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天翼王国銀河戦記  作者: ニコライ
第4章

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83/85

第26話

 



『作戦に参加する王国軍全軍へ達する』




『長い話をするつもりはない。だが、長い年月が過ぎた』




『約2500年もの間、帝国によって虐げられてきた我が王国軍が帝国の首都へ迫る。感慨深いことだろう。誇らしいことだろう。俺もそうだ。だが、これは事象に過ぎない』




『平穏を求めても、力が無ければ虐げられる。3000年前と同じように。バーディスランド王国を未来へ繋げるためには、敵は全て排除しなければならない』




『そして、これは最初の第一歩だ。未来へ続く道を、今再び切り開こう。全軍、作戦を開始せよ』











 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー











 新王国歴7268年11月7日




「作戦開始。繰り返す、作戦開始」

「全艦戦闘態勢確認、亜空間ワープ開始」

「亜空間ワープ終了と同時に戦闘開始。重力子砲(主砲)重粒子砲(副砲)陽電子砲(両用砲)、砲撃用意」

「連続亜空間ワープ予定なため、航空部隊は発艦準備状態で待機。ただし、発艦ハッチはいつでも開けるよう用意」


 帝国首都星系攻略作戦当日。王国軍全体へ向けての演説と号令を終え、本格的に作戦が開始される。

 作戦の第1段階は……まあ、あまりやることはないが、作戦成功のためには重要なことだ。


「亜空間ワープ終了。全艦重度の警戒態勢」

「方位0.24,-1.34方向に敵艦隊が存在。距離は平均で80万km、数は約800万」

「方位375.20,219.75、距離150万kmに敵艦隊、数およそ500万」

「方位-853.64,12.47方向にも敵艦隊確認。平均距離120万km、数は1000万以上」

「他に5群以上が敵艦隊の射程圏内に存在。艦隊陣形が変化……戦闘態勢に入った模様」

「慌てるな。すぐに消える連中だ。重力子砲(主砲)および重粒子砲(副砲)は牽制射開始、沈めなくても良いが……必ず当てろ」

「了解。砲撃準備」


 まあ、これはあくまでも牽制、戦略掃討砲射線上への誘導でしかない。

 しかしここは戦場であり、油断をしなくても死ぬ場所だ。気を抜くことも手加減することもしない。


「ターゲット分配完了、砲撃開始」

「砲撃開始確認。重力子砲(主砲)は前方の艦隊中心、重粒子砲(副砲)は周囲の艦隊に満遍なく」

「他戦略艦隊も戦闘開始。敵艦隊の動きはシミュレーション通り」

「潜宙艦隊、行動開始。潜入済艦は魚雷装填、射程に収め次第攻撃開始。亜空間ワープ同行艦は潜行開始、同時並行で魚雷装填」

重力子砲(主砲)重粒子砲(副砲)、順調に飛翔中」

「敵艦の発砲を確認」

「予定地点で連邦軍のワープアウトを確認。艦数は事前申告と同じ」

「帝国軍主力艦隊、全艦行動を開始。出現数は事前予想と変わらず」

「戦闘開始は推定で6000秒後」

「予想より早いな。まあ、誤差程度だが。全艦、戦術兵器も使え。ただし、目標は戦略掃討砲で落とせない敵だ。他には撃つな」

「了解。空間振動砲および空間振動弾頭用意」

「戦艦および要塞艦、エネルギー送信開始。砲塔指向開始」

「空間振動砲照射準備完了。目標、戦略掃討砲ヴァルツディレスト範囲外の敵艦隊」

「空間振動弾頭搭載対艦魚雷用意良し。目標設定完了、いつでも発射可能です」

「……発射」

「了解。全空間振動砲、照射開始」

「対艦魚雷全弾発射。次弾装填」


 やるからには、本気で殲滅する。特にヴァルツディレストの範囲外にいる敵艦は戦術兵器で叩く。

 陽電子砲(両用砲)重粒子砲(副砲)も90%以上が着弾し、空間振動砲で多数の敵艦が消し飛んでいった。


「戦略掃討砲ヴァルツディレスト、敵艦隊へ接触まで30秒」

重力子砲(主砲)第1波着弾まで、5、4、3、2、1、着弾。命中率93.4%」

「潜宙艦隊の第1次波状攻撃魚雷着弾。命中率86.2%」

「空間振動砲、第5照射着弾。敵艦隊へのダメージ甚大」

「敵艦隊推定損耗率4.1%」

「敵艦隊からの砲撃が複数着弾。しかし命中率は推定20%以下。艦隊損耗率0.1%以下」

「敵艦隊の機動兵器は敵艦隊より平均3000kmの位置、一部を除き戦略掃討砲ヴァルツディレストの射線上」

「戦略掃討砲ヴァルツディレスト、左舷側の敵艦隊に接触」

「敵艦隊、消滅していきます」


 そして、本命が敵艦隊を飲み込む時間がやってきた。

 戦略掃討砲ヴァルツディレスト。それは口径と同じ直径50km分の空間は消滅(・・)させ、それが元に戻ろうとする反動で周囲の物質ごと空間を引きちぎり、素粒子のレベルに分解される。

 今回の拡散率は20万倍(最大値)。つまり……直径1000万kmの範囲が原子すら残らない無の空間と化す。

 そして、その範囲は消滅波動が進むと同時に広がり続けている。今のように。


「左舷側敵艦隊、完全消滅。他の敵艦隊の行動に変化あり」

「右往左往、といった感じか。AIとはいえ、たわいない。以後の砲撃はヴァルツディレスト射線外の敵に集中、ヴァルツディレストの通過後、予定のポイントへ亜空間ワープを行う」

「了解。砲撃目標再設定、対象数5万8437隻」

「亜空間ワープ準備開始。座標確定、エネルギー充填」

「空間振動弾頭搭載対艦魚雷、順調に飛行中。着弾まで300秒」


 昨日掃射したヴァルツディレストの数は26本、可能な限り多くの敵艦を飲み込むように調整されている。

 まあ、敵がいる範囲は広い。だが同時に、敵艦がいる位置は限られるため、90%の殲滅も可能な数字でしかない。


「戦略掃討砲ヴァルツディレスト、当艦射程圏内を通過確認。亜空間ワープ実行」

「戦略掃討砲ヴァルツディレスト射線圏外の敵艦は全て撃沈完了。残敵ゼロ」

「全艦亜空間ワープ開始」

「各戦略艦隊、周囲の残存艦を全て殲滅し亜空間ワープを実行。到着時刻は本艦からプラスマイナス10秒」

「海軍各統合艦隊も亜空間ワープを実行。作戦位置は変わらず」

「亜空間ワープ終了。現在位置は首都星まで300万km。前方250万kmの位置に敵艦隊発見、数はおよそ70億」

「他の戦略艦隊も全艦集結。戦闘準備良し」

「衛星要塞は全て壊滅、もしくは消滅を確認」

「戦略艦隊は攻撃を開始しろ。第7統合艦隊はまず敵の潜宙艦を捜索、それに影響が出ない程度での砲撃は認める。」

「了解。戦略艦隊全艦、砲撃開始」

「第7統合艦隊へ通達」

「航空部隊全機発艦始め、亜空間ワープ用意」


 首都星に3つあった衛星は2つが完全に消滅し、残る1つも9割以上が消し飛んでいる。残った敵艦隊は予想通り2ヶ所だけだ。

 その片方には俺達が既に相対している。そして、もう片方も問題は無さそうだ。


「第2、第5、第9、第14統合艦隊、小惑星帯各所にて敵艦隊総数20億隻と交戦開始。始まったばかりですが、戦況は優勢です」

重粒子砲(副砲)および陽電子砲(両用砲)が砲撃を開始。第1波の推定命中率89%」

重力子砲(主砲)の照準は機動要塞へセット、砲撃開始」

「連邦軍艦隊および帝国軍主力艦隊、戦闘を開始。戦況は互角、戦闘時間は現実時間で推定10時間以上」

「敵艦隊が砲撃を開始」

「敵艦隊、陣形変更開始。首都星を覆うように展開する模様」

「アルドバルン要塞およびその他の地上要塞に動き無し……いえ、砲撃が開始されました。機動要塞を超える大口径砲も確認」

「大口径砲の推定射線を表示、軽巡洋艦(シェルラン級)以下は必ず回避行動を取れ。戦術兵器の使用自由は継続している。航空部隊の40%は重粒子砲(副砲)第1波着弾と同時に亜空間ワープ、敵艦隊の後方を襲撃しろ」

「了解です。推定される射線を表示します」

「空間振動砲、照準確定。照射開始」

「空間振動弾頭搭載巡航魚雷、潜宙艦隊より75%斉射三連。第1目標、敵機動要塞」

「航空部隊へ作戦通達、第1次航空攻撃部隊抽出開始。亜空間ワープ地点は全て当艦で監理」


 首都星を背にした敵艦隊との戦闘。流れ弾は気になるが……まあ、多少の流れ弾で要塞がどうにかなることは無いだろう。

 この後破壊するのだから、容赦してやる必要は無い。時間をかける必要も、な。


陽電子砲(両用砲)第1波、着弾まで5、4、3、2、1、着弾。命中率90.7%」

「敵艦隊の行動に変化無し……いえ、行動変化。外周部の敵艦隊が後退を止めこちらへ接近、包囲目的の模様」

「気にするな。このままなら包囲される前に殲滅できる。だが、ワープには注意しろ」

「了解、監視を続行」

「第2波以降も着弾。平均命中率93.4%」

「敵砲撃着弾。推定命中率13.4%、被害無し」

重粒子砲(副砲)第1波着弾。命中率90.1%」

「第1次航空攻撃部隊、亜空間ワープ開始。目標、敵艦隊後方」


 この数が相手であれば勝利は容易だ。負ける算段を立てることも可能だが、立てる気は無い。

 そのため、気にするべきはワープによる敵の増援。および潜宙艦だ。


「第1次航空攻撃部隊、亜空間ワープ終了。攻撃開始」

「第1から第16群、最優先目標は敵機動要塞。第17から第38群、最優先目標は敵空母。第39から第60群、対艦攻撃部隊の護衛を優先」

「潜宙艦隊、配置に着きました」

「第42から第46群は敵機動兵器を優先して排除しろ。その方が効率的だ。それと、フリゲート(ファルゲン級)から軽巡洋艦(シェルラン級)および高速戦艦(アルドレア級)戦艦(ギロスィア級)の一部も亜空間ワープで強襲させる。用意しろ。座標とタイミングの指示は後だ。潜宙艦隊は攻撃開始、上手くやれ」

「了解。航空部隊へ通達」

「水雷攻撃艦隊、砲戦艦隊、抽出開始」

「潜宙艦隊へ通達、攻撃開始」

「第7統合艦隊より通信。敵の大規模潜宙艦隊を発見、数1000万以上。単独でも処理可能だが確実ではなく、また位置の問題で対処は保留中とのこと」

「俺達が片付けた方が早いな。全艦対艦魚雷10%斉射、全て沈めろ」


 いることは予想通りだが……群れの規模が少し大きいな。まあ、殲滅は容易だが。

 しかし、生き残りの潜宙艦はこれだけか?まだ分からないが……いや、見逃す方がマズイ。見つかった方が良いな。


「対艦魚雷、敵潜宙艦隊へ命中。被迎撃率9.4%」

「発見した敵潜宙艦隊の殲滅完了。第7統合艦隊は引き続き対潜警戒を継続」

「艦隊損耗率0.2%、航空部隊は0.6%」

「敵推定損耗率1.8%、機動要塞は2.3%。艦隊陣形に変化無し」

重力子砲(主砲)第1波、着弾まで5、4、3、2、1、着弾。命中率89.4%」

「同時に第1次航空攻撃部隊第8波対艦攻撃着弾。被迎撃率8.2%」

「第1次航空攻撃部隊、損耗率1.2%」

「敵機動要塞推定損耗率、3.4%に上昇」

「第1次水雷攻撃部隊、第1次砲戦部隊、抽出完了。亜空間ワープ用意良し」

「両部隊の出番はまだだ。重力子砲(主砲)重粒子砲(副砲)は機動要塞へ砲撃を集中、航空攻撃部隊も機動要塞への攻撃機数を15%増やせ。先に火力を減らす」

重力子砲(主砲)および重粒子砲(副砲)、敵機動要塞への照準を30%増」

「攻撃機数調整完了、第1次航空攻撃部隊へ通達」

「艦隊損耗率、0.3%に上昇」

「敵艦隊推定損耗率、3%を突破」


 潜宙艦への心配に関わらず、正面の敵艦隊は順調に削れている。

 とはいえ……もう少し火力を集中させるか。


「第2戦略艦隊、第5戦略艦隊は方位2.45,-3.41へ第4戦速で120秒移動。第6戦略艦隊は方位-5.32,0.47へ第3戦速で90秒だ。リーリア」

『あの一団ね。分かってるわ』

「頼む。戦況は?」

「敵艦隊推定損耗率、10.2%。機動要塞は12.4%」

「艦隊損耗率1.1%、航空部隊は2.9%」

「頃合いだな。水雷攻撃部隊および砲戦部隊を投入する。場所は敵艦隊の左右から後方にかけて、上下からも包むようにだ。少し後に第1次航空攻撃部隊は撤退、同時に第2次航空攻撃部隊を出す。30%だ、抽出しておけ」

「了解。第1次航空攻撃部隊へ、最終波状攻撃を開始せよ」

「第1次水雷攻撃部隊、第1次砲戦部隊、亜空間ワープ準備。目標座標設定完了、全艦へ送信」

「空間振動弾頭搭載型巡航魚雷、通常空間へ移動。着弾まで1000秒」

「第2次航空攻撃部隊抽出開始。抽出完了までまもなく」

「砲撃命中率、現在平均96.4%」

「敵艦隊、中央付近へ艦を集中。また、いくつかの艦が後方へ回頭、第1次砲戦部隊への対抗の模様」

「第2次航空攻撃部隊抽出完了、座標確定」

「よし、入れ替えろ。側面から、回頭した艦を狙え」

「了解。亜空間ワープ開始」


 戦艦に気を取られた敵艦を機動兵器が叩く。機動兵器にばかり注目する敵を駆逐艦や巡洋艦のミサイルが吹き飛ばす。王国軍同士の訓練ではそんなに簡単にはいかないが、帝国軍相手なら簡単だ。皇族軍であろうと、AIの単調さは変わらないらしい。

 まあ正面火力が最も高い以上、回頭も正解の1つではあるが……その隙を狙えるのが王国軍(俺達)だからな。


「艦隊損耗率1.9%、航空部隊は3.6%。第1次水雷攻撃部隊、第1次砲戦部隊の損耗率は1.0%を突破。第2次航空攻撃部隊、損耗率1.6%」

「砲撃命中率、現在平均96.8%。敵艦隊の推定命中率は47.3%、地上要塞からは10.2%」

「敵潜宙艦は発見総数約400万隻。最初の200万隻以外は第7統合艦隊が処理」

「通常空間を航行中の空間振動弾頭搭載巡航魚雷、着弾まで300秒」

「第2次航空攻撃部隊および第1次水雷攻撃部隊の第6次波状攻撃、着弾。被迎撃率10.1%」

「第1次砲戦部隊、敵機動要塞との砲撃戦を継続。既に敵機動要塞の1.2%を沈めています。他には戦艦と空母を中心に3.4%」

「敵艦隊が巡航魚雷を知覚した模様。艦隊陣形変化を開始、迎撃開始されました。着弾まで250秒」

「敵機動兵器も迎撃に参加。命中率は低いものの、被迎撃率向上」

「敵の迎撃は可能な限り阻害しろ。優先目標を機動兵器、および駆逐艦と巡洋艦に変更、徹底的にやれ」

「了解。第2次航空攻撃部隊、第1次水雷攻撃部隊、第1次砲戦部隊に通達」

「全派遣部隊、約半数ずつが即応。残りも30秒位内に行動可能」

「巡航魚雷被迎撃率5.3%、着弾まで200秒」


 空間振動弾頭搭載の巡航魚雷は本命だが、同時に囮の意味も込めて通常空間へ出した。しかしステルス装置を有効に活用し、かなりの至近距離まで発見されなかった。

 ここまで近づけば流石に気づかれるが、遅すぎる。


「空間振動弾頭搭載巡航ミサイル、着弾まで5、4、3、2、1、着弾。命中率76.2%」

「敵艦隊の約25%が消滅。推定損耗率54.8%」

「第2次航空攻撃部隊、第1次水雷攻撃部隊、第1次砲戦部隊、一斉攻撃を開始。」

「攻撃はこの4ヶ所に集中させろ。水雷攻撃部隊と砲戦部隊の第2陣は?」

「準備出来ています」

「今すぐ行かせろ。場所は敵艦隊の両側、このエリアだ」

「了解。第2次水雷攻撃部隊、第2次砲戦部隊、亜空間ワープ開始」

「第1次水雷攻撃部隊と第1次砲戦部隊はどうされますか?」

「攻撃はあと1000秒継続させろ。その後、撤退を許可する。第3次航空攻撃部隊も抽出は終わっていたな?同時に交代させろ」

「了解」


 ここまでくれば、残りは作業のようなものだ。半減した艦隊を立ち直すには指揮官の能力を始めとして様々なものが必要になる。しかし、目の前の艦隊にその力は無いらしい。

 可能性があるとすれば敵の潜宙艦隊だが、連中は第7統合艦隊により狩り尽くされた。戦略艦隊の潜宙艦隊は暇すぎて、対艦攻撃に精を出してしまっているほどだ。

 とはいえ、それが悪いこととは言わない。連邦軍がいる以上、悠長に戦っている暇は無いからな。

 そのまま火力で押し潰していった。


「敵艦隊推定損耗率、80%を突破」

「艦隊損耗率8.4%、航空部隊は14.2%」

「第5統合艦隊より報告。小惑星帯に潜んでいた敵艦は全て殲滅、第7統合艦隊に合流するとのこと。なお、第2、第5、第9、第14統合艦隊の損耗率は2.9%」

「敵艦隊に反応性が低下した艦は無し。推定通り、地上要塞が旗艦機能を所持している模様」

「空間振動弾頭搭載巡航魚雷、着弾まで5、4、3、2、1、着弾。被迎撃率87.3%」

「敵艦隊の推定損耗率が95%を超えました」

「一気に畳み掛ける。敵艦隊の周囲10万kmへ亜空間ワープ、そのまま消し飛ばす。その後、アルドバルン要塞へ砲撃開始だ」

「了解。亜空間ワープ用意」

「座標計算開始。海軍にも作戦通達」

「準備完了、亜空間ワープ開始」


 艦隊はこれで終わりだ。連邦軍が来る様子も無い。

 このまま目標を達成できそうだな。地上に作られた要塞ごとき、簡単に破壊できるだろう。











 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー











 と考えた自分を殴りたい。


「硬すぎる……」


 8ヶ戦略艦隊、5ヶ統合艦隊、合計約6億隻の全力砲撃を続けたが、アルドバルン要塞のシールドは未だに破れていなかった。

 現実時間で6時間もの砲撃だ。いくら大気圏で減衰が起きるとはいえ、ここまで硬いのはおかしすぎる。砲撃だけでなく、航空部隊による波状攻撃も100回を超えているが……

 どんなジェネレーターを使っているんだか。


「砲撃命中率99.9%。航空部隊波状攻撃、第2438波が着弾……敵要塞シールドに変化無し」

「敵対宙砲撃命中率は67.5%。しかし95%以上が要塞艦に向けられているため損害は軽微」


 現在の高度は1万km、他の艦も概ね5万km以下の位置に存在する。

 目標エリアが狭いため密集するしかなく、ミサイルを使うことも考えると高度も抑えめにするしかなかった。

 いや、安全性を考えればもっと広がった方が良いことは分かっている。しかし、状況がそれを許さない。


「連邦軍艦隊および帝国軍主力艦隊の戦闘、中盤へ突入した模様。現在、帝国軍主力艦隊の数は65%に減少。連邦軍艦隊は80%」

「まだ時間はあるが……急がないとマズイな」

『そうね、連邦軍が来る前に片付ける目標は変わってないわ。でも、ここまで時間がかかることは予想外だったわね』

「そうだな。とはいえ、政府中枢が逃げる場所という意味では納得か。ポーラ、敵要塞のシールドについて何か分かるか?」

「仕組みは既存のものと変わらないようです。出力が大きく違うことを除けば、ですが」

「となると、突破口は無しか。だが、減っているかどうかすら分からないとなると……」


 連邦軍が来るにはまだまだ時間がかかるだろう。しかし……それまでに終わらない可能性も出てきた。

 いつかは終わるだろう。だがそれは早くなければ困る。


「シールドエネルギーの供給がかなり早い可能性もありますね。大威力の攻撃をしますか?」

「そうするしかないな。中身の全滅を覚悟して、重力子弾頭の一斉射をするか」

『それしかないわね。空間振動弾頭は干渉のせいで多重炸裂に向かないし、反物質弾頭だと威力が足りないし。数が足りるかは心配だけど、機動兵器も全部使えばそれなりの数になるわ』

「かなり、の間違いだろ。流石にそれで壊せなかったらヴァルツディレスト以外に……いや、あることにはあるか。まあ、それは最終手段だな。ミサイルの着弾のタイミングを合わせるのは……ポーラ、できるか?」

「はい、大丈夫です」

「……敵、いないし……全部、使う?」

「ああ、100%斉射だ。ただし、警戒は怠るな」

「了解」


 そのための連続砲撃と同時着弾だ。とはいえ……油断があった、と言われれば否定はできない。

 しかし、あんなものがあるとは予想外もいいところだ。


「敵要塞に動き?……っ⁉︎巨大な砲が出現!」

「砲口直径100km?何これ……」

「砲内部に高エネルギー集束……発射間もなく!」

「回避を!」

「回避行動を取りつつシールドは緊急出力。他の艦は何が何でも全力で回避しろ。当たったら死ぬぞ」

「は、はい!」

「……了解」


 アレは危険すぎると、見ただけで分かった。

 だが、避けるのは間に合わない。着弾点をズラすことしかできず……巨大な閃光がアーマーディレスを貫いた。












・戦略掃討砲ヴァルツディレスト

 バーディスランド王国軍の戦略兵器(奥の手)。アーマーディレスト級に1門ずつ搭載されている。

 消滅波動によって砲口と同じ直径の空間を消し去り、空間の復元力により周囲の物体は素粒子レベルまで引き延ばされる作用を利用して、広範囲の敵を全て消し去る。掃射途中に艦の向きを変えれば、その方向へ掃射軸を変えられる。

 射程距離は100光日から2000光日、拡散率は5000倍から20万倍。射程距離が長いほど拡散率は低く、拡散率が高いほど射程距離は短くなる。

 また、トリガーを引いた者は全員が、世界を壊す感覚を直に味わう。発見は500年前、原因は未だ不明。それの不快度はとても酷く、生体義鎧でも並の者では耐えられない(と、ガイルは言っている)。



・アルドバルン要塞

 帝国首都星地表にある、帝国最強の要塞。オーストラリアよりふた回りほど大きな大陸を丸ごと要塞化したもの。帝国政府要人達の避難場所になっており、圧倒的な出力のシールド発生装置を複数持っている。その出力は非常に高く、王国軍の6時間に及ぶ猛爆撃にも耐えた。

 また、艦艇には載せられないようなサイズの対宙砲がいくつもある。アーマーディレストにすらダメージを与えられる、地下埋め込み式の超大型対宙砲が存在する。

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