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天翼王国銀河戦記  作者: ニコライ
第3章

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第9話

 

 新王国歴7267年10月30日




「ここに来るのは久しぶりだが、少し変わったな」

「は、模様替えとは異なりますが、部署の新設および廃止はある程度の頻度でありますので。現在は諜報部設立もありますので」

「そうでしたか。それでは、変えたばかりでは大変ですね」

「はい、殿下。その時は迷う者が出ます。あまり多くはありませんが……」

「……仕方ない」

「利便性を考えるなら、変更は必要です」

「お兄ちゃん、ウチはやらないの?」

「わざわざやる必要がないだろ。変わらないんだからな」


 俺達が今いるのは陸軍の第1-1基地。陸軍本部のある、陸軍最大の基地だ。そこで案内役の後ろを歩き、陸軍総監室へ向かっている。


「閣下、ガイル-シュルトハイン元帥閣下以下5名の方々をお連れしました」

『お通ししろ』


 そして俺や父さんの執務室より広い部屋、そこで80代の男が出迎えられた。


「お待ちしておりました、シュルトハイン閣下」

「訪問を許可してくれて感謝する、ヤヌアルメル上級元帥。だが、階級が下の者にへりくだり過ぎるのは良くないぞ」

「はは、お厳しい。ですが、そう言われて守る方がおりますか?」

「……いなかったな」


 彼の名前はオルド-ヤヌアルメル、陸軍総監の地位にある上級元帥だ。

 ただ、話し方は……無理か。例え上級元帥でも生体義鎧でない一般人、俺達に対しては全員こんな感じだったからな。


「まあいい。それより、本題に入るとしよう」

「ではお座りください。メルナ殿下方の椅子も用意しております。それと飲み物も」

「すまないな」

「いえ、光栄です。それで、本題ですが……」

「ああ。帝国銀河侵攻作戦中における、陸軍との共同作戦について、いくらか話しておきたい」


 アルストバーン星系の視察とこの間の海軍との共同作戦から必要だと思い、父さんに事前調整を提案していた。


「基本戦術は御前会議の通りでよろしいですね?」

「そうだ。ゲラスリンディ級を使い、ワープゲートで呼び寄せる。問題はその後だ」

「惑星や要塞の占領……現在はどうされるおつもりで?」

「今考えているのは、時間差での降下だ。戦略艦隊(ウチ)の揚陸部隊が最初に降下して橋頭堡を築き、その後陸軍と共に制圧する」

「なるほど。ですが陸軍にも降下作戦に優れた部隊がおります。彼らであれば……」

「その辺りは状況次第だな。いくらでも補給できる戦略艦隊と違い、陸軍の持つ戦力は有限だ。戦えば被害は免れられず、戦力が大きく減れば連邦に付け入る隙を与えることになる。できる限り、損耗はこっちで請け負いたい」

「了解しました」

「それに、俺達は陸軍も当てにしている。数ではなく、実力をな」

「ありがとうございます。そう言っていただけると励みになります」


 実際、陸海軍の実力はかなりのものだ。

 揚陸部隊相手に1対1では敵わなくとも、連携して勝とうとしている。まだ勝てたことはないが、その努力は質量共に素晴らしい。


「それで今日話したいのは、具体的にどこの部隊を抽出するかだ。ヤヌアルメル上級元帥の言う通り、部隊によって向き不向きがある。場合によっては、第10軍団から呼ぶことも考えている」

「そうですね……自分は今のところ、901らを想定しておりますが。彼らは守りより攻め向きですので」

強行揚陸師団(901から925)は確かにそうだな。25個なら戦力としても十分か。いや、今10個は他の軍団と入れ替えられていたか?」

「はい。そして残り15ヶ師団の代替としては超重師団(241から245)高速師団(221から227)、および対宙師団(621から637)などを考えています。一時的に、となるでしょうが」

「なるほど……揚陸師団(661から673)はどうする?」

「強行揚陸師団の補佐というのはどうでしょうか?数は強行揚陸師団より少ないですが、彼らには彼らの強みがあります」

「そうだな、それで良いだろう」

「はい、準備させておきます」


 特殊師団の数は少ないが、その分精鋭ばかり。向き不向きがあるとはいえ、実力はかなりのものだ。


「他に向いているのは……機歩混成師団(421から453)か。機甲師団(821から869)も候補だが、歩兵師団(721から765)は……通常師団でも十分だな」

山岳戦闘師団(261から266)高山戦闘師団(271から273)砂漠戦闘師団(281と282)熱林戦闘師団(285と286)凍土戦闘師団(291と292)の各師団はどうでしょうか?」

「投入できる場所に限りはある。だが……星によっては使えるかもしれないな。考えておこう」

「ありがとうございます」


 ただ、揚陸する必要がある場所は基地や要塞の可能性が高いから、出番は無いかもしれない。だが一応、頭の隅に置いておこう。


「それと、航空師団(821から865)は必ず入れてほしい。一般師団でも、飛行型機動兵器は多めにな」

飛行強襲師団(251から257)はどういたしましょうか?」

「場合によっては必要になりそうだな。通達しておいてくれ」

「了解しました。教導師団と打撃師団も忘れず加えておきます。それでは……」

「それともう1つ」

「どういたしましたか?」

「第999はいつでも動かせるようにしてほしい」

「っ、それは……」

「杞憂で済めばそれで良い。だが少数精鋭が必要となった時、俺達以外には彼らしかいない」

「分かりました……すぐさまローテーションを変更します」


 彼ら(第999)が必要となる状況は、できれば考えたくない。

 だが……


「……1つ、いい?」

「シェーン、どうした?」

「……アルストバーン星系……歩兵師団や機歩混成師団も抜かない?……対宙師団に」

「それは難しいな」

「万が一を考えますと、やはり全てを換えてしまうのは不都合が生じます。通常師団と交代で、なら可能ですが……第10軍団では」

「そうですね……それでは、山岳戦闘師団と砂漠戦闘師団を用いるのはどうでしょうか?」

「あ、良いんじゃないかな?」

「使えそうだな。どうだ?」

「それなら問題ありません。一部では高山戦闘師団と凍土戦闘師団も使えそうですので……すぐに準備いたします」

「いや、話が全て終わってからで良い。まだ少しあるからな」

「了解しました。それでは……」


 そして俺達はもうしばらく話し合った後、帰路についた。











 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー











「「「ジャンケンポン!」」」


 陸軍本部での仕事が終わった後の、王都にあるとあるゲームセンター。そこに女3人が集まり、ジャンケンをしていた。時間的には平日の昼間だから、他の人の邪魔にはならない。

 そして生まれた勝者は2人、敗者は1人。


「やったー!」

「負け、ました……」

「ふふ、ごめんなさいね」


 で、何でメルナとレイとポーラがジャンケンをしていたのかというと……


「2人ずつだもんねー」

「ですので、私達から使わせていただきますね」

「ああ、いいぞ」

「……くやしい、けど」

「残念がるな。ただの順番だ」


 大したことはない、ただのゲームの順番だ。俺とシェーンはアレの前に負けていて、3人の勝負になっただけ。つまり、いつも通りだった。

 ちなみに、生体義鎧の反応速度だと見て変えることがいくらでも出来るため、ジャンケンの瞬間は目を閉じる決まりになっている。いや、決まりというか、マナーだな。


「しっかり作られていますね」

「本当だね。ねえお兄ちゃん、昔ってこんな感じだったの?」

「知るわけないだろ。俺の生まれる何年前がモデルだと思ってる」

「だってー」

「……レイちゃん、文句を言うなら代わって」

「じゃあ言わない」


 そしてそのゲームというのが、かなり古いタイプのレーシングゲームだ。2つが横に並んでいて、お試しなのか他には無い。

 どうやら、座席に座って画面を見るタイプみたいだが、座席の周りにはハンドルやアクセルやブレーキだけでなく、15段シフトレバー(セレクター)や方向指示器のレバー、手動ギア選択機(クラッチ)などがある。かなり凝ってるな。

 ただ、古いのは見た目だけらしい。


「うわっ!?」

「凄いですね」


 スイッチが入った瞬間、メルナとレイをホログラフが覆った。どうやら、昔の光景を再現しているらしい。


「メルナ、レイ、どんな感じだ?」

「凄いよ!こう、沢山!」

「周りにはレーシングカーがいくつもありますね。あ、レイちゃんを見つけましたよ」

「え、どこどこ?」

「そちらから見ると、右後ろですね」

「見つけた!」


 その映像は外にも映されている。まあカメラ中継に近いやつだが、非常にリアルだ。

 見てるだけでも楽しめそうだな。


「それでは、そろそろ始めますね」

「お兄ちゃん、見ててねー」

「ああ、楽しんでこい」


 そして信号が点滅し、青に変わった。


「はいっ!」

「ヤッホー!」


 その瞬間に飛び出す2台のスポーツカー。メルナとレイのものだ。

 他の車両を動かしているのはAIのようで、上手いのもあるが反応速度では2人に敵わない。まだ混戦だが、2人がトップを争うのは間違いないだろう……ただのレーシングゲームなら、だけだな。

 それとどうやら、慣性もしっかり再現しているみたいだ。生体義鎧にはあまり意味はないが。


「レイは機動兵器の応用でやってるみたいだが……メルナが上手いな。このタイプはやったことが無いはず……」

「……姫様、このシリーズが好き」

「そうだったな。操作方法さえ覚えれば後は同じか」

「その操作方法が大きく違いますが……」

「どうやって知ったんだろうな……メルナの博識さは知ってるが」


 レイはハンドルとアクセルしか弄っていないが、慣性を上手く使って(ドリフトで)最高速度を保っている。

 ギア変更はお任せらしい。まあそれが普通だが。


「凄い戦いが……」

「……レイちゃん、どうやって食らいついてる……?」

「勘だけのような気がする」


 それに対し、メルナはシフトレバーとクラッチを動かし続けている。どうやら、手動で適切な加速に適時変更しているようだ。

 何をどうやってるんだ、あれは。


「あ、また弾き飛ばされました」

「メルナのやつ、あれを計算してやってるのか?」

「……多分……見てるから」

「あんなに強かったですか?レイちゃんと同じくらい……」

「前線には出てないし訓練もほとんどやってないが、メルナには機動兵器への適性もあるからな。実戦形式では駄目でも、得意なゲームなら生かせるんだろう」

「なるほど」


 そんな2人は先頭でスタートしたAI車両を巻き込み、激しい先頭争いを繰り広げていた。

 ただし、このゲームはただのレーシングゲームではない。


「取りました」

「こっちも!」


 このコース上にはハテナキューブと呼ばれるものが置いてあり、それを取るとアイテムをゲットできる。

 それがこのシリーズの定番、だったのだが……


「マジか……」

「……うわぁ」

「やりすぎだと思います」


 画面を見ると、重機関銃やら、6連装マイクロミサイルポッドなんかが車体に追加されていた。

 本来ならこのシリーズのゲームはアニメ調の映像で、アイテムも面白おかしいもののはずなんだけどな……これはヤバい、確実に。


「レイちゃん、行きますよ」

「受けてたつ!」

「……大丈夫?」

「元気ではありますが……」

「テンションが高すぎるぞ」


 そして案の定、普通のレーシングゲームではありえない光景が広がっていた。車が吹き飛んで大破炎上、ヤバいものは砕け散っている。

 というか……


「ふふ、邪魔はしないでくださいね?」

「どいてどいてー!」


 意気揚々と周囲のAI車両を消しとばしていた。

 まあメルナとレイも独走はできず、というか1位だけを狙うミサイルに2人とも巻き込まれ、順位は激しく入れ替わっていた。AIも、こっちの手合いは上手いらしい。


「凄まじいな」

「はい……」

「……姫様……」


 いやまあ面白いけどな?ただ、恐ろしくカオスな惨状なんだよ……


「お返し!」

「ふふ」

「あー!?」


 ちなみに、撃破された車両は一定時間後に復帰できる。ここは変えなかったらしい。

 メルナに火達磨にされたレイの車両は10秒程度で元に戻っていた。


「お返し!」

「え、レイちゃ」


 直後、レイが所持アイテムの1つ……恐らくはカウンター系のミサイルを使い、メルナの車両をその周囲ごと吹き飛ばす。


「レイちゃん……もう手加減はしませんからね?」

「え?してたの?」

「してませんけどね。ですが、そこは別の言葉を返した方が良いですよ?」

「えー、お兄ちゃん?」

「いや俺に振るな。というかそっちは聞こえないだろ」

「……レイちゃん、だから」

「後で答えた方が良いと思います」

「まったく」


 こう言うとメルナが怒るかもしれないが、大はしゃぎの2人を見つつ、俺達3人も色々な戦法を考えていた。












・特殊師団

 陸軍内部で各部門の精鋭達を集めた師団のこと。特殊部隊に相当する。

 各軍団に一定数ずつ所属していて、数は第10軍団、次いで第1軍団に多い。

 現在、特殊師団は300個存在する。

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