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天翼王国銀河戦記  作者: ニコライ
第2章

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第8話

 

 新王国歴7267年8月4日




「急に予定を挟んでしまい、申し訳ございません」

「いえいえ、素晴らしい部屋に感動していたところです」

「そう言ってくださると、造った者達が喜びますな」


 2度目の会談が終わった後。

 何故かあてがわれていた部屋に何故か入らされ、もう少し後に会ってほしい方々がいるので待っていてくださいと閉じ込められた。シュミルで連絡をとると、リーリア達はもう帰されたらしい。ふざけるな。

 若干イラついて扉を蹴破ろうかと思ったら、何故か派遣艦隊外交部の部長が部屋にやってきた。凄く断りたい、というか帰りたい。だが、一時的とはいえ王国の代表として、そんなことはできない。


「して、どのようなご用件で?ただ歓談をしに来ただけでは無いでしょう?」

「やはりお分りになりますか……ではすぐに本題に入らせていただきます。連邦にて噂となっているのですが、貴国にはアルドゥスという名前の画期的な機械があるとか」

「アルドゥス……まあ、似たような名前のものはありますね」


 元素操作装置(アルバスシステム)のことだろう。

 これを知ってるってことは、連中に保護されたのは捕虜か?潜入者で捕まったのはほとんどいなかったはずだし……


「やはりですか!それで、そちらを我が国に譲渡していただくということはできませんか?もちろん、タダでとは言いません」

「……して、対価は?」

「我が国の艦艇が使う動力炉、武装、そしてワープ機構、これらの設計図を全て譲渡いたします」

「そのようなものを譲渡してしまってよろしいのですか?」

「はい。既に本国から許可は得ております。こちらが、簡単な説明データになります」

「分かりました。後で拝見しましょう」

「して、譲渡の件は……」

「そうですね、考えておきます」

「ありがとうございます!」

「ただし、決定するのは私ではないので、ご留意ください」

「いえ、そう伝えていただけるだけで結構です」


 そう言って出ていったが……面倒臭い。

 正確なデータは得られていないとはいえ、重要パーツの存在が知られているだけでマズい。どうしようか……

 まあとりあえず、このデータを取り出してラグニルに解析させるとしよう。

 万が一のためってことで、超小型レーダー端末を持ってきておいて良かった。原子や電子の状態を確認するだけで、アーマーディレストでの再構築は簡単にできる。解析も全体を見てできるから、ウィルスが入っていても無意味だ。


「それにしても、なんで我が国なんて言ったんだ?連邦政府じゃないのか?」


 気になるが、大したことじゃないだろう。

 で、その10分後。


「お待たせしてしまい申し訳ございません」

「いえいえ、この部屋に感動していたところでして、時間がたったようには感じておりません」


 何故か、今度は外交部副部長が来た。さっきお前の上司が来たばっかりだぞ。

 ……まあ良い。面倒だから、さっさと本題に入らせる。


「貴国の持つ、動力炉の技術をいただきたいのです」

「タダで渡すわけにはいかないのですが」

「当然です。対価といってはなんなのですが、我が国が調べた帝国軍の詳細情報をお渡しします。こちらがその一部です」

「なるほど、感謝します」

「それで……」

「まあ、考えておきましょう」

「お願いいたします」


 さらにその20分後。


「失礼します、元帥閣下」

「どうぞ。美味しいですね、この飲料は」

「連邦でも人気なものです。お口に合って幸いでした」


 次は派遣艦隊護衛艦隊司令だった。

 同じ軍官だが……何だこれ、面倒くさい。


「貴国の持つ兵器の設計図を、その一部でも良いのでいただけないでしょうか?」

「……対価は?」

「帝国軍の誇る機動要塞のデータです。我々はあれを1度鹵獲したことがあります」

「へえ、それは素晴らしい」

「そうでしょう!我々は精強無比!だからこそ他が成せぬことを成したのです!」

「そうですか……」

「ですから是非、お願いします!」

「……考えておきましょう」


 そして15分後。


「お休みのところ申し訳ございません」

「このソファは素晴らしく……こちらこそ申し訳ありません、お見苦しいところを」

「いえ、褒められて悪い気になる者はおりませんので」


 派遣艦隊の事務長官だった。いや何で文官が分かれて来る。


「貴国のワープ装置の設計図をいただけないでしょうか?対価は連邦の各国家の詳細情報になります。これはその一部です」

「……考えるだけはしておきましょう」


 もう斬り殺していいか?かなりイラついてきた。

 というか、こいつは流石に舐めすぎだ。


「面会希望者は以上になります。ありがとうございました」

「こっちこそ、有意義な面会ができて良かった」


 そうしてようやく解放され、アーマーディレストへ戻ることができた。

 ただこれ、明日も呼ばれてるんだよなぁ……もう行きたくない。面倒臭い。


「あ、お兄ちゃん……機嫌悪い?」

「……分かるか?」

「……当然……大変だった?」

「いえ、そんなことはありませんでしたね」

「はい。まだ顔合わせ程度でした」

「貴方、残らさせられてた間に何があったの?」

「あいつらがな……いちいちいちいちいちいちいちいち!何で4回も来るんだよ!1回でまとめて4人来いよ!面倒臭いだろうが!」

「あー……」

「それは、そうね」

「……ガイルが、正しい」

「先生、それは派閥争いというものではないでしょうか?」

「派閥?」


 派閥って……他国との交渉をそんな仲良しグループごとにするか?


「はい。どうやら連邦の派閥争いは過激なようです。この資料を解析しましたが、細かな点で主張の違いが見られます。製作者を確認したところ、星や部署などによって違う模様です」

「何だその馬鹿な連中は。帝国と戦っているのに足並みを乱すなんて、余程頭が悪いのか?」

「……馬鹿?」

「馬鹿なんじゃないかな?」

「馬鹿なんだろうな」

「言い過ぎですよ」

「まったく……そういえば貴方、ラグニルに何か送ってたわよね?」

「ああ。そうか、もう結果が出てくる頃かもな」


 ストレスを取るにはちょうど良いか。

 そんな風に考えつつも、シュミルでラグニルを呼び出した。


「ラグニル」

『何だい?』

「さっき送った資料は解析できたか?」

『目は通せたよ。なかなか興味深いね』

「では聞くぞ。あれに元素操作装置の対価となるだけの価値はあるか?」


 それ次第では、交渉に関しても考えないといけないが……


『無いよ』

「理由は?」

『あれは確かに効率的なシステムだ。色んな形でエネルギーを回収しているから、発生したエネルギーに対する回収率は極めて高い。投入したエネルギーの数倍だ。彼らからしたら、奥の手もいいところなんだろうね』

「それで?」

『でも、エネルギーを投入する必要がない王国には、無用の長物だ。それに、最大出力だって僕達の使うジェネレーターの数分の1以下、サイズだって僕達の方が小さい。使い道は無いね』

「つまりゴミか」

『そう、僕達からしたらゴミだよ』

「武装とワープに関してはどうだ?」

『あっちも同じだね。使っていたのは僕も知らない超対称性粒子だったけど、ジェネレーターから再利用しただけみたいだ。武装の威力と射程と発射間隔、ワープの最大距離とチャージ時間、全部僕達の方が上だよ』

「分かった。なら、あの話も断っておこう。それで、仕組みの解析は?」

『まだだね。資料のデータは全部確認したけど、あれには細かい原理が入ってない。一応、予想ならできるんだけど……候補はいくつもあるし、観測との比較が必要だ。それも大量にね』

「分かった。そっちは任せる」

『分かったよ。結果はできるだけ早く出すからね』

「頼んだ」


 ラグニルが知らないってことは、理論が王国には無いってこと……いや、あの口ぶりだと違うのか?

 まあ、あれについては専門家に任せよう。


「他にもあったんでしょ?そっちは?」

「論外だ。あの程度の情報の代わりにジェネレーターやワープ装置をくれなんてふざけた要求、聞く必要はない。帝国軍のものも、俺達の気を引けるレベルのものは何も無いみたいだ」

「そう。なら、断りましょう」

「幸い、あれは表には残せない交渉だったらしい。つまり、無かったことにすれば文句は言われない」

「お兄ちゃん、それって大丈夫なの?」

「あー……メルナ、どうなんだ?俺は問題ないと思うんだが」

「ええ、大丈夫です。私達が忘れてしまい、正式な報告に入れなければ、問題にされることもありませんからね」


 非公式な報告はしろってことだな。分かった。


「私も大丈夫だと思うわ。あの苦戦状態なら、王国軍(私達)の力は翼を増やしたいくらい欲しいはずよ」

「そんな相手との交渉を失敗させるわけが無い、か。余計なことを言って決裂したら……そうだな。油断はできないが、最低限の利用はできそうだ」

「お兄ちゃん、最低限の利用ってどれくらいなの?」

「そうだな……第1に情報源、第2に囮として利用、第3が多方面同時攻撃ってところだな。共同作戦は難しいだろう」

「あの戦い方だと、一緒に戦うのも難しそうだもの」

「そうですね。ポーラ、連邦軍の艦艇総数はいくつだと予想されていますか?」

「まだ精度は低いですが……1000億隻を超える可能性が67%です」

「帝国軍の構造と規模を考えると、倍以上でも驚かないな」

「はい。総数2000億隻以上である確率は41%です」

「そう……王国軍全軍でも厳しそうね」

「帝国軍との戦闘から推察できるが……500億隻もいればこっちは壊滅だ。アルストバーン星系を丸ごと要塞化してどうにかってところだろうな」

「うわぁ……」

「むしろ、連邦がいてくれて助かった面もある。あの連邦と同クラスの国家なら、帝国は俺達が推測した以上の戦力を持つはずだ。全軍が王国へ殺到していたら、もう壊滅していただろうな」

「半分だけだとしても、同じような結果でしょうね」

「……どうする?」

「さっきも言った通り、連邦を利用する。それしか無い」


 攻めの方が有利とはいえ、1歩間違えなくても殲滅されるような棘橋渡りなんてやりたくない。

 使えるものは使うとしよう。


「それで、そうだな……総帥府や王国議会への説明は俺がやる」

「私がやってもいいわよ?聞いてたから変わらないし」

「ついて来てはもらうが、メインは俺がやる。一応、交渉でも代表だからな」

「そう。なら任せるわ」

「それと、一応メルナも来てくれ。立場はいつも通り、王族の方だ」

「やっぱり、そうなのですね」

「ああ。ただし、連邦に対する切り札としてだな」

「連邦……なるほど、そういうことですね」

「良い案じゃないか?」

「ええ。交渉の手段としても、脅しとしても」

「教えたら面白そうね」

「ああ」


 驚く、とかいうレベルじゃないだろうな。

 王族へ不敬を働いたらどうなるか、見せしめにするのも悪くない。


「さて、報告の段取りを取ってくる。メルナ、リーリア、手伝ってくれ」

「先生、私はどうしますか?」

「指揮を頼む。キュエルを手伝ってやってくれ」

「分りました。頑張ってください」

「ああ」


 さて、大変だがやってくるか。











 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー











『では、手を結ぶ価値はあると?』

「はい、その通りです。帝国軍相手に1000年以上戦えるだけの戦力と国力を持っています」

『ふむ、それなら当てにできそうですな』

『シュルトハイン元帥の提案に賛成いたしましょう。帝国軍相手に拮抗状態を作れるのであれば、味方として役に立つでしょう』

「そうとは言い切れません、総帥閣下。彼らは国内での争いが激しいらしく、軍がそれに巻き込まれていないとは限りません。いえ、恐らく軍も対立の一部となっているでしょう」

『それほど酷いのかね?』

「身を滅ぼしかねない程度には」


 というわけで総帥府と王国議会への説明……が、まとめて行われている。仮想空間越しだが、まあ珍しいことじゃない。

 それに、王国議会の議長は陛下(ザルツ)だから、御前会議なしでも直接報告できる。

 また、陸海近衛軍の上級元帥や元帥達も聴講していて、王国国営放送関係者(マスコミ)も大勢おり、国民への説明にも十分だ。


「ですので、彼らは味方に換算しない方が良いかと考えます。あくまでも他者、囮として使えるなら運が良い。利用するだけで利益は与えない。それが妥当です」

『なるほど……』

『我が国の被害、及び損失が少ないのなら、それに越したことはないですな』

『ですが、多少のテコ入れ等は必要になりませんか?弱すぎては話になりません』

「いえ、彼らには十分な戦力があります。それに帝国を滅ぼした後、王国に牙を剥かないとも限りません。牙を()がせず、(なまくら)のままにしておくべきです」

『ですが、我が国が連邦から利益を得るには、相応の対価が必要となるのでは?』

「我が国が求めるのは帝国の本拠点の場所のみ。彼らが帝国を討とうとするのであれば、必然的に我々にも教えることになります。対価は不要かと」

『ほう』

『なるほど』


 欲しいものの数については、連邦(向こう)の方が多い。

 利用する方法は色々とある。


『メルナ殿下はどのようにお考えですか?』

「私ですか?そうですね……陛下への敬意は足りないでしょうが、王国のために使うことはできるでしょうね」

『そうですか……殿下、ありがとうございました』

『良くはないようですが、悪くもなさそうですね』

『足りない敬意に関しては、脅しをいれるというのも良いでしょう。誰かを見せしめに不敬罪にしても良い』

「それは俺がやっておこう。脅しだけだが……王国内でやらせるのは良くないだろうな」

『では、よろしくお願いします』

『閣下にお任せすれば安心だ』

「それでは、国王陛下、総統閣下。明日の会談にて予想される連邦側の提案があるのですが、申し上げてもよろしいでしょうか」

『ああ、頼む』

『お願いいたします』

「ありがとうございます。第1戦略艦隊でまとめた考えもお聞きいただいて、ご検討をお願いします」


 そしてまたしばらく話した後、王国議会は閉幕した。

 俺も仮想空間から戻ってくる。


「お疲れ様、貴方」

「連邦との交渉の方が疲れた。こっちは同胞だからな」

「そうでしたか。それで、あの提案については?」

「向こうの出す回答は予想できる。というより、他に手がない。全員でそう結論づけただろ?」

「そうですね。それでは、それを踏まえてどう動くつもりなのですか?」

「簡単だ。そっちに誘導すれば良い」

「誘導しなくてもできそうだけど」

「言うな。格好つけた意味が無いだろ」

「大丈夫よ。メルナも分かってるから」

「ええ、簡単ですね」

「おいおい……」


 お前ら……まったく。












・王国での派閥

 王国にも派閥はあるが、仲良しグループ程度の集まりでしかない。そのため、連邦の派閥抗争をまったく理解できない。

 原因としては、帝国に滅ぼされかけている状態で、例え予算だけだとしても味方同士で対立するような馬鹿な真似はできないから。

 なおこれは、ガイル達帝国侵攻時はまだ若かった生体義鎧や今の一般人の常識であって、帝国戦前は普通の派閥争いもあった。流石に内乱になりかねないようなものはほとんど無かったが。

(以前の話で、ガイルが帝国戦前の陸海軍であった派閥争いについて、仲が悪い程度の認識だったのはこのため)



・翼を増やす

 元から翼があるのに、それを増やそうという無駄な努力をすること。これには広義的に「へそで茶を沸かす」を含む。

 あるいは、それができそうなくらい強く望むこと。こちらは「喉から手が出る」と同じような意味。

 前者の意味だと「そんなの翼を増やすのと同じだ」、後者の意味だと「翼を増やしたいほど欲しい」といった具合に、主に2種類の使い道がある。

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