第7話
新王国歴7267年4月17日
「さて、つまらなかったら寝てもいいからな」
「いや、寝る場所なんて無いですよ」
いやまあそうだが、気付けよ。
「冗談だ。まあ、士官高校や士官大学なんかで講演をする時はよく言うな」
「そうなんですか?」
「俺相手だと、キュエみたいに興奮したり、逆にガチガチに固まる奴らも多い。多少は冗談で気を落ち着かせないと、こっちが参る」
ホント、固くなる連中が多すぎるんだよな。まあ、俺も昔は似たような時期があったため、仕方ないことなんだろうが。
俺達は通路を抜け、文明が生まれる前の古代人のエリアのような場所に来た。
「軍事って、こんな最初からなんですか」
「当たり前だ。この星の歴史を考えるなら、最初から軍事は入るからな。それで、ただ通り過ぎるのももったいないんだが、解説を入れるか?」
「お願いします」
それを聞き、シュミルを介してスイッチを入れた。
俺達と同じ種の人が空を飛び、背中だけでなく腕にも羽根が生えた人や、翼を持たない4腕2脚、及び2腕4脚の人を狩っていくCGのホログラフだ。
「この通り、1対翼の鳥類から進化した俺達の種族には手があり、飛べた。その長所を生かし、哺乳類や爬虫類、2対翼の鳥類から進化した人を滅ぼしていった」
「本当にこうやったんですか?」
「これは確か、壁画からの再現映像だったはずだよ」
「その通り。こんな感じで空を飛び回りながら、弓矢や投げ槍を使ったらしいな。彼らも反撃したらしいが、結果として俺達の種族以外はいなくなった」
「あれ?でも他の種は模造品とかって……?」
「そういう説も確かあったな。俺達の先祖と違って、他の3種は真似をする以上の知能を持たなかったとか……詳しいことは調べるか、その手の人間に聞いてくれ」
歴史の授業でやるはずだが、受験で出るような所ではないらしい。起こったことは知っていても、どうやったのかは知らないようだ。
まあそのあたりの考察は置いておき、俺達は次の場所へ進む。
「そしてその後にできたのが……」
「世界7大文明」
「そうだ。狩りだけでなく農耕も始め、いままでとは比較にならないほど富んでいった。その結果、権力の集中、都市の誕生、象徴の形成などを経て、世界で初めての国家ができたわけだ。バーディスランド王国だって、7大文明の1つだったわけだしな。常識だが」
「これは小学校でも習うことですから」
「他の7大文明は大陸なのにって話も聞きました」
陸が8割を占める第3惑星だが、農耕が起こった場所は基本大河の近くだった。
だがバーディスランド王国の起こった場所、この王都のある島は他の大陸に比べると小さな河川しかなく、文明が自ら生まれた理由には謎も多い。
っと、次の場所に来たか。
「だが富んだことで起こったのが、同族同士の殺し合いだ。石器から青銅、そして鉄。特に弓矢は戦争の中心だから、様々な種類が作られ、淘汰されていった。この状態は王国歴3000年頃まで続いたな。それと重要なこととして、古代の戦争で1ヶ月以上続いたものはほとんど無かった」
「どうしてですか?」
「戦う地域が狭いこともあるが、要塞が無いからだ。飛べば要塞は簡単に超えられるから、作る意味が無かった。精々町を簡単な城壁で囲う程度だな」
代わりに弓と剣でド派手な空中戦をやったりしてたらしい。純粋に数と練度の勝負だ。この当時はそのせいで、戦術や戦略はあまり育たなかったとも言われている。
だがそんな戦争も、技術の発展とともに変わっていった。
「だが銃の登場とともに戦場は変わった。初期の銃は命中精度に何があったとはいえ、大量に集めれば簡単に撃ち落とせた。そこで登場したのが……」
「塹壕、ですね」
「正解だ。さらに要塞、及び大規模な城塞が造られたのもこの頃だな」
「身を守る必要があったからってことですか?」
「ああ。一部の地域では大量の木材を束ねて盾にしたりもしてたが、銃の威力向上と共に廃れ、結局隠れるようになった。その結果起きたのが、戦争の長期化だ」
「え、何でですか?」
「1つの戦場で戦う期間が長くなったからだ。塹壕に籠って銃を撃つしか方法が無い以上、進軍スピードは圧倒的に落ちる。その戦線を飛び越えられれば簡単なんだが、重い武器や弾薬、防具や食料を持った状態では高くは飛べない。結果的に兵員の移動でしか飛ばなくなり、戦場では地面に潜って戦うようになった」
俺達の隣には銃や大砲を始めとした兵器が、時代ごとの変遷が分かりやすいように置かれている。
銃の進化は戦場をドンドン変えていき、浅かった塹壕も人1人分以上の深さにまでなった。銃は連射性と射程を増し、塹壕の内部を攻撃するための榴弾砲や迫撃砲、手榴弾なんかもできた。
それを使った戦争の最終進化が、これだ。
「そして王国歴4212〜4218年に起きたのが、初めての多国家間総力戦、第1次世界大戦だ。塹壕の発展や機関銃の登場もあって、最初は長期戦になるかと思われてたんだが……」
「途中で戦車が生まれ、塹壕は突破されるようになった」
最も初期に戦場に登場した戦車の模型を横目に、話を続ける。この時の戦車は機関銃搭載型が大半で、戦車同士の戦闘は決着がつかない場合が多かったそうだ。
対戦車砲搭載型が出たのは大戦の終盤だったらしい。
「ああ。だが当時の戦車は全体を装甲で覆っていたわけじゃない。必ず弱点がある」
「1つは後ろですよね?」
「あと下?」
「そうだ。後ろは味方がいるから、下は攻撃するのは難しいという理由で、装甲は無いか薄かった。後ろは内燃機関を積んでたって理由もあるが……他は分かるか?」
「えっと……」
「前も横も必要だし……」
「答えは上だ」
「上?」
「でも飛んだら……あ!」
「そう、戦場では飛ばなくなっていた。そのせいで、誰しもが戦場では飛ばないものだと思っていた。普段は飛んでいるにも関わらずな」
馬鹿らしい先入観の対価は、兵士達の命で支払われることになった……攻防共にな。
「そして、その弱点に気付いたことで出てきたのが対戦車突撃兵、戦車に肉薄して撃破する九死一生の地獄の兵科だ。彼らは空を飛び、戦車を上部から爆破した」
隣には、戦車に突っ込んで爆薬を設置する者達の立体映像が流れている。
当時彼らは最も勇敢な兵士達と呼ばれ、戦意高揚・国威発揚の格好の材料だったそうだ。彼らのおかげで我が国は勝っている、と。
だが実際は、精鋭ですら生存率が7割を切る死者製造機だ。負傷者も含めると、任務の度に最低でも半分は入れ替わったらしい。消耗品の最たる例だ。
「最初こそ、対空射撃のできない戦車はただ破壊されるだけだったが、歩兵が直掩につくようになってからは難しくなった。どう攻めるにしても、犠牲は莫大になる」
「でもこれって……」
「地雷の方が被害は少ないですよね。無駄だった気もしますが」
「当時の地雷は信頼性がまだ低かったから、成功すればほぼ確実に破壊できるこっちの方が信頼されたんだろうな」
「そうですけど……飛ぶ意味ってあったんでしょうか?」
「それはもう分からない。だが確実に言えるのは、歩兵が再び戦場で飛ぶようになったということだ。大昔に比べれば銃は軽くなり、鎧は廃れたから、空高く飛んで下に撃つこともできるようになった」
「それで空中戦が復活したんですね」
「そして飛ぶならもっと速く、もっと遠くへと思うようになり……飛行機が生まれたわけだ」
ここから時代は空へ移る。もっとも、まだまだだが。
第1次世界大戦時の軍用飛行機の前で立ち止まり、説明を続ける。複葉レシプロ機と呼ばれるタイプのこれ、翼が単純で嫌いなんだよな。
「第1次世界大戦で飛行機が陽の目を見ることはほとんど無かった。試作品みたいなのが出ただけだったからな。歩兵でも対処できた」
「そうなんですか?」
「この時は速くても百数十km/h、歩兵が空中戦で撃ち落とせたくらいだ。だが王国歴4289年から始まった第2次世界大戦で、歩兵達は地獄を見た」
「飛行機が高速化したから……」
「数百km/hになると、歩兵にはどうしようもない。逃げるか隠れるしか無くなったわけだ」
第2次世界大戦時の飛行機の方へ歩いていく。
こちらでは第1次世界大戦時と違って総金属製となり、翼には若干の後退翼が採用されて、鳥に似てきている。一部には前進翼を採用した変態機もあるけどな。
「その結果、歩兵は自軍の飛行機が制空権を取っていないと飛べなくなった。だが、また塹壕に籠もったわけじゃない。大型化、高速化した戦車とともに電撃戦を行うようになったからだ。ロケットランチャーを始めとした対戦車兵器が多数存在したことも要因だな」
「塹壕は無くなったんですか?」
「いや、主に防衛戦で塹壕は現役だった。防御陣地があれば空から来たって対処できたし、飛行機から身を隠すのにもちょうど良かったからな」
「なるほど」
第2次世界大戦は飛行機の進化戦争でもあった。
レシプロ機が使用されていたのは最初だけ、途中からターボプロップエンジンとなり、中盤あたりは完全にターボジェットエンジンに切り替わった。ちなみに、ターボジェットになると、飛んでいる歩兵の対処が難しくなったらしい。
そんな風な話しつつ、俺達は海上兵器の列へ進んだ。ここには当時の駆逐艦や巡洋艦、さらに戦艦や空母の模型が海戦を再現するように置かれている。
「そして飛行機の進化によって、今まで海戦の主力だった戦艦がその座を降り、空母がその地位に上がった。戦争中はまだ残ってたが、戦後には記念艦以外全て無くなったらしい」
「たくさんあったんですよね?」
「無事終戦を迎えられた艦だけでも100隻以上だそうだ。停泊するだけでほとんど戦場に出なかったから、こんなに残ったらしい」
「もったいない」
「戦艦の方がカッコイイから好きなんだけどな……」
「うん、私も空母は箱みたいで好きじゃないかな」
「確かに、格好良さなら戦艦の方が上だと思うぞ。今の艦ほどスマートじゃないが」
昔の兵器を見ていると、今の兵器のデザイン性を誇りたくなる。
兵装は全て内部に収められるし、外に出ていてもデザインはまた良い。機動兵器もそうだが、やっぱり良いな。
「さて、第2次世界大戦がなぜ起こったかは知っているな?」
「植民地にされていた地域による独立戦争、及びそれらを支援するバーディスランド王国を中心とした北半球先進国家群に対して、植民地を持っていた南半球先進国家群が起こした戦争、です」
「そうだ。植民地の独立、それを支援する北半球先進国家群と、阻止しようとする南半球先進国家群。第1次世界大戦が東西での戦いだったのに比べ、第2次世界大戦は南北の戦いだった。北半球先進国家群側は植民地にされていた人々がいたから数に、南半球先進国家群は技術と経験、それと生産力に優れていた。南半球先進国家群の方が先進国の数も高等教育を受けた人数も上回っていたからな。だが、技術でさらに上回る王国が独立支援に回ったことで、完全に独立側優位に傾いた」
「1国だけで、ですか?」
「王国は狭い国土に険しい自然と、国としてはかなり悪い土地だった。だがその国民性から、技術と実用性を重視していた。自国の兵器に数段劣ってはいるが、学ぶことが禁止されていた植民地の兵士達でも少しの訓練で使える武器を、簡単に量産できるくらいにな」
「だから数を有利に使えたということですね」
「教える人って足りたんですか?」
「もちろんだ。王国軍の兵士達は厳しい訓練を潜り抜けた精鋭ばかりだったから、教育者の質でも劣るものじゃなかった。広すぎて多少補給に難があったのが玉に傷なんだけどな」
1国がカバーするにしてはあまりに巨大な範囲が戦場となったせいで、補給が遅れたり、補給部隊が襲われることが多かったそうだ。送る時は備蓄も含めて大量に送ったから大局的な問題になったことは少ないらしいが、局所的には一時後退したり、逆襲を受けたことも少なくなかったらしい。資源自体は植民地地域から出してもらっていたから、潤沢だったらしいが。
あとは、植民地の宗主国ごとに使わせた言語が違ったせいで、命令伝達が大変だったらしい。
まあ、これは相手側もなんだけどな。
「そしてこの戦争の終盤、史上初めて核分裂反応兵器が使用された。南半球先進国家群にとって最も邪魔だった、このバーディスランド王国に、だ」
7年間続いた戦争はどこの戦場も悲惨だが、当時これに勝るものは無いと言える。
博物館の中でも、この場所では核分裂反応兵器が炸裂する瞬間が、ありとあらゆるアングルから流されている。周囲には爆発の翌日に撮影されたものや、放射線被害などの生々しい現実を写した映像や写真の数々。
王国でも有数の大都市が破壊されたさまは、当時の悲惨さを物語っていた。
「劣勢だった国家が巻き返しを図って、でしたっけ?」
「ああ。結局その国家は負けた後、革命が起きて滅んだけどな。1つの大都市、20万人近い国民が一瞬で、1年以内にさらに30万人が犠牲になったとあって、当時の国王陛下、スティリア38世陛下は大層お怒りだったらしい」
「その……どれくらいですか?」
「具体的には、人口密集地にある軍需工場や軍事基地への戦略爆撃を許可された。今までは民間人の犠牲が出るからって禁止されていたけどな。立法君主制になってから陛下が統帥権を行使されたことは無かったが、戦争をこれ以上続けるわけにはいかないと勅命を出された」
「ですがそれだと、民間人に犠牲者も出ますよね?」
「それだけ、これが許されないことだったってことだ。戦略爆撃は1週間に渡って昼夜関係無く行われ、南半球先進国家群の生産能力は壊滅した。降伏する以外に方法が無くなるほどだ」
当時使われた戦略爆撃機の横を通りながら話を続ける。
この爆撃による南半球先進国家群の犠牲者は約100万人、軍に関係の無い死者は8万人程で、王国が核分裂反応兵器で出した被害の約半分だった。ちなみに王国が投入した戦略爆撃機は計1万機、撃墜されたのは417機、死者は4500人ほどだったそうだ。これでもまだ抑えた方だったのだから、当時の世論がどうだったのか、容易に想像できる。
だが戦後、王国政府は報復だったとはいえ民間人を虐殺してしまったことを反省、全世界への経済援助や人道活動に力を入れた。また、戦略爆撃を許可したことで民間人に多数の犠牲を出してしまったとして、スティリア38世陛下は退位し、以後は戦災からの復興に尽力なさったそうだ。
「そして第2次世界大戦が終わってからの約130年間、世界は平和だった。植民地にされていた国々は独立し、国際的な交流も増え、他の国に帰化する人も相当多かったらしい。それに、技術もありえないくらいの速さで進化を遂げていたな。軍事技術も例外じゃなくて、50年も昔の技術が相手なら蹂躙できるくらいには」
「え?」
「平和なのに発展するんですか?」
「2国間戦争や小規模紛争は無くならなかったからだ。兵器の試験の場は必ずあったってことだな」
「南半球先進国家群はどうしたんですか?」
「ほとんど同じだ。王国側がやりすぎたと言って、講和条約を比較的優しいものに変えたせいで、国力はほとんど縛られなかった。長期的に見ると、植民地が独立した程度の結果しか生まれなかったわけだ」
「そんな……」
「せっかく戦ったのに……」
「それとこの期間は、核分裂反応兵器の拡大期間でもあった。生産できる国はこぞって核分裂反応兵器に手を出し、全人類を10回以上滅ぼせるような数を揃えたらしい」
「王国も、ですか?」
「いや、王国だけは手を出さなかった。非核三原則は聞いたことがあるな?」
「はい。持たず、作らず、使わせず、でしたよね?」
「ああ。放射性物質によって十数年も人が住めない土地になったことを当時の国王陛下が嘆かれ、お決めになった。それに従って、王国は核分裂反応兵器は作らず、無効化する兵器の開発に尽力した。主に弾道弾の迎撃システムや、核分裂反応炉搭載型潜水艦を発見するための対潜技術なんかだな」
「徹底してるんですね」
「エネルギー源も核分裂反応炉は使わず、他の発電方法でやり繰りし、世界に先駆けて核融合反応炉を作り出したくらいだからな。筋金入りだぞ」
「その2つって何が違うんですか?核融合反応兵器もあったはずですが」
「兵器に転用できるかどうかだ。核融合反応炉は核融合反応兵器と構造が違いすぎる。大元の現象が同じだからそんな名前が付けられただけだ」
「なるほど」
仮初めの平和、そう呼ばれる時代だが、文化が特に発展したのもこの時代だった。
必要な時代ではあったのだろう。
「そしてそんな平和は打ち破られ、王国歴4431年に第3次世界大戦が起きた。この星の上だけで行われた最後の世界大戦だ。これは群発戦争と呼ばれることもあって、戦国時代みたいに2国間や数ヶ国の同盟同士の戦争が同時期に世界規模で起こっていた状態のことを指す。敵味方もコロコロ入れ替わってたらしい。ゲームや映画でもよく題材にされているな」
「この間、新作が放送されていました」
「ジン君、ゲームセンターでよくやってるよね」
「まあね、結構ハマってる。真っ黒と真っ白な2人組に蹂躙された試合もあったけど」
「……いたのか」
「え?」
「黒い方が俺で、白い方がポーラだ。なんて縁だよ……」
「あれが戦略艦隊の……」
「体の性能は下がってるから、滅茶苦茶やりにくかったけどな。まあ、慣れれば問題無かった」
「じゃあ……」
「この体の方が強いぞ」
まあ、経験の差ってやつだ。専門外とはいえ、白兵戦だって何百回何千回とやってきたからな。
っと、話がズレたか。
「さて、こんな感じで今では娯楽になったりもしてるが、第3次世界大戦は最も凄惨な戦争と呼ばれたのは知ってるな?」
「はい、一応」
「泥沼の地上戦だったと聞いています」
「その通りだ。王国が人工衛星まで使った弾道弾の迎撃システムを、この星を包囲する形で展開していたおかげで、核分裂反応兵器による殲滅戦にこそならなかった。だが、代わりに通常兵器での泥沼となった。ちなみに、王国だけは大規模な攻撃を受けなかったが、何故か分かるか?」
「えっと……」
「何故って……確か……」
俺達のすぐそばには、その弾道弾迎撃用の人工衛星、その模型がある。この質問にもすぐに答えられるはずだ。
「弾道弾の迎撃システムを対地攻撃に応用できるから、ですか?」
「正解だ。当時使われていた電磁式実弾投射砲は、システムに決められた通りに撃つなら大気圏を掠めるだけだが、直下に撃てば地上まで届く。弾道弾を複数貫いて破壊できるような砲弾が隕石以上の速度で飛んでくるから、迎撃なんてできないし破壊力も抜群だ。王国にその気がなくても、脅しには十分すぎた」
「なるほど」
だが1度だけ、たった1度だけ、そんな使われ方をしたことがある。あの状況では仕方ないだろうし、使わなければ大きな被害が出ていただろう。それに、犠牲となった者は最小限で済んだらしい。
とはいえ、当時その選択をした人達は相当苦悩したそうだ。
「王国は戦わなかったんですか?」
「いや、小規模な艦隊が来たこともあるし、同盟国へ行って戦ったこともある。結局、当事国の1つだ」
「結局戦ったんだ」
「大規模侵攻はされないから、世界中から避難民が押し寄せたらしいけどな」
「うわぁ……」
難民じゃないだけまだマシなのだろう。逃げてきたのは中産階級以上ばかりで、相手の文化を尊重することを知っている者達ばかりだ。
まあ、知らなかった連中は即刻叩き出されたからなんだが。
「ただ、軍事技術的には大きな変化は無い。戦争の最初から最後までメインは電磁式実弾投射砲だったからな」
「え、それだけなんですか?」
「ミサイル迎撃用のレーザー砲台が実用化されたりもしたが、ミサイル自体があまり使われなくなっていたせいだ。砲弾を落とすには威力が低すぎた」
「高価だから……?」
「ああ。今の世代に実感は無いだろうけどな」
「閣下は知ってるんですよね?」
「少しだけ、な」
電磁式実弾投射砲の砲弾を溶かし尽くせるようなレーザーや、主砲になれるようなレーザーが開発されたとしても、大勢に影響は無かっただろう。
そんな風に第3次世界大戦はダラダラと世界中で戦いが続いて、2つの国家が共倒れしたことをキッカケに終息した。
「そして23年間も続いた第3次世界大戦も終わり、世界は宇宙開発に邁進した。特に軌道エレベーターが出来てからはさらにな」
初期の軌道エレベーター設計図案を横目に、俺達は奥へ進む。この頃の軌道エレベーターは防衛用、特に宇宙空間でデブリの衝突を防ぐため、条約である程度の武装が認められていた。
そして大戦中はあまり日の目を見なかったレーザー砲台は、ここで大量に使われていた。
「軌道エレベーターの建設中にも紛争はあったりしたが、比較的平和だった。年単位の時間をかけ、初期型の軌道エレベーターが3基完成したわけだ」
うち1つはバーディスランド王国にあった。場所は今のものと同じ場所だったりする。そして世界は当時で言うところの、本格的なSF世界へ入り込んだ。
その青写真などを見ながら、俺達は進む。
「さらに各国は軌道エレベーターで資材を運搬し、ラグランジュポイントや衛星上にコロニーを競うように建設していった。第4惑星と第5惑星の間にある小惑星帯から小惑星を持ってきて、建設の材料にしたりもした」
「その時でもできたんですか?」
「一応は。小惑星1つに艦隊クラスを張り付けて、だが」
「効率悪そう……」
当時の宇宙船100隻以上を使って直径が10km程度の小惑星を運ぶ様は、なかなか壮観だ。国の枠を超えて行った、国際的な大事業だったのだから。
「そして軌道エレベーターやコロニーを守るために、戦闘用の宇宙船だけで編成された宇宙艦隊ができたわけだ。バーディスランド王国だと、王国歴4940年だな」
「やっとできたんですね」
「だが、これによって宇宙にも正面戦力ができてしまった。そして起きたのが第4次世界大戦……2つの衛星の利権をかけた初の宇宙空間での戦争だ」
王国歴4983年に始まった第4次世界大戦。前回からかなり間が空いたが、技術の発展に費やされた時間を考えると妥当なところだろう。
利権の対立が起きるまでに掛かった時間も相当長いからな。
この戦争は第2次世界大戦の時のように、2つの陣営に分かれての戦いだった。
「主な戦場は第1衛星と第2衛星、及びその軌道上だ。第3惑星の地上や軌道上でも少しの戦闘はあったが、そこまで大きなものにはならなかったらしい」
「そうなんですか」
「良かった」
「いや、むしろ衛星上で戦われたせいで被害が大きくなったって意見もあるぞ」
「え?」
「コロニーには何が必要だ?」
「えっと、水に、空気に……」
「あ、外壁……」
「ああ。デブリ対策で厚い装甲が施されていたし、迎撃用のレーザー兵器もあったが、当時の戦艦クラスでも突っ込んで来たら敵わない。少なくない数のコロニーが破壊されて、民間人だけでも1ヶ所で数万人の犠牲者が出た」
「また……」
「当時はまだ主兵装が実弾兵器しか無かったが、速度が速ければ装甲は無意味に近かった。核融合反応炉か燃料タンクが破壊されれば水素が漏れ出し、艦内の酸素と反応する。通常時ならすぐに抑えられる規模だったとしても、戦闘で破損しているせいで抑えられない。結果爆発し、高速かつ巨大なデブリが多数発生することになる」
「そのデブリが外壁に当たったら……」
「当然ながら、大惨事だ。完全に壊滅したコロニーは無いそうだが、恐怖感は相当大きかったはずだ」
外壁が破壊された時は、相当悲惨なことになったんだろう。緊急時の対応策があったからこそ死者が数万人で済んだのだ。場合によっては数十万、数百万になっていてもおかしくない。
当時の衛星地表コロニー模型の横を通り、問いかけに答える。
「でも、何で世界大戦まで発展したんですか?コロニーならいくらでも建てられますよね?」
「住居だけならな。だが、衛星はどうやってできた?表面や地下には何がある?」
「えっと、巨大な隕石がぶつかってできたはず……」
「表面……水素イオン?」
「地下って……あ、レアメタル」
「そうだ。隕石がぶつかって1度ドロドロに溶けた後、核ができる前に冷えて固まった衛星には、岩石型惑星の表面には少ないレアメタルが大量に存在する。それに表面には吹き荒れる太陽風の水素やヘリウムが打ち込まれていて、核融合反応炉の原料が大量にある状態だ。これを世界各国が見逃すと思うか?」
「無いです」
「あり得ない」
「そういう利権が絡んで、5年間も戦争を続けていたわけだ」
最終的に片方の陣営の有利が確定的となり、その段階で終戦協定が結ばれた。地上での戦いは少ないから、民間人的には最も地味な世界大戦かもしれない。
なお、バーディスランド王国は今回も戦勝国側だ。
「確かにこの戦争でも大きな被害が出た。だが、たったこれだけでもあったわけだ。300年もすれば、6回以上の世代交代によって、そんな記憶は記録になってしまう」
「だからもう1回……」
「ああ。第4次世界大戦から346年後、王国歴5334年に第5次世界大戦が起きた。今度はコロニーが独立するために」
「最後の世界大戦ですね」
「そうだ。この戦争が終わった時、人口は戦争前の半分以下だったらしい」
「それだと、死んだ人は……」
「約100億人、いや、それ以上だ」
核分裂反応兵器や核融合反応兵器の乱れ打ちは宇宙でしか行われなかったが、他の部分での犠牲が大きかった。
第5次世界大戦の展示場所へ向かいながら、経緯を話す。
「この世界大戦もゲームや映画によくなってるから知ってるな?」
「はい。第3惑星側とコロニー側に分かれて戦ったんですよね」
「第3惑星側の方が数は多いですけど、コロニー側の方が士気が高く団結力もあったため、互角の戦いになったと」
「ああ。戦闘艦の主兵装はレーザー兵器になって威力が上がっていたが、シールドも実用化されてたから、戦いは長引いた」
この話の時、ちょうど戦争開始当時の戦闘艦の模型の横を通った。
それにしても、主砲が艦首に埋め込まれてるってのはどうも気にいらない。
「でも、それだけで50年も戦い続けますか?」
「もっと早く終わりそうだよね」
「その原因はいくつかあるが、大きな要因は2つか」
「2つ?」
「陣営が2つに分かれたためにそれぞれの宇宙艦隊の規模が莫大なものとなったこと。それと、指揮系統が揃いきってなかったから、効率的な軍事行動ができなかったことだ。第3惑星側は国家ごとに動かしていたし、コロニー側も独立って目的だけで固まってたからな」
中心に立つ存在が無いということは、1ヶ所を潰されただけでも壊滅しないという長所を持つが、目的や方法がバラバラで纏まらないという短所の方が大きい。
普通はやらない愚策なんだが……当時は互いにまとまりきれていなかった。
「当然ながら、戦場は膠着状態となり、戦死者ばかりが増えていった」
「新兵器で状況を打開、なんてことは無かったんですか?」
「この膠着状態は、互いに新技術を生み出しあい、軍拡を進め続けた結果でもあったからだ。兵器は10年で様変わりするくらい、進化していた」
推進方式は推進剤の燃焼から核融合炉生成物の噴出、そしてエネルギー波動放出へ進化し、最終的に今の空間機動式の原型が開発された。
姿勢制御スラスターも燃焼型からイオン型、磁性流体加速型を経由し、最終的にエネルギーパルス型となった。今はもうこっちは緊急用の予備でしかないが。
主砲だって最初は誘導放出レーザーだったものが、のちに自由電子レーザーとなり、最終的に電子加速砲へと変わった。
俺達の時も相当進化していったが、ここまで慌ただしい変化では無かったな。
「そしてコロニー側は状況を打開するため、ある最悪の戦法を取った。これも知ってるな?」
史上最悪の外道戦法。
そう評価されるのがふさわしいこれは、同族同士で使っていいものではない。
「……コロニー落とし」
答えが出ると同時に、双方が撮影したコロニー落としの様子を平面映像で流させる。落着した瞬間の破壊力など、核分裂反応兵器の比ではない。
「その通りだ。コロニーの住民を全員退去させ、第3惑星に落とした。約50年間の戦争中に合計13回行われ、30億人以上が犠牲となった」
「うわぁ……」
「悲惨ね……」
「ただ、これはコロニー側でも否定的な意見が多かったらしい。自分の家を武器にする家主が何処にいる、とな」
この声はコロニー落としのためにコロニーを使われた、立場の弱いコロニー群に多かったそうだ。
同じ独立を目指しているのに上下関係を作る。結局、人は変わらなかった。
「もちろん、やられた第3惑星側も黙って無かった。幾度となくコロニー破壊作戦を行い、100基近いコロニーが宇宙の藻屑となったらしい」
「それって……」
「はっきり言って、ただの虐殺だ。許されることじゃない。……俺達にとっては、これでも可愛い方だけどな」
「え?」
「あ、馬鹿!」
別に気にしなくて良い。もう終わって、救えたことだからな。
次第に俺達の歩く場所は戦闘艦の模型から実際に使われていた機動兵器、そして砲やミサイルなどに変わっていく。だがその中で唯一、扱いの違う兵器があった。
「そんな戦争だが、50年目に入ったところで綺麗さっぱり終わった。何故だか分かるか?」
「国王陛下が嘆かれたと聞いたことが……」
「王国軍が新兵器を開発したって聞いたけど?」
「バーディスランド王国軍は第3惑星陣営を抜けました」
「それで、大艦隊戦に介入した?」
「どれも正解だな。王国軍が反物質弾頭搭載型ミサイルを開発した時、当時の国王陛下がおっしゃられたことが理由だ。ああ、これだな」
1発のミサイルの模型の周りには、当時の年齢別人口変化・経済状況・戦闘後の惨状などが事細かに示されている。そしてその中央に映像投影装置があった。当時はホログラフなんて無かったから、平面映像が空中に流される。
技術的にはこれをホログラフにすることも可能だが、そのままだからこそ意味があるって話だったか。
『余、アストーグ1世はここに、新たなる神の火を手に入れたことを宣言する。だがこれは、平和のために使われなければならぬ力である。第2次世界大戦での悲劇で、人類は学んだはずだ。同じ物を手に入れた時、余らはどうするべきか。余らは学んだはずだ。滅びの道ではなく、救いの道を示すべきだと。国民達よ、どうか余の我儘を聞いてほしい。余らは戦争を終わらせる力を得た。ならばそれを、生かすために使いたい』
陛下は演説を1時間以上なされたが、最も重要なのはこの部分だ。
「当時、慣習法が改正されたことによって、国王陛下の統帥権は無くなっていた。だが、時の政府はこれを勅命だと認めた。そのため、これに従ってバーディスランド王国軍は第3惑星陣営を離脱した。さらに、国王陛下への崇拝が残っていて、なおかつ穏健派でもあった元バーディスランド王国系コロニー群もコロニー陣営を離脱し、バーディスランド王国とともに第3の陣営を作り出した。そして合同艦隊は両陣営のほぼ全艦隊を集めた決戦の場に乱入、2つの艦隊のちょうど真ん中で、世界初の反物質兵器を炸裂させた」
「現場は混乱しますよね」
「そしてトドメが陛下のこのお言葉だ。利益すらなく、虚しい戦争ばかり続いていたから、このお言葉は全ての人間の心に響いただろうな。もちろん、陛下以外の人達も色々と工作をしたから、終戦へ持っていけたんだが」
シュミルを操作し、平面映像を別のものに切り替える。
『全世界の人々よ、余はバーディスランド国王、アストーグ1世である。先ほど、余らのバーディスランド王国軍は世界で初の反物質兵器を使用した。戦いを止めるため、終えさせるためにだ。人類は長い間戦ってきた。今戦場にいる者の多くは、平和な時代を知らぬ者達である。このようなことがあって良いわけがない。平和を知らず、ただただ殺し合いを続けるのは獣以下である。故に余は、戦争が終わることを切に願う。人類は殺し合うのでは無く、助け合って生きていく生物なのだから』
アストーグ1世陛下の右上には、反物質弾頭が炸裂した瞬間が何度も流れている。そこには詳細なデータもあり、当時の最新式核融合反応兵器の10倍以上の威力があった。
俺達からすればオモチャもいいところだが、当時は絶大な影響力を持ったわけだ。
「こうして第5次世界大戦が終わった後、世界各国は改めてその被害の大きさに恐れおののき、どうにかして戦争を無くそうとした。そこで提唱されたのが国家の統合だ。それで今のバーディスランド王国になったわけだが、何故この国が選ばれたのか分かるか?」
「えっと……中学校でやったこと、やったこと……」
「バーディスランド王国は世界最古の王国だから、象徴として1番良かったと習いました」
「俺も同じように習ったな。多分アストーグ1世陛下の言も影響しているんだろうが……まあ、そういう理由で世界は1つになり、王国歴5385年の翌年が新王国歴元年になったわけだ」
全世界統合、新王国誕生のお祭りは王国中……ああいや、世界中で行われ、戦争で沈んでいた経済も一気に活性化したようだ。特に豪華だったのは当たり前だがここ、王都バーディスランドで、統合される全ての国の艦隊が沿岸部や軌道エレベーター宇宙港周辺に集まり、航空機や機動兵器が連日アクロバットショーを繰り広げていたらしい。
王城では全ての国家元首やコロニーの代表がアストーグ1世陛下に膝をついて国の全てを献上し、陛下は各国の元首や要人、さらに大企業の起業者一族などを新たな卿になさることでお応えになった。
新たな国旗もお披露目され、統合は全ての場所で歓迎されていたようだ。
「やっと平和になったんですね」
「戦争ももう無いから、安心できた」
「ここからは平和な時間だ……平和だった」
「閣下達が経験するまでは」
「そういうことだ」
もっとも、議会や官僚達は慣習法の訂正や新たな現代法の制定で戦時以上に忙しくなったそうだが。まあ、平和だからできることだ。
できたばかりの頃はまだ言語だとかで問題があったらしいが、それも段々収まっていった。共通語こそ決めたものの、他の言語も認めていたからな。
そして時代は次に移る。
「統合の後、世界は再び宇宙開発に邁進した。戦争によって発達した技術、特に空間機動装置を使うことで、星系内の探索と資源の調査が盛んになった」
戦闘艦は多くが超長距離航行探査艦、もしくは大容量の輸送艦に改造され、軍の管理の下、民間で使われていた。
「特に熱心に取り組んだのは、衛星や惑星のテラフォーミングだ。小さな実験レベルで始まって、人が住めるようになるまで数百年かかっていたが……第1衛星と第4惑星は成功したな」
「そんなにかかったんですか?」
「今とは技術が違いすぎる。未熟とはいえ人工重力発生装置はあったが、アルバスシステムなんて便利なものはまだ無いぞ」
「そうだよジン、いきなりは無理だって」
「閣下は行ったことがあるんですか?」
「行ったぞ。今と違って建物ばかりだったが」
当時のテラフォーミングの過程を表した映像を見せつつ、答える。
次に当時の軍の展示の所へやってきた。
「それと軍は縮小されたが、質の面での強化は進めていた。亜空間ワープが開発されて以降は特にな」
「平和なのに?」
「当時の軍は、星系内の探索が主な目的だったからだ。空間機動装置だけでも第8惑星までは行けたが、亜空間ワープが開発されて以降、光年単位での移動が現実的になったからな。武装も巨大隕石を始めとした万が一の事態を考えて、研究は進められていた。技術研究って側面もあるな」
「そうなんだ」
「シュベリンクの傘やディルミッシ回廊の調査もこの頃ですか?」
「ああ。そして回廊を進み、アルストバーン星系へ到達することができた」
「えっと、なんでアルストバーン星系に入植しなかったんですか?今は分かりますけど」
「シュルトバーン星系すらまだ開発途上の状態だから、手を出す必要が無かったからだ。消費するエネルギーや年月と利益が釣り合わない」
亜空間ワープが開発されたばかりの頃なんて、効率は今の1000分の1以下だからな。
いや、総合的に考えると今のエネルギー消費は0なんだが。
「だけど、軍を無くしたらもっと探索できたんじゃないかな?兵器なんていらなかったんだし」
「いや、そんな単純な話じゃない」
「どういうことですか?」
「軍の装備の充実は、技術の進歩を意味する。互いに比例しあって、王国はドンドン豊かになっていった。時々問題も出たが、しばらくすれば解決されていった」
「今はそんなこと無いですね」
「安定してるからね」
「というか、今の生活の基盤の大半は軍が開発したものだぞ?」
「あ……」
インフラや娯楽など、ほぼ全てのものは戦略艦隊に搭載されたものが原型になっている。軍が大きな力を持っているのとは一切関係無いけどな。
「そんな風に平和に暮らしていた。だが、3001年前……」
ここで俺は1歩前に出て、振り返る。
「ここからは記録じゃなく記憶になる。覚悟はいいな?」
多少狂気に染めた顔で、俺はそう聞いた。
彼らはまだ軍人じゃない。その覚悟の無い人間だったら、話せる内容じゃないからな。
・バーディスランド王国人
昔は肌の色にある程度の地域色があったが、第2次世界大戦後の平和で薄れていき、統合後1000年でほぼ完全に消滅した。
また宗教も過去には様々な種類があったが、宇宙へ出るにつれて廃れていき、統合する頃には原始的な自然崇拝に近いものだけが残った。それは現在も変わらず、生命や自然や宇宙には敬意が払われている。
背中にある大きな翼を使って飛ぶことができ、その速度や高度は結構高い。なお生身で体感する最高速度が高いため、反応速度や認識速度などは地球人の数倍ある。
・空間機動
現在王国にあるほぼ全ての移動型機械に使用されている移動方法。
機の存在する空間の位相を半分ズラし、時間や空間の流れの異なる半亜空間と通常空間に半分ずつ存在させる。そして半亜空間に流れのようなものを作り、それに乗って動く。
通常空間では動いていないことになっているため、相対性理論における時間変化や非高重力源の急加速による慣性力、および空力加熱や音速突破による衝撃波などは発生しない。ただし重力による空間の歪みにより半亜空間には自転や公転と同じ方向への流れる半亜空間奔流と呼ばれるものがあるので、高重力源である惑星や恒星の動きに追従することは可能。
機体の向きに関係無く進路を決められる。
ただし光速を超えることはできず、機が大きく、速くなるほど必要なエネルギーは増加する。そのため、速度以外を無視した専用の小型機でも、光速の3%が実質的な限界ライン。他のスペックも考えると、さらに落ちる。