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天翼王国銀河戦記  作者: ニコライ
第4章

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第7話

 残酷な表現、というかグロあります。苦手な方はブラウザバックをお勧めします

 

 新王国歴7268年4月28日




「何故そのようなことを!」

「自分達は貴方達に危害を加えるつもりはありません。全て貴方達のためにすることです」

「ここは私達の星ですぞ!」

「ですが貴方達を守るためには、ここに居ていただく必要があるのです。制圧したとはいえ、帝国軍の残党がいないとも限らないですから」

「しかし……!」

「ご安心を。戦争が終われば外に出られるようになりますし、復興は我々が支援します。それまで少しの間だけお待ちください」

「それでしたら……納得しましょう」


 そして……説明、というより説得の人数が足りず、俺達まで駆り出されていた。

 現地住民のための保護所は数が多く、当然ながら仕事も多い。基本的には帝国系のシステムで作ったが、説明は必要だった。そして今まで抑圧されてきたためか、現地住民達は非常に気性が荒い。さっきの奴はまだマシな方だ。

 そんな連中を相手にくる説得では、威圧感が強いパワードスーツを着るわけにいかず、生身の人間を使うのは忍びなく、映像では反感が多かった。そのため、生体義鎧が対応する羽目になった。

 だが地上に降りられる者は少なく、仕事は多く……おかげで日付が変わったんだよな、まったく。


「面倒だな。さっさと理解しろ」

「先生、そういうことはまだ……」

「翻訳は切ってある」

「雰囲気から分かることもあります。気をつけてください」

「分かった。しかし……」

「全て終わりましたから、もう気にする必要はありません」

「そうだな。それなら、向かうとするか。それとポーラ、アッシュ達に伝えろ。現地住民の中に協力者を作れ」

「了解です。ですが、良いんですか?」

「連中の中にまだ帝国軍の協力者がいる可能性はある。それに、戦後を見越してだ。諜報部のためだな」

「はい」


 そして俺達は保護所の屋上へ上がると、駐機したままの輸送艇(ババール)に乗り込んだ。向かう先は……


「強制収容所、か。得てして妙な場所だ」

「あんなものが必要ですか?」

「ポーラも知る通り、政治的な判断だ。連邦の要請らしいが……」

「連邦を敵に回せないのは分かります。しかし、こんなことをする必要性は……」

「少なくとも、この戦争の間は敵にできない。そういうことだ。だが代わりに、多少の間引きは黙認されている」

「多少の基準はありますか?」

「俺のさじ加減次第だな」


 これは口だけの言葉ではなく、完全な事実だ。以前に父さんから、全滅さえしなければ良いと言われている。

 そんなことを話している間に、輸送艇(ババール)は強制収容所の屋上にある発着場へ降り立った。他にも何機かある輸送艇(ババール)は、俺達の同類が乗っていたものだ。


「多いようですが」

「強制収容所自体は何ヶ所かあるが、ここが1番大きいからな。立場の高い連中も何人かいる。それはポーラも知っているな?」

「はい。ですが、偏りすぎだと思います」

「俺が伝えておいた。1ヶ所くらいは消えても問題ない、とな」

「そういうことですか。納得しました」

「ポーラにも伝えておくべきだったか?」

「いえ、大丈夫です」

「そうか?無理は……してないな」

「同行するので、伝えられても無意味でした。それで、先生は先ほどの言葉を実行するつもりですか?」

「そのつもりだ。まあ、流石にあの武装を使う気にはならないが」

「威力過剰ですから」

「消しとばすとつまらないからな」


 保護所にも武装はあった。だがあそこは外向きのものばかりで、強力なシールドとエネルギー制御力場も展開されている。

 それに対し、ここにある武装の半分は内向きだ。それらは全て対歩兵用、脱走を抑制するためのものでしかない。


「さて、どうする?ついてくるか?」

「いえ、少し別行動がしたいです」

「好きにして良いぞ」

「ありがとうございます」

「気にする必要はない。また後でな」

「はい」


 ポーラと別れると、俺は両側に扉がある通路を歩いた。

 これらの扉の先には、100人ほどのシュベールが入れられた部屋がある。


「まずは……ここにするか」


 シュミルの認証で二重扉を開け、中に入った。

 この部屋にいるシュベールどもの一部は軍人だが、大半が民間人だ。


「さてと……」


 連中の目に映っているのは軽蔑と怯え。シュベールどもの無意味な優性主義と、圧倒的な力を見せられたことの恐怖。それらが入り混じったものだ。

 500年前と同じだな、この光景は。


「どうした?」


 蔑視しているにも関わらず、怯えて動かず、口も開かない。

 面白くないな、これは。


「誰も声をかけたりしないのか?翻訳機は働いているはずだが」


 さて、どうしたものか……ん?


「赤子か……」


 母親らしき奴が小さなシュベールを抱えている。

 父親らしき奴はいないな。別の所か?それとも死んだか?

 まあそんなことはどうでも良い。俺は母親の片腕を折ると、赤子の頭を掴んだ。


「……醜いな」


 ああ、本当に……


「本当に、醜い……!」


 俺はそのまま頭蓋を握り潰す。

 ついでに恐慌した母親の胸部に蹴りで穴を開け、後ろから襲いかかってきた軍人の首を引きちぎった。


「なるほど。気概が残ってる奴もいるのか」


 ついでにその軍人の体から肋骨を引き抜き、適当に投げる。

 これで10人ほど死んだか。


「だが、無意味だな」


 拳で、蹴りで、頭を砕く。

 貫手で、爪先で、胸を貫く。

 手でもって四肢を引きちぎり、足でもって背骨をへし折る。


「さて……」


 少女に相当するシュベールの心臓を引き抜き、握り潰す。

 少年程度のシュベールの胸を貫き、真っ二つにする。

 半分も終わっていないが、部屋の中は血の海だ。だが……


「皆殺しだ」


 この程度の量で、(あがな)えると思うな。











 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー











「ふぅ……」


 3ヶ所ほど処理をして、ようやく落ち着いた。いくらシュベールが相手でも、流石に怒りに呑まれるのはダメだな。

 だが、奴らに殺された者に比べれば……っと、落ち着け。


「それで、ん?」

「あー、ガイルー?」


 すると通路の向こうから血まみれのメリーアがやってきた。まあ、俺も血まみれだが。

 彼女は左右の手にそれぞれ大きな袋が3つずつ……中にシュベールが入っているのか?ガサゴソと動くモノを持っている。


「どうした?もう飽きたのか?」

「そんなわけないよー。ガイルは休憩ー?」

「そんなところだ」

「じゃあさー、こっち見にくるー?」

「そうだな、そうするか」


 そしてメリーアに連れられ、ある部屋に入ると……


「ギヤァァァァァ⁉︎」

「うるさいですね、このゴミが」

「たっ、助けっ、ああぁぁぁぁ‼︎」

「ははっ、ほらほら!」

「ひっ、いやっ、もう……」

「死にたい?ねえ死にたい?でも……こんなものじゃ死なせないから」


 非常に騒がしかった。

 中にいたのはメリーアと仲が良い、第3から第13世代の生体義鎧達。そして様々な方法で拘束されたシュベールども。

 色々と血まみれだが……まだ生きてるな、こいつら。


「およ、司令?なになに、仲間になりたい?」

「それはない」

「それは残念です。メリーアさん、新しいのは?」

「いるよー?」

「フグー!ムグー!」

「わお、イキがいい!」

「ちっ、うるさいな」


 あまりにうるさかったので、反射的に片方の首を手刀で刎ねた。

 メリーアが袋から出したばかりのシュベールを……刎ねてしまった。


「あー!」

「ちょっと?」

「もったいない」

「むー」

「ああ……お前達はそうだったな」


 こいつらは苦しめないと気が済まないんだったな。500年前は大昔の拷問法を試したりもしていた。

 とはいえ、そういった特異な思考をしているわけではない。シュベール相手限定だ。

 生体義鎧(俺達)の中でも過激派に属する者達。共通点は1つ、シュベールへの怨みが特に強いことだ。


「ガイルは穏健派だからねー、即死させるしー」

「悲鳴を聞く趣味が無いだけだ。手早く済ませたいからな。滅ぼしたいだけともいうか……まあ、流石に兵器だけで終わらせる気は無いが」

「まー、良いけどねー」

「あ、司令、何か話があるの?」

「いや、無いな」

「人数に制限はありますか?」

「好きにしろ。他に迷惑がかからなければ問題無い」

「ありがとうございます」

「あ、ガイルさん!」

「ん?」

「抱いてください!」

「却下だ」


 こいつの冗談もいつものことだ。昔は半分くらい本気だったそうだが。


「さて、俺は行くが……巻き込むなよ?」

「何がー?」

「いや、良い。好きにしておけ」

「りょうかーい」

「はいはい」

「もちろん」

「またお願いします!」

「ダメだ。まったく」


 メリーア達と分かれた俺は通路から外に出て、ベランダに設置されたベンチに座った。

 目の前の庭園では……狩りのつもりか?個人携帯型のアサルトライフルで逃げるシュベールを撃ち殺しているやつもいる。

 冷静に考えてみれば野蛮、なのかもしれないな……だが、この程度で怨みが晴れたりはしない。効率非効率という話じゃなく……


「そういえば……ミーンが毒やナノマシンを作ったって言ってたな」

「妾がどうかしたかの?」

「うおっ⁉︎」


 気づくと、ミーンが背後にいた。

 ……いつの間に?


「作っておるぞ。酒の席でも言ったがの」

「酒……ああ、あの時か。実験でもしてるのか?」

「やっておるぞ。今は被験体探しと、休憩かの」

「精が出るな。俺は好き勝手やってただけなんだが」

「まだ調べたいもののの半分も終わっとらんがな。500年で溜まりに溜まっておるのじゃぞ?」

「趣味か?」

「そうとも言うの。む、お主も来たいのじゃな?」

「まあ、否定はしない……って、俺も?」

「来れば分かるぞ?」


 そう言われたため建物の中へ戻り、ある部屋へ案内される。

 そして何故かミーンに促され、扉を開けると……


「あれ、先生?」

「ポーラ?なるほど、そういうことか」

「言ったじゃろう?」

「そうだな。それで、どんな感じだ?」

「概ね予想通りじゃ。ただ、中には予想外の効果を持つものもあるの」

「例えば?」

「これは苦痛を与えるはずが効果が無いもの、こっちは眠らせるだけのはずが体を腐らせておる。これなんかは酩酊するはずじゃが、何の因果か即死してしまったの。まあ、被験体が古い細胞だけじゃこんなものじゃな。殺すものはちゃんと働いておるしの」

「なるほど。ナノマシンの方はどうだ?」

「異常がある方が問題じゃ。まあ、代謝反応が予想外の場合もあるがの。シュベールどもの研究は足りておらんからな」

「それなら……」

「あの、先生……服を変えませんか?」

「服を?」

「流石にそれは汚いです」

「どうせまだ汚れるが……そうだな」


 ポーラが気にするなら、そうしておこう。

 なので部屋を出て、近くのシャワー室で顔と手、そして翼を洗い血を落とす。服は……新しく造成するか。ここで血抜きをするのは少し面倒だ。

 そういうわけでシャワー室にあった元素操作装置を使って新しく服を作り、それに着替えて部屋に戻った。


「ポーラ、これで良いか?」

「はい、大丈夫です」

「綺麗になったの。浮浪人から労働不能者に格上げじゃな」

「それは格上げなのか?」

「そうじゃぞ?元が酷かったからのう」

「獄烏より酷かったです」

「そんなにか……汚いな」

「そうじゃな……おお、ガイルよ。面白そうな者を見つけておいたぞ」

「ん?」


 獄烏って……俺は屍にした側なんだが。まあ、血まみれの黒い翼だとそう思っても仕方ないか。

 そんなことを思いつつ、ミーンから送られてきたデータを確認すると……


「確かに……これは面白そうだ」


 確かに、面白そうな人物が記載されていた。

 これなら……そうだな。


「メリーア、今良いか?」

『なーにー?』

「血を洗って服を変えておけ。頼みたい用事が出来た」

『えー、今忙しいんだけどー?』

「これを見てもか?」

『あー……うん、良いよー』

「友達も連れてこい。全員だ」

『はいはーい』


 より面白くしてくれるであろうメリーアへの連絡も終わったため、そいつの所へ向かうことにする。


「もう行きますか?」

「ああ。ポーラも来るか?」

「遠慮しておきます。先生の楽しみを盗るのは悪いですし、これも楽しいですから」

「そうか。なら楽しめばいい」

「はい」


 そういうわけで、1人である部屋まで移動する。


「ここか」


 扉を潜った後に向けられる視線は、壊滅させた前3つと同じ。もうこれにも慣れたな。


「道を開けろ。俺の目的はそいつだけだ」


 俺はすぐにそいつを見つけ、一直線に目標の所へ向かう。


「どけ」


 途中で邪魔なやつを殺しつつ、歩く。だが理由は分からないものの、妨害しようとする奴が後を絶たない。

 同胞意識とか、そんなものか?無意味だな。


「邪魔をすれば殺す。邪魔をしなければ、俺は殺さない。最終的に確保することに変わりはないが……さて、お前達ならどうする?」


 すると、全員飛び退くように壁際へ去った……いや、お前は逃げても無意味だぞ。


「お前は逃げるな」

「ひっ⁉︎な、何故じゃ!ワシはっ!」

「お前の都合は聞いていない。全て俺達の都合だ」

「ふざけるな!お、お前達!誰かワシを助けろ!ワシは……」

「黙れ」

「ぎやぁぁぁ⁉︎」


 目標を捕らえ、首を掴んで連行しようとしたが……暴れようとしたため、ブレードで左足を斬り飛ばした。まあレーザーで止血されたから、痛かろうと死にはしない。


「口は開いても良いが、抵抗するな。俺に痛めつける趣味は無い」

「ひっ、ひぃ!」

「利口だな。さて、これで……ああ、そうだ」


 ようやく大人しくなったため、連行し……扉の所で一度立ち止まる。


「防衛機構が勝手に動くのは俺のせいじゃないぞ?」


 そして男を引きずりながら、外へ出た。

 部屋の中ではレーザーで少しずつ切り刻まれる者達が悲鳴を上げているだろうが、強制収容所の防音性は抜群だ。一切外には漏れてこない。


「な、何をする気だ……?」

「さあな。お前は知る必要の無いことだ」

「ふざけるな。ワシは……」

「右足も斬り飛ばしてほしいのか?」

「くっ……」


 黙った男を引きずりつつ、予約しておいた部屋に入る。

 そしてそこでは、4人が待っていた。少し遅れたか。


「ガイルー、それのことー?」

「ああ。お前達も悪いな」

「いえ、呼ばれたので」

「ガイルさんなら悪いことしないし」

「それに、楽しめそうだから」

「ひっ、ひひっ、ワシへの貢ぎ物か?い、良い趣味、だな。褒めてやるぞ」

「はぁ……」


 シュベールどもは確か……他の種族を労働力以外にも使うんだったな。観賞用や、性処理用に。そういう用途に使われた者達を何千人も見たことがある。

 逆の立場になっても、吐き気がするだけだが。こんな獣どもにそんな感情を持つはずがない。

 それにしても……お前の左足を消したのは誰だと思っているんだ?こいつは。


「メリーア」

「なーにー?」

「惨たらしく殺せ」

「りょうかーい」


 俺の意を受けたメリーアは足を振り上げると……股間を踏み潰した。


「ギィィヤァァァ⁉︎」


 ……流石にこれは引くな。男として。


「アアッ⁉︎ワ、ワシっ、ワシのっ!」

「1つ言っておくが」

「イギャアァァァ!」


 今度は肩を踏まれ、悶絶している。あれは鎖骨が折れたのか?

 だが、それだと俺が話せないぞ。


「メリーア、少し待て」

「任せてくれるんでしょー?」

「少しだけだ。俺が話す間はな」

「はーい。ま、良いけどねー」


 苦しんでいるが、話せはするようだな。それなら問題ない。


「1つ言っておくが、お前達は獣以下のゴミクズだ。道具以上の価値は存在しない」

「ひっ、なっ、何をっ」

「利用価値があるから連れてこられた、そんな希望を持つのは無意味だ。ここに連れてきた時点で、情報は全て集め終えた。ここは拷問場兼処刑場、殺すための場所でしかない」


 捕虜に取った時点で、思考と記憶は全て読み取った。確かに有用なものはあったようだが、それだけだ。それ以上の価値はない。

 そして、協力者を仕立てるのは他の強制収容所だ。ここの連中にそんな役目はやらない。


「だからお前ができることは、無様に悲鳴をあげた後に殺されるだけだ。そうだろう?ギルクリア総督?」

「なっ、きさっ、ワシ、をっ!」

「当然知っている。だからお前を連れてきたんだからな。メリーア、最低でも半日は生かしておけ。苦しませながら、な」

「当然だねー」


 メリーアならば、徹底的に痛めつけ、悲鳴をあげさせ続けるだろう。

 殺してくれと懇願したとしても、死なせたりはしないだろう。他のシュベールを連れてきて、目の前で拷問しつつ処刑するかもしれない。

 だが全てはメリーアが好きにやることだ。俺がどうこう指図することはできない。


「さて、行くか」


 それなら、気になった場所へ寄ることにしよう。


「あれ、司令?どうされましたか?」

「気になったから来た。他に必要か?」

「いえ、それで十分です。ご存知でしたか?」

「利用申請で興味を持っただけだ。こんな広いエリアを何のために使うのか、詳しい記載が無いからな」

「それは……申し訳ありません。直接書く方がダメではないかも思いまして……」

「いや、それは問題無い」


 彼は第5世代生体義鎧の技官、ラグニルの部下だ。

 この部屋には謎のコンソールが置かれており、俺が入るまでは何か作業をしていたらしい。


「申請を出して、ここにいるのは良いんだが……解剖はどうした?確かラグニルに頼まれていただろ?」

「それはクルトに任せました。熱心なので」

「ああ、なるほど。それで、これは何だ?」

「ミンチメーカーです」

「それは……つまり?」

「こういうことです」


 その言葉が耳に入るのとほぼ同時に、ある光景がモニターに投影された。

 そこに映っているのは幅30m、奥行き50m程度の空間。その全体でベルトコンベアが駆け足程度の速度で動き、シュベール達を無理矢理走らせている。

 ベルトコンベアには波状の構造、そして所々に大きめの突起物があり、時々シュベールが引っかかっている。

 手前側にはベルトコンベアの無い小さな部屋があり、そこに旗があった。

 そして、最も奥には数百枚の刃を持つローラーが回転している。


『手を!出して!誰か、手を!助け……』


 今、転んだシュベールがベルトコンベアに運ばれ、最奥に到達し……


『ア゛ア゛ア゛ァァァァァァ‼︎』


 10秒程度かけ、血と肉の塊に加工された。


「なるほど、だからミンチメーカーか。あんなものを食べたくはないが」

「当然です。ここはただの有機物処分場、食肉解体場ではありません」

「効果はどれくらいある?」

「女子ども、および老人の多くはこれだけで死にます。まあ、あまり面白くないので割合は減らしていますが。残りはしばらく生き残りますが、それでは絵がつまらないので……」


 そう言って操作すると、壁の一部に穴が開き……


『ギャッ!』

『ひっ、なっ、ヒギッ⁉︎』


 そこから斥力式実弾銃が放たれ、正確に足を撃ち抜く。

 そいつらを助ける者はなく、なすすべなく刃の中へ消えていった。


「このように、トラップも用意してあります」

「まあ、ゲームでも当然だな」


 奴らにとっては命がけのゲームになるが。

 まあクリアしたところで、後で殺すことに変わりはない。


『何で、こんな、イヤッ!』

『たっ、助けて!誰か、誰かぁ!』

『死にたくない!死にたくない!』

『ひっ、いやー!!!』

『や、やめろ!死ぬなら勝手に死ね!離せ!』


 現実を受け入れられず嘆くだけの者。

 助けを乞うだけで、何もせずにそのまま死ぬ者。

 形振り構わず生きようともがき、他人を蹴落とし、蹴落とされて殺される者。

 怯えて人を巻き添えにする者。

 人を助けず自分だけ生きようとし、結局死ぬ者。

 モニターにはシュベールどもの愚行が山ほど映されている。


「はっ、傑作だな。散々人を殺しておいて、自分達の番になったら死にたくない?ふざけるなよシュベールどもが」

「所詮はその程度の生物ということです。だから奴隷に頼らざるを得ない歪な社会を作る」

「そうだな。ちなみに、これのクリアはできるのか?」

「できます。例え半数以上が死んだとしても、互いに協力すればあの旗に触れることは可能です。まあ、協力すれば、ですが」

「するわけがないな。可能なら今もやるはずだ」

「ですが身体能力に優れた者ならば、単独でクリアすることも可能です。まあ、クリアしても生きられるわけではありません」

「ん?」


 その言い方が気になったが……俺が問う前にコンソールが操作され、1つの映像か投影された。


「今が17回目ですが、過去に2回だけクリアされました。これがその1つ目です」

「クリアするのは……こいつか?」

「はい」


 確かに、1人だけ動きの良いシュベールがいる。軍人なのかもしれない。

 そして、そいつが旗の所にたどり着いた瞬間……


「なるほど」

「こういうことです」


 そいつは四方八方から伸びた槍で全身を貫かれ、絶望に堕ちて死んだ。

 そしてベルトコンベアの速度が今までの10倍となり、生き残り全てがミンチ肉に加工された。


「本当に傑作だな。」

「そのようにしましたので……む?」

「どうした?」

「どうやら、この組もクリアしそうです。こいつらですが」

「そうか。それならあれが見られる……いや、クリアした場合の仕掛けだが、止められるか?ベルトコンベアも止めてくれると助かる」

「それは何故……なるほど、そういうことですか」


 了承されたので、俺は追加でいくつか頼み、しばらく待つ。

 5人のグループがある者は踏み台となり、ある者は盾となり、少しずつクリアに近づいていく。

 そして、最後の役割を任された女が旗を取る瞬間……


「や、やっ……」

「おめでとう。そしてさようなら」


 そいつへ拳をぶつけ、頭を粉砕する。


「さてと……皆殺しだ」


 そして残りの連中も、片っ端から肉塊にしていった。











 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー











「ふぅ……」


 3ケタ以上のシュベールを処理し、何度も血で塗れた。血は洗い落としたが、ここまですると流石に疲れる。

 だが、どうやら休んでばかりもいられないらしい。背後に誰かの気配を感じたため、声をかける。


「誰だ?急用があるとは聞いていないが……」

「その、お兄ちゃん……?」

「レイ?」


 しかし、それがレイというのは予想外だった。

 そもそも、何でこんな所に来たんだ?レイがここに来る理由は無いはずだ。


「今、良いかな?」

「どうした?レイがここに来る理由は……」

「だって、心配なんだもん……」

「心配……?」


 そして、心配するようなことがあるか?この中で生体義鎧(俺達)を傷つけることができるのは生体義鎧(俺達)だけだが、殺すことは不可能だ。

 そのため、心配する必要は……いや、もしかすると……


「レイ……怖いのか?」

「ううん。でも……」

「500年前は見せてなかったな」

「うん……お兄ちゃん達のことは知ってるけど……ここまでやるの?」

「確かに、やりすぎてるように見えるかもしれない。冷静に考えても、おかしいのは俺達だろう」


 事実そうだ。ここまでやるのは俺達だけ、生体義鎧の中でも20%にも満たない。

 しかし……それが止める理由にならない、できないのが俺達だ。


「だがな、レイ。帝国人(連中)に殺された、母さんや友達や、妹の……あいつらのことを考えると、これだけじゃ足りない。ワガママみたいなものだが、俺達にとってはそうだ。そして、未来の為にも……」


 俺達はシュベールどもを恨む。たくさんの仲間を、同胞を、殺されたからだ。

 そして帝国を生かしていれば、王国の脅威であり続ける。今回だけは残すが……


第1世代(俺達)だけじゃなく、第13世代まではこんな感じだな。失うものが多かった世代だ」

「ポーラお姉ちゃんも……」

「ああ。ポーラも、沢山の仲間や友人を失っている」


 最初の500年も辛い時代だ。生体義鎧も、一般人も、軍人ならどちらであろうと大量に殺された。取り残された者達の扱いも特に酷く、救出した中には拷問されたことのある者も多い。

 怨むには十分すぎ、晴らすには時間がかかる。


「だから、止められない。俺達にとって、帝国人は憎しみの対象だ。帝国人(連中)が俺達を人とみなしていないようにな」


 種族が違えば、信頼は不可能。融和なんて以ての外だ。

 連邦もそれは同じ。妥協ならまだできるが、連中も異種族。敵対を後回しにしているにすぎない。


「だが、ある程度で抑えさせないと示しがつかないか……もう少ししたら艦に戻らせる。だからレイ、先に戻ってろ」

「うん……でも」

「ん?」


 ここまで強く拒絶するのは第1世代(俺達)くらいだが、異種族が敵というのは全国民に共通する考えだ。

 それはレイも同じ、そこに対する違和感は無いらしい。安心だ。しかし……


「やっぱり、お兄ちゃんはお兄ちゃんだね」


 その言葉が聞こえ、豆をぶつけられたように惚けてしまい、理由を聞くタイミングを逃してしまう。


「急にどうし……はぁ」


 だが、直後に繋がった通信でほぼ察せた。


「おいリーリア。レイを煽ったのはお前だろ」

『ええ。でも、仕方ないでしょ?』

「あの様子だと、悩んでそっちに連絡したか。理由は……俺がいつもと違いすぎること、だな」

『そうよ。まあ、私の方でも驚いてたけど。でも、言ってくれたわ』

「俺もリーリアも第1世代、同じことを忘れていたのか?メルナやシェーンに相談すれば良いだろうに」

『あの子が1番頼る姉は私よ。それに、同じだからじゃない?』

「なるほど」

『ええ。それであんなことを言ってたけど、問題無いのよね?』

「そしてやっぱり聞いてたんだな。ここの処理はほぼ終わってる。余りは……防衛機構で処分しても良い。最後は工作艦(オルファン級)を使う」

『そう。それなら良いわ』


 残りの数は……5%もいない。十分だな。

 ごねる奴らはいるだろうが、説得はできるはずだ。


「それにしても……犠牲の多い戦いだったな……」

『ええ……』

「全体で10億人、だったか」

『0.1%でしかないけど、辛いわね』

「俺達の責任でもある。いや、俺達の方が大きい。もう少し上手くやらないとな」

『それは私もね。本当、誰も死なせたくないわ』

「ああ……それでリーリア、まだ大丈夫か?」

『それは……もう時間ね。じゃあ貴方、またね』

「またな」


 俺もそろそろ仕事が溜まる頃、リーリアも同じらしい。

 2人揃ってメルナに怒られるわけにはいかないからな。名残惜しいが、通信を切った。


「さて……説得するか」


 ごねそうな人間の筆頭はメリーアだが……アレが終わってるならいけるか?












・豆をぶつけられたよう

 急なことに驚くこと。鳩が豆鉄砲を食ったよう、とほぼ同じ意味。

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