表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天翼王国銀河戦記  作者: ニコライ
第3章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

47/85

第10話

 

 新王国歴7267年11月1日




「さて、本題に入ってもいいか?」

「はい、どうぞ。シュルトハイン元帥閣下」

「分かっているとは思うが、俺達戦略艦隊が陸海軍の力を必要とするのは、星系や要塞などを攻略する時だ」

「そして、その時は数を生かして広範囲に広げる必要があります」

「そうだ。それと、昨日は陸軍に行ってきた。彼らを輸送する揚陸艦も、海軍は用意する必要がある」

「はい。ですが閣下もご存知の通り、海軍は陸軍全軍を輸送できるだけの揚陸艦を所有しております」

「そうだな。だが、実際にやってみると予想外の事態が出る場合もある。特に今回は揚陸艦の護衛だな。今のうちに演習を繰り返しておくと良い」

「了解しました」


 昨日とは打って変わって、俺達は海軍の第1-1宇宙港に来ていた。

 ここは王都を挟んで第1-1基地の反対側にある王都防衛の要の1つで、海軍最大の宇宙港でもある。

 そして対面しているのは海軍総長、アッシュ-セルファルト=ニティレアランド上級元帥。


「動員規模は統合艦隊単位になるだろう。だが、1つの統合艦隊全てを送り出すわけにはいかない」

「はい。全軍から艦隊や艦群を選抜し、統合艦隊クラスの艦隊を編成する予定です」

「その選抜は?」

「既に候補は。来月には1ヶ統合艦隊分、3ヶ月後までには5ヶ統合艦隊分の編成を行う予定です」


 高いカリスマ性を持ち、多くの部下から慕われる人物だが……彼も俺の前だとこんな感じだ。


「流石だな。だが、少し要求を聞いて欲しいが、良いか?」

「もちろんです。どのような内容でしょうか?」

強襲揚陸艦群(131から145)隠密偵察艦群(901から910)、および揚陸艦群(461から471)は当然として、護衛艦群(421から428)、および護衛系の通常師団もある程度入れて欲しい」

空母艦群(221から259)砲撃艦群(721から762)ではなく護衛艦群を……彼らは民間護衛用なのですが」


 確かに、護衛艦群はシールド艦(シェルスト級)大型戦艦(ザックバッハ級)を中心とした、船団護衛に長けた部隊だ。1度も使われていないとはいえ、万が一の時に備えているとも言う。

 そして、だからこそ使い道がある。


「もちろん空母艦群と砲撃艦群、それに偵察艦群(821から836)潜宙艦群(321から343)も必要だ。だが、揚陸部隊がやられたら元も子もない。数が少ないから、配置には気をつける必要があるけどな」

「なるほど……水雷艦群(621から642)はどういたしますか?」

「水雷艦群は主に対空迎撃だ。突撃の多用は被害が大きすぎる。ここぞという時だけだな。それと、潜宙空母艦群(961から963)潜宙設営艦群(971から974)も用意はさせておいてくれ。恐らく2,3回は使うことになる」

「分かりました。その程度であれば問題はありません」

「それと……第999はいつでも動かせるようにしてほしい」

「……それほど、ですか」

「ああ。陸軍でも言ったが、少数精鋭が必要となった時、俺達以外には彼らしかいない」

「了解しました。すぐさま即応体制へ移行させます」


 順調だな。話が早くて助かる。


「助かる。それで……っ⁉」


 だが続きを言おうと時、警報が鳴り響いた。

 この音は……敵襲か。


「ポーラ」

「何事だ!」

「アルストバーン星系に仕掛けられたレーダーが帝国軍と思わしき艦影を確認しました。恐らくそれだと思われます」

「そうか。セルファルト上級元帥、司令室まで行きたいが、良いか?」

「なっ……もちろんです。どうぞこちらへ」


 一瞬で動揺を抑えたか。流石だな。

 その彼に先導され、俺達は総長室にあった専用の転送装置に乗り、司令部へ跳んだ。


「状況は!」

「そ、総長、それが、か、閣下!?」

「落ち着いて報告しろ。あの警報なら、攻撃はまだ受けていないな?」

「は、はい!アルストバーン星系外縁部に帝国軍の出現を第16統合艦隊司令部が確認、その知らせを受け全軍へ警報を発しました」

「そうか……シュルトハイン元帥閣下」

「ああ。俺も第3戦略艦隊と第8戦略艦隊へ確認を取る。まったく、祭りの前なのに何で来るんだか……」

「先生、私達も手伝います」

「分かった。セルファルト上級元帥、メルナ、シェーン、ポーラ、レイの席を用意して欲しい。アーマーディレストに回線を繋げる許可もくれ」

「了解しました。おい、すぐに用意しろ!」


 参謀用の予備席があったので、4人はそこに座った。そしてアーマーディレストへ回線を繋ぎ、アレの処理能力をここで使う。


「それと……戦略艦隊総司令部司令室、陸軍本部司令室への通信を繋げて欲しい」

「構いませんが……」

「俺がこの防衛戦の指揮を取る。良いか?」

「もちろんです。部下達をお預けします」


 断られる心配はしてなかったが、了承されれば安堵とする。残り2人も大丈夫だろう。


『どうした?セルファルト上級元帥』

『今のタイミングだと……シュルトハイン元帥閣下?』

「単刀直入に言う。父さん、ヤヌアルメル上級元帥、俺にこの防衛戦における全軍の指揮権をくれ」

『良いぞ。むしろ、お前がそこにいてくれて助かった』

『構いません。どうぞ自由にお使いください』

「ありがとう」


 それなら……この手でいくか。


「父さん、シュルトバーン星系内に今すぐ動ける戦略艦隊はいくつある?」

『1つだ。第2は動ける。お前達の第1と第4はまだだ。第6、第9、第10は完熟訓練とその後の評価および点検中、すぐには動けないぞ』

「第1は集合命令を出した。リーリアも同じはずだ。ただ、残りの3つは間に合うかは分からないな」

『それはどの意味だ?』

「当然、俺達が奴らを殲滅するのに、だ。メルナ、第8に第3の近くへ亜空間ワープをするよう伝えてくれ。敵の規模次第だが、第2は予備兵力にする。亜空間ワープの準備をさせておけ」

「ええ、分かりました」

「ポーラ、敵艦隊の総数は確認できるか?」

「まだです。陣形から見て、20から30%だと思われます」

「それなら、第3の潜宙艦隊に偵察させろ」

「了解です」


 第3戦略艦隊と第8戦略艦隊は言うに及ばず、第10軍団と第16統合艦隊も既に9割以上が戦闘準備態勢になっている。

 第3と第8、それに第10軍団と第16統合艦隊の司令部への通信も繋いだ。

 残りも恐らく問題ない……それに、


「帝国の事前偵察が外縁部で助かったな……レイ」

「何?お兄ちゃん」

「第10軍団の飛行型機動兵器から6割を抽出しろ。シェーンは超重戦車(ガシャルドネ)を始めとした戦車部隊だ。火力を含めて……これくらいだな」

「……了解」

「それで……ん?」


 リーリアから通信が来たので繋いだ。どうやら艦橋にいるらしい。


『貴方、そこにいたのね』

「リーリアか、ちょうど良い。第4が集結し終わったら連絡をくれ」

『9割方終わったから繋げてるわ。それで?』

「それなら、第4戦略艦隊旗艦(ダルティリンディス)を使ってアルストバーン星系の情報解析をしてくれ。多分あの要塞のやつだけで足りるだろうが、万が一に備える。第4そのものは予備兵力だ。だが一応、亜空間ワープの準備はしておけ」

『了解よ。そのつもりで準備してたわ』


 第1も俺達以外で82%か。半分近くは休暇のはずなのに、かなり早いな……同じ指示を出しておこう。


「ポーラ、各種揚陸艦と揚陸艇に抽出した部隊を載せる。護衛も含めて、上手く調整してくれ」

「了解しました」

「それで……第3戦略艦隊と第8戦略艦隊の亜空間ワープ先は指定する。ミルティシュル元帥、ユーンクリブ元帥、こちらの指示に合わせて跳んでほしい」

『了解しました』

『お任せください』


 どこに出るかで対応は変わるからな……重要度で言えばある程度限られるとはいえ、それでも多い。

 やっぱり、好き勝手攻められる方がいいな。


「前準備はこれで終わり……後は、連中が直接こっち(シュルトバーン星系)に来ないことを願うだけ、か」

「それらしきものは見つかりませんでしたが?」

「だが、油断はできない。巧妙に隠されている可能性はゼロじゃないからな。それに、まだ調べきれてはいないんだろ?」

「了解しました」

「もしシュルトバーン星系へ来るなら、第2と第4、それと第1を前に出す。海軍の中で即応可能な部隊のデータも送ってくれ」

「は!」

「先生、第3戦略艦隊の潜宙艦が偵察に成功しました。敵艦総数はおよそ30億隻です。機動要塞は4000隻を確認しました」

「分かった。その数ならどうにかできるか……」


 この間の要塞攻略時より少ないが、今回は30億隻全てと対峙することになる。

 さて、どうするか……


「敵艦隊からワープの前兆を確認!加速に入りました!」

「詳しく報告しろ!」

「データをこちらに回せ。ポーラ」

「このエネルギー量……先生、目標は恐らくアルストバーン星系内です。エネルギー量から推測すると、第4惑星か第5惑星の軌道上だと思われます」

「小惑星帯に出る可能性は?」

「ありますが、あれだけの艦隊がそのままワープできる地点はありません。どうしても陣形が崩れます。すぐ近くに出る可能性はありますが……」

「分かった。アルストバーン星系の第4惑星および第5惑星公転軌道近隣の要塞に警戒情報を流せ。第1惑星、第2惑星、第3惑星の駐留艦隊は全艦亜空間ワープの用意もしろ」

「は?ですが……」

「別に全てを出すわけじゃない。だが、残す部隊にも即応性を持たせる必要がある」

「了解しました」

「それで、揚陸艦隊の準備は?」

「既に終わっている模様です」

「分かった」


 今できる準備は全て終わっている。残りはワープ先と配置と……

 っと、そろそろか。


「敵艦隊ワープアウト!」

「位置は……第4惑星軌道上、第4小惑星帯と第5小惑星帯の最接近点近くです」

「これでほぼ確定か。助かったな」

「そうですね。そうなると、要塞のどれかを狙うでしょうけど?」

「まずは潜宙艦を狩る。第3と第8は俺の指定するエリアで……第16統合艦隊の水雷系と潜宙系の艦群は、それぞれこのエリアまでを重点的に探査しろ。恐らく、これでどこを狙うつもりか分かるはずだ」


 ソナーに引っかかっている艦もあるが、周囲にはこの数倍以上の潜宙艦がいるはずだ。敵の目は潰しておくに限る。


「はい、通達します」

「それと、潜宙空母(マルフェス級)も上手く使わせろ。帝国軍が潜宙艦に機動兵器を載せたという情報はない。ソナー範囲も含め、こっちが有利だ」

「先生、潜宙揚陸艦(レイメラス級)はとうしますか?」

「そっちは別だ。まあ、単独に近くなるが」

「了解です」


 そして予想通り、各惑星・衛星に相当数の潜宙艦が潜んでいた。小惑星帯にあまりいなかったのは、侵攻対象として見ていないからかもしれない。

 それで、最も多かったのは第3惑星だった。やっぱりここを狙うか……だが、今の位置ならちょうどいい。


「それでこいつらは……このエリアに広がって布陣させろ。ミルティシュル元帥、第3戦略艦隊をここへ亜空間ワープしろ。ただし、戦闘準備態勢のままだ」

『よろしいのですか?』

「この後も時間がかかる。人も、必要以上に消耗することはない」

『了解しました』

「それと……こっちもか」


 俺の命令に従って小規模な艦隊がバラけながら移動を始め、指定した場所に潜伏した。同行する潜宙艦はその近くの異次元で。

 そしてほぼ同時に、第3戦略艦隊の各艦が第4小惑星帯の中心部付近へワープアウト、陣形を整える。


「ミルティシュル元帥、第3戦略艦隊旗艦(ゼルクファシューラ)とラファレンスト級のステルス装置を解除、砲撃を開始しろ。牽制で良い」

『了解しました』

「ユーンクリブ元帥、第8戦略艦隊は第3戦略艦隊の後方へ亜空間ワープ、同様にステルス装置を解除して砲撃を始めろ」

『はい。ですが、これで良いのですか?あまりにも……』

「この程度だから良い。これくらい罠らしくすれば、逆に動きを読みやすい」


 普通に考えてここで取る手は2つほどあるが、帝国軍の性格を考えれば1択に絞られる。


『そうなのですか……分かりました』

「さて、フロスティ元帥。猟犬の役目は君達に任せる」

『はい、お任せを』


 彼女はアルマ-フロスティ、第16統合艦隊司令だ。

 第16統合艦隊は海軍の精鋭としてこのアルストバーン星系を任され、そしてこの戦場では、彼女達に任せる役目が1番重要になる。


「敵艦隊、移動を開始しました。第3戦略艦隊、および第8戦略艦隊の方角へ向かっています」

「かかったな。第3と第8は広域へ広がりつつ後退、第10軍団、第16統合艦隊、準備は?」

『十分です』

『いつでも開始できます』

「分かった。第16の出番は……もうしばらく後だな。第10はさらに後だ」


 作戦開始にはまだ距離がある。次善策も用意しているが、こっちはあまり使いたくない。

 だが幸いにしてそんな考えは伝わらなかったのか、その後帝国軍はワープも使いながら時間をかけて予想した位置へ移動したので……


「第16統合艦隊、亜空間ワープ開始」

『了解。全艦、亜空間ワープ開始!』


 こちらも行動に移すことができる。

 第16統合艦隊の艦艇が帝国軍の後方100万kmの位置へ亜空間ワープを行い、艦隊前衛が激しい砲火を放ち始めた。

 もちろん、全艦と言っても1億隻全てじゃない。作戦に参加する全ての艦って意味だが……指摘する必要はなかったか。


「第16統合艦隊、攻撃を開始しました!」

「第3戦略艦隊、第8戦略艦隊が前進します!」

「敵艦隊、60km/sへ増速しました!」

「落ち着け。別に負け戦じゃない」

「「「は、はい!」」」


 まったく……いや、初陣ならこんなものか。もう少し緊張をほぐさせるか……

 と、そんなことを考えて実行していたが、その間も戦闘は続いていた。

 第16統合艦隊は順番に先頭を交代しつつ、交互に休息を取りながら、帝国艦隊を小惑星帯の方へ追いやっている。これだと火力は低くなるが、今はこれでいい。

 そして第3、第8戦略艦隊は砲撃を続けたまま、後退から前進へ変えた。


「ポーラ、残りは?」

「約3万kmです」

「500秒……長いな。損耗率はどうだ?」

「第3、第8戦略艦隊を合わせると約0.3%です。海軍は中破が100隻程度、大破は5隻、沈没艦はありません」

「距離があるからか。命中率を下方修正して……帝国軍は?」

「現在、0.2%ほどと思われます」


 帝国軍艦艇の火力は前方に集中している。そのおかげで、後方にいる海軍への被害は少ない。そして帝国軍にとって射程外に近い位置にいるためだろう。第3と第8の被害もほとんど無い。

 この状況を打破するために前進しているんだろうが……生半可な罠なら食い破ろうとしているのか?

 だが残念ながら、俺が用意したのはそんな生易しいものじゃない。


「ポイントに着いたら総員戦闘態勢、攻撃開始だ。こちらの合図は待たなくて良い。徹底的に殲滅しろ」

『『は!』』

『はい』

『了解いたしました』


 衝突を恐れているかのどうなのか、どうやら帝国艦隊はこの距離でも小惑星帯内部へワープすることはできないようで、俺達にとっては順調だった。

 小惑星帯の後ろに出ることもしないからな。こちらの予想以上にワープ条件が厳しいのかもしれない。

 そして……


「敵艦隊がポイントへ到達、作戦が開始されました」


 帝国艦隊の7割が小惑星帯の中へ入った時、彼らは動き始める。

 全方位、連中の四方八方から砲撃とミサイルが放たれた。


「……口出しの必要は無いな。任せるか」

「そのようですね」

「うん、ちゃんと動けてるよ」

「……大丈夫そう」

「問題は無いようです。イレギュラーも存在しません」


 その源は周囲に潜伏していた戦車隊と陸海軍の飛行型機動兵器、および駆逐艦を始めとした戦闘艦群だ。機動兵器は揚陸艦に載せていた分で、戦闘艦はその護衛。全て小惑星の陰でステルス装置を全開にして隠れていた。

 なお、その内側には第3と第8所属の揚陸艦もいるが、これは戦略艦隊の方が数が少ないからで、他の意図はない。


「第10軍団戦車部隊、超重戦車(ガシャルドネ)を中心に砲撃を行っています!」

「揚陸艦隊は退避中。小惑星の陰に隠れています!」

「分かってる。もうこの後こちらからやれることはない。必要以上に緊張することはないぞ」

「「りょ、了解!」」


 その戦車隊には多砲塔戦車(ギィラン)重装戦車(ランドル)砲撃戦車(ミラード)だけでなく、超重戦車(ガシャルドネ)もいる。相手が戦闘艦でも、生半可な砲撃は効かないような化け物だ。重力子砲(主砲)の威力も折り紙つき。

 実際、戦艦並に大暴れしている。


「ねえお兄ちゃん、言い過ぎじゃない?」

「そうかもな。だが、初陣気分は早々に抜くべきだ」

「それはそうだけど……あ、飽和攻撃をやるみたいだよ」

「もう着弾したぞ。結構当てたな」

「着弾率は74.2%です。迎撃が機能しにくい場所を狙った模様です」


 もちろん、飛行型機動兵器や戦闘艦も負けていない。ミサイルの雨あられが帝国艦隊を襲い、少ないながらも戦艦の砲撃が機動要塞を破壊する。

 さらに第16統合艦隊が帝国艦隊後方5万kmへ亜空間ワープし、砲撃をより苛烈にしていふ。発艦した飛行型機動兵器も亜空間ワープで帝国艦隊の周囲に現れ、共同でミサイルを叩き込む。

 第3と第8も相当数の戦闘艦を帝国艦隊近くへ亜空間ワープをさせていて、被害を出しながらも多数の艦艇を沈めていた。


「潜宙艦隊の効果も大きいようですね」

「ああ。奴らもここまだは想定してなかっただろうな」

「……自分達の作ったものが自分達を苦しめる……ってこと?」

「そういうことだ」


 そして潜宙艦隊の的確な魚雷飽和攻撃。前方の第3と第8、後方の第16統合艦隊も含め、濃密な砲火がこの宙域を包んでいる。

 思考加速をしていないからでもあるが、帝国艦隊は急速に数を減らしていった。


「機動要塞は……順調みたいだな」

「はい。既に約半数を撃沈し、7割の反応性を低下させています」

「そうか。それなら……」

「あ」

「ん?」

「失礼しました……敵艦全艦の反応性が低下しました。旗艦を全滅させた模様です」

「分かった。それで、被害は?」

「現在のところ、第3戦略艦隊と第8戦略艦隊の損耗率は17.6%です。第10軍団は損失機131万7345機、第16統合艦隊は撃沈艦2万8725隻、戦死者は……968万7352人です」

「そうか……殲滅は?」

「もう間もなく終了します」


 罠に嵌めてもこれか……戦略艦隊だけで押し切れないとはいえ、少し辛い。

 被害が追加されなかったのがまだ幸いだな。


「感謝いたします、閣下。閣下のおかげで敵を撃退することができました」

「いや、将兵達の被害もかなり出てしまった。もっと減らすべきだっただろうが……」

「いえ、閣下だからこそあれだけで済んだのです。私が指揮した場合、倍では済まなかったでしょう」

『自分も同感です。自分ではこのような作戦を立てることは不可能でした』

「そうか、ありがとう」


 ……これ以上は冒涜になるか。命をかけ、そして失った彼らへの。

 俺達(生者)にできるのは彼ら(死者)の想いを受け継ぎ、次へ繋げることだ。過剰な哀れみはいらない。


「後処理は任せても良いか?陛下、それと総帥府への説明は俺がやる」

「了解しました。話の続きはまた後日ということで」

「ああ。可能な日付を送る。その中から選んでくれ」

「はっ」

「じゃあ行くぞ」

「はーい」

「……了解」

「分かりました」

「後はお願いしますね」


 そして俺達は海軍司令部を出て、王城へ向かった。まあ......殿下(シュン)の食いつきは予想外だったが。












・特殊艦群

 陸軍の特殊師団と同様に、各部門の精鋭が集められた艦群のこと。

 各統合艦隊に一定数ずつ所属していて、数は第16統合艦隊、次いで第1統合艦隊に多い。

 現在、特殊艦群は250個存在する。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ