第13話
新王国歴7267年8月17日
「そのため、私はこの帝国侵攻作戦に賛同しました。これをもって、シュルトハイン元帥閣下の軍事行動には王国法による根拠も与えられます」
「それは当然でしょう。むしろ遅すぎたくらいだ」
「ですが総帥、より動きやすくすることもできたのでは?例えばシュルトハイン元帥閣下へ与えられている外交権の拡大を陛下へ進言するなど……」
「いえ、それは元帥閣下自らが否定なさいました。自分はあくまで軍人だということです」
「ふむ……」
「とはいえ……」
「そう言っても……」
というわけで、昨日通達された王国議会への説明、そのために俺達はここへ来た。何故かというと御前会議に出ていた議員は50人で、総帥府の側で参加した人間を含めても70人にも満たない。王国議会議員10万人に比べたら、とても少ない数だ。
それに、マスコミを通した国民への説明も兼ねている。連邦と接触して数回目だが、必要なことだ。
それより、外交権の拡大はやめろ。俺が死ぬ。
「ご苦労だった、ウェンディス総帥。次へ行こう、シュルトハイン元帥」
「ありがとうございます、陛下。ではこれより、戦略艦隊への無人艦配備、および帝国侵攻作戦に関する説明を行う。質問は随時許可しよう」
とはいえ、まだ決まってることは少ないけどな。今後俺が出す予定のものも含めて、話していくとしよう。
「まず始めに無人艦配備について。これは対帝国戦にて戦力の不足が予想されたため、戦力増強策の一環として考えたものだ。陸海軍の方が持っている戦力は多いが、機動性に欠ける。そのため、戦略艦隊が中心となるだろう」
「戦略艦隊のみですか?」
「もちろん、陸海軍を使わないわけじゃない。星系攻略作戦など、こちらが主導権を握れる場合はワープゲートを使い、呼び寄せる。当然ながら防衛に支障のない程度ではあるが、これは実現可能だ」
というか、陸海軍がいないと数が足りないだろうな。
不意打ちなら逃げるという手もあるが、攻略作戦だとそうはいかない。
「だが、常に呼び寄せることが可能というわけじゃない。急ぐ必要がある時、もしくは不意を突かれた場合、現有戦力だけで戦う必要が出てくる。その時に勝率を上げるため、無人艦が必要だと判断した」
「具体的にはどのように?」
「そういったシステム周りは技官に任せてある。だが、ある程度の要望は出した」
無人艦隊を考えついた後、アンケートとして意見を取っていた。
それらから酷すぎるものをカットし、似たようなものをまとめたものがラグニルへ出した要望だ。もちろん、俺やリーリアの希望も入ってる。
「1つ目が追従能力、生体義鎧が直接操作する機体や艦に追従し、戦闘を行うことだ。これは戦闘能力向上には当然必要になる。2つ目が高度な自立戦闘能力、指示がなくとも事前の戦闘状況から自立して行動することだ。これは直接操作機が落とされた場合にも有用だが、最低でも囮にするために必要な程度には高めさせる。そして3つ目が、超大型重力子弾頭だ」
「弾頭?」
「艦内に、ですか?何故?」
「もちろん、敵に突っ込ませて自爆させるためだが?」
この一言で議会は騒然となった。だが、出席していた軍関係者、および元軍人の議員達は驚いていても騒ぎはしない。
たかが無人艦、使い潰したって何の問題もないからな。
「自爆させたとしても、別にまた作れば良い。人が死ぬわけじゃないからな。それに使い方次第だが、大型対艦ミサイルより強力な兵器にもなる」
「それは……」
「それと、全員3つ目に注目してるみたいだが、できれば1つ目と2つ目を見てほしいな。王国軍にとって画期的な進歩だ」
「というと?」
「王国軍が無人艦をほとんど配備しなかったのは、有人艦に追従できるほどの性能を確保できなかったからだ。だからこそ、高性能化と省人数化を進めてきた。だが今の技術力なら、最低限度の性能は確保可能だ」
「なるほど……」
「確かにその通りだ」
「そして、この技術は陸海軍でも使用できる。今は戦略艦隊のみだが……これはまあ、試験運用ってやつだな。ある程度の慣熟訓練は必要になるが、俺達はそういったことには慣れてる」
無人機での実戦試験ができるから、よく駆り出されたものだ。それに操作はコンピューター任せだから、訓練期間も短くていいだろう。
「そして次に、帝国侵攻作戦について。これはまだ大まかなことしか決まっていないが、基本として今回説明しておこうと思う」
こっちも忘れずに言っておかないと、国王陛下や父さんから苦言を言われる。
まだアイデア段階のものがほとんどだが、これでも大丈夫なはずだ。
「第1に、帝国銀河辺境部への拠点構築だ。どこか適当な惑星か衛星を1つ、半要塞の拠点にする。ここは連邦の規格で造り、連邦に貸し与えるつもりだ。俺達に拠点は必要ないが、連邦には必要だろう。それを利用して、囮にする」
「囮というより捨て駒ですな」
「確かにそうとも言うかもしれないな。だが連中の方に帝国軍が行ってくれるなら、俺達は楽をできる。数で劣る俺達が正面から戦うなんて、愚の骨頂だ」
奇襲も罠も策略も、全てを使って勝つ。負けて滅ぼされるくらいなら、卑怯だろうと生き残る。
「第2に、帝国重要工廠星系の攻略。帝国の継続戦闘能力を下げるには必要なことだ。連中の艦艇補充能力を落とせば、戦いを有利に進めることができる。現在、連邦から得たデータで分かっているのは10ヶ所。恐らくこの数倍の数があるだろうが、全て破壊する」
「それだけですか?」
「もちろんこの数十ヶ所だけじゃなく、他の星系も多数攻略する。そして機雷や自立稼働兵器などで要塞化し、帝国軍の侵入を阻む。上手くやれば、これだけでかなりのダメージを与えられるはずだ」
そして容赦はしない、できない。
「そして第3に、帝国最重要惑星……帝国本星の完全攻略だ」
だからこそ、どんな手段でも使う。
「軍を殲滅するとしても、帝国民を皆殺しにするとしても、不本意だが……降伏させるとしても、帝国本星を攻略しないことには始まらないと予想される。当然、帝国も頑強な防衛ラインを敷くだろう。だから場合によっては……戦術兵器だけでなく、戦略兵器の使用も考えている」
「は⁉」
「あれを、ですか」
「1つ目と同じだが、確実に帝国の方が数は多い。そんな相手を倒しきるには、アレを使う必要が出るかもしれない。ただ最悪を想定しているだけだ」
いかなる犠牲を払おうとも、どんな残虐な手を使おうとも、俺達は今を生きる者達のために戦い続ける他にない。
それは俺達自身のためでもあるが……止めるつもりは一切なかった。
「俺はこの3つを軸に、具体的な対帝国戦略を立てる予定だ。また現在は情報のほとんどが連邦頼りだが、独自の情報網構築も検討している。詳細については後日、決定できてから報告することとなるだろう」
最低でも半年の猶予がある。休暇と立案……3ヶ月もあればできてるはずだ。
「話は以上だ。何か質問は?」
「では。閣下は帝国に対し、どこまで軍事行動を行う予定ですか?」
「どこまで?そんなの決まってる」
そう、決まってる。
「帝国を消し去るまでだ」
それを言うと議員達は騒然とする。
だが、これは必要なことだ。忠義を尽くす王国と、共に戦って死んでいった者達と、そして未来に生きる民達のために。
「静粛にせよ。シュルトハイン元帥、汝は王国に仇なすか?」
「いえ、それはありえません。総帥府から戦闘停止命令が出されたのであれば戦闘をやめ、待機いたしましょう。陛下に命じられたのであればすぐさま退きます。我々生体義鎧とて、王国に仕えることに変わりはありません」
「そうか。大義である」
ただまあ、消し去るなんて言い方はマズかったのかもな。俺達の狂気を感情で理解してる者は少ない。というかほとんどいない。
そういうことを考えれば、あの反応も想定できたか。
で、次はリーリアの番だ。
「では、メティスレイン元帥」
「はい、陛下。私が提案したアルストバーン星系要塞化について説明するわ」
といっても、こっちもまだ計画段階で動いていないんだが。
「知っての通り、アルストバーン星系はシュルトバーン星系へ入るための入り口、ディルミッシ回廊の終端。だからこそ、ここを守りきらなければ王国が危険にさらされるわ」
これは当然のこと、誰も口は挟まない。
「それで、私は要塞化するべきと考えたの。まあ、防衛戦を有利にするためには当然ね」
「確かにその通りです。ですが、それなら基地で十分なのでは?」
「艦隊や機動兵器の整備だけじゃなくて、ミサイルや砲による攻撃も重要なことよ。それにただの基地化だと、破壊されやすいからね。防衛力を高めるなら、少しでも強固にするべきよ」
「それは……」
「その通りですな」
艦と違って要塞には機動力が無い。だがスペースは有り余っているので、強力な砲を多数設置することが可能だ。
だからこそ、艦隊と要塞が連携すれば単独の時より防衛線は強固となる。
「具体的には、アルストバーン星系内の惑星と衛星、少し大きめの小惑星の全てを高度な遮蔽機能込みの要塞化するわ。要塞は有人と無人の2種類、前者には陸海軍が駐屯するけど、後者はほぼ時間稼ぎ用よ。それといくつかの惑星、衛星には簡易テラフォーミングをして、海上艦部隊を駐留させるわ」
「陸軍の海上艦を?」
「ええ。海上戦艦があればかなり守りやすいと思うわ」
元素操作装置と人工重力発生装置、それと環境調整用シールドを使えば、テラフォーミングなんてすぐに終わる。ハンデレンティス級要塞艦を艦群規模で投入すれば惑星サイズでも1ヶ月とかからない。
だがそれに比べ、防衛能力の向上は著しい。テラフォーミングをするということは、その星の持つ特性全てに手を加えるということ、惑星規模の大規模要塞にすることだって可能になる。
特に海を作り海上艦を配備すれば、機動力のある要塞砲を手に入れたようなものだ。しかも海中に潜れば届く攻撃は少なくなり、深く潜ればミサイルしか無くなる。
……って、帝国に対艦ミサイルは無かったな。潜宙艦用の魚雷くらいか。
「もちろん、過信はできないわね。どんな強固な要塞でも吹き飛ばされれば終わりだし、海中にいても海を全て蒸発させられたら狙い撃たれるだけよ。でも、有効なのは間違いないわ」
「それはまあ、そうですな」
「ですがそれでも完全ではないのでは?」
「まあ勝負は結局、指揮官の腕次第よ。敵と状況によって戦法を変えないといけないから、当然ね」
まあそうだな。ゲームだって同じだ。
「それと、駐留部隊のこともあるわね。今予定しているのは陸軍の第10軍団、海軍の第16統合艦隊、そして2ヶ戦略艦隊。もちろんずっと居させるわけじゃないし、非常時にはもっと援軍を送る可能性もあるわ」
「そのまま送るのですか?確か第16には……」
「陸軍のヤヌアルメル上級元帥も海軍のセルファルト上級元帥も、一部の部隊は入れ替えるって言ってたわ。詳しいことは向こうに聞いてちょうだい」
「何か要望を送ったりは?」
「特に何もしてないわね」
陸海軍だってアルストバーン星系の重要さは分かってる。何も言わなくとも精鋭を送ってくるだろう。国民を守る軍の役割を果たすために。
そしてその後少し話した後、リーリアの話は終わった。
「これで私の話は終わりよ。質問は……無いみたいね」
「メティスレイン元帥、大義であった」
そしてリーリアは壇から降り、先に終えていた俺の隣に座ってくる。
気を抜きすぎと言われるかもしれないが、次からは陸海軍で俺達の出番はもう無いのだから問題ない。
「お疲れ様。上手くいったな」
「貴方もね。少し疲れたけど、気を遣わなくて良い分楽だったわ」
「ああ。やっぱり、外交は面倒だ」
軍人に外交をやれなんて、学者に戦えって言うようなものだよな。まあ、例外は普通にいるんだが。
だが、もうそんなことを考えなくても良くなった。
「それで貴方、この後は?」
「しばらくは休暇、その後は打ち合わせだったり色々あるが、休暇も挟みつつになるか。ただ、レイがかなりはしゃいでるんだよな……」
「まあ、ね。私も一緒に休みを取れることなんてほとんど無いもの」
「仕方ない。あいつのためにも休暇は楽しめるように……そうだな、別荘を巡るのも良いかもな」
「あ、それ良いわね。やりましょう」
王国議会の喧騒を聞きつつ、俺達は予定を決めていく。
自由?いいじゃないか。平和な印だ。
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「お疲れ様です、先生」
「ん?ああ、ありがとう。ポーラが淹れたのか」
「はい。先生ほど上手にできてないでしょうが」
「いや、ちゃんと淹れれてる。こっちのクッキーも美味いな」
王国議会が終わって家に帰った後。無人艦隊やら戦略やらの話で多少仕事があり部屋でやっていたのだが、そこへポーラが差し入れに来てくれた。
仕事があるのはリーリアも同じなんだが……向こうにはレイが行ったみたいだな。大丈夫か。
そんなことを考えつつ作業を続けていると、展開したままの表を見て、ポーラは作業を始めた。
「休んだっていいんだぞ?そこは優先度が低い」
「これくらいなら大丈夫です。それより、先生には早く休んでほしいですから」
「まったく。それなら、このあたりの数値をまとめてくれ」
「分かりました」
なので、優先度が高めのものを回す。
といっても、元々俺が1人で簡単にできる量でしかなく、ポーラが入ったら10分もかからずに終わった。
「これで終わりですか?」
「ああ、ありがとな」
「いえ、仕事ですから。では私はこれで……」
「いや、もう少し居てもいいぞ」
「え?ですが……」
「リーリアはもう少しかかる。メルナとシェーンはまだ帰ってこない。気にするな」
「分かりました」
なのでゆっくりしようと、2人でソファに座った。ついでに肩を抱いて引き寄せる。
この家は広い、というかビルの屋上全面に巨大な邸宅を建てた感じなので、総床面積はめちゃくちゃ大きい。だから俺達7人全員が広めの個室を持っていて、その部屋にも机やソファやベットが置いてある。
だがまあ……アーマーディレストに乗ってる時と違って、ほぼ毎日リビングや寝室を使ってるんだけどな。
……っと?
「ん?そのイヤリングは……」
「はい、少尉になったお祝いに貰ったものです。久しぶりに保存庫から出してみました」
「2500年くらい前か。懐かしいな」
「はい。それに、ようやくみんなにも報告ができます……やっと、敵討ちができるんです」
「そうか。だが気負いすぎるなよ?」
「はい」
「それと……すまない。お前達をあんな目に合わせたのは、俺達の責任だ」
「先生、もう何回目ですか?私達も理解して、全員覚悟の上でした。それに、私は先生とも会えましたから」
「そうだったな……」
あの戦いでも多くの仲間を失った。俺もポーラも友人や上官、部下を失っている。
そういった悲しみに浸れるのもまた、平和になった証。これから戦争を始めるとはいえ、昔を思い出すのは仕方のないことだ。
「ん?」
「どうしました?」
「ラミエスからメールが来たんだが……はあ」
「先生?」
「あたいがもっと楽しめるようなシステムにしてくれ、だそうだ。まったく、そういうのはラグニルに言え」
「伝えますか?」
「いや、どうせ数十人くらいに言われてるはずだ。というか、ラミエスもラグニルに送った後みたいだぞ」
「それはその……いいんですか?」
「戦友だからな。大目に見る」
この程度、問題にするようなことじゃない。というか、陸海軍だってこの程度のおふざけはやる。仕事が増えるわけじゃないから、頭の隅に置いておくだけでいい。
というわけで、ポーラを抱き寄せつつドルを飲んだりして、リーリアの仕事が終わるまでマッタリと過ごしていた。だがこんな状態にも関わらず、ポーラが珍しくボンヤリしている。
「ポーラ?」
「え、あ、はい?」
「どうかしたのか?いつもならもう少し顔を赤くしているだろ?」
「そんなこと無いです!ですが、その……こういうゆっくりできる時間は久しぶりなので」
「ああ、確かに……この半年間、戦い詰めだったからな」
2500年間の戦いとはまた違い、銀河を縦横無尽に跳び回りながら戦っていた。急な発見報告に慌てたり、不意の遭遇戦になることもあった。
充実していた、といえば間違ってない。一般的な感性から外れているのは自覚してるし、敵を討てたと喜んだ時もあった。
ただ……何も無い時は暇ではあるのだが、こういう時間が欲しいのも確かだ。
「この後、しばらくしたら本格的な戦争が始まる。2500年間でも経験したことのない激戦になるだろう」
「はい」
「それが控えている以上、働き続けるのは良くない。最低でも半年後というのは連邦が出した条件だが、俺達としても良い休息期間だ」
「はい」
「だから、こうして抱き抱えるのは正当な理由がある」
「はい……え?」
チョロい。
「頷いたな。よし」
「待ってください。先生、嵌めましたか?」
「何のことだ?」
「とぼけないでください。騙したんですか」
「騙したなんて人聞きの悪いことを言うな。からかって遊んだだけだ」
「もっと悪いです!」
「だが、悪い気はしないんだろ?」
「そ、それは……そうですけど……」
「リーリアの仕事が終わるまでだ。我慢してくれ」
「分かりました」
チョロい。
我慢してくれって言ってるのに、嬉しそうな顔になってるぞ。
「それでポーラ、例の件はどこまで進んだ?」
「例の……はい。現在の協力者は34人、まだ増えています。既に機密レベルの情報も得ていますが……」
「いくつかは目を通してある。それで、帝国系はいたか?」
「いえ、まだ確認されていません。ですが、目星はついているようです」
「やっぱりいたか。いや、当然だな」
「連邦も帝国へスパイを送り込んでいるようなので、お互い様ということです」
どうやってスパイを送り込んでいるかは分からないが、簡単な方法では無いんだろう。でなければ、すぐにバレるはずだ。
まあ、こっちのやってることは連中からすれば反則もいいところなんだろうが。
「王国は少しの苦労でそれを乗っ取る、か。フィクションなら悪役だな」
「最も労力が少なくて済む方法ですが……そう言われると複雑になります」
「昔の諜報のやり方をそのまま使えれば良かったんだが……セオリーを失っている上に、前提から崩れてるからな。仕方ない」
というよりも、時間が無さすぎるというのが1番の問題だ。昔の諜報網は時間をかけて組んだもので、短時間で作れるようなものじゃない。それすら数千年前で、経験者はゼロ。
だから反則技を使うしか無いんだが……
「まあ、気にする必要は無いな。王国として当然のことをやってるだけだ」
「はい。王国を守るためには手段を選ばない、それが私達ですから」
「ああ。そのために俺は人を辞めた」
「私も、私達も同じです」
「本当にそれだけか?」
「茶々を入れないでください」
「すまない。ただまあ、全ては王国のために、だな」
俺達の覚悟は、想いは、誰にも潰させない。たとえ他の何を犠牲にしても、絶対に守り抜いてみせる。
「っと、まだだったな。もう少し時間を潰すか」
「はい。ご一緒させてもらいます」
「ありがたい」
だから今は、つかの間の平和を楽しもう。俺達が勝ち取ったものを。