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天翼王国銀河戦記  作者: ニコライ
第3章
49/85

第12話

 

 新王国歴7267年11月12日




「時間は……これなら大丈夫か」

「少し遅れただけよ。時間まではまだまだあるわ」

「だが、予想はできるぞ。多分待たれてる」

「そうでしょうね。けど、その程度で苦情は出ないわ」

「だとしても、だ」


 リーリアと一緒に夜の街を歩く。祭りの翌日で働く者が多い日だが、逆に打ち上げで騒いでいる者達もいる。

 それを見ながら2人で歩き、待ち合わせ場所へ向かう。


「お、来たの」

「やっほー」

「待たせたか?」

「やっぱり最後になったわね」


 そしてそこでメリーアとミーンの2人と合流し、ある場所へ足を進めた。

 第1、第4戦略艦隊には他にも第1世代生体義鎧が数人いるが、将官なのは俺達だけだ。機密レベルなどの問題があり、気にせず愚痴を言えるのは3人だけだった。そしてミーンは第1世代じゃないが、第3世代で付き合いの長い戦友だから、一緒に呑むことも多い。

 ちなみにポーラを呼ばないのは、下戸だからだ。あいつ、すぐに酔い潰れて寝るんだよな。俺達が強すぎると非難されることもあるが。

 薬を使わなければいいって?ここには酔うために来てるんだから、そんなことはありえない。


「ここかの?」

「ああ。マスター、奥借りるぞ」

「はい閣下。用意は終えております」

「感謝する」

「ありがとう」


 奥の個室を借りて入り、変装を解く。

 ここでの造成は自由にやっていいようだから、山ほど種類がある酒とツマミから好きに選ぶとしよう。

 薬も用意して、と。


「じゃーあー、始めるー?」

「そうね。前置きなんていらないわ」

「そうじゃの。ではガイル、頼めるかの?」

「まったく。ならとりあえず……防衛戦の勝利に」

「「「乾杯!」」」


 で、グラスを打ち鳴らした。


「でもー、関わったのガイルだけだよねー」

「私もメリーアも命令は待機だったわね」

「そもそも妾は戦闘には関わらぬしの」

「おい、何だその目は」

「別にー?」

「理由は分かってるわ」

「お主、何故妾にまでその目を向ける?」

「鏡を見ろ」


 俺はただ向け返しているだけだ。


「まあ、別にいいわ。貴方が不利になるだけだから」

「おい、何でそんな……」

「女は3人、男はお主1人じゃからの」

「ガイルはいじる対象だよねー」

「お前らな……リーリア」

「え?」

「レイにリーリア用の罰ゲームを3つ位考えさせるぞ」

「ごめんなさい、それだけは許して」


 そんなにコスプレ(黒歴史)が嫌か。

 ん?……そうか、それなら……


「そうだ、メリーア、ミーン。これ見るか?」

「何じゃ?」

「何なにー?」

「実はこの間……リーリア、手を離せ」

「嫌よ」

「まだ何も……」

「絶対に嫌」

「そうか。せっかく良い物を2人にも見せてやろうって思ったんだが」

「絶対にダメよ」

「別に手が使えなくても送れるから問題ないな」

「ちょっとやめて!」


 残念だったな。

 温泉の時のコスプレ画像ならもう送ったぞ。


「おー、これー、面白いねー。可愛いー」

「これはまた良い物を持っておるのう」

「だろ?まだ他にもあるぞ」


 くっくっく、こっちにはまだまだある……


「ガーイールー?」

「……何だ?」

「貴方がそうするなら、私にも考えがあるわよ?」

「というと?」

「メルナとポーラに言いつけるわ」

「っ!?」


 ちょっと待て、それだと家でも3対1……いや、シェーンも加わって4対1か……


「すまない、俺が悪かった」

「分かればいいのよ」

「勝てないねー」

「ガイルはいつもそうじゃな」

「立場低いからな……どうにかしてくれないか?」

「無理じゃ」

「できないよー」

「ちっ」

「勝ったわね」


 雑談だから、まだダメージは少ないけどな……頭が痛いのは事実だが。

 そんな風に雑談をしながら、そしてツマミを食べながら、4人で呑む。蒸留酒だろうと関係ない。


「それにしても、帝国も暇な連中だよな。自分の銀河を調べ終えてないのに、わざわざ数百万光年も旅をするなんて」

「だよねー。自分達の所の方が近いのにー」

「そうじゃのう。無理して出る必要は無いはずじゃのう」

「おかげで、こっちはいい迷惑よ」

「ああそうだ。見つけたらタダじゃ済まさない」

「のうお主ら、もし生きている帝国人を見つけたら、どうしてやるつもりかの?」

「そうだな……生きたまま心臓を引き抜いてやるか。頭を握りつぶすのも良いよな」

「手足を引きちぎってやるのも良いわね」

「お腹をかっさばいてー、苦しめながら殺すー?」

「お主ら、暴力的じゃのう……苦しめるなら毒が良かろうて」


 酒が回ってきた?まあ、自覚はある。酒に強くても、酔わないわけじゃないからな。

 そもそも酔うために呑んでるんだから、これで良いんだよ。


「いや、肉体的に痛めつけないと面白くないだろう。毒だと苦しみが足りない」

「知らぬのか?帝国人の細胞の自死(アポトーシス)を数千倍に促進するような毒もあるのじゃぞ」

「うわ、エゲツないわね」

「よく作れたねー」

「ふふふ、奴らの細胞サンプルなど培養すればいくらでも増えるからの」

「ん?……それ、ナノマシンじゃダメなのか?」

「まあ、それでも良いがの。ただ、毒なら王国人に効かないものを簡単に作れるのじゃ。ナノマシンや生物兵器は対象外の設定が難しいのじゃよ」

「なるほど」


 そんな感じで有効活用できるのか……けどな。


「でもまあ、それをするには占領する必要があるな。面倒だ」

「そうよ。惑星ごと消した方が簡単ね」

「上から毒を込めたミサイルを打ち込めばよかろう?」

「迎撃される。それに、無人兵器には効かない。」

「あー、でもー」

「ん?」

「捕まってる人達がいたらー?占領された星とかー」

「あ……」


 あの時の王国と同じ状況になっていないとも限らない、か……そういえばそうだな。メモしておこう。


「それは……占領が必要か。そいつらまで殺したら王国の敵が増えすぎる」

「確かに、連邦に口実を与えるわね。同時はないだろうけど、終わった後なら……」

「敵になるとしても、時間が欲しいな。今の戦力だと防衛で手一杯だ」

「ラグニルがどうにかしてくれたら良いけど……」

「あいつだけに任せてもいられない。無人機を戦術的に使えるようにすれば、すぐに用意できる。最低でも、時間稼ぎにはなる」

「だよねー。できればー、艦隊戦力にしたいけどー」

「そんなこと、簡単にはできないわ」

「のう、お主ら」

「ん?」

「なに?」

「えー?」

「その話題には妾は参加できぬのじゃがのう」

「そうだな」

「そうね」

「そだねー」

「話題を変えたりはせぬのか?」

「無理だな」

「無理ね」

「無理かなー」

「こやつら……!」


 流石に、後で俺に八つ当たりが来るよな、これ……止めるか。


「まあ冗談はここまでにして」

「お主も大概じゃの……」

「別にいいだろ。それで、この後はどうする?」

「この後って……帝国銀河に攻めるまで、ってこと?」

「ああ。俺とリーリアは仕事をしつつ休暇を楽しむ予定だ」

「休暇を同時に取れるとは限らないけど?」

「できる限りになるか。もし無理だったら、また埋め合わせはする」

「そう」

「同じかなー。今のうちに休んどくー」

「妾にも人付き合いはあるからのう。それに、研究も進めねばならぬ」

「戦場で呑気に研究なんてしてられないってことか」

「そうじゃのう……そういえばお主、妾を自分の女にするとか言ってなかったかの?誘ってはくれぬのか?」

()()()?」

「大昔の仮定の話だ。今は戦友、それ以上でも以下でもない。というかミーン、これもちゃんと言っただろ」

「そうじゃったかのー?」

「ついにボケたか、このロリババア」

「何じゃと?若作りジジイが」


 互いに冗談なのは分かりきってる。これは酒の席で時々やるやつだ。

 まあ、今回は少し違う終わり方だったが。


「ああ、それなら無理よ」

「どうしてだ?」

「私が認めないわ。あの時なら半殺しにしてるわね」

「うっ……手を出さなくて良かったのう」

「いや、ポーラもほとんど同じくらいの時期だぞ?」

「あの子は良いのよ。可愛いから」

「差別じゃ!」

「冗談よ」

「なあリーリア、それはどっちの……いや、どの意味だ?」

「さあ?」


 どの意味かによって、反応する相手が変わるぞ?具体的にはミーンとポーラ、そして俺だが。


「ねー、リーリアー。それくらいにしたらー?」

「まあそうね。十分からかえたし」

「のうリーリア、解剖の実験体が必要なのじゃが、お主でいいかの?」

「ミーンの部屋が消滅してもいいんだったら、話だけは聞くわよ?」

「おいこら。2人とも、そんな喧嘩腰で話すな」

「無理よ」

「無理じゃな」

「おいおい……」

「大変だねー」

「そんな他人事……他人事だな」

「そうだよー?」


 仲裁に入らないと立場がマズくなるのは俺だけだ。

 好き勝手に使われてるって言われても、実際その通りなんだよな……


「それくらいにしとけ。どうせ俺もターゲットに入ってるんだろ?」

「よく分かったわね」

「何回目だと思ってる。どうせ俺に飛び火するなら、先に潰した方が楽だ」

「つまらんのう」

「何だ?酔い潰れたいのか?」

「ほう、妾と飲み比べるつもりかの?」

「おおいいぞやってやる」

「ふん、返り討ちにしてくれるわ」


 売り言葉に買い言葉と言うべきなのか、そんなこんなで決まった飲み比べ。俺達はアルコール度数40〜60度の酒を大量に造成し、特に合図もなく開始する。

 で、結果的には。


「のじゃー……」

「ふん、俺に勝負を挑むなんて1万年早い」


 俺の圧勝だった。


「わー、ミーン大丈夫ー?」

「んぁ?メリーアのう、のう……」

「大丈夫じゃなさそうね。それより貴方?」

「ん?……おいリーリア、何でそんなもの(高度数蒸留酒)を出してる。というか、かなり酔ってないか?」

「大丈夫よ。まだ呑めるわ」

「それを酔ってるって言うんだよ」


 俺も付き合うが、俺の倍近いペースで次々と呑んでいくリーリア。

 いや、俺としては嬉しいぞ?けどな……


「ふふふ、あなたぁ」

「おい、リーリア?」

「なーにぃ?」

「酔ったな」

「酔ってないわよぉ。まだまだ呑めるからぁ」

「いや酔ってるだろ」


 やっぱりこうなった。

 リーリアは酔うともの凄く甘えてくる。普段の態度からは考えられないくらい。だが記憶は残るので翌朝悶絶し、別の意味で甘えてくるまでがテンプレだったりする。


「あーあー、リーリアまで酔っちゃってー」

「メリーア、これ呑まないか?」

「なにー?あたしも酔わせて連れ込むのー?」

「誰がするか。そろそろこれ(酒とツマミ)を片付けて、帰り支度をする時間だ」

「そっかー、でもー」

「代わりに、ミーンを連れて行っていいぞ」

「じゃあ呑むよー。ふふー、どうしちゃおっかなー?」


 こんな発言をしているが、別にメリーアに百合の気があるわけじゃない。こいつも共有だが彼氏がいるし、仲が悪くなったという話は聞いてない。

 ミーンはせいぜい着せ替え人形にされて、知り合いに画像を回される程度だろう……多分。もしかしたらイタズラでそういうことになるかもしれないが。


「ねーえぇ、あなたぁ」

「まったく、仕方ないな」

「ほらーミーンー?これはー?」

「んぁー……?」

「こいつも……メリーア、そろそろお開きにするか?」

「そーだねー。2人も潰れちゃったしー」

「流石に3人になると、俺1人だとどうしようもないからな」

「えー?あたしの方が先に潰れるってー?」

「いつもそうだろうが」

「そうだけどー。それでー?」

「さっきの通り、ミーンは任せる。好きにしろ」

「やったー」


 ……やりすぎるなよ?

 そんなことを言いつつ、俺達2人は造成した食器やグラスを消した後、1人ずつ介護をして個室から出た。


「マスター、また次も頼む」

「はい。お任せください、閣下」


 ここは雰囲気がいいし気分もいいから、何度も使ってる。マスターとも顔馴染みだ。

 とはいえ、礼儀は忘れないが。


「じゃあねー。ほらー、ミーンー?」

「あぁー……」

「もーうー、好き勝手やっちゃうよー?」

「まったく。また後でな」

「またねぇ〜」


 そしてメリーア、および彼女に背負われたミーンと別れ、腕に抱きついたリーリアと共に帰路についた。


「あ、な、たぁ、楽しかったぁ?」

「ああ。ところでリーリア、そろそろ演技はやめないか?」

「……やっぱり、分かってたのね」


 そんな気はしていたが、予想通りか。

 リーリア、こんな感じで時々酔ったフリをして甘えるんだよな。


「まあな。けど甘えたいんだったら、家で素直に言え」

「嫌よ。見せつけないと面白くないじゃない」

「性格悪いな」

「それを見て楽しむ貴方もよ」

「そうか?」

「そうに決まってるわ」

「まったく」


 そんな掛け合いをしつつ2人で夜の街、行きよりも活気の増えた街を歩く。

 人は多いが、最も近い人は変わらない。繋いだ手に伝わる体温が、嫌でも隣の存在を強調する。


「ねえ貴方、少し寄りたい場所があるんだけど」

「リーリア、家にはまだ早いぞ。それに……」

「いいでしょ?私も酔ったのよ」

「まったく。それだと、帰りは明日の朝になるかもな」

「私はそれでいいわ」

「俺が責められるんだからな?」

「ちゃんとフォローしてあげるわよ。だから、ね?」

「頼むぞ?」


 本当に頼むぞ?












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