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天翼王国銀河戦記  作者: ニコライ
第3章
45/85

第8話

 

 新王国歴7267年10月19日




「艦隊全艦、戦闘準備完了」

「第2、第4、第5、第7、第10戦略艦隊も戦闘準備完了しました」

「潜宙艦偵察部隊、第5陣まで配置に着きました。後続部隊も異次元にて待機中」

「第8統合艦隊より、戦闘準備完了との報告です」


 銀河中央方面で新たに発見された帝国軍基地への攻撃。これが承認されたのは5日前のことだ。

 ちなみに、発見はその1日前だったりする。


「分かった。ポーラ、招集をかけてくれ」

「はい先生」

「メルナはこのまま監視を頼む。今動く可能性もゼロじゃない」

「分かりました」


 そして、その攻撃対象から約1.5光年の宙域にいるのは、6ヶ戦略艦隊と1ヶ統合艦隊まだ習熟訓練が終わっていないため無人戦略艦隊はいないが、数は揃えた。

 つまり、基地の規模がそれだけ大きいってことだ。


「さて、ご苦労だったな」

『んなことねぇよ』

『いいえ、大丈夫です』

『この程度、苦労の内に入りません』

『簡単だよねー』

「カルファーダ元帥、貴官もご苦労だった」

『ありがとうございます、シュルトハイン元帥閣下。ですが、閣下の苦労ほどではありません』

「まったく、おだてても何も出ないぞ。さて、リーリア?」

『問題ないわ。データは全部同期済みよ』


 その元帥全員での軍議……と言っても、別に会議室に集まるわけじゃない。それはもう終わらせた。

 今からやることは最終確認と変更事項の通達、ホログラフで十分だ。


「帝国軍基地は事前偵察の通りここ、バランナバーン恒星系第2惑星に存在する。いや、基地と言うより要塞と呼んだ方が良いだろう。推定艦艇数は50億隻、機動兵器は1000億機以上、第1()第4(リーリア)で潰した基地の数倍の規模だ。しかも、星系内には小型の基地が多数存在する」

『事前予想より多いわね』

「ああ。さっき取ったデータを元に、ポーラが修正した」

『それなら良いわ。他には?』

「ない。他は予想通りだ」

『それなら……』

『やるっきゃねぇな』

「幸い、今は連邦の偵察艦はいない。遠慮せずにすり潰せる」


 王国(こっち)からリークはしていないが、連邦もここを見つけたそうだ。それが一昨日のことで、攻略予定は20日後らしい。

 連邦軍基準ではかなり早いようだが、俺達からすれば遅すぎる。


「それでは、作戦の修正点を説明する。概要に関しては変わらず、艦隊の強襲と機動兵器による飽和攻撃だ」


 基本戦略はいつもと変わらない。というか、数で大きく負けているんだから変えようがない。特に今回は特別数が多いからな。下手に奇策なんて打てない。


「変更点は3つ、1つ目は敵潜宙艦隊への攻撃についてだ。戦闘開始直後、それぞれのタイミングで通常空間の艦隊全艦からの魚雷投射を行う。潜宙艦隊は秘匿、残存艦が出たらそれを攻撃しろ。あの敵艦隊の数ならば、潜宙艦隊からの攻撃もあった方が殲滅しやすい。そのために、邪魔者は先に片付けておく」

『当然でしょう』

「2つ目は機動兵器の展開だ。無意味に前線に出せば、数の差からすぐに撃墜される。要塞などからの対空砲火も苛烈だろう。だから、単独での突出はさせない。しばらくは艦隊の直掩だ」

『理解しました』

「3つ目、艦隊配置を全体的に入れ替える」

『何だって?』

『え、今?』

「正確には、亜空間ワープ後の位置だ。元は完全に包囲する形だったが……こう変える」


 ここで俺が提示したのは、第1戦略艦隊のみで半球を作った陣形だ。まあ正確に言えば、この距離で惑星を囲うには数が足りず、要塞艦も後ろに下がっている。だが、翼型包囲円陣の亜種を作っていた。

 そして、第1の反対側に残りの5ヶ戦略艦隊がいる。第4を中心に烈型砲撃方陣を敷いていて、非常に強固だ。

 最初の予定とさらに違うのは、第5と第7が他3つより後ろにいるくらいだな。


『いや、これって……』

『危険すぎます』

「確かにこれは危険だ。敵は俺達の方へ集中攻撃をかけるだろう……だがこうすれば、どうなる?」


 そして俺はシュミルを弄り、映像の中の陣形を変える。説明はこれだけで十分だ。


『なるほど』

『これなら確かに……』

「他にも複数パターン用意してある。俺の合図と同時に頼む」

『分かりました』

『あいさー』

「他の部分に変更はない。戦略艦隊は今言った通り、海軍は外周での警戒と封鎖および外周の小規模基地の破壊を行え」

『了解しました。ですが、要塞の攻略には加えていただけませんか?』

「これの攻略に数で押すのは向かない。火力で一気に消し去る。これは戦略艦隊の仕事だ」


 数あたりの火力なら、アーマーディレスト級を始めとした要塞艦のいる戦術艦隊の方が高い。それに砲撃精度の高さも加わるため、要塞攻略に向いている。

 ただ……まだ少し不満そうだな。


「海軍の仕事は、確かに地味に思うかもしれない。だが非常に重要なことだ。作戦の成否を分ける可能性も極めて高い」


 だが海軍が失敗すれば、俺達は背後から強襲される可能性が高い。それを避けるためには、多数の艦艇を後方に差し向ける必要がある。戦略艦隊にはできない、海軍向けの仕事だ。

 損耗を減らしたいという考えがあることも否定はしないが、今回は純軍事的な理由から選択した。


『了解しました。配置はこちらで?』

「ああ。第8統合艦隊について最も詳しい人間に任せる。というより、もう終わってるんじゃないか?」

『よくお分りで』

「勘だ。だが、合っていたようだな」

『メティスレイン元帥閣下に事前に言われておりましたので』

「なるほど。そしてこれは戦略艦隊の仕事だが、要塞はどうやらマントル部にまで造られている可能性が高い」

『アルストバーン星系と同様、と?』

「ああ。王国は最下部に格納庫エリアを造ったが、帝国ではどういった施設になっているか分からない。だがその規模だけでも、シールドの厚さは相当なものになっているはずだ。そのため敵艦隊、および機動兵器の殲滅を優先する。だからこそ、あの陣形だ」


 正面から同時に対処するには何もかも足りない。ここにいる艦隊にではなく、王国に。


「だが、これだけで終わるとは限らない。リーリア、場合によってはそっちから揚陸部隊を降ろさせる。準備しててくれ」

『ええ。揚陸艦は上手く置いておくわ』

「頼む。それで……質問はあるか?」

『無い』

『無いかな』

『1つ良いかよ?』

「良いぞ、ベークファウンド元帥」

『他の所に行ってる警戒の艦隊はどうすんだ?』

「それは無視する。1つずつ追撃していたら時間がかかりすぎる上に、逃げられる可能性の方が高い。だが、戻ってきたら殲滅する。それで良いか?」

『おうよ』

「他には?」

『特には』

『ありません』

「分かった。それでは、作戦の準備を始めろ」

『ええ。貴方、総指揮は頼むわよ』

「任せろ」


 そして、全ての艦隊を戦闘配置につかせる。

 潜宙艦隊には異次元を航行させたため時間はかかったが、余計なロスは無い。


「作戦開始だ。全艦戦闘態勢、亜空間ワープ開始」

「了解、亜空間ワープ開始」

「第2、第4、第5、第7、第10戦略艦隊、全艦亜空間ワープ開始」

「潜宙艦隊、全艦攻撃用意」

「第8統合艦隊、亜空間ワープ開始率37%。100%まで5.8秒」

「潜宙艦隊、ステルス装置最大出力で行動開始」


 数秒程度の待機時間の後……


「2、1、亜空間ワープ完了」

「全艦攻撃開始、要塞と警戒中の艦隊を狙え。航空部隊全機発艦、敵機動兵器を艦隊に近づけるな」

「了解です。全艦、攻撃を開始してください」

「航空部隊は全機発艦だよ。急いでね」

「敵潜宙艦隊はどうだ?」

「現在8000万隻を確認しています。恐らく、見逃しはありません」

「一気に殲滅する。全発射管対艦魚雷装填」

「了解」

「全艦、全発射管に対艦魚雷を装填」


 味方の数は多いが、アーマーディレスト級の処理能力なら全域把握も問題ない。それに、それぞれに優秀な指揮官とオペレーターがいる。

 いつも通りで問題ない。


「全魚雷一斉射」

「全艦魚雷一斉射。異次元への突入を確認」

「敵潜宙艦隊、迎撃ミサイル発射……被迎撃率1.3%」

「魚雷先頭集団、敵潜宙艦隊へ命中」

「敵潜宙艦隊は魚雷迎撃を継続中……しかし、損害は軽微」

「敵潜宙艦隊壊滅を確認しました。残存魚雷21%です」

「残存魚雷は行動停止、他に潜宙艦がいた場合に備える。いなければ戦闘後に自爆させろ」

「了解」


 邪魔者(潜宙艦)は消したが、むしろここからが本番だ。


「要塞より敵艦隊、および人型機動兵器の発進を確認」

「発進口を撃て。今のうちに数を減らせ」

「りょうかーい。射撃先をー、こう」

「ねえお兄ちゃん、ミサイルは?」

「ん?ああ、少し前に出ればギリギリ対艦ミサイルの射程内か……いや、巡行ミサイルなら許可する」

「はーい。じゃあタイミングを合わせて……」


 というわけで素早く減らす。警戒中の艦隊は潜宙艦退治のついでに殲滅していて、あわてて戻ってきた連中も片っ端から沈めていった。

 だが、要塞の奥にはまだまだ大量の艦艇と機動兵器がいる。

 それに発進頻度は高く、発進口自体も多い。いくら攻撃しても、全てを止めるのは不可能だった。


「損耗率、1.5%を突破」

「戦艦を今より前に出せ。駆逐艦は全て空母、揚陸艦、要塞艦の直掩にしろ」

「敵艦数、現在約5億隻」

「敵艦隊、当艦隊の前面に40%以上を展開、割合は減っていますが数は増加中」

「作戦通り対処しろ。各要塞艦は後退、戦闘艦も中央部は要塞艦に続け」


 だからこその作戦だ。今は餌を撒いているだけだが……恐らくAIの方が食らいつく。


「ええ。全艦、予定通りに」

「了解です。他戦略艦隊にも行動開始と合図を送ります」

「調整は任せてー」


 艦隊中央が後退し、外周は負けないように撃ちまくる。500倍に加速している影響で見た目の変化は遅いが、元々差はつけてあった。

 それに1割ずつ、短距離で亜空間ワープをさせている。これに乗ってくれば……


「レーダーに反応があります。帝国艦、次々とワープで接近してきています」


 来た。

 短距離であれば、帝国軍艦艇のワープも速い。加速がいるせいで王国よりは遅いが、この作戦で使うには十分だ。それにどうやら、ワープの最低距離は短くなって、精度も高くなっているらしい。100m単位で次々とワープしている。

 これだけ密集しているのは……指揮官の設定か?まあ、考える必要はない。


「かかったな。数は?」

「現在約2億5000万隻、予想最大数は10億隻です」

「2割……これまでに破壊した分を含めて3割5分か。欲を言うならもう少し欲しいが……」

『それでも十分よ。敵は逐次投入、それだけ減らせばこっちの有利は変わらないわ』

「そうだな……レイ、航空部隊5万機を短時間だけ突出させろ。もう少し誘えないか、様子を見る」

『貴方?』

「お兄ちゃん?」

「様子を見るだけだ。どうなっても、これ以上やるつもりはない」

『なら良いけど』


 そう言っている間に少しずつ、ほんの少しずつだが状況は動く。

 航空部隊での誘い込みは上手くいき、艦艇数が20%ほど増えた。

 亜空間ワープは戦闘艦だけでなく要塞艦も行うようになり、アーマーディレストも何回かワープした。

 そして作戦開始から約10時間、現実で70秒ほど経った時、ようやく条件が整った。


「第5、第7戦略艦隊へ通達、亜空間ワープ開始」

「はい、両戦略艦隊へ通達します」

「攻撃よーい」


 細く長い陣形の帝国軍、すり鉢のように凹んだ俺達(第1)とその底にいるアーマーディレスト。

 さらに……


「撃て」

「発射ー」


 伸びきった帝国艦隊、その側面を囲むように2つの戦略艦隊が現れた。

 そこで俺達(第1)も合わせて一斉射撃、帝国艦隊外周部のマーカーが一気に減る。


「手を休めるな、ここで殲滅しろ。航空部隊突入、潜宙艦隊一斉攻撃開始」


 艦艇は絶えず砲撃を行い、機動兵器は対艦ミサイルを連射した。さらに数億の魚雷が一斉に敵艦隊へ殺到する。

 まあ、タネは自体は簡単だ。潜宙艦隊には作戦開始直後から魚雷をばら撒かせていて、それをアーマーディレスト級の処理能力で一気に動かしただけ。昔から使っている手だ。数と威力は桁違いだが。


「前方の帝国艦隊、23%を撃沈」

「損耗率8.3%、航空部隊は9.6%」

「敵艦隊、こちら(第1)への火力投射を強めます」


 帝国軍にとって、このまま正面を突破するのが最善手だろう。速度的に無理だろうが、可能性はゼロではない。

 だが、そんなことは分かってる。


「艦隊陣形変更。側面の艦を呼び戻せ」

「了解です」

「航空部隊、潜宙艦隊の魚雷と同時にミサイル斉射。中央から後方へ集中」

「はーい」

「敵艦隊中央部、このエリアへ集中して砲撃しろ」

「りょうかーい」


 第5と第7に混ざっている艦を呼び戻し、アーマーディレストの周囲に展開させる。

 魚雷とミサイルの群れを浴びせかけ、艦隊を分断する。

 先頭の少し後ろへ砲撃を集中させて穴を開け、後続との連携を断つ。

 飛び出て来た連中を殲滅するのに、時間はそうかからない。


「損耗率、9.1%」

「敵艦撃破総数約20億、現在展開数15億。戦略艦隊全体での損耗率は8.3%です」

「同時に来ないから何とかなってるな……陣形を再編、包囲円陣へ戻せ。ポーラ、敵要塞の情報は?」

「要塞構造物は地下15〜40kmの範囲に存在している模様です。各所に武装も確認していますが、対艦砲の射角は10〜20度程度です。ハッキングも試していますが、残念ながら暗号を解読できません」

「暗号は仕方ない。帝国の暗号強度は高いからな。格納庫の正確な位置は?」

「送ります」


 ポーラからデータを受け取り、俺のレーダー図上に惑星の各地にマーカーと詳細情報が載せられた。

 意外と少ないな。代わりに1つ1つが大きい……やりやすくて助かる。


「メリーア、フリゲート(ファルゲン級)潜宙戦艦(ゼルファン級)の70%を抽出して、このポイントに送れ」

「多いよー?」

「代わりに、後衛にいる重巡洋艦(ヤーミスト級)から戦艦(ギロスィア級)の半数を前線へ送る。再配置を頼みたい」

「良いよー。それでー、どうする?」

「敵格納庫エリアへ大型対艦ミサイルと大型対艦魚雷の飽和攻撃を仕掛ける。時間差で要塞艦の重力子砲(主砲)を斉射、要塞内の艦を根こそぎ殲滅する」

『良いこと聞いたわね』

「リーリア、そっちは?」

『悪くはないわ。良くもないけど。流石にこの数を相手に足を止めての持久戦ができるのは少ないわね。殲滅だけならどうにかなる数だけど』

「なら、決着を早めるか。他の戦略艦隊へも同じ指示を出す。再編は各々に任せる」

『ええ、任せてちょうだい』

「航空部隊を前へ出せ、時間を稼ぐ。海軍の状況は?」

「損耗率は0.1%未満のようです。現在戦闘は行われていません。詳細は……後にします」

「ああ、見ている余裕はない」


 全ての思考を目の前の戦闘に向けている今、例え1つだろうと他を考える余裕はない。

 なんせ……


「ここからこうで、そっちはこう!ああ、早く早く!」

「複数の小規模集団で同時にミサイル斉射だ。合計で3波に分ける」

「損耗率12.7%、航空部隊損耗率19.6%」

「戦略艦隊全体での損耗率は12.1%」

「ここからこう撃ってー。あー、そこならーこう」


 まだ抗える程度の物量とはいえ、どうしても損害は大きくなる。適切な指揮は絶やせない。しかも体感時間でそれが何時間も続いているんだからな。

 これくらいは慣れたものだが……現実から見てるだけ、ってことができるならどれだけ楽か。


「第8、第12戦術艦隊を第5戦略艦隊の左翼へ、第3、第15戦術艦隊を第7戦略艦隊の上部へ、それぞれ援軍に出せ。リーリア」

『こっちもいっぱいいっぱいよ。第12戦術艦隊と第19戦術艦隊を第10戦略艦隊へ向かわせなさい。それと航空部隊から10万機ずつ6部隊を抽出、このルートで対艦攻撃をさせて』

「分かった。もう少しだから耐えろ」

『ええ!』


 俺達(第1)リーリア達(第4)は練度が高く、他8つの生体義鎧戦略艦隊に比べて数割増しの戦闘能力を持つとも言われている。俺達の無茶振りに付き合わされただけだと父さんは言ってたが……まあその辺りはどうでも良い。

 援軍とかで担当する敵が多くなるが、それだけだ。


「全艦配置完了しました」

「航空部隊、射線上からの退避完了」

「潜宙艦隊、追撃態勢に入ります」

「分かった。大型対艦ミサイル、魚雷一斉射」


 それに、作戦は順調に進んでいた。

 フリゲート(ファルゲン級)は惑星上空1000kmへ亜空間ワープをして大型対艦ミサイルを発射、直後に亜空間ワープで離脱する。

 潜宙戦艦(ゼルファン級)は離れているが、大型対艦魚雷は可能な限り異次元を潜行し、大型対艦ミサイルに合流する。


「カウントダウン到達。順に重力子砲(主砲)を発射します」


 さらに要塞艦、追加で戦艦からの重力子砲(主砲)が放たれた。艦隊に向けて放たれれば、それだけでかなりの被害を出せるだろう。

 だが、その前に……


「着弾まで、3、2、1、着弾!」


 大型対艦ミサイルと大型対艦魚雷が炸裂する。


「着弾数83%。目標の98%で下限以上の着弾を確認」

「要塞の広域シールド消失、重点シールドの残存は7%」

「新規反応確認。データを共有します」

重力子砲(主砲)、着弾」


 その万単位の攻撃は惑星全体を覆うシールドを吹き飛ばし、重点防御のシールドを消し去った。地盤と装甲を引き裂き、艦艇や機動兵器は灼熱の炎に飲み込む。

 そこへ重力子砲(主砲)が集中して着弾し、重力圧縮と爆発が全てを消し飛ばした。


「攻撃成功!敵要塞の被害甚大!」

「大型対艦魚雷を再度斉射。惑星が吹き飛ぶレベルで撃ち続けろ。他は敵艦隊を狙え」

「航空部隊は?」

「制限解除だ。一気に行け」

「はーい!敵艦隊への亜空間ワープを始めて!」

「大型対艦魚雷、第2波斉射。同時に通常魚雷も斉射」

「現在、損耗率16.1%」

「敵艦隊、後退の動きを見せています」

潜宙戦艦(ゼルファン級)を狙うか?させるな」


 要塞と艦隊の双方を狙うことになったが、それを可能とする火力はある。

 そして大型対艦魚雷が5度目の爆炎をあげた時……


「先生、敵艦隊全艦の反応性低下を確認しました」

「破壊したか……例外は?」

「ありません」

「それなら全艦残敵掃討を行え。だが油断はするな、確実に仕留めろ」


 そして残存艦艇を殲滅し、ようやく戦闘は終了した。


「終わったな……ポーラ」

「第1戦略艦隊の損耗率は艦艇16.7%、航空部隊23.4%、全体では19.5%です。戦略艦隊全体では19.2%になりました。海軍のデータはこちらです」

「沈没艦3万2376隻、戦死者1241万1726名、か……これだけ死んだのは久しぶりだな」

『3ヶ艦群と少しね。重駆逐艦(メルフェス級)以下の艦艇が多いみたい……』

「航空部隊の被害もだ。できれば、全て無人化してしまいたいが……」

『性能が落ちるのは考えものよね。数を増やすってなると空母を増やさないといけないけど、護衛部隊とか砲撃戦闘能力を考えるとできないわ』

「今が1番良いバランスなんだろう。死者を除けば、だが」

『そうね……』


 戦力の補填は、第16艦隊の管理下にいる新統合艦隊設立準備隊から出せば良い。だが、死者の代わりはいない。

 やっぱり、因果な商売だ。


「ガイル、どうしましたか?」

「メルナ、分かるか?」

「ええ。私もずっと近くにいましたからね」

「2000年以上、だな。なら、だいたい予想できるんじゃないか?」

「戦死者と戦力、ではありませんか?」

「ああ。戦力として見て、失った分は補填すれば良いと思った。人を見て、その家族のことを思った。矛盾しているようで、正しい考え……頭で仕方ないと理解してても、どうしても納得しきれないからな」

「ガイル……」

「俺の問題だ、気にしなくて良い。多分、これは一生直らない」

「そうですね。では、そうしましょう」

「それより、後片付けを始めるぞ。ここにもレーダー網を張らないとな」


 今も昔も、死者で悩むのは変わらないか。だが彼らのために、より良い未来を作ろう。

 全ては王国のために。











・新統合艦隊設立準備隊

 海軍第16統合艦隊が管理していて、次に新設される統合艦隊のための人員を確保している。なお配置換えで、既存の統合艦隊に配属されたり、既存の統合艦隊から新統合艦隊設立準備隊へ配属されることもある。

 組織編成には載っていない部隊で、予備部隊的な扱い。対帝国戦での戦死者分の補填はここから出される。

 定員が集まれば新統合艦隊として正式に発足するが、その際は第16軍団となり、現在の第16軍団は第17軍団と名前を変える。そして、新たな新統合艦隊設立準備隊が設立される。

 陸軍にも同様に新軍団設立準備隊があり、第10軍団が管理している。

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