第9話
新王国歴7268年5月6日
「第24偵察艦隊、亜空間ワープ終了。偵察行動を開始します」
「第3偵察艦隊、全艦着艦完了。第17偵察艦隊、発艦開始」
「第8偵察艦隊より報告。星系番号1000003400203、帝国アルベラ星系の探索終了。敵艦隊は未発見ながら、残骸らしきものを発見。調査の延長を求めています」
「許可する。追加調査は結果を逐次報告させろ」
「了解」
もちろん、俺を含めて休むばかりではない。偵察艦隊を用いた星系探索を繰り返し、計画に合わせて少しずつ進んでいく。
一部気になった所があり、行われた追加調査だったが……
「何もなさそうだな」
「はい。昔戦闘が起きたことは確かなようですが、数百年以上は前のようです」
「満足したら撤収するように伝えろ。長居は無用だ」
「もう準備を始めていますね。すぐに帰ってくるようですよ」
「戻り次第、第16偵察艦隊と交代させる。準備させろ」
「了解です」
心配するようなものは無く、すぐに戻ってきた。まあ、何も無い時は本当に何も無い。逆に、何かあるとすぐに見つかったりする。
まあ、見つけられないこともゼロではないが……偵察艦隊が得たレーザーおよびソナー情報はその艦だけでなく、全てアーマーディレストのコンピューターでも解析することで、あの奇襲のようなことを防ぐ仕組みを構成した。
今ならあんな無様な真似にはならない。
「お兄ちゃん、ここの星系は調べないの?」
「そこは連邦の偵察艦隊が既に入って、調査済みだ。諜報部の情報で……これだな」
「あ、ホントだ。でもレーダーは?」
「連邦が何か残した可能性のある場所に行きたくはない」
「そっか。そうだよね」
「……じゃあ、次は?」
「何か見つかるまでは今のままだ。まあ、この段階は何も見つからない方が良いんだが」
「……そう」
「シェーン、文句があるなら言っても良いですよ」
「……大丈夫、です。姫様……暇な方が、良い……でしょ?」
「ああ」
偵察で忙しくなるのは避けるべきであり、戦闘でも望ましくない。
暇というか、楽な方が戦況的にも良い。少なくとも、指揮官にとっては。
「ですがガイル、平穏ばかりではありませんよね?」
「まあ、そうだな。ここは次の目的地に近い。それに、帝国軍が後方に警戒ラインを敷いた可能性も否定できない」
「わたし達が攻撃したから、だよね?」
「そうだ。元々いた防衛艦隊はともかく、追加が出てくる可能性は否定できない。場合によっては、投入戦力を今の想定の倍にする必要があるかもしれない。事前情報から外れる可能性は高いな」
「……じゃあ、要注意?」
「ああ。まあ、警戒するのは指揮官の仕事だ。ポーラ、第2次攻撃作戦目標星系の周辺図をこっちに映してくれ」
「分かりました」
ポーラが連邦から得た星域図を展開する。そしてその上に、諜報部が得た情報を上乗せした。
ここにはまだ偵察艦隊の情報は入っていないが、手に入り次第加えていく予定だ。今の物でも情報量はかなり多いが。
「現在地点は目標星系から2400光年の位置、到着までは15日の予定だ。第2次攻撃作戦開始は18日後、その時までに帝国軍がどう動くかが問題になる」
「先ほど言っていたことですね。他にも、施設を移す可能性もありますけれど」
「それも考えられるが、可能性は低いだろう。帝国軍ならば、意地でも死守しようとする可能性の方が高い」
「はい。しかし先生、およびリーリア先生の攻撃目標は囮のようなもの、最後かつ最大の大規模工廠星系が第2次攻撃作戦の主目標になります。主目標の周辺には3つの要塞化済み軍事星系が存在しており、敵艦艇数は膨大です。投入される陸海軍の戦力も多く、激戦が予想されます。戦力比は可能な限り減らす方針なため、被害は比較的少なくなりそうではありますが」
「とはいえ連邦軍の攻勢が激しく、帝国軍主力の多くはそちらに回されているらしい。後方警備の艦艇は少ないだろう。それに、こっちに戦略艦隊をもう1つ連れてくる作戦も立てられている。まだ確定はしていないが……主目標の方は4ヶ戦略艦隊もあれば十分なはずだ」
「それは私達にとって最も楽観的な予想です。変わる可能性は十分あります」
「分かっている。まあ、戦略艦隊が1個でも2個でもやることは変わらないが……ポーラ、出番はしっかりあるぞ」
「……了解、楽しみ」
「シェーンお姉ちゃん、嬉しそうだね」
「……うん」
偵察行動の間、旗艦は暇だからな。事務仕事くらいしかない。シェーンが楽しみにするのも仕方のないことだ。
と、そんな感じで話している所へ、偵察艦隊からの報告が来た。
「第24偵察艦隊より報告。星系番号1000003400702、帝国名バトラス星系の探索終了。敵艦隊発見、総数約1億隻。他に艦影は認められず」
「1億隻か……分かった。第24偵察艦隊は敵に見つからないよう注意しつつ撤収しろ」
「了解。第24偵察艦隊へ命令伝達」
「ガイル、どうしますか?」
「無人戦略艦隊の単独戦闘テストを実施する。第101無人戦略艦隊は亜空間ワープ用意」
「了解。第101無人戦略艦隊、亜空間ワープ用意」
「第102、第103無人戦略艦隊、戦闘準備態勢へ移行」
「……アーマーディレスト、バックアップ態勢」
「第101無人戦略艦隊、亜空間ワープ開始」
1億隻なら、無人艦隊のテストにちょうど良い。軽く蹴散らしてやろう……と、軽く考えていた。この時は。
だが……
「第101無人戦略艦隊、亜空間ワープ終了」
「艦隊陣形良し。攻撃、開始しました」
「敵艦隊損耗率は20%、戦闘行動に問題は無いな。このまま制圧……」
「え⁉︎第101無人戦略艦隊、攻撃を受けました!」
「損耗率……30%オーバー⁉︎」
「なっ⁉︎」
「えっ!」
この一瞬で30%がやられただと⁉︎
「ガイル!」
「お、お兄ちゃん⁉︎」
「ただちに救援に向かう!全艦戦闘態勢、亜空間ワープ用意!」
「ですが先生、対策無しには」
「予想はできている。全艦、亜空間ワープ終了と同時にソナー最大出力。ミサイルは全てクラスター弾頭で造成、半分は魚雷だ。迅速に魚雷迎撃体制を整えろ」
「……了解。迎撃用意、亜空間ワープ準備完了」
「亜空間ワープ開始」
こんな罠があったなんてな……俺の予想通りなら、高いステルス性を持った魚雷による飽和攻撃だ。これ自体は俺達もよくやる手だ。
だが損耗率30%となると、統制雷撃が行われたのだろう。この場合、魚雷群を管理する母体が必要になる。
さらなる問題は、無人戦略艦隊が反応出来ずに沈められたことだ。強力なステルス装置の類いがあるんだろうが、無人とはいえアーマーディレスト級を欺くとなると、相当だ。
そして予想通りなら、亜空間ワープ終了直後から……
「ソナーに反応!大型対艦ミサイルを上回るサイズの魚雷が多数接近中。強力なステルス装置により発見できなかった模様」
「クラスター魚雷斉射、全て迎撃しろ。発射母体は?」
「分かりません。それらしき反応は何も……」
「そうか……小型潜宙艦と大型潜宙艦を最大震度に展開、潜宙空母と潜宙揚陸艦の航空部隊もだ。ソナーを最大出力にして探せ。犠牲がどれだけ出ても構わない。ただし、潜宙戦艦は温存だ」
「了解です」
「クラスターミサイルは半分を短距離対空魚雷に変え、迎撃に追加しろ。これ以上の被害を許すな」
つまり、王国軍潜宙艦より深く潜れるわけか……まあ、これは驚くことじゃない。深く潜らせるだけなら、専用艦を作れば今の10倍は軽くいける。
問題は予想と同じくソナーで見つからないこと……どこにいる?どこまで潜った?
「通常空間の敵艦隊は?」
「敵艦隊損耗率は既に50%を超えていますよ。ですが、反応性が低下した艦は無いようですね」
「発射母体が旗艦も兼用しているのか?……潜宙艦隊は?」
「現在損耗率6.1%、魚雷攻撃により被害は拡大中」
「潜宙艦隊航空部隊、損耗率12.4%。このままではすぐに危険域に達します」
「発射母体を見つけるまでで良い。もたせろ」
「了解」
「通常空間敵艦隊、機動要塞を全滅させるも反応性低下無し」
「分かった。砲撃戦は継続、魚雷に注意しつつ掃討しろ」
「了解しました」
「問題は全て発射母体か……」
「はい。未だに見つかりませんが……」
「早く見つけてしまいましょう。ソナーの解析は私も手伝いますから」
「潜宙艦隊の航空部隊はわたしが指揮するね」
「頼む」
そうして、後は異次元での戦いとなったのだが……ここからが本番だ。
犠牲を出しつつも探索深度を深く、ソナー出力を高くし、解析を繰り返していく。地味で、苛立ちもあるが、ここは耐えて続けるしかない。
「潜宙艦隊損耗率、10%を突破」
「潜宙艦隊航空部隊損耗率、現在18.6%」
「艦隊全体の損耗率は7.2%」
「損耗が激しすぎるな。まだ見つからないのか?」
「はい、未だに、いえ、待ってください……見つけました!潜宙艦タイプの100km級機動要塞です!方位534.57,-241.83、距離1万kmの高深度エリアに8隻います!」
「よくやった。すぐに潜宙戦艦を送り込め。フリゲートも大型対艦魚雷を斉射用意」
「了解。潜宙戦艦、フリゲート、大型対艦ミサイルおよび魚雷発射用意」
「敵潜宙要塞より機動兵器多数発艦。潜宙艦隊へ向かいます」
「潜宙艦隊航空部隊に迎撃させろ。小型潜宙艦と大型潜宙艦は対艦魚雷70%斉射。牽制で良い、放て」
「敵潜宙要塞周囲に敵潜宙艦を発見。総数、約1000万隻」
「多いな。艦隊全艦、対艦魚雷50%斉射。殲滅できるまで繰り返せ」
「フリゲート、潜宙戦艦、配置につきました」
「大型対艦ミサイル、および大型対艦魚雷、全弾一斉射」
数十万、数百万のミサイルと魚雷の飽和攻撃。帝国軍の大型機動要塞だろうと、一撃で消し飛ばせる威力を誇る。
しかし、現実はそう甘くなかった。
「敵潜宙要塞より多数の小型飛翔体……迎撃ミサイルが発射されました」
「迎撃か……大型対艦ミサイルおよび魚雷は連続斉射、他の艦艇も対艦ミサイルおよび魚雷を打ちまくれ。とにかく、敵潜宙要塞のシールドを突破しろ。他には見つかっていないか?」
「中継用と考えられる小型機器は見つかりましたが、それだけです。敵潜宙艦も潜宙要塞の周囲以外では確認されていません」
「それならこいつだけか……攻撃は?」
「直撃見込みが間もなく。5、4、3、2、1、着弾」
「大型対艦ミサイルおよび魚雷、481発命中。しかし、敵潜宙要塞のシールドは破れず」
「少ない上に固いな。特注品か?」
「分かりません。ですが、着弾直前に撃墜されたミサイルが多数存在します」
「着弾直前?迎撃レーザーでしょうか?」
「確かにそう見えるが、レーザーは異次元では使えないはず……」
「……ガイル、これ見て」
「ん?……これは、まさか」
「……多分、壁にしてる」
「なるほど。道理で固いはずだ」
どうやら、敵潜宙要塞の目前に大量の人型機動兵器が立ち塞がり、ミサイルや魚雷の盾になっているらしい。潜宙要塞のステルス装置の範囲にいるためか、今まで分からなかったようだ。
直前での撃墜も、異様に敵潜宙要塞が固いのも、これが原因だろう。
「持久戦になるな……ミサイルおよび魚雷は絶えず放ち続けろ。通常空間の敵艦隊は?」
「敵艦隊損耗率80%を突破。組織的な抵抗は不可能な状態です」
「だが、反応性は低下していない。油断するとやられるぞ。シェーン、アーマーディレスト級4隻での飽和攻撃、いけるか?」
「……当然」
「なら任せる。潜宙艦隊および潜宙艦隊航空部隊は統制波状雷撃を実行、敵機動兵器による壁を突破し、敵潜宙要塞を撃沈する。攻撃用意」
「潜宙艦隊、攻撃準備を開始しました。配置につきます」
「潜宙艦隊航空部隊も準備終わったよ」
「……アーマーディレスト、無人型アーマーディレスト、準備完了」
「残りの艦隊も問題ありませんね。いつでもいけますよ」
「分かった。全艦、一斉攻撃開始!」
ミサイルと魚雷の総数は、全て合わせれば億単位にのぼる。惑星だろうと問答無用で粉砕できる火力だ。
いくらエネルギーが減衰しやすい異次元とはいえ、流石にこれで沈められないということは無いだろう。
「ミサイル、異次元を順調に飛行中」
「魚雷群、異次元へ潜行開始。落伍無し」
「敵潜宙艦隊、ミサイル発射を確認。迎撃弾だと思われます」
「敵潜宙要塞からも迎撃ミサイルを確認。迎撃ミサイル第1陣、まもなく着弾」
「敵迎撃ミサイル第1陣、着弾。被迎撃率6.4%」
「敵超大型魚雷を確認。数1200、第1戦略艦隊直撃コース」
「迎撃しろ」
「了解。短距離対空魚雷およびクラスター魚雷発射、迎撃開始」
「敵迎撃ミサイル第2陣着弾。被迎撃率は14.2%に上昇」
「迎撃能力は高いか……敵機動兵器の様子は?」
「数百万機単位で敵潜宙要塞表面に展開している、としか……」
「いや、それで十分だ。常時モニタリングしてくれ」
「了解です」
「ミサイルおよび魚雷第1波、着弾します」
とはいえ、無策で力押しだけと思われるのもあれだな。
策はいくつか考えてあるが……これならアレが使えそうだ。
「多数が迎撃されました。着弾率2.4%」
「流石に少ないですね」
「ああ。だが……」
「続けて第2波、着弾。着弾率5.2%。80%以上が敵機動兵器に衝突」
「第3波の着弾地点を変更させろ。軌道はこれだ」
「了解、各艦へ伝達します」
敵機動兵器の壁を突破するのは力押しにする。それ以外に方法が無い。
だが、穴を開ければ話は別だ。そこへミサイルと魚雷を殺到させ、迎撃能力を飽和させる。これで潜宙要塞も……結局力押しか。
「第3波、着弾。着弾率18.3%」
「第4波、大型対艦ミサイルおよび魚雷群、着弾まであと60秒」
「敵潜宙要塞、迎撃ミサイルを多数発射。敵潜宙艦隊からも発射されました」
「大型対艦ミサイルおよび魚雷、被迎撃率3.7%」
「迎撃ミサイル第2陣接近!」
「慌てるな。ここまで来たら待つだけだ」
「被迎撃率、7.5%に増加」
「着弾まで、5、4、3、2、1、着弾!」
まあ、力押しだろうが何だろうが、勝てれば良い。
そしてそんな間にも大型対艦ミサイルと大型対艦魚雷の群れが襲いかかり、薄くなった人型機動兵器の壁を食い破って、敵潜宙要塞へ突き刺さった。
「着弾率70%オーバー。敵潜宙要塞、全艦撃沈しました」
「敵潜宙艦隊の反応性低下を確認。旗艦機能も喪失した模様」
「艦隊損耗率は17.3%、潜宙艦隊は23.6%」
「分かった。残敵掃討は任せる」
「了解」
どうにか撃沈し、残敵掃討もすぐに終わったのだが……この戦いでの被害は桁違いに、そして想定以上に大きい。
特に第101無人戦略艦隊は被害甚大で、少なくとも明日の昼までは戦力にならないだろう。要塞艦すら何隻か沈められてるからな。
「ポーラ、敵潜宙要塞のステルス装置について、何か分かったか?」
「どうやら、特殊な仕様のようです。
単艦での発見は困難だと思われます。今回発見できた理由としては……」
「複数艦から同時にソナーを当てることによって発見が容易になる、か。詳しいことはラグニルに解析させるとして、今は……偵察艦隊の艦数を増やすしかないな」
「はい。現在可能な対策としては、それが最も効果的です」
「さて、編成はどうするか……」
今の偵察艦隊は総計77隻、潜宙艦だけなら26隻だ。中心となるのは高速戦艦2隻と軽空母1隻、潜宙空母は2隻。
潜宙艦を倍以上の54隻に増やすとすると、他の戦闘艦も増やして……総計は120隻程度かりこの規模なら戦艦や空母も加えた方が良いな。
そして操縦者は2人……いや、3人にするべきか。自由に使える戦力は減るが、仕方ない。戦闘時は偵察艦隊全てを1人に預けるなどすれば、最小限に抑えられるだろう。
「決まったようですね」
「ああ。フリゲート16隻、軽駆逐艦16隻、重駆逐艦16隻、軽巡洋艦8隻、重巡洋艦8隻、高速戦艦2隻、軽空母2隻、戦艦1隻、空母1隻、小型潜宙艦32隻、大型潜宙艦16隻、潜宙戦艦2隻、潜宙空母4隻、合計124隻に変更する。偵察艦隊は編成数40個のまま、操縦者は3倍に拡大、ただし本隊の戦闘時は各偵察艦隊は1人で運用する」
「了解です。編成の変更を開始します」
「さて、次は……ん?リーリアか」
偵察艦隊の編成変更自体に手間はほぼ無い。人員の確保は少し面倒だが、ポーラならすぐに終わらせてしまう。本当に早いから、俺の出番なんてないんだよな……
まあそれだから、待ち時間は少ない。次の行動を決めようとした……のだが、その前に通信が入った。とりあえず損傷艦の修理と損耗艦の補充を命令してから、通信に出る。
『貴方、少し良い?』
「今なら大丈夫だ。後処理もほぼ終わった」
『なら聞いてほしいんだけど……貴方の方も奇襲されたのね』
「も?リーリアもか?」
『ええ……スティアレグラ級が1隻沈められたわ』
なっ、要塞艦が……
「第4のスティアレグラ級が?どの艦だ?」
『第46基幹艦隊のアルクス-フランシュティ、アーニーの乗ってた艦よ』
「それは……脱出したか?」
『何人かはギリギリ回収できたけど……その中にアーニーはいなかったわ』
「ちぃ!」
また1人、第1世代が消えていったか……他にも生体義鎧が約30人……
総司令部で予備人員を確保しているとはいえ、仲間が死ぬことほど辛いことはない。
『そんなに自分を責めちゃダメよ。不甲斐ないのは私なんだから』
「いや、俺も同じだ。少し間違えれば数十人が死んでた。今日は運が良かっただけだ」
『だから私達にできることは』
「この戦訓を生かすこと、だな。戦闘経過を送ってくれ。こっちも纏めた物を渡す」
『そう言うと思って、もう作っておいたわ』
「助かる。リーリア、気をつけろよ」
『ええ、貴方こそ』
どうやら向こうは、小惑星帯内部に隠されていた超大型レーザー砲39門の1点集中照射でやられたらしい。
有人艦が狙われたのは……中心にいたせいで、守られているように見えたからだろう。すぐに破壊され、以後の被害は無いことは幸いだな。
ステルス装置の特性は……ほぼ同じ、か。
「……大丈夫?」
「ん?ああ、大丈夫だ。問題無い」
「……見えない、けど?」
「お兄ちゃん、酷い顔だよ」
「ガイル、自覚はあるんでしょう?」
「休んでも大丈夫です、先生」
「助かる……すまないな」
気を使われたな……だが、今はそれがありがたい。
俺は艦橋を出ると私室に戻り、鍵をかける。
「ああ……くそ!」
そして、思い切り壁を殴った。
へこんでしまったが、気にしない。というか、気にしてる余裕が無い。
「また、1人……くそ!」
何度経験しようと、何年重ねようと、これだけは慣れることができない。取り繕おうとしても、隠しきれない。
過去を全て奪われただけでなく、現在までも失ってしまう。それが俺達だった。
「仇は、討つ……だから……」
だからこそ、なんだろうな……せめて未来だけは守ろうと、そう思うのは。




