第11話
新王国歴7268年5月10日
「予想以上に……上手いな」
艦隊損耗率3.35%、敵艦隊4.75%。
第35基幹艦隊、方位324.65,2.75へ移動。強速、34秒。
第72基幹艦隊、砲撃集中命令。方位0.023,0.100の敵艦140隻へ集中射撃、24秒。
第2戦術艦隊、方位-65.34,724.65へ移動。原速、10秒。
第9戦術艦隊、砲撃集中命令。方位0.037,-0.078の敵艦240隻へ集中射撃、36秒。
「下手に突っ込ませるのは、戦力をすり減らすだけだ。そう何回もできない。1回で決める必要がある」
艦隊損耗率3.37%、敵艦隊4.78%。
第25基幹艦隊、方位342.70,-542.68へ移動。第五戦速、27秒。
第38基幹艦隊、方位213.82,-167.24へ移動。第四戦速、6秒。
第42基幹艦隊、方位378.00,614.90へ移動。第二戦速、13秒。
第59基幹艦隊、方位435.86,-271.49へ移動。強速、34秒。
「現在の損耗率は3.4%、敵艦隊は推定4.8%」
艦隊損耗率3.39%、敵艦隊4.82%。
第17戦術艦隊、砲撃集中命令。方位0.021,-0.039の敵艦120隻へ集中射撃、19秒。
第19戦術艦隊旗艦、方位-342.50,-297.36へ移動。強速、40秒。
第48基幹艦隊、砲撃集中命令。方位0.072,-0.014の敵艦90隻へ集中射撃、23秒。
第84基幹艦隊、方位246.91,-570.60へ移動。微速、51秒。
「このまま消耗戦をしても勝てなくはないだろうが……逃げられるな、確実に」
艦隊損耗率3.41%、敵艦隊4.84%。
第68基幹艦隊、方位137.50,-346.00へ移動。第四戦速、31秒。
第79基幹艦隊、砲撃集中命令。方位0.034,-0.012の敵艦70隻へ集中射撃、41秒。
第93基幹艦隊、砲撃集中命令。方位0.092,0.004の敵艦140隻へ集中射撃、36秒。
第100基幹艦隊、砲撃集中命令。方位-0.056,0.054の敵艦190隻へ集中射撃、27秒。
「切札は……いつ切る?それ次第で勝敗が決まるが……」
艦隊損耗率3.43%、敵艦隊4.87%。
第8戦術艦隊、砲撃集中命令。方位0.062,-0.014の敵艦210隻へ集中射撃、28秒。
第14戦術艦隊、砲撃集中命令。方位-0.034,-0.040の敵艦160隻へ集中射撃、23秒。
第28基幹艦隊、方位195.63,-173.52へ移動。第二戦速、41秒。
第63基幹艦隊、砲撃集中命令。方位0.062,0.071の敵艦100隻へ集中射撃、35秒。
「こっちはまだだな。今やっても有効打にはならない」
艦隊損耗率3.46%、敵艦隊4.89%。
第25基幹艦隊、砲撃集中命令。方位-0.012,0.006の敵艦170隻へ集中射撃、16秒。
第46基幹艦隊、方位-498.00,510.70へ移動。原速、41秒。
第58基幹艦隊、方位234.58,241.64へ移動。強速、39秒。
第73基幹艦隊、砲撃集中命令。方位0.009,-0.017の敵艦130隻へ集中射撃、22秒。
第86基幹艦隊、方位-341.52,316.95へ移動。第四戦速、32秒。
「持てる全戦力を敵のウィークポイント全てに叩きつける……苦手な戦法だが、それができなければ完全勝利は難しい、か」
艦隊損耗率3.49%、敵艦隊4.93%。
|第6戦術艦隊旗艦《アルター-スランディート》、砲撃集中命令。方位0.024,0.036の敵艦280隻へ集中射撃、27秒。
第7基幹艦隊、方位-462.87,-167.52へ移動。第三戦速、31秒。
第18基幹艦隊、方位395.80,-419.00へ移動。原速、38秒。
第65基幹艦隊、方位327.50,-334.66へ移動。強速、33秒。
アーマーディレスト、砲撃集中命令。方位0.012,0.014の敵艦480隻へ集中射撃、48秒。
「難敵だな。だがそうじゃなければ、本気になった意味がない」
艦隊損耗率3.51%、敵艦隊4.97%。
第4戦術艦隊、方位246.85,-94.35へ移動。第五戦速、28秒。
第9戦術艦隊、砲撃集中命令。方位0.038,0.017の敵艦230隻へ集中射撃、17秒。
第10戦術艦隊、砲撃集中命令。方位-0.048,-0.041の敵艦270隻へ集中射撃、31秒。
第15戦術艦隊、砲撃集中命令。方位0.034,-0.057の敵艦210隻へ集中射撃、29秒。
第59基幹艦隊、方位724.60,-624.17へ移動。第三戦速、31秒。
「艦隊陣形は……変更の用有り、か。このままだと辛いな。だが、その隙を突かれる可能性も考えると……」
艦隊損耗率3.53%、敵艦隊5.00%。
第13戦術艦隊、第13基幹艦隊、砲撃集中命令。方位0.067,-0.019の敵艦290隻れ集中射撃、37秒。
第38基幹艦隊、方位271.65,-314.57へ移動。強速、34秒。
第67基幹艦隊、方位-348.50,-270.61へ移動。第三戦速、28秒。
「機会を見つつ、だな。まずは1手」
艦隊損耗率3.55%、敵艦隊5.03%。
第6戦術艦隊、艦隊位置変更。方位426.95,348.52、4195kmへ亜空間ワープ。
第34基幹艦隊、艦隊位置変更。方位348.54,-672.45、3495kmへ亜空間ワープ。
「どうだ?……ちっ、流石に反応が早いな。ならば一気に行く」
艦隊損耗率3.56%、敵艦隊5.05%。
第3戦術艦隊、艦隊位置変更。方位124.67,-342.85、2760kmへ亜空間ワープ。
第6戦術艦隊、艦隊位置変更。方位-426.57,581.50、3150kmへ亜空間ワープ。
第8戦術艦隊、艦隊位置変更。方位416.98,-413.85、2610kmへ亜空間ワープ。
第12戦術艦隊、艦隊位置変更。方位-276.80,500.25、2941kmへ亜空間ワープ。
第15戦術艦隊、艦隊位置変更。方位108.64,98.51、1680kmへ亜空間ワープ。
第17戦術艦隊、艦隊位置変更。方位435.67,-721.59、957kmへ亜空間ワープ。
第20戦術艦隊、艦隊位置変更。方位-395.60,-421.57、1957kmへ亜空間ワープ。
「動かれようと封殺する」
艦隊損耗率3.57%、敵艦隊5.07%。
第8基幹艦隊、艦隊位置変更。方位-452.67,-386.50、4295kmへ亜空間ワープ。
第14基幹艦隊、艦隊位置変更。方位-416.57,624.57、2467kmへ亜空間ワープ。
第23基幹艦隊、艦隊位置変更。方位386.52,-576.95、2864kmへ亜空間ワープ。
第31基幹艦隊、艦隊位置変更。方位346.57,352.68、1765kmへ亜空間ワープ。
第36基幹艦隊、艦隊位置変更。方位-297.54,834.60、1021kmへ亜空間ワープ。
第43基幹艦隊、艦隊位置変更。方位316.85,-346.27、2367kmへ亜空間ワープ。
第49基幹艦隊、艦隊位置変更。方位643.57,-721.65、3464kmへ亜空間ワープ。
「止められなければ問題無い」
艦隊損耗率3.58%、敵艦隊5.09%。
第54基幹艦隊、艦隊位置変更。方位342.67,597.34、3462kmへ亜空間ワープ。
第61基幹艦隊、艦隊位置変更。方位-427.14,-624.38、3952kmへ亜空間ワープ。
第69基幹艦隊、艦隊位置変更。方位-483.57,613.81、2469kmへ亜空間ワープ。
第78基幹艦隊、艦隊位置変更。方位493.52,671.47、3169kmへ亜空間ワープ。
第84基幹艦隊、艦隊位置変更。方位534.67,-571.62、3267kmへ亜空間ワープ。
第93基幹艦隊、艦隊位置変更。方位-624.57,342.51、4236kmへ亜空間ワープ。
第99基幹艦隊、艦隊位置変更。方位378.58,316.94、3291kmへ亜空間ワープ。
「そして整えて……」
艦隊損耗率3.60%、敵艦隊5.16%。
第3戦術艦隊、方位342.67,-421.69へ移動。強速、28秒。
第6戦術艦隊、方位374.52,-483.27へ移動。第二戦速、21秒。
第16戦術艦隊、方位-439.61,473.58へ移動。原速、30秒。
第18戦術艦隊、方位416.73,-316.91へ移動。第五戦速、27秒。
第6基幹艦隊、方位286.34,613.48へ移動。第四戦速、19秒。
第27基幹艦隊、方位396.52,-381.97へ移動。第一戦速、23秒。
第45基幹艦隊、方位428.69,-431.68へ移動。半速、25秒。
第63基幹艦隊、方位316.84,-472.61へ移動。強速、32秒。
第76基幹艦隊、方位-381.24,216.96へ移動。最大戦速、14秒。
第88基幹艦隊、方位276.54,-434.42へ移動。第四戦速、18秒。
「これで変則三重円盤陣の完成だ。ここからは……一気に動くとなると、制限も破棄しないといけないか」
艦隊損耗率3.62%、敵艦隊5.25%。
|第4戦術艦隊旗艦《フェティ-スランディート》、砲撃集中命令。方位0.021,-0.018の敵艦240隻へ集中射撃、26秒。
第18戦術艦隊、砲撃集中命令。方位-0.017,0.019の敵艦280隻へ集中射撃、27秒。
第12基幹艦隊、砲撃集中命令。方位-0.027,-0.031の敵艦220隻へ集中射撃、24秒。
第37基幹艦隊、砲撃集中命令。方位0.038,0.024の敵艦190隻へ集中射撃、32秒。
第60基幹艦隊、砲撃集中命令。方位-0.014,-0.016の敵艦200隻へ集中射撃、30秒。
「潜宙艦隊、攻撃開始。目標は各個に指定」
艦隊損耗率3.64%、敵艦隊5.41%。
潜宙艦隊、攻撃目標指示。
最優先攻撃目標、各ポイントに存在する敵中枢艦。合計24万1846隻。
第二攻撃目標、各ポイントに存在する敵二次中枢艦。合計87万6284隻。
第三攻撃目標、敵中枢艦至近に存在する戦艦および空母。合計243万9432隻。
ターゲティング自由、各個に攻撃開始。
「制限事項を解く。予備兵力から航空攻撃部隊を抽出、敵艦隊至近への亜空間ワープを実行用意。同時に、水雷攻撃部隊も亜空間ワープを用いて敵艦隊左右から突撃しろ。タイミングはこちらで指定する」
艦隊損耗率3.68%、敵艦隊5.68%。
航空攻撃部隊、全3945万1834機。母艦の護衛は除く。
水雷攻撃部隊、全22万4835隻。
両部隊、編成完了。亜空間ワープ用意完了。
「今だな。亜空間ワープ実行、攻撃開始」
艦隊損耗率3.72%、敵艦隊5.84%。
航空攻撃部隊、12群に分離。水雷攻撃部隊、5群に分離。
航空攻撃部隊、1から4群。敵艦隊右方に亜空間ワープ。終了後、敵艦隊前方へ向け攻撃開始。
航空攻撃部隊、5から8群。敵艦隊右方に亜空間ワープ。終了後、敵艦隊上方へ向け攻撃開始。
航空攻撃部隊、9から12群。敵艦隊左方に亜空間ワープ。終了後、直進しつつ攻撃開始。
水雷攻撃部隊、1から3群。敵艦隊左方に亜空間ワープ。終了後、敵艦隊上方へ向け攻撃開始。
水雷攻撃部隊、4および5群。敵艦隊右方に亜空間ワープ。終了後、直進しつつ攻撃開始。
「これで……まだ崩れないか。それなら戦艦も使用する。敵艦隊後方へ大型戦艦を主力とした砲戦部隊を亜空間ワープで投入、そのまま切り崩せ。航空攻撃部隊も追加投入する。また本隊も前方300万kmの地点へ亜空間ワープ、自己の弾に当たらないよう注意しつつ、砲撃を強化しろ」
艦隊損耗率3.96%、敵艦隊6.04%。
砲戦部隊、全27万9460隻。
第二次航空攻撃部隊、全6億8435万4395機。3群に分離。
両部隊、抽出完了。亜空間ワープ準備完了。
砲戦部隊、敵艦隊後方に亜空間ワープ。その後距離を保ちつつ敵艦隊後方へ攻撃開始。
第二次航空攻撃部隊、1群。敵艦隊後方左側に亜空間ワープ。終了後、敵艦隊左方へ向け攻撃開始。
第二次航空攻撃部隊、2群。敵艦隊後方右側に亜空間ワープ。終了後、敵艦隊右方へ向け攻撃開始。
第二次航空攻撃部隊、3群。敵艦隊後方下側に亜空間ワープ。終了後、敵艦隊下方へ向け攻撃開始。
本隊、方位0.000,0.000へ散開しつつ亜空間ワープ。攻撃続行。
「これでもまだ耐える?強固だな……ん?旗艦のこのデータ……」
艦隊損耗率4.32%、敵艦隊7.38%。
第15戦術艦隊、砲撃集中命令。方位0.017,-0.022の敵艦240隻へ集中射撃、27秒。
第38基幹艦隊、砲撃集中命令。方位-0.021,-0.019の敵艦220隻へ集中射撃、32秒。
第69基幹艦隊、砲撃集中命令。方位0.038,0.007の敵艦340隻へ集中射撃、31秒。
敵旗艦、半亜空間側のエネルギー増大。加速中らしき反応を確認。
「マズい、逃げるつもりか。全艦敵旗艦へ集中射撃!過剰攻撃でも構わない!」
艦隊損耗率4.71%、敵艦隊9.12%。
艦隊全艦、砲撃集中命令。方位0.001,-0.002の敵旗艦へ集中射撃、時間無制限。
空間変位増大、敵旗艦のワープを確認。
「ちっ、逃げられたな……」
艦隊損耗率5.21%、敵艦隊10.39%。
艦隊全艦、砲撃集中命令解除。正面の敵艦を攻撃せよ。
敵艦の反応性低下。低下率64.2……94.7……100.0%。
「敵艦は全艦が反応性低下。となると、旗艦はあれ1隻か」
艦隊損耗率6.03%、敵艦隊12.42%。
全艦、掃討戦へ移行。
本隊、砲撃継続。航空攻撃部隊、水雷攻撃部隊、砲戦部隊、攻撃継続。
「艦隊全艦へ命令。敵の反撃に注意しつつ、残存艦艇を掃討しろ」
そして、俺は集中を解いた。
「ふぅ……」
「お帰りなさい、ガイル」
「これはどうですか?先生」
「上手く動かせはしたが、敵指揮官には負けの目が増えた瞬間に逃げられた。あそこまで逃げの決断が早いのは予想以上だ。まだ艦隊は崩れてなかったのにな。それと、少し頭が痛い」
「お兄ちゃん、大丈夫?」
「それは問題ない。だが……」
「現時点での損耗率は6.3%、敵は15.8%ですから、確かに早いと思います」
「ガイルの予想を超えたんですね」
「厄介な敵だ。できれば逃したくはなかった」
あの指揮官がまた敵として立ち塞がる。できればこの1回で終わらせたかったが、こうなっては仕方がない。対策を立てるだけだ。
まあ、俺とリーリア以外でも普通に勝てるだろうが、厳しい戦いにはなるだろう。
「……ガイル……どんな風に、感じた?」
「俺の、敵指揮官の意図を読むのが上手い相手だ。潜宙要塞の少し前あたりから行動を予測されていた可能性もある。そして本命を隠すのも上手い。最後みたいに決断も早いな。これだけだと攻めの評価はできないが、守りは上手そうだ。思考加速も上手く使っている」
「……思考加速、を?」
「ああ。思考加速無しで俺達と競り合える相手はいない。あの様子だと最低でも20倍、いや50倍か。それくらいはありそうだ。それに、艦隊を動かすのが速い。優秀なオペレーターを1000人単位で動員しているんだろう。勝てて何よりだ」
「でもお兄ちゃん、予備兵力って300万kmを超えちゃってたよね?本隊もだけど。良かったの?」
「制限事項を破ったことは……まあ、数回なら誤魔化せなくもないか。勝つには必要なことだったからな……弁明は大変そうだが」
「頑張ってくださいね」
俺から言い出したことだからな……責められはしないだろうが、リーリアには弄られそうだ。
問題はその後、第2次攻撃作戦だが……
「先生、掃討戦が終了しました」
「分かった。全艦戦闘態勢解除、警戒態勢は維持しろ。損害を補填した後、次の偵察艦隊を発艦させる」
「ですが、その……このようなものが」
「ん?」
敵の白い旗艦がいたあたり。そこに漂っているアレは……通信機器、か?
「あれ何?」
「何だろうな……回収は?」
「いつでも可能です。しかし、罠の可能性もあります」
「あのサイズならハッキング以外何もできない。だが、可能性が無いわけでもないか……工作艦を派遣、レーダーと元素操作装置で解析させろ」
「了解です」
「……何だと、思う?」
「偵察とか?」
「意外と、ガイルと話してみたいんでしょうか?」
「流石にそれは無いだろう。それに、偵察としては不用心すぎる。他には……ただこっちを警戒させるためだけに置いた可能性もあるな」
「先生、解析できました。中身は分かりませんが、映像記録があるようです。どうしますか?」
「再生してくれ」
迂回路を使おうと、内部データの解析は難しくない。すぐに終わったため、そのまま見ることにした。
そしてモニターに映し出されたのは、所々に鱗が浮いた青い肌。俺達と同じように毛髪があり、その色は黒っぽい茶色。軍服と思わしき黒を基調とした服を着ている。
旗艦の時点で予想はできていたが……やっぱりシュベールじゃなかったか。
『初にお目にかかる。自分は元ガミロシエ共和国軍統合防衛軍司令長官、現フィルド帝国シャルベバ氏族軍特別編成機甲師団師団長、エルフィク・ドメラン元中将だ。先ほどの戦闘、大変見事だった』
「これは……メルナが当たりか?」
「そのようですね。一方的ではありますけど」
『自分は先のフルバルター工廠星系陥落直後、シャルベバ氏族軍によりアルグフルタ工廠星系の守護を任された。そして貴艦隊への攻撃を主導したのも自分だ。しかし、まさかここで仕掛けられるとは予想外だった』
予想外はこっちの方だ。
無人艦だけとはいえ、どれだけの被害が出たと思っている。
『貴艦隊のものと思わしき戦歴を調査した上で対策を立て、罠を用意した。しかし、それらは大半が外れている。潜宙型機動要塞を有効に使えたのは最初の1回だけ、哨戒艦隊も餌にさえならずに全滅ばかり。読み切ったとは思っていなかったが、常に予想を大きく超えられている。帝国との戦いではこのようなことはなかった。貴艦隊は、そして指揮官たる貴官は素晴らしい。貴官のような武人と合間見えられたことを誇りに思う。可能であれば、万全の状態でお相手したいが……ここで負けた以上、どうなるかは分からんな』
こいつは……ある意味、俺と同じか。
『そちらがザーハロッパ連邦軍とは異なる、バーディスランドと呼ばれる者達であることは分かってる。戦う理由も想像できる。しかし、自分にも退けぬ理由がある。我が星の民達を守るには、これしかない』
俺が道を違えていたら、こうなっていたかもしれない。
『分かってもらおうとは思わん。敵同士になる運命だ。命を賭けることに、躊躇いなどありはしない』
いつ、どこで、行った選択により変わったか、それは分からない。本当にこうなったかも分からない。
だがだからこそ……だからこそ、嫌悪してしまう部分もある。
『しかし願わくは、貴官と酒を酌み交わしたいところだが……叶わぬ願いだろうな。武運を祈ることすら敵わん。だが長久は祈らせていただこう。君達バーディスランドと、我々ガミロシエに、栄光と祝福あれ』
そう言って肘を直角に曲げた右手を掲げる、おそらく彼らにとっての敬礼を見せると、映像はそこで途絶えた。
「馬鹿な奴だ……守りたいなら自らの手で守れ。敵に任せるな。敵の言いなりになるな。奪われたのなら奪い返せ」
「お兄ちゃん?」
「何でもない。ポーラ、あいつの種族は分かるか?」
「はい、種族一覧は連邦軍のデータベース内にありました。星系番号1000004020603、帝国名ガミロシエ星系の魚類系人型生命体です。帝国に占領される前はガミロシエ共和国として惑星が統一されていたようです」
「母星の位置は?」
「小規模工廠星系の1つです。第2次攻撃作戦後に攻略する予定になっています」
「そうか。それだと、そこにつく可能性もあるな……」
他の戦略艦隊でも勝てるとはいえ、それは1対1の時だ。他にも大量の敵がいる場合、予想はできない。
最悪を想定するべきか、あるいは……
「素直ではありませんね、ガイル」
「何がだ?」
「……分かる」
「だってお兄ちゃん、興味無かったらそんなこと聞かないもん」
「そんなことは……」
「先生、みんな分かっています」
……俺が甘いのは昔からだ。穏健派なのも、メリーアのように過激になりきれないから、という理由もある。
これが異星人にも適用されるのは、メルナ達からすれば予想の範囲内だったのかもしれない。
「それは……そうか」
「はい」
「知ってるもん」
「想定の外ではありませんよ」
「まったく」
敵わないな、本当に。