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天翼王国銀河戦記  作者: ニコライ
第4章
73/85

第16話

 

 新王国歴7268年6月18日




「偵察潜宙艦隊より第6次報告、敵艦隊に変化無し。側面攻撃が可能です」

「発見した敵艦は総数約2億隻。推定では最大プラス1億隻」

「そうか。情報は?」

「全てまとめてあります。こちらです」

「分かった。全艦に亜空間ワープの用意をさせろ。状況判別が完了次第すぐに動く」

「了解です」


 第2次攻撃作戦から20日ほど経った今日、第3次攻撃作戦が実行された。とはいえ、ここからは戦略艦隊ごとに攻撃のタイミングを計り、攻め落とす。一連の作戦の許可が出た、という方が近い。

 さらに言えば、大規模な星系は全て潰した後だ。今回狙うのは小規模な工廠星系であり、守備部隊は少ない。そのため陸海軍の派遣数も少なく、割合では戦力のほとんどを戦略艦隊が占めている。

 同時作戦でなくなった主な理由はこれだ。陽動、というのも無くはないが。


「もうですか。偵察の時間が少ないようですけれど?」

「いや、これで十分だ。今までは敵の数が多かったから念入りにやっていただけだからな」

「じゃあお兄ちゃん、作戦は?」

「基本は普段と同じだ。正面と周囲に時間差で亜空間ワープを仕掛け、包囲殲滅する。まあ、場合によって変えるが」

「……分かった」

「では先生、亜空間ワープ地点の算出も開始しますか?」

「ああ、頼む。だが第4、第8、第13、第17戦術艦隊と同行する無人戦術艦隊は言った通り別行動をさせる。タイミングは後になるが、留意してくれ。レイ、潜宙艦隊航空部隊にこの配置に付くよう命令してくれ。それと亜空間ワープ終了後、すぐに航空攻撃部隊を出す。20%を選んでくれ」

「りょーかい!」

「第4統合艦隊と第7軍団は第1戦略艦隊の後方に配置する。別命があるまではその態勢で砲撃を続けるよう伝えろ」

「了解です」


 そんな状況だが、手は抜かない。むしろ気にする相手が少ないため楽な方だ。

 そして戦力比で言えば……負ける方が難しいな、これは。


「敵は多くても3億隻……少ないな。小規模な場所だから仕方ないだろうが」

「それに、連邦軍の攻勢が強まっているそうですよ。そちらに戦力を割く必要もあるでしょう」

「そうだな。それと、工廠星系を落とした成果も出ていそうだ。ポーラ、落とした星系はどうなっている?」

「今のところ異常はありせん。帝国軍が何度か侵入しようとしたようですが、機雷とミサイルに阻まれ、全て失敗しています」

「兆単位でばら撒いたからな。当然か」


 帝国軍にとって、落とされた星系は重要な場所だ。そういう星系を狙ったため当然だが、奪還に動く可能性は十分にある。

 しかし、連邦軍の正面攻勢を抑えつつ奪還のための戦力を抽出するのは難しいはずだ。前提条件が違うとはいえ、王国軍には出来ない。とはいえ……帝国軍なら不可能ではないだろう。

 今はまだ大丈夫だが、そのうち追加が必要になるかもしれない。


「潜宙艦隊より報告。敵艦プラス約3800万隻、誤差は約200万」

「第1戦略艦隊、システム再チェック。全艦オールグリーン」

「第7軍団8ヶ戦団、第4統合艦隊10ヶ艦隊、共に戦闘準備終了とのこと。亜空間ワープの準備も完了」

「航空部隊、直掩機は全て亜空間ワープの準備を終了。また、残存機も全機発艦準備が完了」

「潜宙艦隊航空部隊、配置につきました。戦闘用意良し」


 頃合いか。これ以上待っても、状況が好転することはないだろう。

 精々敵艦隊の数誤差が減るだけだ。


「そろそろだな」

「行くの?」

「ああ。メリーア、出力をアイドルから変更、合図と共に実行させろ。シェーンもアーマーディレストをいつでも出せるよう、待機だ」

「おっけー」

「……了解」

「レイには航空部隊の指揮を任せる」

「はーい」

「メルナとポーラはいつも通りだ。最初は情報解析と砲撃補助を頼む」

「分かりました」

「了解です」

「これで良いな?全艦戦闘態勢、亜空間ワープ開始。終了と同時攻撃開始」


 いつも通り、工廠化されたガス惑星の衛星。そこの軌道上に展開する帝国軍艦隊の正面へ飛び出す。

 そして同時に砲撃を開始、機動兵器も発艦を始めた。


「亜空間ワープ終了。同時に全艦砲撃開始、および全機発艦開始」

「敵艦隊、正面18万km。総数、約2億3840万」

「敵艦隊の行動が変化、戦闘陣形へ移行中の模様。砲撃も確認」

「本隊はこのまま砲撃を継続、敵攻勢を受け止めろ。レイ、揃い次第すぐに第1次航空攻撃部隊を出せ。座標は送る」

「はーい。じゃあ、もう動かしちゃうね。ポーラお姉ちゃん」

「はい。オペレーターを動かします」

「そっちも手伝おっかー」

「レイ?」

「試したいことがあるから、ポーラお姉ちゃんに頼んだんだ。メリーアさんにもお願いしたけと……ダメだった?」

「いや、構わない。だが、何をやるかは教えてくれ」

「これだよ」

「これは……なるほど。良いな、続けろ」

「りょーかい!」


 機動兵器が全機発艦するまではまだ時間がかかる。それまでに準備は終わらせられるだろうから、問題は無い。

 面白い考えでもあるからな。これくらいの戦力差があるなら、試行錯誤をしても大丈夫だ。


陽電子砲(両用砲)および重粒子砲(副砲)第1波着弾。着弾率86.7%」

「艦隊損耗率0.1%」

「敵艦隊推定損耗率5.2%」

「第1次航空攻撃部隊、亜空間ワープ開始」

「潜宙艦隊航空部隊、魚雷攻撃を開始。第1波到達まで73秒」

「第1次航空攻撃部隊、4方向から攻撃を始めました。第1波到達まで61秒」

「敵艦隊、ミサイル迎撃を開始しました。また、敵機動兵器の発艦も確認」

「航空部隊損耗率、現在0.1%」

重力子砲(主砲)、まもなく着弾」


 俺が指示しなくても、戦況は動く。というか今回は指示無しでも勝てるだろう。

 まあそれは面白くないため、介入するが。


「レイ、良いぞ」

「うん!始めちゃって!」

「了解。直掩航空部隊より部隊抽出、第2次航空攻撃部隊亜空間ワープ開始」

「目標、敵艦隊中央部」

「亜空間ワープ終了後、全機攻撃開始」


 まずはレイの策。冒険的だが、悪くない。昔流行った戦術を少し変えたものだからな。

 そんなわけで直掩をしていて航空部隊の何割かが、敵艦隊の中央に飛び込んだ。


「続いて、第1次水雷攻撃部隊亜空間ワープ開始。目標座標は同一、終了後即攻撃開始」

「第1次航空攻撃部隊、第1波攻撃終了。被迎撃率24%。続いて第2波開始」

「ドンドン撃って!」

「第2次航空攻撃部隊、第1波攻撃開始。一部は着弾も確認」

「潜宙艦隊魚雷第1波着弾。被迎撃率16%」

「第1次水雷攻撃部隊亜空間ワープ終了。同時にミサイル一斉射、砲撃も開始」


 続いて軽駆逐艦(アルネーア級)から重巡洋艦(ヤーミスト級)までが敵艦隊中央に突入し、航空部隊と同時に一斉にミサイルを放つ。

 同時にミサイルを放ち、帝国軍艦隊に混乱を生み出した。そして重粒子砲(副砲)陽電子砲(両用砲)を連射し、優先して200m級駆逐艦や500m級巡洋艦を沈めていく。


「第2次航空攻撃部隊、20%が敵機動兵器との近接戦闘を開始しました」

「第1次水雷攻撃部隊のミサイル第1波、着弾確認。被迎撃率19%、敵艦隊の0.6%を撃破」

「敵機動兵器は寄せ付けないだけで良い。防御を重視しろ。第1次水雷攻撃部隊はクラスターミサイルで援護だ」

「そこに居るのが大事だからねー」

「了解。第2次航空攻撃部隊、および第1次水雷攻撃部隊に通達」

「第1次航空攻撃部隊、第3波攻撃開始。損耗率1.7%」

「第1次砲撃部隊亜空間ワープ終了。一斉射開始」


 最後に高速戦艦(アルドレア級)から大型戦艦(ザックバッハ級)、およびフリゲート(ファルゲン級)が亜空間ワープを行い、大口径重力子砲(主砲)で750m級巡洋艦から2500m級空母まで、脅威となりやすい艦を片っ端から撃破していく。


重力子砲(主砲)重粒子砲(副砲)陽電子砲(両用砲)、全門着弾。敵艦375隻を撃沈、842隻大破」

「第1次砲撃部隊、敵から集中砲火を受けています。現在損耗率1.2%」

フリゲート(ファルゲン級)各艦、大型対艦ミサイル発射。目標、敵戦艦および敵空母」

「第1次砲撃部隊は敵大型艦を優先して狙え。第1次水雷攻撃部隊は小型艦だ。第2次航空攻撃部隊は第1次水雷攻撃部隊の援護のもと、制空戦闘に専念しろ」

「了解。各隊へ通達」

「砲撃はー、空母優先かなー。沈めちゃってー」

爆撃機(ケイフィ)重爆撃機(バドラ)の半分は対艦攻撃で良いよ。でも、敵機動兵器には気をつけてね」

「了解しました」


 制空戦闘の中心は制空戦闘機(アーレス)戦闘攻撃機(リングス)だ。

 人型機動兵器をレーザーソードで切り刻み、陽電子ガドリングで粉砕し、マイクロミサイルで消し飛ばす。攻撃機(ルバート)や戦闘艦からの援護もあるが、概ねこの2種だけで抑えられている。

 そうして確保された制空権のもと、戦闘艦が暴れている。暴れているが……流石にこれ以上続けるのは無茶か。


「そろそろだよね?」

「ああ、退かせろ」

「第2次航空攻撃部隊、第1次水雷攻撃部隊、第1次砲撃部隊、亜空間ワープ開始。離脱します」

「敵艦からの追撃は想定通り。敵機、想定より少ない」

「第3次航空攻撃部隊、第2次水雷攻撃部隊、第2次砲撃部隊、目標座標確定。亜空間ワープ開始」

「亜空間ワープ終了。第2次航空攻撃部隊、第1次水雷攻撃部隊、第1次砲撃部隊の帰還を確認」

「敵艦隊、隊列を整えようとしている模様。中央部周辺の艦艇密度に変化あり」

「第3次航空攻撃部隊、第2次水雷攻撃部隊、第2次砲撃部隊、亜空間ワープの終了を確認。攻撃開始」


 そのため一通り大暴れした後、航空部隊と戦闘艦部隊は亜空間ワープで脱出させた。

 しかしそれで終わることはなく、別の部隊が帝国軍艦隊の内側、外縁に近いエリアへ出現する。

 再度同じ光景を見せ、それどころか外側の部隊と協力して帝国軍艦隊外縁部を半壊させていた。


「第1次航空攻撃部隊、損耗率3%を超えました」

「ポーラ、敵艦隊の中に反応性が低下した艦はあるか?」

「ありません。機動要塞は10隻ほど落としていますが、」

「それだと旗艦は1隻か……もしくは衛星が旗艦機能を持っているな。間に合わないかもしれないが、一応解析を始めてくれ」

「了解です」

「第4次航空攻撃部隊は亜空間ワープを開始。終了後、第1次航空攻撃部隊は撤退しろ」

「艦隊損耗率0.7%、航空部隊は1.1%」

「第4統合艦隊、損失艦500隻を突破」

「第2戦術艦隊と第9戦術艦隊を左右に広げろ。ゲラスリンディ級は護衛艦と共に上下へ展開、囮になれ」

「敵艦隊損耗率、推定20%を突破」

「第3次航空攻撃部隊、第2次水雷攻撃部隊、第2次砲撃部隊、全隊撤退します」


 帝国艦隊の内側に上手く入ることができれば、同士討ちを避けようとする帝国軍に対して一方的に攻撃できる。まあ実際は反撃もあるが、上手く動けば被害を抑えて戦果を挙げられる。俺はあまり使わなかったが、上手くやれば簡単に崩せるから有用な手だ。

 それを内と外から同時に、かつ時間差でもう1段の攻撃。これで崩れない相手の方が異常だ。

 そして、崩してしまえば残りは楽な話になる。


「畳み掛けるぞ。第4、第8、第13、第17戦術艦隊および無人戦術艦隊、亜空間ワープを始めろ」

「了解。全16ヶ戦術艦隊、亜空間ワープ開始」

「第4次航空攻撃部隊は戦術艦隊と合流して。攻撃より防御優先でお願いね」

「先生」

「ん?」


 何事かと目を向けると、ポーラの前にあるホログラフには敵艦隊の奥にある衛星が映っていた。

 何かあったのか?


「衛星表面にエネルギー反応を検知しました。数は87、対宙砲撃の可能性が高いです」

「分かった。1番近い潜宙艦に魚雷攻撃をさせろ。念を入れて、重力子弾頭での面制圧だ」

「了解です。最も衛星に近い潜宙艦、小型潜宙艦(ゲルマスロ級)13隻および大型潜宙艦(ドーランテ級)6隻へ通達します」

「エネルギー反応数増加、これは……要塞砲クラスの反応も確認!」

「要塞砲クラスか。シールドが硬そうだな……戦艦(ギロスィア級)大型戦艦(ザックバッハ級)を囮にする。200隻ずつ抽出、このエリアに配置しろ。護衛は少数で良い」

「了解。亜空間ワープ座標確認」

「潜宙艦の魚雷着弾まで、3、2、1、着弾」

「敵の防空陣地は厚い模様。魚雷の被迎撃率は72%、撃破数は23%に抑えられました」

「動員する潜宙艦の数を増やせ。潜宙戦艦(ゼルファン級)も投入しろ」

「了解しました」


 要塞砲クラスに、この迎撃能力……工廠から要塞に変えるつもりだったのか?だが、それなら艦艇の数はこれより多いはずだ。

 それとも、自衛用の武装か?それにしては規模が大きいが……

 まあ、後で調べればいいだけだ。


「残存フリゲート(ファルゲン級)の40%は亜空間ワープを用意、敵艦隊を強襲する」

「了解です。しかし、他はどうしますか?」

「そうだな……ミサイル主体にする。軽巡洋艦(シェルラン級)までを投入しろ。同時に、潜宙艦隊にも魚雷攻撃をさせろ」

「分かりました」

「攻撃開始同時に航空部隊も全力投入する。レイ」

「はーい、準備するね。でも、海軍はどうするの?」

「投入するか。航空部隊と水雷艦艇をこの攻撃に投入、同時に高速戦艦(アルドレア級)から大型戦艦(ザックバッハ級)を敵艦隊周囲の戦術艦隊に混ぜる。潜宙艦隊も同様だ。メリーア、第4統合艦隊へ通達してくれ」

「りょうかーい」


 残敵の数を考えれば、この辺りで畳み掛けるべきだろう。

 これ以上引き伸ばしても、良くない可能性の方が高くなる。


「航空部隊および水雷艦艇、潜宙艦隊の準備が終了しました」

「第4統合艦隊より、準備完了と連絡」

「亜空間ワープを開始しろ」

「了解、亜空間ワープ開始」

「現在、艦隊損耗率は1.2%、航空部隊は1.6%」

「第5次航空攻撃部隊、第3次水雷攻撃部隊、および第4統合艦隊攻撃部隊、亜空間ワープ終了。ミサイル発射を確認、着弾まで78秒」

「第4、第8、第13、第17戦術艦隊および無人戦術艦隊、砲撃強化。第4統合艦隊砲撃部隊と共に敵機動要塞へ攻撃を集中」

「第1戦略艦隊および第4統合艦隊の潜宙艦隊は魚雷攻撃を開始。着弾まで52秒」


 そのため至近距離に配置する戦力を増やし、全方位飽和攻撃を行う。

 均一に包囲したなら話は別だが、火力だけなら正面にいる俺達の方が高いため、帝国軍のAIの判断は難しい選択を迫られているだろう。

 人が介在している可能性もあるが、介在できるような時間は与えない。


「魚雷着弾。被迎撃率12%、敵艦約700万隻を撃沈」

重力子砲(主砲)命中率、現在94.3%。敵戦艦、空母および機動要塞へ砲撃は集中」

「ミサイルおよび魚雷の第2次波状攻撃が開始」

「第4統合艦隊、損失艦が1000隻を突破」

「第5次航空攻撃部隊および第3次水雷攻撃部隊のミサイル着弾まで、3、2、1、着弾。被迎撃率16%」

「敵機動要塞、全艦撃波」

「第2次波状攻撃、着脱します」


 砲撃とミサイルの雨霰。いつも見ている光景だが、俺が食らいたくはないな。

 しかし、効果はいつも通り絶大だ。こうして、陣形すら崩壊させられる。


「敵損耗率、推定60%を突破。陣形は完全に崩壊」

「衛星からの対宙砲撃は全て沈黙」

「衛星への強襲降下を開始する。各揚陸艦は第4統合艦隊と同時に衛星直上へ亜空間ワープ、重装揚陸艇(ガロッサ)などを降下させろ。潜宙艦隊の半分は衛星上に存在する防衛施設、特に対空砲を優先して潰せ。揚陸艦と護衛艦は敵地上部隊を優先だ。地上戦の総指揮はハーヴェが担当しろ。同時並行で敵艦隊の掃討も行うが、これははメリーアが担当だ」

「おうよ」

「良いよー」

「揚陸艦隊、座標確定。亜空間ワープ開始」

「潜宙艦隊は2つに分離、敵艦隊攻撃部隊と衛星攻撃部隊に分かれます。衛星攻撃部隊、衛星へ向け魚雷攻撃開始」

「揚陸艦隊、亜空間ワープ終了。重装揚陸艇(ガロッサ)、および航空部隊発艦開始」

「第7軍団の指揮系統に問題無し。戦闘準備も問題無し」


 崩壊した敵艦隊を尻目に、多数の揚陸艦が衛星に取り付いて小さなもの(揚陸艇)を降ろしていく。

 その様子は元素操作装置で物を作り出すことにも似ている。やっていることは逆の破壊(戦争)だが。

 同時に揚陸艦や護衛艦からはミサイルや艦砲射撃が飛び、衛星表面の敵施設を破壊していく。


重装揚陸艇(ガロッサ)、降下完了。損耗率0.1%以下」

「第7軍団の重装揚陸艇(ガロッサ)、および小型揚陸艇(ファルタ)特殊揚陸艦(フィーレス級)も降下完了。こちらは被害無し」

「揚陸艦隊航空部隊、敵偽装対空陣地を発見。攻撃を開始します」

「揚陸部隊、敵地上部隊を複数殲滅。敵は市街地に撤退する模様」

「市街地に多数の砲台を確認。防衛機構を多数確認」

「第7軍団、重装戦車(ランドル)および超重戦車(ガシャルドネ)を先頭に進軍開始。揚陸艦隊からの砲撃により、敵地上部隊の反抗は軽微」

「航空部隊、市街地へ攻撃開始。しかし迎撃能力が高く、敵損害は軽微」

「第7軍団より支援砲撃。砲塔および敵部隊へのダメージ有り」

「揚陸部隊、敵防御陣地に取付きました」


 しかし、艦隊からの砲撃で丁寧に潰すことはできない。対宙砲台は全て潰したとはいえ、敵地上部隊と防衛施設は残っている。そして、頑強に抵抗しているようだ。

 排除は順調に進んでいるが……予想より進みが遅いな。


「ハーヴェ、どうだ?」

「意外と固ぇな。一部は要塞みてぇだ」

「となると、囮に使うつもりだったか?俺達は工廠星系ばかり攻撃してきたから、予想は容易だしな。こっちの方が早かったみたいだが」

「ガイルー、こっちは終わったよー」

「良くやった。回収部隊以外は衛星上に展開してくれ。ポーラ、あの衛星の人口は分かるか?」

「はい。工廠関係者を含め、約100万人のようです。現地住民はいません」

「その数だと……強制収容所を作るか悩むな」

「お兄ちゃん?」

「工廠設備以外全て吹き飛ばすべきかどうか、悩むな。少し政治も関わるから……メルナ、どう思う?」

「そうですね……やめておいた方が良いと思いますよ。100万人を連邦から隠し切るのは外交的に大変でしょうし」

「分かった。それならこのまま落とすとしよう。レイ、航空部隊の援軍を出せ。航空優勢を保って一気に侵攻する」

「はーい」


 制空権を確保してしまえば、地上の制圧など容易い。航空部隊を追加投入すれば遅れは無くなるだろう。

 ん?遅れは予想でしかない?まあ、気分の問題だ。それに、この方が第7軍団の被害が減る。


「確保した工廠設備には工作艦(オルファン級)を送れ。それと一応、揚陸部隊か第7軍団の一部隊を待機させろ」

「了解。工廠設備周辺に歩兵部隊を展開、工作艦(オルファン級)降下開始」

「揚陸部隊損耗率0.4%、第7軍団は0.01%以下」

「航空部隊損耗率2%を突破」

「制圧率80%を突破。敵地上部隊は山岳地帯……訂正、山岳下の要塞へ集結中」

「移動中の敵部隊は艦砲射撃で粉砕しろ。山岳要塞は重力子砲(主砲)で……いや、中に重要施設がある可能性もあるか。揚陸部隊、損害無視で突撃しろ。第7軍団は周辺を封鎖、だが未発見の敵がいる可能性もある。警戒は緩めるな」

「了解しました。配置計算開始」


 要塞に籠るか。まあそれ用で用意していたのであれば、間違いじゃない。

 艦砲射撃で潰すこともできるが、潰さない方が得られるものは多いだろう。そういう意味でも厄介な場所になる。

 だが無意味だ。


「敵地上部隊、山岳要塞を除き掃討完了。制圧率98%」

「揚陸部隊、攻勢準備完了」

「始めちまえ」

「了解、攻勢開始」


 本来なら、物量は帝国軍の方が多い。しかし、それは既に逆転している。既に地表をそれで潰し切った後だ。

 要塞も、火力と数の差ですぐに押し切った。


「山岳要塞制圧率100%。衛星を完全掌握しました」

「艦隊損耗率1.7%、航空部隊は2.3%、揚陸部隊は0.8%」

「第7軍団は損失機12万2167機、第4統合艦隊は損失艦1873隻、戦死者は合計51万3482名」

「捕虜の数は87人、重傷は52人です。先生、どうしますか?」

「データを吸い出してから殺せ。その程度なら居なかったことにすれば良い」

「了解です」

「山岳要塞地下の司令部に大型コンピューターを3基発見。内2基には艦隊旗艦システムが搭載されている模様。また、残りの1基は工廠勤務研究者用と判明。データは……損失はあるものの、一部は無事」

「ラグニルにサルベージが可能か試させろ。上手くデータが取れれば儲けものだ。それと、山岳要塞を自壊させる準備もさせておけ」

「了解。接続開始」


 データさえ得られれば、後は無用だ。全て処分してしまえば良い。

 正直に言うと、衛星全てを更地にした方が楽だ。しかし、外交は必ずしも戦争と一致しない。

 だから仕方ない、今回は。


「山岳要塞地下の自爆システムにアクセス成功。ミサイル弾頭とリンクした自爆が可能になりました」

「大型コンピューターの解析完了。指揮システムはいくつか改良が加えられているものの、以前回収したものと同型だと判明。工廠用の方にはいくつか設計データが見つかりましたが、全て採用選考落ちもしくはその改良型の模様」

「捕虜からのデータ回収完了。また、捕虜は全て処分されました」

「全住民を掌握。なお、逃走を試みた者は全て射殺しました」

工作艦(オルファン級)および護衛艦の割り振り完了」

「今日の18:00までに強制収容所の建造および全てのシュベールの収容、明日の20:00までに機雷と自立型ミサイルおよび魚雷の敷設を完了させろ。次の作戦開始は約1週間後だ。明後日の03:00には移動を始める」

「「「了解」」」


 この戦争は1つの山場を超えた。だが次の山場の前にも、困難はあるだろう。要塞化が全ての工廠星系で行われているとすれば尚更だ。

 しかし、諦めることはない。困難を打ち破るだけの力を持っているからな。












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