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天翼王国銀河戦記  作者: ニコライ
第2章

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第10話

 

 新王国歴7267年8月6日




「結論からお話しましょう」

『どうなりましたか?』


 連邦派遣艦隊旗艦との通信を繋ぎ、総帥府の出した結論を伝える。

 ちなみに、この通信では専用に用意した暗号にセットした空間波通信を使っている。


「バーディスランド王国国王アストーグ24世陛下、総帥ハルシェ-ウェンディス=シュティングラーツ閣下は、連邦政府との交渉に応じるとのことです。バーディスランド王国への入国、及び国王陛下への謁見の許可が出ました」

『そうですか、ありがたい』

「ですが、入国を許可されたのは貴艦だけです。艦隊の他の艦には、1つ前の星系で待っていただき、他の王国艦隊による監視が行われます」

『理解しています。それに監視といっても、乗組員達を拘束するわけではないのでしょう?』

「はい。指定した宙域から動かなければ問題ありません」

『では、大丈夫です』


 割と無理矢理な制限な気もするが……向こうにとっては想定内か?まあいい、続きをやろう。

 なお昨日の総会議で、艦艇の亜空間ワープ距離に関しても制限がかかった。最大500光年、1回のチャージを2時間として……


「王国手前の星系まで、ここから1万6821光年です。我々は34回の亜空間ワープ、68時間かけて向かう予定ですが、よろしいですか?」

『ええ。その距離なら我々も同じです』

「それは良かった。それでは、あなた方の検疫体制に関する資料を求めます」

『検疫ですか。やはり警戒されるので?』

「未知の病原菌を王国に持ち込ませるわけにはいきません。我々でも検疫は行いますが、連邦政府の規定によって程度が大きく変わります」

『閣下方はどうされたのですか?』

「自分達は会談後に身体検査を行いました。そこで問題は無かったのですが、念のためです」

『そうでしたか。では、1時間以内に提出させます』

「ありがとうございます」


 座標に関しては、ポーラとオペレーター達に任せてある。


「それでは、座標はこちらが送ります。何か問題があればお申しください」

『はい、準備が出来次第ご連絡します。では、よろしくお願いします』


 後はこいつらを連れていくだけ。帝国軍が来さえしなければ、何も問題はない。


「メルナ、陸海軍と他の戦略艦隊への通達を頼む。第3,第8,第10は事前準備が多いからな」

「はい、任せてくださいね」

「それとメリーア、第4の潜宙艦隊も使って広域の警戒を任せたい。連邦(連中)に見つからないようにしろよ?」

「おっけー。半径1000光年で良いよねー?」

「ああ」

「先生、連邦派遣艦隊の陣形が変化しました」

「移動のためかな?」

「円錐……いや、紡錘形か。恐らくはそうだろう」

『向こうのワープ次第だけど、その可能性が高いわ』

「ただ、確定じゃないからな……そろそろラグニルの報告を聞くべきか」

「では、連絡しておきます」

「頼む。リーリア、行くぞ」

『ええ』


 後はメルナ達に任せ、俺は司令室から出る。そして入った第001小会議室で、複数のホログラフが展開された。

 1つはリエルだが……


『お待ちしておりました、元帥閣下』

「俺達が最後だったか。待たせてすまない」

『いえ、私達も来たばかりですので』

『デートじゃないのよ?』

「リーリア、そうからかうな。話が進まなくなるぞ」

『ええと……これは普通なのですか?』

「まあ、俺達だとよくあるな」

『そうなのですか』

『近衛の方々も大変では?』

『リーリア閣下とは個人的な交友がありまして……慣れです』

「だとさ」

『酷いわね』


 残りの4つは一般人だ。

 まず、近衛軍の豪華な軍服を着た2人。

 2対4枚の銀の翼の紋章を付けた男は、近衛軍第1軍第1師団第1連隊特務銀翼護衛大隊大隊長ファルト-リンディース准将。

 そして同形だが翼が白の紋章を付けた女性は、同連隊特務白翼護衛大隊大隊長アイ-ファルクラムス准将。

 近衛軍の誇る精鋭大隊4つ、その内2つの長になる。

 また、軍服4人に対して装飾の付いた文官服を着ている2人は、祭儀局長官ディック-ネールヴァン=レティリスティと警護局長官カラシェ-ミレストレイ。王族警護の担当局としての出席だ。

 外交などの話は総帥府や内務局、王都警備に関しては警務局や軍務局の担当だが、そこに関しては総帥府に全て任せてある。


「集まってもらった理由は事前通達の通り、連邦相手の歓迎と王城警備についてだ」

『それについては祭儀局で出た案が複数あります。よろしいでしょうか?』

「好きに言ってくれ。どんな内容だろうと、意見は全て聞く」

『ありがとうございます。では第1案ですが……』

『これね?』

『はい。第2案、第3案もお送りいたします』

「面白いな。だが……第3案は無しだ。陛下の許可は得られないだろう」

『そうでしょうか?』

「陛下は国民を見捨てる方では無い。むしろ先頭に立つことを望むお方だ」


 ザルツも、父である先代陛下も、そういう男だ。国民より先に逃げることは絶対にやらない。


『確かにそうですな……申し訳ございません』

「いや、気にするな」

『閣下、白翼内部でも同系統の提案がありました』

『なるほど』

『これは……』

「これについて、何か関連意見は出たか?」

『白翼内部では反対はありませんでした。また、ウィルディン閣下も賛同しておいでです』

『そう』


 彼女の言うウィルディン閣下というのは、近衛軍第1軍司令コクア-ウィルディン=シュトライゼン大将のことだ。

 つまり、もうザルツの耳に入っている可能性はある。


「なら、少し手を加える。リーリア」

『ええ……こんな所ね』

『確かにこれなら……』

『銀翼も賛同いたします。歓迎そのものは白翼に任せるのが最適でしょう』

「ネールヴァン長官、ミレストレイ長官、これで良いか?」

『はい』

『異論はございません』


 そしてこの後数時間の議論を行い、途中で他の者を招いたりしつつ、万全の体勢となるよう整えた。


「知っての通り、今回の謁見は王国の未来を決めるものだ。対帝国戦だけでなく、今後王国数千年の行く末がかかっている」

『でも私達は軍人、こういったことは専門じゃないわ。だから、力を貸して』

『お任せください』

『必ずや成功させます。王国のために』

「ああ。全ては王国のために」


 その言葉を言い終えて、会議は終了する。

 ……はずだったのだが、何故かリーリアだけは残っていた。


『貴方、これで十分だと思う?』

「そう思うしかない。これ以上の手を打つのは難しいだろう。万が一の時、最後の砦になるのは俺達だ」

『そうね。まあ貴方がいいなら、私はそれでいいわよ』

「そうしてくれ。ただ、もう少し何か……」

『あ、リエルとアッシュを待機させるのは?』

「……それも良いな。近衛軍の機体を借りれば、無駄も少ない」

『なら、申請しておくわ。最後の砦が変わったわね』


 確かにな。あいつらが居てくれるなら、俺達は気が楽だ。


「さて、まだまだやることは多いぞ」

『分かってるわ。でも、任せられるものも多いわよ?』

「そうだな。レイにも仕事を振ってやろう」


 そして艦橋に戻り、しばらく。亜空間ワープをする前に事務仕事を片付けておく。

 ちゃんとレイにも仕事は回してある。


「おいガイル、このデータはどうすんだ?」

「ん?……おい、これはお前の管轄だろ」

「ここは違ぇぞ。そのせいでこっちが合わねぇんだよ」

「そういえばそうだな。ここは……こうだ」

「おう、ありがとよ」

「そういうのもやんないといけないなんて、大変だよねー」

「まあ、分かってて引き受けた仕事だ。俺がやるべきことはやるさ」

『そうね。そうしないと道理が通らないわ』

「おいおい、そこまで言うか」

『ええ、言うわ』

「まったく……ああそうだリーリア、こっちに来るか?」

『貴方、良いの?』

「ああ。こっちにいても、仕事には問題ないだろ?」

『そうね、なら行くわ』

「そうだ。リーリアがこっちに来たら、ラグニルの報告を聞くぞ」

「時間的にも良いくらいですね。レイ、その前にこれを手伝ってくれますか?」

「はーい、メルナお姉ちゃん」


 事務仕事はまあ、そんなに量は無いからすぐに終わる。

 そしてその辺りでリーリアが来たので、ラグニルを呼び出した。


「さて、どこまで分かった?」

『推測の域は出ないけど、もうほとんど分かってるよ。だいたい……99.99%ってところかな』

「それってほぼ確定じゃない」

「だよねー?」

『フォーナインだよ。まだまだ低い』


 これはまあ……言っても仕方ないか。


「これは技術者と軍人の差だろうな。それで、どうだった?」

『話が早くて助かるよ。まずはジェネレーターだけど、ある種の縮退機関になっているらしい。ブラックホール化させた中心部に物質を投入して、崩壊で出るエネルギーや超対称性粒子を回収しているようだね』

「超対称性粒子というのは?」

『王国では見つかってないものだから、正確なことは言えないよ。ああ、見つかってないっていうのは……』

「それは後で報告書にでもしてくれ。必要なところだけ頼む」


 こいつ、話がズレると長いからな。


『分かった、続きにするよ。さっき言った通り、正確には分からない。ただ、状況的には最低でも4種類、多分7種類はあるんじゃないかな?』

「そんなにあるの?」

「多くねぇか?」

『武装用、推進用、ワープ用、通信用で4つだね。後3つはエネルギー回収用か、レーダー用とかかもしれない』

「通信にも使っているんですか?」

「ポーラが見つけたのは空間波に似てるものでしたよね?」

『全部じゃないよ。ただ、いくつか超対称性粒子を使ってると思える反応があったんだ。頻度は低いし、彼らが本国と通信をする時なんじゃないかな』


 2つに分けている理由は分からないが……空間波を遠距離まで飛ばせないか、超対称性粒子がよく飛ぶのかのどっちかだな。

 あの技術力なら前者か?


「なるほど。それで、他について聞かせてくれ」

「まず、武装について聞きたいわね」

『良いよ。彼らの武装だけど、近接防御レーザー以外はジェネレーターで回収した超対称性粒子の1つを使ってるみたいだ。かなり重い粒子で陽子の数百倍なんだけど、どうやら強力な斥力特性を持っているらしい』

「それはつまり、加速しやすいってことですよね?」

『ああ、そうだよ。特殊な加速器が必要みたいだけど、最終的に光速の80%から90%になるようだ』

「それは戦闘中も確認した。威力も高そうだな」

「1発で沈めたりしてたよねー」

『高いよ。代わりに連射速度は遅いけど……問題になってないみたいだね』

「ええ。まあ、思考加速が無いからみたいね」

「コンピューターでの制御も利用していそうだったが、基本はそうなんだろうな」

『その辺りは任せるよ。まあ、戦うことはないだろうけど』

「そこは分からない。流石にな」


 帝国と同時に連邦と戦うなんて、勝率を下げることはしたくないが、これに関しては連邦次第だ。


「それで、次は推進か?」

『そうだね。こっちも超対称性粒子を使ってるみたいだけど、どうやら空間や次元に干渉しているらしい』

「空間機動とはどう違うの?」

『虚像空間……ああいや、半亜空間への干渉が無いところだね。ヒッグス場は排除されていて、動きは空間機動とほとんど同じみたいだけど』

「動きは同じだな?」

『そうだよ。半亜空間も巻き込んでるみたいだから、ほとんど同じだね』

「ってなら、オレらも問題なさそうだなぁ」

『まだ確定してないけど、多分大丈夫だよ。そうなるのは無いかもしれないけど』

「さあ?状況がどんな風に動くかは分からないもの」

『そうだね。それで次はワープ用だけど、何回か観測できて良かったよ。言って良いかい?』

「ああ、頼む」

『これは簡単だね。艦を高次元の存在にして、距離を変えて移動してるんだ。それで、目的地に着いたら3次元に戻してる』


 それは……ん?


「……どういうこと?」

『潜宙艦と同じように考えれば大丈夫だよ。別の次元を介することで、通常空間での移動距離を減らしているんだ』

「なるほどね」

『ただ、事前に溜めが必要みたいだね。ワープ前に独特な空間振動波が確認できた。それにエネルギー消費が多いみたいだし、制御も難しいはずだよ』

「具体的には?」

『そこはまだ分からないかな。だけど制御に失敗したら、もう二度と3次元に戻れないと思う』

「やな感じだなぁ、そりゃあ」

「こ、怖いんだね……」

『そう、とても怖いものだ。僕としても、使いたくはないかな』


 まあ確かに、亜空間ワープが使えるなら、こんなものに頼る必要はない。

 だが……


「でもー、必要なら仕方ないんじゃないかなー?」

「そうだな。俺達もそれしか無ければ使っていただろう」

「そうね。危険でもやるしかないわ」

『そうなのかい?まあ、僕は要望に応えるだけだね』


 まあ、こいつにとってはそうか。


『それで最後の通信用だけど』

「お願いします」

『さっきも言った通り、本国みたいにどこか遠い所と通信をする時しか使わないみたいだね。普段は空間波と量子波を複合させているらしい。盗聴は不可能だよ』

「複合なんてできるのか?性質は全く違うだろ?」

『可能か不可能かで言われれば、可能だよ。あくまで理論上は、なんだけど』

「でも、私達には無理なのね?」

『そう、今の王国には不可能だ。僕も実在するなんて思ってもみなかった』

「へえ、凄いんだ」

『凄いよ。ただまあ、君達にはどうでも良いことかな?』

「そうだな、今の情報だけで十分だ。だが、研究は自由にして良いぞ」

『それはありがたいね。好きにやらせてもらうよ』

「ただし、任務に支障は出すなよ?」

『分かってる。君達みたいには戦わないけど、僕だって一応軍人なんだ』

「分かってるわ。ついでに、帝国軍艦艇についても見直したいわね」

「良いな。情報整理も含めて、やるか」

『分かったよ、少し待ってて』


 急に言ったせいで、どの資料を使うか決めてないんだろう。

 まあ、ラグニルは優秀だ、すぐに戻ってきた。


『待たせたね。何から話せばいい?』

「好きにやってくれ。そっちの範囲を網羅してくれるなら、それで良い」

『分かったよ。じゃあ、同じ順番にしよう。まず武装だけど、帝国軍はレーザー系ばっかり使ってるね。今の艦はプラズマや反物質をレーザー推進で飛ばしたものらしい』

「威力は低いですが連射速度が高いので、油断はできませんね」

「地上型だって油断できねぇんだよな」

『思考加速が無いのによくやるよね。ガトリング砲か何かのつもりで作ったのかな?』


 確かに。単装式だが、そんな感じだな。


「さあな。俺達は戦う相手を知るだけだ」

『そうかい?じゃあ次は推進だけど、これは同じ空間機動だね。細かい原理は違うけど』

「えっと、半亜空間への干渉の仕方が違うんだったっけ?」

「私達は奔流を弄るけどー、かき乱すんだっけー?」

『そうだよ。詳しい話は……無い方がいいかな?』

「ええ、それでお願い」

『僕達の専門だからね、仕方ないよ。それでワープだけど、これは昔と同じだよ』

「膜宇宙に膜を開ける、だったか?空間波が観測できるよな」

『そうだよ。王国みたいにワームホールを介するんじゃなくて、直接開けるタイプだから効率は悪いね。それと事前に加速が必要で、簡単にはできないのも特徴かな。まあ、空間機動の半亜空間的なエネルギー増加だし、重力的なエネルギーも加算されるみたいだけど』

「そうですね。そういった特徴があるからこそ、私達は戦いやすいのですから」

『そうみたいだね。このワープ方法は面白くて、色々研究したこともあるけど……また話がズレかけたね。ごめん』

「いや、いい。続けてくれ」

『じゃあ最後は通信だけど、これは君達もよく知ってるね?』

「うん、そうだね」


 まあな。これには俺達がずっと力を入れていた。


「……高度に暗号化された空間波」

『そう。乱数を使ってるみたいだけど、多分数百種類の乱数表を複雑に組み合わせているらしくて、全然分からないんだよね』

「解読できたのは数個しか無いわよね」

「面倒なことにな」

『まあ、仕方ないよ。向こうにだって僕みたいな存在はいるんだ』

「分かってる。ただの愚痴だ」

『なら良いけど。それでここまでだけど、大丈夫?』

「ああ、ありがとな」

『じゃあ僕は研究に戻るよ。頑張って』

「そっちもね」


 ラグニルの仕事が忙しい時は珍しいが、俺達は違う。全てはここからだ。


「先生、連邦派遣艦隊からの連絡が来ました。検疫のデータと、ワープ準備完了とのことです」

「分かった、始めるとしよう。リーリア」

「ええ。第4も大丈夫よ」

「なら、座標送信。亜空間ワープ開始」


 あと1歩。その最後を踏み出すとしよう。











 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー











 新王国歴7267年8月9日




『元帥閣下、こちらは?』

「ここがバーディスランド王国シュルトバーン星系への入り口、アルストバーン星系になります」

『つまり、待機する星系というのはここということですね?』

「はい。艦隊の他の艦艇にはここで待っていただき、貴艦のみシュルトバーン星系へ招待いたします」

『そうですか。では、座標データもいただけるのですね』

「その点ですが、貴艦が我が艦に入った状態で亜空間ワープを行います」

『何故ですか?』

「ご存知かどうかは分かりませんが、シュルトバーン星系へ向かうには特殊なルートを通る必要があり、その地点の測定は我が王国独自のものです。連邦のワープ方法で同様に通れるかは分からないので、この方策を取らせていただきたく思います」

『そうですか……分かりました』


 もちろん、これは方便だ。分からないのは事実だが、王国へ単独で入れさせないという意味の方が強い。


「出発はこちらの合図で行います。準備が出来次第、お知らせください。その後出発します」

『分かりました。少々お待ちください』


 アーマーディレスト級には数多くのハッチがあるが、要塞艦用のものはそう多くない。

 今回はフォルスティン級要塞艦用の所を指定した。


「ポーラ、海軍と近衛軍からは?」

「来ています。海軍は既に配置完了、近衛軍からも準備完了と来ています」

「分かった。シェーン、亜空間ワープ準備」

「……もうできてる。でも、時間はまだ」

「そうだったな……ちっ、面倒な」

「お兄ちゃんが決めたんでしょ?」

「ええ。自分から言ってたわね」

「俺以外でも出してただろ。というか、最終決定は父さんだ」

「それでも、ですよ」


 また味方なしか……まあいい。いつも通りだ。

 そして俺達は3つの戦略艦隊に監視を任せた後、亜空間ワープを行う。


「亜空間ワープ完了。第3惑星(シュルトヘインズ)上空1万kmの位置に到着しました」

「分かった。連邦艦にも映像を送れ」

「了解です」


 緑に溢れ、成層圏目前まで迫る建物が所々に立ち、20基以上の軌道エレベーターが立ち並ぶ第3惑星(シュルトヘインズ)。その見慣れた風景を送ると、さっそく連邦艦からの通信が来た。

 まあ、反応は予想できるが。


『いやはや、素晴らしい星ですな、元帥閣下』

「そう言っていただけて幸いです。ではこれからの予定ですが、よろしいですか?」

『ええ。全て貴国がお決めください』

「では、まず貴艦の固定を外します。我が王国のシステムに入っていない貴艦が動くのは危険なので、できることならその場に留まっていただきたいのですが……」

『そうですね、そういたしましょう』

「ありがとうございます。その後こちらから迎えを出し、謁見を行います」

『分かりました』

「では少々お待ちください」


 まだ500kmほど離れているらしく、少し時間がかかったが、迎えは来た。


「来たな」

「来ましたね」

「本当にアレで来たんだね」

「呼んだのは私達よ?」

「……それでも」

「着艦まで、残り10秒です」


 それは近衛軍の保有する、政府高官や王族座乗艦(バーディスランド級)を使わない王族が乗る全長105mの大型オードフィランシェだ。今回のためにこれを1機回してもらった。

 また単独ではなく、近衛軍の飛行型機動兵器や軽駆逐艦(アルネーア級)が護衛をしている。

 まあ、様式美だな。


「予定通り、アレに乗るのは俺とリーリアだけだ。こっちでの警戒は任せる」

「……大丈夫?」

「中にも近衛軍がいるらしい。向こうのパワードスーツ系の兵器を乗せさせなければ、問題は無い」

「そうね。隠し持たせるつもりもないけど」


 だが、これに乗ってからの方が大変だ。気合を入れるとしよう。












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