第8話
新王国歴7267年4月17日
「もちろんです」
「軍人になりたいんだから、逃げません」
「だ、大丈夫です」
「任せてください」
多少気後れしたように見えるが、ジン達はそう答えた。
杞憂だったらしい。これで俺も安心して話せる。
「ならよし。行くぞ」
そして俺は歩みを再開する。4人もちゃんとついてきた。
「まずは3002年前、アルストバーン星系にいたバーディスランド王国軍の艦隊に対し、初の外宇宙知的生命体からのコンタクトがあった」
「それが始まりですか」
「そういうことだ。彼らは自らを帝国軍と言い、王国との交友を望んでいた。当時の政府もこれを受け入れ、大々的に報じた」
この時はよく覚えている。リーリアやレイと一緒に、期待したものだ。
「週末になるたびに特番が組まれて、お祭り騒ぎだった」
「それだけ期待していたんですね」
「最初は友好的な接触だったからな。だがその1年後、3001年前……」
そこで俺はシュミルから機器を操作し、いくつものホログラフを映させる。全て破壊されていく王都の映像だ。
3000年前とはいえ、今の者にもこれは辛いだろう。
「帝国の本当の目的は侵略、歓迎のためにアルストバーン星系で迎えた王国艦隊半数を殲滅し、このシュルトバーン星系へ大艦隊がなだれ込んだ」
「王国艦隊は止められなかったんですか?」
「当時も兵器の性能は王国軍の方が上だったが、数が違いすぎる。10倍以上の数に攻め寄られて生き残れるほど、当時は性能差が無かった。一応、時間稼ぎはできたけどな」
「でも、それだけ……」
「それと……」
資料映像を追加で呼び出す。
それは帝国軍の艦艇だが、サイズは10kmを余裕で超えている。六角柱のバケモノだ。
「この機動要塞が問題だった。こんな巨大な艦、この時以前の俺達の歴史には無かったからな」
「どれくらいの強さですか?」
「当時の王国艦隊なら、これ500隻だけでお釣りが来ただろう。初戦でも何隻か沈めれたみたいだが、何千もいたからほとんど意味が無かった」
それくらいの強さを持っている。戦略艦隊でも、数を揃えられると沈めるのは面倒だ。
戦闘艦だけも勝てなくはないが、犠牲もかなり出るだろう。
「そして結果は知っての通り、シュルトバーン星系は帝国に占領された。完全に抵抗を諦めたわけじゃなかったけどな」
「逃げて、戦い続けたんですよね」
「この時、閣下はどうされてたんですか?」
「あの時の俺はまだ14歳、お前達より歳下だぞ。当然、軍人でもなかった。ただ逃げて、父さんの艦に乗せてもらっただけだ」
「……すみません」
別に謝らなくてもいいんだが。
帝国を怨んだり、無力だった自分を怨んだりはしても、当時を知らない若者を怨むつもりはない。
「気にしなくていい。もう過ぎたことだ」
「だけど……」
「話がそれたな。続けるぞ」
こんな所で止まっていたら、いつまで経っても進まない。事実は受け入れ、乗り越えるものだ。
そして、俺達は秘匿要塞内での暮らしに関する場所にやってきた。
「知っての通り、何とか帝国から逃げ出した俺達は、シュルトバーン星系内各所に整備されていた秘匿要塞へ逃げ込んだ。逃げ込めたのは総計で約10億人、当時の総人口のたった1%だ」
約5割が死に、約5割が捕まったとされる中での1%。それには入れたこと自体が幸運だった。
ただ、この後も予断を許さない状況は続くわけだが。それはここの資料にも記載されている。
「秘匿要塞は万が一の時のために王国が秘密裏に整備していたもので、1つの中に数百万から数億人の人間が住むことができる。当時の最高レベルのステルス装置を使っていたし、周囲にはジャミングを放つデコイが無数にあったから帝国軍にはバレづらい。秘匿要塞単体で完結しているから、自給自足でも暮らしていけるが……物資の不足はどうしようも無かった」
なお、秘匿要塞というのは俗称で、正式名称は別にあるんだが……まあ、どうでもいいか。長いし、重要なところはそれじゃない。
ちなみに、今は秘匿なんてされていなくて、純粋な軍事要塞となっている。
「そんなにですか?」
「第3惑星で暮らしていた時とは天地の差だ。戦時配給制だから貰える物資は少なかったし、娯楽なんてほとんどない。友人知人どころか家族が生きているのかどうかすら分からない惨状で、俺達を支えていたのは帝国への怨みと復讐心、ただそれだけだった」
「そんなのって……」
「まあ、苦しい生活を変えるのも技術だったな。2999年前に元素操作装置、別名アルバスシステムが開発されて、軍事的にも民事的にもだいぶ楽になった。それに2997年前にワームホール通信技術ができたから、秘匿要塞間での安全な通信ができるようになって、家族の無事を知ることができた奴らもいた。そして2937年前に空間からエネルギーを取り出せるようになり、エネルギー不足、ひいては物資不足からほぼ完全に解放された」
最初の2年間は本当に辛かった。
生産設備はあることはあったが第3惑星の比じゃないし、そもそも仕入れる場所がない。ほとんどが簡易型の培養食品だった……
っと、俺が話を止めてどうする。いくらその時のサンプルがあるとはいえ。
「ちなみに、俺がいた場所……というか、第1戦略艦隊と第4戦略艦隊が作られた秘匿要塞は知ってるか?」
「第6惑星の第11衛星ですよね」
「暫定王都として国王陛下がいらっしゃったっていう」
「そうだ。王族の方々がいらっしゃった秘匿要塞は他にもあったが、あそこには3001年前の王太子殿下がお越しくださった。だから暫定王都として中心になり、生体義鎧や資源に余裕があったからこそ、戦略艦隊が2つ作られた」
「あの、当時の国王陛下は……」
「……王城も攻撃を受けたからな。お助けすることはできなかったらしい」
「そんな……」
俺も軍に入って数日後、父さんから聞かされてようやく知った事実だ。
今でこそ公表されているが、あの時は機密だった。解除されたのは……2900年前だったか。
「そういえば、閣下は何で何年前って言うんですか?」
「ん?俺の歳の方が良かったか?」
「いえ、そうじゃなくて、新王国歴で言わないのは何故かな、と」
「じゃあ逆に聞くが、去年のことを新王国歴7266年なんてわざわざ言うか?官僚じゃあるまいし」
「あ」
「そういうことだ」
自分が生きた時代のことをわざわざ年号付きで言ったりはしないだろ?
そして、次の場所へやってきた。かなり派手に展示されているが……こんなに飾り付けることじゃないぞ。
「だが生活が良くなっても、帝国を打ち破って王国を復興することなんてできない。そこで王国は打開のための1つの手段を開発した」
「それが……」
「そう、2995年前に施術が開始された、俺達生体義鎧だ」
15歳の頃から軍事教練を受け始め、18歳で軍に入った俺がこの施術を受けたのは20歳の時、それから姿は一切変わっていない。
それに、代償はこれ1つじゃない。
「生体義鎧はタンパク質ベースのナノマシンを筆頭に、生物学的な改造を無数に施して生まれた究極の生物兵器だ。寿命の消失、身体能力や反応速度および極限環境生存能力の向上、並列思考能力の強化、負傷による死亡率の低下といった破格の性能を得た」
「そんな風に言わなくても……英雄じゃないですか」
「施術を受けたのはただ帝国に怨みを晴らすためだけだ。同じ人間だなんて、口が裂けても言えない」
怨んでないと生き残れなかった。
なお、これは物理的な戦いの意味だけじゃない。施術が辛すぎるからだ。
「それに、喜ぶことだけじゃない。第1世代の生体義鎧は施術中に8割が死に、さらに1割は施術直後に精神が壊れた。その後も戦いの中で次々に死んでいき、今生き残っているのは100人もいない。施術を受けた人数は100万人を超えてたんだが」
「そんなに……?」
「聞いたことある」
「でも、何でなんですか?」
「まずは肉体が死ぬ理由だが、これは施術の難易度がとても高いせいだ。検査で適正のある人間だけを集めたとはいえ、第1世代はまだ試験段階、想定外のことは多かったらしい」
「そんな滅茶苦茶な技術を……」
「それでも使う必要があったからな。それともう1つ、精神が壊れた理由も第1世代特有だ。俺達だけは施術中に全身の神経を高周波ナイフで削られるような、高出力レーザーで燃やされるような痛み、というか……まあ、そんな感覚に襲われる。そして気絶もできない。これが原因の発狂死も相当多いだろう」
「酷い……」
「まあこの2つは、第2世代からは解消できたから気にしなくていい」
「そんなの、死んだ人達は……」
「あの痛みを、怨みを知らない世代に押し付けなくて済んだからな。だが、残りの1つが問題だ」
これだけは全ての世代に共通している。
今はもう大丈夫だろうが……気を抜けるものではない。
「体はいじれても、精神を変えることは無理だった。本来なら想定されてないような長い年月を生きることなんて、俺達の心が簡単に耐えられることじゃない。色々と手を尽くしても、300年は様子を見ないといけなかった」
「寿命の倍……」
「今の平均寿命、だけどな。帝国との戦争が終わってから壊れた奴らも含めると……最後の第38世代だって約1%は精神を壊してる。あんな状況じゃないと、容認される技術なんかじゃなかった」
第36〜38世代には解放後に壊れる者もいたが、施術数自体が少なくなっていたため、発狂者はそこまで多くはない。それでも、仲間が壊れるのは辛いが……
っと、こんな話ばっかりだと気が滅入るよな。話を変えないと。
「ちなみに具体的な性能だが、そうだな……第1次世界大戦当時なら、1人で1国の軍隊を1日で殲滅できるって所か」
「えっ⁉」
「殲滅するだけなら第3次世界大戦でも可能だ。電磁式実弾投射砲なんかが出てくると面倒だが」
「せ、戦車は……」
「シールドの無い戦車程度、素手で簡単に破壊できる。戦車砲が直撃したら、流石に吹き飛ばされるけどな」
その場合でも、傷を負うことはない。本当の意味での化け物だ。
まあ、受け入れてもらっているが。
「それと、生体義鎧のおかげで、様々な世代の天才達が今なお生き続けているとも言えるか。3000代から500代まで幅広いからな」
「確かにそうとも言えますね」
「100歳で定年の俺達にはよく分からない感覚ですけど」
「まあ、それは仕方ない」
俺とリーリアが3015歳、ポーラは2913歳、リーナが1844歳でシェーンは1845歳、レイは637歳。俺達5人だけでもこんなにバラバラだ。戦略艦隊の司令長官や総司令官も、3000超えが3人いるかと思えば、1000年も生きてないような奴も3人いる。
ああ、第11は論外な。
「さて、次の場所に行くぞ」
「あ、はい」
生体義鎧だけで1日分話すのは大変だし、仕方ない。
ただ、ここから先は場所ごとに年代がバラバラだったりするから、混乱させないようにしないと……
「技術で言えば、2398年前に転送装置が開発されたな。これのおかげで秘匿要塞間での直接の交流が今まで以上にできるようになったし、攻撃を受けた時の避難もできるようになった」
まあ今もそうだが、当時も惑星間転送なんて真似はできない。だが、近くに行くだけで物資や人員を送れるようになったのはありがたかった。
入港する時が1番危ないからな。
「攻撃されたことがあるんですか?」
「ああ。衛星や準惑星タイプはそのまま軍事拠点にしてたが、小惑星タイプは放棄して自爆させたりもしたぞ」
帝国艦隊を巻き込んで自爆したから、かなり爽快だった。住んでいたやつらは大変だっただろうが、受け入れ先で大きなトラブルがあったとは聞いたことがない。大丈夫だったんだろう。
そうだ、これも言っておかないと。
「ちなみに気付いてるかは分からないが、秘匿要塞の中で開発された技術のうち、数種類を除くと、全て既存の技術の発展でしかない。知ってたか?」
「え?……あ、そっか」
ワームホール通信は亜空間ワープの流用、空間量子波のレーダーはワームホール通信の前に使っていた空間波通信や空間機動装置を進化発展させたものだ。
元素操作装置は斥力操作機構を使っているし、生体義鎧はナノマシン治療の流用だ。
他にも色々あるが、完全に新しいものはそう多くない。
「その理由の1つは、基礎理論が疎かになりかけていたってことがある。無視されたわけじゃないが、優先度はどうしても低かった」
「それだと……」
「基礎理論がなければ、新基軸の兵器を作るのは不可能だ。戦闘能力の向上が最重視されていたとはいえ、俺達は損をしていた」
そのせいで2500年もかかったのかも……いや、これはもう考えても仕方ないか。
「軍事の話に戻るぞ。秘匿要塞に隠れた後、俺達は幾度となく帝国軍へ攻撃をしかけた。生体義鎧も、そうじゃない連中もだ」
「何故ですか?」
「何故って、助けるために決まってるじゃないか」
この理由で納得したようだが、詳しくはないみたいだな。解説するか。
「奴隷のように酷使されている仲間を見捨てろって方が無理な話だ。地上の方はまだ不可能だったが、コロニーや輸送船に乗せられてる時なら、まだなんとかなる」
あの頃は亜空間ワープを駆使し、ゲリラ戦を行いながら助けていった。輸送船など、中枢を完全に破壊して乗っ取ってやったことは何百何千何万とある。
帝国軍も偵察機を増やしていたが、こちらもステルス装置を強化していたため、逃げ隠れるだけなら割と簡単だった。
ただ直接の戦闘となると、どうしても毎回毎回少なく無い被害が出た。
「ああそれと、機動兵器の変形機構もあったな」
「あ、忘れてた」
変形機構を搭載した最初の機動兵器、プルートの横を通りつつ、思い出したことを口に出す。
それでエリ、医者志望でも言葉が口から不意に出ることはない方が良いぞ。
「変形機構がついたのはこいつから……だいたい、2500年前か。それまでの飛行型機動兵器は飛行機の発展系でしか無かったんだが、変形機構の搭載でさらに別の使い方ができるようになった」
「どうして変形機構が搭載されたんですか?」
「対応力が高くなるだとか色々言われてたが、帝国軍の機動兵器が人型だったっていうのが主な理由だ。空間機動を使うから、形は意味がなくなっていたしな。プルートから大きく離れるようなことは無かったが」
「確かに……今の機動兵器に似てますね」
「簡単でしたか?」
「いや、慣れるまでは大変だった。今までの機動兵器と使い方がかなり変わったからな」
プルートはまだまだ発展途上だったのでクセが強く、従来のタイプの機動兵器に慣れていた俺達には厳しいものだった。最初は遠隔操作じゃないと危なっかしくて使えなかったからな。
というか、習熟は新人の方が早かった。
「他にもある。生体義鎧が開発されてすぐに実用化されたのが、脳波制御による艦および機動兵器の同時制御だ」
生体義鎧で並列思考能力が高められたのは、このためだ。
当時からあった脳波サポートシステムをさらに発展させたこれは、今では欠かせない物となっている。
「戦略艦隊の基本ですね」
「そうだ。ただ今と違って、当時は1人1隻が限界だった。そこから少しずつ増えて、戦闘艦1隻と機動兵器10機くらい操れるようになった時が初陣だったな。まあ、この時は才能が無いと同時制御はできなかったが」
「そうなんですか?」
「1隻なら生体義鎧は誰でもできる。ただ、同時制御には生来の空間認識能力とかが必要だった。今は性能が上がってるから、そう気にする必要は無いが」
脳波操作装置も、生体義鎧もだ。技術者連中は普遍化に相当苦労したらしい。
ちなみに、このシステムが完全に確立したのは2235年前だった。その時も100〜3000と差が大きかったけどな。
「今は……どうだったっけ?」
「今の生体義鎧の性能なら、最低でも2万はできる。艦隊は1万のままだけどな」
「元帥はどれだけできますか?」
「俺か?一応数だけなら3万はできるが……しばらくやってないから精度は悪いぞ」
「それじゃあ、なんで1万しか動かさないんですか?」
「限界ギリギリより、余裕を持たせた方が良い。戦略艦隊がやることも増えたからな」
あの時みたいにただ戦えばいいというわけではない。
まあ、ただ単に戦略艦隊を倍に増やすのが面倒なだけなんだが。生体義鎧の元帥は10人で十分だ。
なお俺は状況把握のため、戦闘艦や機動兵器のレーダー等の情報を万単位で知覚することもある。自分で操作してるわけじゃないから、10万近い数を把握できるな。
「もちろん、戦闘艦や機動兵器そのものの性能も上がった。軍事にかけるリソースが、類を見ないほど増えたのも関係している」
「そんなに?」
「本来の国土が敵に占領されていて、元素操作装置のおかげで物資にも余裕があったからな。技術開発も軍に関係する所に多くのエネルギーが回された」
軍事関連への投資は金銭という価値観が無くなった当時、今までに類を見ないほどに高くなっていた。金銭に変えれば、帝国侵攻前の国家予算の数倍というレベルだ。
それは戦闘艦や機動兵器の建造だけでなく軍事技術の研究も同様で、無数の試作品が作られ、淘汰され、発展していった。
「だがそれだけ技術が上がっても、1000年以内に奪還することはできなかった。帝国艦の性能も上がっていたし、何より数が多すぎたからだ」
そして当時の王国軍が総力を挙げて作成したシュルトバーン星系図を機器に表示させる。帝国軍の艦隊をほぼリアルタイムで記録していたこれは、王国解放とともに公開された。
正直に言って、引くほどの数が表示されている。
ジン達はここまで酷いとは思ってなかったのか、意味を理解した瞬間に顔が変わっている。
「最初の1000年間は、100隻程度の数で万単位の艦隊に奇襲をしかけることも少なくなかった。殲滅なんてできるわけがない」
「こんなのって……」
「滅茶苦茶、ね」
「だからこそ、俺達はさらなる技術の発展を求めた。特に、持ってなかった広範囲殲滅兵器……戦術兵器や戦略兵器を」
シールドを持つ艦隊相手だと、純粋なエネルギーだけで破壊し尽くすことは現実的ではない。距離の3乗に比例してエネルギーは減ってしまうため、反物質弾頭をただ巨大化するのは非現実的だ。
だから、事故を気にせず兵器試験をしてたんだよな……廃棄コロニーや小惑星をいくつ崩壊させたことか……何回帝国艦隊に追われたことか……っと、話を戻せ。
「帝国軍との戦いは基本的にこっちが奇襲していた。数の差はあったが、注意さえしていれば被害は……まあ、割と少なくて済んだ」
「少ないって……え?」
「どうしてですか?」
「応用力がほとんど無いからな。動きはワンパターンだし、急な反応は鈍いから、先を読みやすい。死ぬ奴は死ぬけどな」
「え?」
「もしかして知らないのか?帝国軍の艦はほとんどが無人艦だ。たった1隻の旗艦、わずか十数人で数万隻、数十万隻を指揮してる。これを知るのはだいぶ後だったが、機動要塞だと数百万や数千万らしい」
「そんなに……」
「まあそのおかげで、俺達もやりやすかったけどな」
稀に腕の良い指揮官もいたが、そういった奴は10年もすればいなくなる。
だが初めて会った時は被害も大きくなる。俺が唯一生死不明になったあの時もそうだった。
「それと、たまに1万近い王国艦隊を招集して、大規模な艦隊戦をすることもあった」
「どうしてですか?」
「多くの人が残るコロニーの攻略だったり、帝国軍が建築中の軍事拠点を破壊する時だ。それと、秘匿要塞周辺に帝国艦隊がうろついている時の陽動でもだな」
「でもそれだと……」
「被害も大きかったが、放置するよりは確実に良いだけの戦果は得られた。目標を達成できたなら、それでいい」
もちろん失敗したら目も当てられないから、二重三重の予防策は立ててあった。主力艦隊を退かせて予備艦隊で目標を達成させたのともあるし、軍事拠点を試作兵器で吹っ飛ばしたこともある。
今搭載してるものと比べたらかなり規模は小さいやつだが、威力は折り紙つきだ。
そんな風に話をしながら艦の模型や機動兵器の間を進んでいくと、あの帝国の試作兵器が見えてきた。
「それと、1214年前の潜宙艦強奪作戦は有名だな」
「閣下はどうされたんですか?元帥ですし、指揮官ですか?」
「いや、あの時はまだ中佐だったぞ」
「え、中佐?」
「生体義鎧は出世が途轍もなく遅かったからな。まあ、それは現場に出すためだし、艦隊指揮官にも普通になるし、実質的に2〜3つ上の階級で扱われていたが」
あの時は……リーリアは俺と同じく中佐、父さんは准将だった。
ポーラは大尉、メルナは旗頭みたいな形にもなっていたから少将で、シェーンはメルナの副官で少佐。レイはまだ生まれてすらいない。差が大きかった。
まあ、今はもう昇進することさえ無いしな。
「話を戻すが、あの戦いは激しく、生体義鎧だけで100万人が死んだ。負傷者も含めると、被害は甚大だ」
「そんなに……」
「必要だったんですか?試作兵器を強奪するくらいなら、他の人を助けた方が良かったんじゃ……」
「帝国軍に正体不明の兵器を配備されたら困るから、ですか?」
「正解だ。異次元に潜るって聞いただけで、即解明しなければならないと思った。潜宙艦で輸送されたら手も足も出ないし、潜宙艦に攻撃されたら一方的にやられるだけになるからな」
こんな正体不明の兵器を見逃すなんて選択肢は、首脳陣の中には一切無かった。理由はジン達に話した通りだ。それにしても、この情報をよくハッキングだけで取れたよな。
いくら油断している帝国軍相手とはいえ、最重要機密を盗むなんて簡単じゃなかっただろうに。
「この戦いは全体の9割以上を担う陽動部隊と、1%にも満たない突入部隊、そして突入部隊を送り届ける精鋭艦隊に分かれていた。陽動部隊は各所で帝国艦隊相手に戦闘を繰り広げて足止めし、その隙に突入部隊が第3惑星第2衛星に造られていた基地を強襲、運ばれた潜宙艦を強奪する作戦だ。俺はリーリアと一緒に突入部隊にいたし、その指揮官は父さんだった」
「メティスレイン元帥閣下とシュルトハイン上級元帥閣下ですか?」
「ああ。突入部隊には1000歳以上の生体義鎧も多く所属していた。もちろん、白兵戦闘能力を重視してだが」
俺とリーリアは父さんのサポートで、それぞれが部隊の指揮を取っていた。陸戦は得意ではないが、指揮ならある程度できる。それに、俺達より陸戦の指揮が上手い連中は全員強いからな。
そして歩いていると、この作戦で使われたパワードスーツの前までやってきた。やっぱりゴツい。
「昔も今と同じように、こういったパワードスーツを着て白兵戦をやっていた。多少、今より重装備だったりするけどな」
「生体義鎧でも?」
「当時も今と同じように、遠隔操作型のパワードスーツを率いて戦っていた。基地の中の帝国軍戦力は無人砲台やロボットで、動きは単調だが数が多い」
「なるほど……」
「それに、生体義鎧でも無人砲台クラスだと確実に負傷する。シールドは必要だ」
というかこれは、小型の機動兵器と言った方が良いかもしれない。戦闘艦などと同じタイプのジェネレーターを持ち、歩兵としてはかなり高出力の武装をいくつも同時に展開でき、シールドも張れる。
それともうこの頃には、歩兵装備でも思考加速装置が普通に使われていた。
「そして知っての通り、作戦は成功した。それで3隻あった潜宙艦全てを強奪した後、しばらくはほぼ全てのリソースが潜宙艦の研究に費やされた。おかげで、その翌年には王国製の潜宙艦が戦線に投入されて、相当戦果を上げたな」
帝国製は量産性が重視されていたために性能は低く、当時でもステルス装置を上手く使えば1隻ずつ葬ることもできた。生体義鎧なら経験豊富だし、難しいことじゃないからな。
「おかげで作戦もやりやすくなった。帝国の潜宙艦より性能も上だったからな」
「よかったですね」
「ああ」
これのおかげでかなり楽になった。
事前偵察が容易になったおかげで、死傷者の数もだいぶ減ったしな。
「その後は……技術に大きな変化はしばらくない。出力が上がったとかばっかりだ」
「簡単に技術はできないですから」
「そういうことだ。仕組みは色々と変わったみたいだが、俺は技術者じゃないから分からない。使うだけだ」
その時、右側に当時の戦闘艦の2000分の1模型が出てきた。懐かしい艦だ。
「ちなみに、これが潜宙艦強奪作戦のあたりで、生体義鎧が主に使っていたゼーリッヒ級航空戦艦……というかこれ、レピス001じゃないか」
「ご存知の艦ですか?」
「俺がその頃に乗っていた艦だ。同型艦9隻と合わせて機動兵器を約3000機乗せていた。こんな所に模型があったんだな……」
本物は全長2kmで側面が機動兵器用の発艦ハッチ、上下にそれぞれ3連装陽電子砲を4門ずつ乗せている。これ1隻で空母と戦艦1隻ずつに相当するとも言われた、当時最高クラスの艦だ。
他にも当時最大サイズを誇った3km級のバフェルト級戦艦、グルカート級巡洋艦やシャラフィス級駆逐艦を使っていたが……上に3万分の1艦隊模型があった。
編成まで見事に同じだな。真っ黒な艦隊だ。
「閣下も知らなかったんですか?」
「……このエリアは半年前に増築したらしい。その時か」
まあ、これもあるからここに来るのは止められないな。
「それにしても凄いです」
「何がだ?」
「今まで見てきたもの、全て解説できるほど詳しいんですから」
「流石にマイナーな試作兵器までは言えないが……まあ、今まで乗った艦は詳細まで覚えてるぞ」
「だから自分の船って気づけるんだ……」
「俺が命を預けたものだからな。覚えないと戦えない」
「ちなみに、どうやって見分けたんですか?」
「1つは色、それと、艦首のあたりに白い翼があるのが見えるか?」
「はい。何ですか、あれ?」
「あれは俺が帝国の旗艦を沈めた数だ。あのスコアだと……乗り換える直前だな」
確か、この艦には100年ほど乗ってたはずだ。
その間に大規模改修が5回あったが。
「さて、これで大まかな流れはほぼ終わりだ。それぞれの兵器は後で勝手に見てくれ」
「え?ですが閣下?」
「戦略艦隊は……」
「ほぼって言っただろ?それが最後に決まってる」
これを無くしたら俺が解説する意味が無いからな。
「539年前、新王国歴6728年、搭乗員が全て生体義鎧で構成される空前絶後の超大型艦隊、今の戦略艦隊の基本構想ができ、開発がスタートした」
計画の初期段階から俺は関わっていたが……総司令官に内定した父さんが俺とリーリアに指令長官の話を持ってきた時は驚いた。
ただそれで決まりにはならなくて、認められるために推薦者同士で模擬戦をしたりしたけどな。
リーリアとは時間がかかりすぎるからってやらせてもらえなかったが。
「まあ、最初は反対も多かったけどな。アレに必要な資材やエネルギーは莫大だ。普通に艦隊を整えるべきだって声も大きかった」
「それもそっか……」
「確かに」
「反対しても不思議じゃないですね」
「だが、帝国の艦隊や機動要塞を蹴散らすためには必要だった。このアーマーディレスト級要塞艦がな」
博物館の正面ホールにあったものよりと同じ、全長50mの模型がここにも吊られている。だがこれでも6万分の1、本物は全長3000kmのバケモノ艦だ。
いや、こんなバケモノがないといけない帝国の方がおかしいのか。
「大きいね……」
「今なら王都軌道エレベーターの第5軌道ステーションに行けば本物を見れるぞ。ステルス装置はかかってないからな」
「言って大丈夫なことなんですか?」
「別に隠すことじゃない。隠せるわけも無いしな」
というか、リールウェブで検索すればすぐに出るはずだ。
自分で言うのもなんだが、第1戦略艦隊は人気だからな。
「戦略艦隊は第6惑星第11衛星で2つ、他の主要な8ヶ所の秘匿要塞で1つずつの、合計10ヶ艦隊建造された。その過程も乗員集めやら機器の調整やらで忙しかったが……今は省略するぞ」
1つの秘匿要塞で必要な乗員を手配はできず、他の秘匿要塞から生体義鎧を送ってもらったりもした。機器も大きなものは億単位でパーツがあるから、技官達が調整に四苦八苦していたな。
とはいえ、1度できてしまえば後は早い。
「そしてその後は知っての通り、503年前に第1から第10戦略艦隊を押し出して帝国軍をシュルトバーン星系から駆逐、増援はアルストバーン星系で殲滅した」
ただし、アルストバーン星系に行ったのは第1戦略艦隊だけ。これが俺が英雄と言われ、第1戦略艦隊が人気の理由でもある。
実際はアレを使って掃討しただけなんだが……できるなら、アレはもう誰にも使わせたくない。
俺の脳が勝手に作り出したものだって分かってはいるが、引き金を引いた瞬間の世界を壊す感覚、あれは人に感じさせたいものじゃない。
「王国を奪還した後、俺達はすぐさま帝国に酷使されていた人達の健康調査を始めた。輸送船から救出したりしてどういう扱いを受けていたかは知っていたが、第3惑星の状況は散々だった。自力で飛べない状態の人も多かったからな」
人々は痩せ細り、疫病が蔓延した地区もあった第3惑星。かつての栄光が破壊され尽くしたあの光景は、筆舌しがたいものだった。
資料映像もあるみたいだが……流さないでいいか。
「そして各所の生き残りを第3惑星に集め、復興を始めた。」
「秘匿要塞にいた人といなかった人の割合ってどれくらいなんですか?」
「確か4対6だったな。100億人くらい中にいた人の方が多かった」
秘匿要塞に入れなかった者達は、2500年間で人口が半減していた。どういう意図があるかは分からないが、帝国は最終的に王国を滅ぼすつもりだったんだろう。
どうやら、生活はギリギリだったらしい。
「帝国軍の造ったインフラはお粗末なものだったから、元素操作装置やシュミルを使ったものに完全に変えた。ある意味、戦時配給制を続けてるとも言えるけどな」
「そんなに悪いんですか?」
「奴隷には捨てる物で十分ってことなんだろう」
あれはインフラなんて高等なものじゃなかったが……いや、第1世界大戦前のインフラ程度か?
即刻破棄して元素操作装置使用のインフラに切り替えたから、もう覚えてない。
「そして復興を始めて50年、人口増加率がかなり高かったから、政府は土地の確保を決定した。それに従って第3惑星第2衛星、第2惑星、第5惑星の第3衛星、第4衛星もテラフォーミングし、コロニーも造っていった」
「それで今と同じになったんですか」
「お疲れ様でした」
「流石に人口が50兆を超えるなんて予想外だったけどな。500年で1000倍だぞ」
いやまあ、1人の女性が子どもを3人産めば確実にこれだけの人口にもなるし、生活も困窮なんかしないんだが……
いくら平和になったとはいえ、元素操作装置があるから仕事ばかりする必要が無くなったとはいえ、コロニーをすぐに建てられるから住む場所に困らなかったとはいえ、政府が奨励していたりするからって、増えすぎだろ。
「王国歴の時の人口爆発だってここまでは多くなかったような……」
「せいぜい100年で3倍だ。これ以上のペースでこれ以上の倍率なんて、前代未聞だな」
「増えすぎですね」
「でも、問題は起きてないから良いんだよね」
「そうだけど……このままで良いんでしょうか?」
「ジン、急にどうした?」
「閣下……王国って軍事国家ですよね?」
「……そうじゃなかったら、軍人が1兆人以上もいることは無い。俺達生体義鎧が英雄なんて言われることは無い」
「それだと俺達って……」
「だが」
「え?」
確かに、過去にあった軍事主義国家はほぼ全てが悲惨な結果で滅亡している。今の軍人、というか生体義鎧が強い発言権を持ってしまっている状況は、それに近く感じるかもしれない。
だけどな……
「それの何が悪い?誰かに負担を押し付けてるわけじゃない。思想を強要してるわけでもない。誰かを迫害してるわけでもない。不幸せな人間を放置したりもしていない。為政者は選挙で選ばれ、王侯貴族は権利がほぼ無く、義務を重要視している。確かに犯罪はあるが、根本から悪い所があるか?」
「……無いです。平和ですから」
「ああ、平和だ。それとな、ジン。右と左をよく見てみろ」
「え?」
「不幸だったら、そんな良い女達が周りにいると思うか?」
「いえ、あり得ません」
「その幸せはな、誇っていいものだ。卑下するんだったら、100回でも1000回でも殺して分からせてやる。俺達が命がけで戦って得たものだぞ」
「閣下……」
「幸せでいろよ、若人。俺達の理想を、叶え続けてくれ」
俺としては、こうやって社会に疑問を持って、恐れずに意見を述べてくれることは嬉しい。膠着した組織が上手い結果を出さないことは、歴史が証明している。
だが、これが続いて欲しいのも事実だ。
「でも、閣下に若人って言われてもしっくりきませんね」
「年寄りの独り言だ。気にするな」
「年寄りって感じじゃないですから」
「若いのは見た目だけだって知ってるだろうが。若作りみたいなものだ」
「若作りって……粋がってるみたいに聞こえますよ」
「おうジン、ちょっとゆっくり話し合う必要があるみたいだな」
「ちょっ!ジンをどうするつもりですか!」
「駄目です!」
「いくら閣下でも、それは許しません」
3人揃ってまったく。というかジン、女に守られる形なのはいいのか。
「はは、良い女達だな本当に。ジン、不幸にしたら刺されるぞ」
「刺しません」
「大丈夫です」
「私が守ります」
「あの、キュエ?男が守られるってのは少し辛いんだけど」
……反応しそびれただけみたいだな。
「それで閣下、最後に1ついいですか?」
「何だ?」
急にどうした?
「もし帝国の本星が分かったら、どうしますか?」
なるほど。まあ確かに、これは気になるか。
「即刻滅ぼす。完膚なきまでにな」
「では、政府がそれを禁じた場合は?」
「……俺達は帝国が憎い。1回滅ぼした程度だと足りないくらい怨んでいる。だがその前に、俺達はバーディスランド王国の軍人で、王国を守ることが仕事だ。怨念だけなら壊れてしまうが、強い愛国心を持っているからこそ、数百数千の時を生きることができた。王国を裏切るようなことは絶対にしない。……まあ、ありとあらゆる手を使って、許可を得ようとはするけどな」
「分かりました。これからもお願いします」
「ジン、お前も2年後には、同じ国を守る戦士になってくれ」
もし俺達がいなくなったとしても、国を守り続けられるように。
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「今日も……誰もいないか」
博物館の地下、薄暗い螺旋階段を俺は1人で降りていく。
ここは、俺がこの博物館に口を出した唯一の場所。彼らのために、ここは作られた。
一般にも解放しているが、やってくるのは俺の同類がほとんどだ。
そして1番多く来ているのは、間違いなく俺だろう。
「もう少し、賑やかな場所に立ててやっても良かったかもしれないな」
数多くの戦没者と、数え切れない民間人の犠牲者を祀る場所。螺旋階段の両側には年代ごとの墓標が名簿とともに並べられている。
その中を俺は下へ、古い方へと歩む。いくつもの碑の前を通り過ぎていく。
しばらくして俺は、1隻の戦闘艦の模型の前にやって来た。そして敬礼をする。
「フィリス、シャティ、アレス、バーフェ……」
全て、かつての仲間達の名だ。異物だった俺達を、祖父母以上に年の離れた者を受け入れてくれた仲間達。
何万年、何億年経とうと、忘れるはずがない。
「お前達の犠牲は、無駄にはならなかったぞ」
ブラッドレー級戦艦、ティア223。
2813年前の戦艦の1隻で、まだ生体義鎧でない人間が主力だった頃の、今なら巡洋艦と言われる800m級戦艦だ。
「王国の未来は明るい。あんな若者がいてくれるんだからな」
彼らはコロニーから助け出した避難民と仲間の艦隊を助けるため、1隻で数万の帝国艦隊へ攻撃を仕掛けた。そしてそれに、俺も当時の巡洋艦クラスの艦で20機の機動兵器を引き連れて同行した。
リーリアとポーラが待っていたのに、やってしまった……
「辛い戦いだったが、戦い抜いてよかったよ。こんな年寄りの怨み言に付き合わせて、悪いとは思ってるけどな」
だが、俺だけは生き残った。500人もの人間が死んで、生き残りは生体義鎧が1人だけ。しかも彼らは、平和な時代を知らない者達だ。
そんな者を犠牲にしてしまった。
「ただ、かっこつけた。王国が1番なのはもちろんだが、帝国も同じくらい憎い……いや、お前達との思い出が無かったら、俺はここにいないかもしれないな……ありがとう」
だからこそ、俺はいつまでも王国を守り続ける。戦い抜いた者達の犠牲を、無駄にしないために。
そしてさらに俺は階段を降ってもう1ヶ所、螺旋階段の終点までやってきた。
「母さん、ドーラ、アーチェ、ゴルド……レイ」
やっぱり慰霊碑の前まで来ると、どうしても口に出すな……後悔は残り続けるか。
だが後悔しても、俺は前に進む。ここにいる者達全ての遺志を、無駄にしないために。
・元素操作装置
別名アルバスシステム。原子や分子を操り、様々な物質を作り出す。また、原子核や電子を操って異なる元素を作り出したり、空間から対生成で目的の物質と反物質を生み出すことも、エネルギーがあれば可能。
帝国との戦闘初期に発明され、王国軍の活動や王国民の生活を大きく変えた。
全ての軍艦に搭載されており、ミサイルや弾体を造成するだけでなく、被弾箇所の修復もできる。
・生体義鎧
バーディスランド王国が帝国を打倒するために作り出した究極の生物兵器、正真正銘の化け物。素体となった人間はタンパク質ベースのナノマシンを筆頭に、生物学的な改造を無数に施された。
結果として寿命の消失、身体能力や反応速度および極限環境生存能力の向上、並列思考能力の強化、負傷による死亡率の低下などの性能を得ている。また、睡眠も不要。
極限環境での生存能力というのは伊達ではなく、宇宙空間に放り出されても1ヶ月は生きていられる。なお1ヶ月というのは食料無しで生きられる限界で、宇宙空間にいるだけなら死ぬことは無い。
現在は大半が第1〜10戦略艦隊、少数が戦略艦隊本部にいる。圧倒的に向上した並列思考能力を使った1万の戦闘艦や機動兵器の同時操作などを行っている。
素の戦闘能力も高く、素手で厚さ1mの装甲板を突き破れ、翼だけで超音速で飛行でき、歩兵携帯タイプの火器の大半は直撃しても傷すらつかない。
普段、身体能力にはリミッターがかかっており、一般人の数倍程度の力しか出ない。だが本人が意識すると外れ、桁違いの力を発揮する。
施術を受けた年によって第1〜38世代と分類されるが、古い世代も新しい施術を受けたりするので性能は変わらない。
体内には小型のビーコン発信機が内蔵されており、行方不明になってもある程度の場所が分かる。
ただし欠点がいくつかあり、1つは精神を改造することができないため壊れる者がいること。死にづらい影響で、負傷して味方に回収されない場所だと永遠に苦しみ続けること。また、子どもを作れなくなることなどが挙げられる。
適合者以外が施術を受けると、良くて全身不随、悪ければ苦しみ抜いた上で死ぬ。適合者でも第1世代は肉体面でも相当数の死者が出た。なおこれは脳に直接注がれる痛みのせいでもあると考えられている。
また女性の方が適正者が多いため、戦略艦隊の男女比は1:3.5と一般人より偏っている。
・リールウェブ
バーディスランド王国の基幹インフラの1つで、インターネットの様なもの。全てのシュミルが接続できる。
ニュースサイトや映像サイト、掲示板のようなものからゲームまで、機密以外のありとあらゆるデータが繋がれている。




