインターゲットにされたらしいアーマーディレストの護衛は戦闘艦が多かったおかげで、第1戦略艦隊における要塞艦の被害はそう多くなかった。
だが他の戦略艦隊および海軍には撃沈艦も出たようだ。収束していないレーザーだけでなく、メインの砲撃でも損害が出ている。アーマーディレストの貫通でかなりのエネルギーを消費したようだが、それでもかなりの威力を残していたようだ。
とはいえ、攻撃の規模に比べれば被害は少ない方だろう。
「空間機動、出力足りません!」
「被弾による消失および破損の他、被弾部のエネルギー伝導ケーブルが全て消滅したためだと思われます。ジェネレーターも5%が破損」
「シールド出力、発生器の消滅とエネルギー不足により最大でも80%になります。残存武装の21%もエネルギー不足により停止」
「エネルギー伝導ケーブルとシールド発生器の修復を最優先にしろ。シェーン、どうなる?」
「……惑星周りの、半亜空間奔流……それに引かれてる……今出ないと、そのまま落ちる」
「先生、今すぐ動かしてください」
「重力圏から脱出しましょう。このまま落ちればただの的になりますよ」
「いや……」
代わりにアーマーディレストはボロボロだった。シールドが最大出力でも80%しかなく、武装は30%以上が使用不可能。
そして、右舷側の空間機動装置が最も手酷くやられたようだ。重力によって生まれた惑星周囲の亜空間奔流、しばらく経つとそれから逃れられなくなってしまう。
人的被害こそ無いものの、大破判定だろう。だが……逆にチャンスかもしれない。
「第1、第2、第4シールド以外へのエネルギー供給を全てカット、余剰エネルギーは全て第1シールドへ注ぎ込め。空間機動停止、エネルギーパルス起動、推力全開。目標、アルドバルン要塞」
「え⁉︎」
「お兄ちゃん⁉︎」
「アーマーディレストを敵要塞へぶつける。正直に言って、これ以外に方法が無い。亜光速まで加速させろ!」
これは賭けだ。成功する保証は無く、失敗すれば艦は沈む。
だがこうなった以上、やるしかない。あの砲を迅速に潰さなければ、壊滅もあり得る。
『無理するわね、貴方』
「すまない。だが、必要だ。手伝ってくれないか?」
『良いわ、援護してあげる。第4戦略艦隊旗艦、惑星降下開始。直掩戦闘艦とラファレンスト級も続きなさい!』
「助かる。ポーラ、シールド接触の10秒前に重力子弾頭が着弾するよう調整、シールド接触5秒前に全砲門斉射。一気にシールドを叩き割る」
「りょ、了解です。計算開始します」
「人員がいるエリアのみ慣性制御装置作動、衝撃は全て吸収。他はそのまま……いや、衝突寸前に慣性を増大させて威力を上げる。それまで慣性は0%にしておけ。それと斥力場も発生させろ。遠心力で弾き出されるのは困る」
「了解。慣性制御装置、斥力場形成装置、作動開始」
「お兄ちゃん、部屋は?」
「……諦めろ」
その瞬間、ありとあらゆる所から悲鳴が聞こえたが、努めて無視する。そんなことを気にしている暇は無い。
……全員分の損失補填を後で申請しておくとしよう。
「そんなことよりも早く動け。間に合わなくなるぞ」
「了解。起動可能エネルギーパルス推進器チェック……80%が最大出力発揮可能」
「重力子弾頭搭載対艦ミサイル斉射準備良し。タイミング計算も終了」
「要塞が射線に入っている間は砲撃を継続、少しでも削れ。対艦ミサイルはタイミングになったらすぐの放て。号令を待つ必要は無い」
「了解。一括制御準備開始」
「推力、質量、自転および公転を計算……出力およびコース確定!」
「惑星上を自転とは逆周りに1周し、敵要塞へ衝突するコースです。先生、これで良いですか?」
「それで良い。リーリア、しばらく頼む」
『任せなさい。敵の目を引きつけるわ。全艦砲撃継続、対艦ミサイル50%斉射』
「第1戦略艦隊の他の艦は第4戦略艦隊に続け」
「艦首回頭、空間機動停止。シールド出力変更終了」
「……エネルギーパルス……全基、点火」
第4戦略艦隊の降下開始のしばらく後に、アーマーディレストは加速を始めた。
本来なら、この質量を加速させるには膨大なエネルギーが必要だ。しかし今は慣性を大きく減らしているため、弱い出力しか持たないエネルギーパルスでも短時間で亜光速まで加速できる。
もっとも、使いづらいことこの上ないが……今回ばかりは仕方がない。
「加速過程正常。コースおよび加速度、想定との誤差は0.000001%以下。調整の必要無し」
「シールド出力オールグリーン。デブリは対空レーザー砲で全て排除」
「重力子弾頭搭載対艦ミサイル、順次発射開始。現在一括制御中」
「対地速度、100km/sを突破」
「そのまま続けろ。シェーン、大丈夫か?」
「……問題、無い」
計算した通りにAIが出力を調整するとはいえ、操舵にかかるプレッシャーはかなり大きい。
その任を自ら引き受けたシェーンだが、緊張していることに変わりはない。もう少し注意の割合を高めておこう。
「対地速度、現在約500km/s」
「他の地上要塞から砲撃が来ました。推定命中率1.2%」
「無視しろ。反撃している暇は無い」
「慣性制御装置出力調整、遠心力を極小化継続」
「斥力場、出力調整。円軌道を維持」
もちろん操舵だけでなく、各種装置の調整も必要だ。円軌道が維持されなければ要塞へ体当たりを敢行することはできない。しかし、訓練でもやらない作業が数多く、オペレーターは非常に忙しそうだ。
そのため、要塞は無視する。どのみち、帝国軍の砲はこんな高速で動く艦を相手取れるようにできていないからな。
「対地速度、2500km/sを突破。衝突時推定3000km/s」
「最終コースへ到達。艦長、出力を最大まで上げます」
「……了解」
「エネルギーパルス推進器、全基出力上昇。最大加速開始」
「現在対地高度700km。まもなく大気圏突入」
「シールド出力安定、突入準備良し」
「断熱圧縮を確認。シールド消耗は規定範囲内」
そして大気圏へ突入すると、断熱圧縮により艦首付近のシールドが赤く染まった。
空間機動を使う王国人がこれを見るのは、船が死んだ時か趣味くらいだろう。本物は訓練でも見たことがない。こんな時でなければ、綺麗だと思っていただろう。
だが、今回はそんなことを考える暇は無い。
「敵アルドバルン要塞から砲撃来ました。推定命中率9.4%」
「砲撃継続。ただし一斉射は合わせろ」
「了解。斉射タイミングから逆算して砲撃実行」
「敵要塞上空より機動兵器群。他の戦略艦隊からです」
「衝突20秒前。ミサイル着弾まで、5、4、3、2、1、全弾着弾」
「残存全砲砲撃用意……斉射!」
「間もなく衝突!」
「総員衝撃に備え!」
その瞬間、シールドで消しきれなかった激しい振動が艦全体を襲った。慣性制御装置を使ってはいたが、亜光速域の衝突を殺しきることは出来なかったようだ。
しかし……
「あっ、シールド突破!」
「シェーン!」
「……逆噴射……空間機動、起動」
突破に成功した。
まあ、過負荷で発生器が吹き飛んだのか、艦首部分のシールドが無くなっており、そこから地表に派手に接触して派手に削れていく。
これにより損害がさらに拡大したが……止まることができた。要塞の真上に。
「生きている武装を使って要塞兵装とシールド発生器を全て潰せ。あの超大口径砲にはミサイルを撃ちまくれ。ハーヴェ」
「おう!」
「揚陸部隊の9割を投入、要塞を制圧しろ。残りは艦内に防衛線を張れ。敵が来るぞ。レイ、航空部隊は制空権確保と要塞制圧補助に注力。急げ!」
「うん!全員動いて!」
『私も揚陸部隊を全部送るわ。制空権は任せなさい』
「頼んだ。他の全戦略艦隊に通達、揚陸部隊を突入させろ。海軍は上空から援護、および他の地上要塞を潰せ」
「了解。全部隊に通達」
艦各所のハッチが開き、揚陸部隊が展開し始める。なお、高度がほとんどないため、重装揚陸艇を使わず直接飛び降りる機体も多い。
上空からは第4戦略艦隊を始めとした各戦略艦隊の重装揚陸艇が降りてきており、戦力に不足は無い。
降下完了までに要塞内に戦線を構築できるか否か、それで勝敗が決まる。
「敵陸戦兵器が多数出現。本艦へ向かってきています」
「揚陸部隊が迎撃を開始。即席の防衛ラインを構築」
「シェーン、近づいてくる陸戦兵器は艦砲で排除しろ。対空レーザー砲あたりがちょうど良いはずだ」
「……了解、迎撃」
「ついでにこの辺を重力子砲か何かで消し飛ばしてくれねぇか?突入口にしてぇんだよ」
「……ガイル?」
「許可する。シェーン、好きにやれ」
「……分かった……重力子砲用意、発射」
「助かるぜ。おいオメェら!さっさと防衛線を作れ!残りは突入しろ!」
「航空部隊も半分は入って。後ろからのサポートで良いから」
物量対物量。総合戦力では王国軍は非常に劣勢だが、地上という局所的な場所では数も互角になれる。いや、予備兵力の量では負けているか。
だが、こちらにはリエルを始めとしたエース達がいる。彼らにとって、普通の陸戦兵器は足止めにもならない。
だからこそ、足止め以上のことができる敵を警戒しなければならない。
「ハーヴェ、レイ、そろそろ厄介な連中が出てくる可能性が高い。注意しろ」
「おう。ま、そう硬くなることはねぇよ」
「はーい」
「先生、来ました。特戦型陸戦兵器です。種類は8つ、数はおよそ1万、2万……増大中です。現在約5万機になります」
「シェーン、艦砲射撃で潰すぞ。ハーヴェは揚陸部隊を退避させろ」
「いや、むしろ手ぇ出さないでくれねぇか?」
「は?」
特戦型陸戦兵器は、高コスト高性能な機体のことを指す。意味は単純だが、これがかなり厄介な相手で、種類によっては数機でエースを抑え込めるほどの性能を持つ。
とはいえ、これは陸戦兵器のみの特例だ。もちろん、これにも理由はある。
「どういうことだ?」
「これ見りゃ分かる」
宇宙にはいくらでも空間があり、機動兵器の数を増やすことは容易だ。しかし、艦内や地上ではスペースが限られ、物量作戦にも限界がある。
そのため帝国軍は陸戦兵器に限り、量産性の低いものを一部で採用している。重要施設に少数しか配備されない特戦型をこれだけの数投入できるとなると……流石は本国、それも政府首脳の避難先なだけはあるな。
「……無茶苦茶」
「うわぁ……」
「凄まじいな。あいつらが強くなったのか、帝国軍が弱くなったのか……両方か」
「これでは包囲されるような……」
「いえ、問題は無いみたいですね」
「これだから手出しが邪魔になっちまうんだよ」
しかし、それらの特戦型もリエルやアッシュ達、エースの中でも特に強い者達には敵わないようだ。他の陸戦兵器と変わらず、鎧袖一触とばかりに撃破され続けている。
もっとも、そんな人間は10人もいないため、突出部が形成されているが……他の部隊の火力を借りつつ、側面攻撃すら容易く対処していた。凄まじいな。
『貴方、もう少しで援軍が着くけど……何よ、これ?』
「流石にこれは予想外だ。シェーン、とりあえず突出部以外には追加の火力支援をしろ。あいつらへの支援は……敵群行動解析で十分だ。それと他の戦略艦隊の揚陸部隊は全て要塞攻略に使え」
「了解です」
「おう、頼りになるぜ」
「……了解……陽電子砲、用意」
「陽電子砲、砲撃準備」
「目標、敵陸戦兵器群。高密度エリアに設定」
「砲撃準備全て完了。支援砲撃開始」
「先生、揚陸部隊の先頭が要塞内部へ突入しました。正面はゼスティレン中佐が敵陸戦兵器を排除しつつ前進、側面からはメティスバイト少佐が侵入しています」
「分かった。ポーラは何人かのオペレーターと共に確保した端末からデータを収集、内部地図の入手を最優先で行動しろ。兵器情報は後回しで構わない。それと……っ、何だ!」
さらに戦闘が有利になる。そう思っていた時、艦内全域に警報が鳴り響いた。
これは……侵入警報だと?
「敵陸戦兵器、10万以上が艦内に侵入。数、なおも増大中」
「破損部直下にハッチがあった模様。残存武装の死角に入っており当艦では排除不可能」
「ちっ、やられたな。航空部隊はハッチを破壊、揚陸部隊は防衛線の半数を艦内に戻し奴らを排除しろ。中枢区画へ通じる全ての隔壁閉鎖、ドロイドを全機ディフェンスモードで起動」
「了解。航空部隊へ通達」
「揚陸部隊、防衛線から半数を抽出完了。艦内戦闘へ」
「第4戦略艦隊揚陸部隊、着陸開始。現在展開中」
「隔壁全て閉鎖。警備戦闘用ドロイド、全機起動。設定、ディフェンスモード」
「周囲から敵機動兵器が多数出現。航空部隊を妨害する模様」
「これを狙っていたか。レイ、敵機の排除は任せる。ハッチ破壊の邪魔はさせるな。ハーヴェは要塞内の指揮を継続しろ。侵入した敵の排除は俺がやる」
「はーい。じゃあ、爆撃機と重爆撃機がハッチを攻撃して、残りは制空戦かな」
「オレはあんましやることなさそうだけどなぁ。ま、そっちは任せるぜ」
『貴方、大丈夫よね?』
「問題無い。リーリアは要塞の方を頼む」
『了解よ』
侵入した敵機の数は現在で約100万、増えても1000万程度だろう。数の差で押し切ることも可能だが、早急に排除しなければ支障が出る可能性もある。
それに艦内への侵入とはいえ、この艦はアーマーディレスト級、そして破損部は非常に広い。要塞艦用格納庫にすら敵機が入り込もうとしているほどだ。
今はどうにか間に合ったドロイドが物理的な壁となって防いでいるが……早急に部隊を送らないとマズいな。流石にアレで時間稼ぎは難しいか。
「第5159から第5362機動兵器格納庫に重装歩兵5000機ずつで防衛線を構築、第692から第722戦闘艦格納庫には多砲塔戦車を2000両ずつ配備しろ。他の機体の数は任せる。第24と第32要塞艦格納庫はこの編成で10万機ずつ、その後ろに500万機ずつ配備しろ。ここを起点に敵を押し返す。残りは他の通路の防衛に当たらせる他に、1万機の遊撃部隊を20個抽出しておけ。それと、俺に機動歩兵を何機か回せ。予備機でも良いぞ」
「え?」
「お兄ちゃん?」
「驚くことか?俺とリーリアは投入されたことの無い戦場の方が少ない。それに、一応は俺もエースだ」
「……そういうこと、じゃない」
「1000機程度なら指揮しながらでもできる。それより、防衛戦にもエースが必要だ。他の戦略艦隊は要塞攻略に当てる分、こっちにはエースが足りないからな。ポーラ、どうだ?」
「まだ見つかっていません。先生、情報管制は必要ですか?」
「いや、ポーラはデータ収集に集中すれば良い。アーマーディレストの中ならサポート無しでも十分だ」
「了解です。それと、機動歩兵500機を用意できたようです。もう少し時間をかければまた用意できるようですが?」
「これで良い。装備設定は俺がやる」
ハーヴェや揚陸参謀達は要塞攻略に全力を尽くしており、こちらへ割り振るリソースは無い。他のエース達も大半が同じだ。全体の指揮はリーリアに任せているため、指揮官としてもエースとしても俺が適任だった。
そういうわけでいくらか借り受けた機動歩兵だが、武装は全機同じだ。射撃武器は陽電子機関銃と重粒子バトルライフルを1丁ずつ、6連装マイクロミサイルランチャーと25連装ナノミサイルランチャーを2基ずつ。近接戦用にレーザーソードを1振り、斥力式パイルバンカーを1基。そして迎撃レーザー砲を2基、小型盾を1基。
重砲系は搭載していないが、それは重装歩兵や多砲塔戦車で十分だろう。
「艦内防衛戦闘中の全部隊に通達する。各防衛線に俺が操作する機動歩兵を1機か2機ずつ配備する。それと俺の機動歩兵5機を中心に、1万機の遊撃部隊を20隊編成する」
戦況の確認は機動歩兵を配備しなくてもできるが、それでは俺がエースとして参加する意味が無い。特に特戦型が出れば一般兵だけでは厳しくなる。
特戦型の相手を一般兵がするには、圧倒的なほどの火力の投射が必要だ。エース達がやるような懐へ潜り込んでの近接戦闘、もしくは弱点への連続狙撃は難しすぎる。エースでも損耗が出るほどだ。揚陸部隊は陸軍より高い練度を持つが、流石に全員がこのクラスにはなれていない。
そして特戦型だけに火力を投射すれば……防衛線を突破される可能性が高くなってしまう。
「各防衛線は敵へ火力を集中投射、可能であれば引き込んで叩き潰せ。ただし抜かれることは許さない。この程度の敵に遅れを取るなよ?」
まあ万が一抜かれたとしても、俺の機動歩兵がいる。大部隊なら主力部隊からいくらか動かせばいい。
それらが全て失敗したとしても、取れる手段は他にもある。
ここは俺の艦だ。1機たりとも逃しはしない。
「遊撃部隊のうち15個は敵が使っていない通路を経由し、隔壁を開いて敵陣中央へ火力を投射しろ。残り5個は転送装置を使用し、損傷部付近で敵の迎撃を行え。困難な任務だが……死ぬよりはマシだろ?」
敵の陸戦兵器は損傷部に繋がるいくつかの大通路を通り、格納庫へ向かっている。そして大通路にある隔壁は全て壊そうとしているが、脇道に通じる隔壁には目もくれていない。
そういった場所から攻撃し、一部を引き込み、包囲下で火力を集中させる。防衛線を援護する助攻としてはそれで十分だ。
損傷部での迎撃も正面から戦うのではなく、敵の出現ポイントを狙い撃つことが主目的だ。敵と正面から撃ち合って不要に消耗する必要は無い。
ただし、指揮に使わない機動歩兵100機は突入部隊として、敵の主力が集まっている場所へ突撃する予定だ。半分でも撃破できれば時間稼ぎとしては十分、進路と退路は転送装置で確保する。
特戦型が多数いると厳しいが……メリットの方が大きいからな。やるしかない。
「要塞艦格納庫にいる主力部隊は俺の合図と共に一斉突撃、一気に敵を押し返せ。それまでは待機、要塞艦格納庫および近くの防衛線で火力支援だ。ただし、行動指示を出した場合は最優先で動け」
主力部隊は攻勢のメイン兼予備部隊だ。通路の幅には限りがあるが、転送装置を使えばどうとでもできる。
残念ながら完全な予備部隊として遊ばせておく戦力は無いため、こういう形になった。まあ、今の陸軍では使わない手だが……あの時代はよくやったことだ。
「各部隊の詳細な作戦は……今送った。各自確認しろ。確認出来次第、作戦開始」
そして細かい作戦プランも送り、作戦を開始する。
同時に500体の機動歩兵を戦闘モードで起動。
「さて……やるか」
その中から100体を敵主力の近くまで送り込んだ。
「艦内各防衛線、作戦行動開始。敵陸戦兵器群へ集中火力投射実行」
「敵群が新たに分岐、想定通りの方面へ戦力を展開。推定200から350秒後に防衛線に到達」
「遊撃部隊、転送装置を用いて各地点へ分散。強襲準備」
敵の主力がいるのは損傷部付近、人工重力発生機関の真下だ。あそこは上下には狭いが水平方向には広く、戦力を結集させるには都合が良い。
そこへ続く隔壁は4ヶ所、25機ずつ配備してある。
「遊撃部隊、強襲開始」
「敵機も反応、射撃戦が始まります。前衛部隊、後退開始」
他の戦線も予定通りだ。敵陸戦兵器は集中砲火を受けて消し飛び続け、勢いは弱まっていた。そして敵主力から戦力が抽出され、遊撃部隊の妨害もあり、若干ながら数は減っている。
今なら問題無い。突入開始だ。特戦型は……5機か。いけるな。
「敵機動兵器、ハッチ前から動かず。未だ排除は未達成」
「要塞侵攻部隊、損耗率6.1%。各所で敵を排除しつつ侵攻中」
「ハッチから敵大規模増援出現。損傷部付近の遊撃部隊が攻撃中」
「要塞の地図を見つけました。各部隊へ送信します」
「ポーラ、良くやった」
20機を特戦型に、60機を通常機に割り振り、残りは5機ずつで退路を確保。そして攻撃を開始する。
第1目標は蜘蛛のような形の特戦型。それも火力が高いタイプだ。
避けきれず、高出力レーザー砲により3機が消し飛んだ。
「要塞地図解析……終了。現在制圧率37.5%」
「損傷部周辺の敵機動兵器、排除率が50%を突破。ハッチへの攻撃も一部成功」
邪魔な一般タイプの陸戦兵器を蹴散らしつつ、機動歩兵は進む。
だがレーザー機関砲の集中射撃を受け、1機が穴だらけにされた。
特戦型だ。あの火力は厄介だな。
「要塞制圧率40%突破。大型の防衛施設を発見、攻撃開始」
「敵施設からも反撃を確認。艦砲クラスの模様。多砲塔戦車、前へ」
さらに1機が近接エネルギー散弾で細切れになった。
しかし15機が懐へ飛び込むことに成功し、レーザーソードや斥力式パイルバンカーを構える。
「第4戦略艦隊揚陸部隊が前線付近に到着、戦闘開始」
「海軍より報告。他の地域の地上要塞2ヶ所を破壊。残りは9ヶ所」
ここまでくれば、火力は発揮できない。1機につき3機がかりで解体してやる。
レーザーソードで足を切り落とし、斥力式パイルバンカーで胴体に穴を開けた。さらに背中を開き、コアコンピューターとバッテリーを貫く。
「揚陸部隊損耗率13.5%」
「防衛施設の破壊に成功。侵攻再開」
「隊列変形。主攻、第4戦略艦隊および第7戦略艦隊に変更」
「揚陸艦格納庫にいる主力部隊を前進させろ。反攻作戦の始まりだ」
「了解。艦内防衛戦主力部隊、前進開始」
特戦型は全て倒し、敵主力部隊も10%を削った。呼び寄せた遊撃部隊に攻撃させれば殲滅できるだろう。
また、新たに侵入しようとした特戦型は遊撃部隊が全て倒したようだ。他の陸戦兵器はかなり逃してしまったようだが、それで良い。特戦型に侵入されるより遥かに楽だ。
「主力部隊および防衛線構築部隊、攻勢開始。集中火力投射により押し返しに成功」
「敵陸戦兵器群、陣形を構築せず。攻勢姿勢のままの模様」
「遊撃部隊は側面攻撃を継続」
全ての防衛線で攻勢をかけ、敵の対処能力が飽和するほどの物量と火力をぶつける。単純だが、今はこれが有用だ。
俺も生き残った95機の機動歩兵と転送装置を使用し、各所で敵陸戦兵器を打ち破っていく。
「航空部隊がハッチの破壊に成功。新規の侵入は確認できず」
「戦略艦隊全揚陸部隊が展開完了。侵攻速度早まります」
「要塞制圧率52.4%。敵の抵抗は減少」
「敵艦内侵入部隊、推定損耗率57.2%。退却はしない模様」
艦内防衛戦はこのまま終息しそうだ。要塞内部の方も……今のところは順調か。
次の最終話は本日18時に投稿します




