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天翼王国銀河戦記  作者: ニコライ
第2章

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第7話

 

 新王国歴7267年8月4日




「あれね」

「レーダーで見てはいたが、確かに他より大きいな」

「10km級でしたね。機動要塞よりも小さいですけれど」

「あれは戦闘用ではないようですから、何とも言えませんが……連邦軍にも機動要塞クラスの艦艇を造る技術力はあると推測されます」

「造らない理由があるんだろう。それは俺達が気にするところじゃない。それでポーラ、ハッキングはどうだ?」

「無理です。通信には空間波を使っているようですが、特殊な構造をしているようで介入の糸口すらつかめません」

「特殊?帝国と同じか?」

「いえ、帝国軍のものはただの暗号ですが、これは空間波そのものの性質が違うようです。量子波のような感じも……」

「そうか……分かった。そこはラグニル達に引き継がせる。それにしても、簡単にはいかないか」

「軍艦じゃないけど、あれは向こうの政府の船だものね。セキュリティレベルを確認できただけ良いとしましょう」

「そうだな。少なくとも、連邦が簡単に情報を抜かれたりしないことは確かめられた。それだけで十分な成果だ」

「はい」


 派遣艦隊本隊の到着に2日かかる、そう言われて待った2日後、その本隊とやらが到着した。数は10億隻、この数だけで海軍の半分以上だが、実際の戦力はもっと低いだろう。推定だが、帝国軍17〜23億隻程度の戦力のようだ。

 それで彼らの母国ザーハロッパ連邦という国家、ここファルトス銀河から約16〜19万光年離れた所にある、リルトバ銀河とリベルト銀河が本拠地らしい。


「さて、向こうに着いたとして、どうなると思う?」

「多分自慢はあるわね。本国にいる艦隊はアレより多いんでしょうし」

「提案されている会談ですけれど、少なくとも帝国戦への協力は要請されるでしょうね」

「それは敵対しない程度にするつもりだ。共同作戦なんてやったら、こっちにばっかり損害を押し付けてきかねない」

「それで良いわ。むしろ、向こうが囮になって欲しいわね。数は多いんだから」

「あとは……何だろ?」

「……条約?」

「そこまで行くと、持ってる外交権の範囲外だ。王国に、もしくはアルストバーン星系に連れていくしかない」

「ええ。いくら私達でも、そこまで勝手には動けないわ」

「そっか」

「それと、交易なんかも言ってきそうだな」

「えっと……先生、その場合は何をすれば良いのですか?」

「何も考えなくていい。王国が物を買う必要はないし、何か手に入れたいなら貴金属でも宝石でも作って売ればいい。それだけだ」


 で、まあ、いきなりシュルトバーン星系に連れていくわけにはいかないから、第1第4を合わせた艦隊の司令官として、俺が代表となって応対することにした。

 それで、連中の誇る豪華な船室を楽しんでほしいとか言われて、向こうの艦にわざわざ出向くことになった。そのまま会談もするつもりのようだ。


「で、あの船そのものの情報は何か得られたか?」

「ステルス装置のようなものが大量に積まれているらしく、大した情報は……ただ、武装は隠されているものも含めて見当たりません。あるのはシールドだけです」

「だとしても、周りは軍艦だらけよ。いくら無人艦でも、あれだけだと……」

「さっきも言いましたけど、要塞艦だと威圧しすぎますからね。数が多すぎてもいけません。これがちょうど良いんですよ」

「分かってる。こういうのは、メルナの方が詳しいからな」


 まあアーマーディレスト級が2隻もある時点で、威圧以外の何物でもない気もするが……向こうより大きな艦艇で懐へ入るのはマズイようだ。

 そういうわけで、大型戦艦(ザックバッハ級)1隻、高速戦艦(アルドレア級)2隻、軽巡洋艦(シェルラン級)4隻、重駆逐艦(メルフェス級)8隻の艦艇を、連邦艦隊の中央へ向かわせている。

 俺達は到着してから大型戦艦(ザックバッハ級)に転送され、そこから輸送艇(バハール)であの10km級艦に乗り込む予定だ。もちろん飛行型機動兵器の護衛はつけるし、護衛は他にもいる。


「さて、そろそろね」

「そうですね」

「いってらっしゃい」

「シェーン。次席だが、頼むぞ」

「……任せて」

『あの、司令。わたしの心配はしてもらえないんですか?』

「キュエル、これは家族だけよ」

『わたしは?』

「親友兼部下としか言えないわ」

『そんなぁ……』

「リーリア、からかうのはやめてやれ」

「じゃあ、貴方ならどう?」

「キュエルはおもちゃだ」

「ああ、確かにそうね」

『ちょ、え⁉』

「もちろん冗談だぞ?」

「ええ」

『うぅ……』


 なお会談には、副代表としてリーリア、俺達の補佐官扱いでメルナとポーラとヘルガも参加する。キュエルは第1第4双方の臨時指揮官として居残りだ。

 そうこうしている内に時間になり、転送機を使って大型戦艦(ザックバッハ級)の格納庫へ跳んだ。


「っと、流石に狭いわね」

「戦艦とはいえ、戦闘艦ですからね」

「仕方がないです。小さいですから」

「ああ。それにしても久しぶりに乗るな、この国賓仕様」


 輸送艇(バハール)は脱出艇としても使う機動兵器もどきで、普通は無機質な椅子が並んでいるか、何も無いかだ。

 だが元素操作装置を使えば内装の変更なんて簡単だから、こういった豪華な内装の設定もされている。


「向こうから連絡が来たわ。指定したハッチから入ってほしいそうよ。護衛も一緒で良いみたいね」

「護衛航空部隊、全機準備できました」

「よし。じゃあ行くぞ」


 とはいえすぐそばまで近寄っていたから、移動時間はほとんど無い。だがハッチの中に入ったからといって、すぐに出るのは不用心だ。


「出迎えは?」

「173人を確認できています。ですが、儀礼用以上の武装は無さそうです」

「そうか……主に俺が話す。いいか?」

「そうですね。代表以外が何度も話すのはあまりよくないですから」

「いいわよ。貴方も、私達を矢面に出したくないんでしょうし」

「言うなっての……」

「先生、何かあれば連絡します。リーリア先生も、メルナもです」

「そうだな、頼む。じゃあ行くぞ」

「ええ」

「分かりました」

「はい」


 翻訳のスイッチを入れた後、輸送艇(バハール)の扉を開けさせ、少し待ってから俺達は外へ出る。

 って重い⁉俺達なら動くのに支障は無いが……ああ、向こうの重力の基準が大きいのか。慣れるのに若干苦労しつつ、俺達は前へ進む。

 そして目の前となった出迎えの先頭にいたのは、目を4つ、腕を2本にした、毛深い猿のような人型種族だ。


「ようこそお越しくださいました。自分は本艦における案内役を務めさせていただきます、ディクルド-ミュルバーン大佐であります」

「バーディスランド王国軍第1戦略艦隊司令長官、ガイル-シュルトハインだ」

「存じております。そちらの方々は……」

「訪問者のデータは送ってある。そっちで確認しろ」

「し、失礼しました!」


 こんな面倒なこと、早く終わらせたい。そう考えたのが通じたのかは分からないが、その後すぐにミュルバーン大佐の案内で艦の中を歩いていく。

 それにしても内装も外の特異性と同じで、軍艦ではありえないほど豪華だな。3人も、小声で色々と感想を言っている。

 ここ、まだ格納庫のはずなんだが。


「この艦は連邦の外交使節専用艦として建造されました。連邦所属国家が外遊のために所持する他、連邦政府が使節を派遣するために保有しています」

「こんな巨艦を非軍事専用でか?」

「巨艦だからこそです。速度やワープ距離などが一般の艦艇より劣るため、軍用としては採用されませんでした」

「そうか」


 連邦のワープは、サイズに対するエネルギー消費量増大は大きいんだな。それとも、ジェネレーターの出力向上が低くくなるからか?

 それなら、こっちの要塞艦も同じ感じで見ていそうだ。ワープについては全て隠すとしよう。


「シルベルディ銀河まで来るのは初めてでしたので、この艦の影響もあり多少時間はかかりましたが、無事にお会いできてなによりです」

「そうだな。俺も会えて良かったと思う」

「ありがとうございます」


 こんなのはお世辞でしかないし、向こうも同じだろう。

 とはいえ、言質を取られたら厄介だ。外交交渉に関する基本的なことは頭に叩き込まれている。どうにかして、王国有利な状況にしてやろう。

 そう考えて、格納庫エリアから出た時だった。


「おい!来たぞ!」

「元帥閣下!こちらを!」

「バーディスランド王国について教えてください!」

「若くして国を代表するお気持ちは!」

「連邦との交渉について一言!」


 何か機器……恐らくカメラを構えた人々が道の両側を覆い尽くしている。そう知覚した時には既に、俺は反射的に3人を守るよう体を移動させていた。

 こいつらは恐らく、マスコミなんだろう。他にこれをやりそうな連中はいない。

 だが……


「あれは何だ?」

「マスメディアですが、どういたしましたか?」

「……追い払え」

「は?」

「不愉快だ。追い払え」

「は、はい!」


 翻訳を切ってしまいたいくらい……いや、それ以上だ。

 それで、俺達はやはり国賓扱いなのか、マスコミは連邦の軍人によって有無を言わさず追い払われていった。

 そしてそれを待ち、少しだけ語り始める。


「我が王国では、マスコミのああいった行為は禁じられている。公平さを損ねる上に、個人の権利まで侵害する。俺としても、不愉快極まりない」

「そ、そうでしたか……失礼しました」

「俺はまだいい。だが王族の方々へあんなことをされたら、不敬罪にするしかなくなる」

「そ、そこまで……申し訳ございません」

「いや、先に言ってなかったこちらにも少しは非がある。それより、案内してくれ」

「はい。では、こちらになります」


 こちらにはメルナがいるから、今でも不敬罪は使える。

 だがまあ、最初の1回くらいは見逃してやろう。


「それで、そっちの立てた予定ではどうなっているんだ?」

「まずこちらの部屋で1度目の会談を、そのまま昼食会も行います。その後休息を挟み、2度目の会談を行う予定です」

「ちょうど着いたのか。分かった」


 俺としても、その予定に異論はない。メルナとリーリアが何も言っていないので、大丈夫なんだろう。

 で、扉が開かれたんだが……こちらが4人に対し相手は38人、そのうち護衛が24人を占めている。

 生体義鎧の俺達相手には無意味だが、多すぎやしないか?


「ようこそ、バーディスランド王国の方々。私はザーハロッパ連邦シルベルディ銀河派遣艦隊全権外交大使、アルデント-ルクルベルクです」

「バーディスランド王国軍第1戦略艦隊司令長官、ガイル-シュルトハインです。よろしくお願いします」


 握手という文化があることは確認済み、やんだが……その相手はフロッグのような顔で、かなり太っている。

 多分気のせいだろうが、手が油にまみれているように思えてしまう。嫌悪感を隠すのが大変だ。


「よろしくお願いします、シュルトハイン閣下。ですが……このような外交交渉は大丈夫なのでしょうか?」

「はい。我々戦略艦隊は国王陛下より、限定的ながら外交権を下賜されています。本格的な条約締結は不可能ですが、簡単な取り決め程度でしたら可能です」

「それは良かったですな」

「ええ、余計な時間をとらなくていいですから」


 それと……向こうの雰囲気が悪いな。侮られているような……俺以外全員女だからか?それとも俺が見た目だけ若いからか?

 王国のことを知ってた連中だ、王国民の容姿とかについて知っていても不思議じゃない。

 もしそうだとしたら、交渉したくもないんだが。


「そういえば。先ほど聞きましたが、貴国ではマスコミが……」

「いえ、あのように声をかけることが不可なのであって、我が王国にもマスコミはおります。許されているのが公正さを考えられた会見、もしくは個別にアポイントメントを取った場合のみとなっているからです」

「なるほど。しっかりとした手順を踏んで、ということですね」

「はい。我々は国王陛下の(もと)皆平等であり、同胞を害することは許されません」


 だからこそ、帝国のことは許せない。同胞を奴隷として扱ったことを、仲間を殺され続けたことを、許すことなどできない。

 って……何か別のところで怯んだか?


「そ、それでは立ち話もなんですので、こちらへどうぞ」

「ええ。ありがとうございます」

「そちらのお嬢様方も、どうぞお座りください。急に代表となると大変でしょう」

「いえ、彼女達は部下ですので。責は全て自分が負っております」

「そうですか」


 落胆するってことは、何か企んでいたな。

 まあ大体予想はできるが……やらせるわけがない。


「さて、それでは貴国……連邦政府と言った方がよいでしょうか。連邦政府が我がバーディスランド王国を探していた理由について、お教えしていただけますか?」

「もちろんです。我が連邦政府はフィルド帝国との戦争において助力を得るため、独力で帝国の支配から脱したというバーディスランド王国を求めていました」

「なるほど。フィルド帝国、ですか。正式名称はあなた方と会って初めて聞きましたが、確かに我が王国からしても帝国は敵です」

「では……」

「ですが」


 だけどな、王国を甘く見るな。


「それは手を組む理由にはなりません。あなた方を協力するに値しないと判断すれば、我が王国は独力で帝国を滅ぼすでしょう。たとえ何千年かかろうとも」

「そんな無謀な……」

「無謀であろうと、これが我が王国の決意です。その点はお忘れなきよう」


 だったら、この2ヶ月で再訓練を申し出た予備役の数を教えてやろうか?

 それとも、海軍からの共同作戦の嘆願書の数を教えてやろうか?

 こっちはワープ可能距離の問題でほとんど断ってるが。


「さて、無駄話はここまでとして、建設的な話をしましょう」

「は、はぁ……」


 ただ……何だろうな、このジャブを無視してストレートを叩き込んだ感じは。


「そ、それでは、ですね。何かお聞きになりたいことなど、あるのではないでしょうか?」

「そうですね……では、王国についてどうやって知ったのか、聞いてもよろしいですか?この翻訳の元データをどうやって手に入れたのか、などですね」

「ええ、大丈夫です。これはおよそ1800年前、連邦成立以前の話になります。当時、現在の連邦領の2割は帝国に奪われていました」

「2割、ですか?」

「これでも、まだ取り返した方なのですよ。帝国に対する抵抗運動そのものは約4000年前から存在します。複数の国家がまとまって抵抗するようになったのが2500年前、連邦の原点と呼べる時です」

「失礼しました。続けてください」

「ええ。1800年前、ここシルベルディ銀河から帝国本国へ戻ろうとする艦隊を襲撃したところ、輸送船の1隻から翼のある人々が見つかりました」

「それが我々の同胞ですか」

「その通りです。帝国語の一部が通じたため、意思疎通はそこまで問題にならなかったそうです。言語データは彼らとのコミュニケーションのために取得されました」

「彼らの子孫はご健在で?」

「発見段階で全員非常に衰弱しており、その後回復した方は少なかったとのことで……数少ない生き残りにより数代は続いたそうですが、原因不明の病にかかり全滅したそうです」

「原因不明?どのような病ですか?」

「症状のデータが……ああ、それだね。出してくれ」

「これは……ああなるほど、これですか」

「ご存知なのですか?」

「ええ。我々の遺伝子特有の、免疫の過剰反応の1種です。確かに死に至る病ではありますが、中世の頃から治療法は存在しています。今は薬で簡単に治るものです。彼らには気の毒なことですが……」


 というか、現代になってかかる人はいない。歴史を学ぶとよく出てくる病気なだけだ。

 帝国に占領される前だって、かかったことのある奴は稀で、風邪より簡単に治る程度でしかない。


「そうでしたか。それで、ご遺体は連邦の慣習で太陽葬となったそうですが……」

「いえ、構いません。彼らが帰還できなかったのは悲しいことですが、同胞を弔っていただき感謝します」

「礼には及びません。我々にとっても同胞でしたから」


 どんな扱いだったのか分からないが、そこまで悪い扱いは受けていなかっただろう。そう願うだけだ。

 それにしても、そうやって連邦に入った王国人がいたんだな。ただ、この様子だと……救われず、帝国へ連れ去られた者達もいるかもしれない。


「では、王国についてはどこまでご存知ですか?」

「それが……救助できたのは1度きりでしたので、ほとんど分かっておりません。帝国から得た情報ですと、約3000年前に帝国により本星を占領されるも抵抗を続け、約500年前に独力で帝国軍の排除に成功したとか」

「はい、その通りです。むしろそれだけしか分かっていなくて安心しました」

「と言うと?」

「帝国から得た情報ということは、帝国には王国の現状をほとんど掴まれていないということですから」


 もちろん、これが全てでは無いだろう。帝国が隠しているものも、連邦が隠しているものもあるはずだ。

 ただ、1つだけ分かることがある……王国の中に裏切り者(スパイ)がいるなら、この程度なはずがない。


「なるほど。そういった視点となりますか」

「ええ、軍人ですから」

「それは頼もしい。それでは、こちらからも質問をしてよろしいですか?」

「どうぞ。我々だけでは不公平でしょう」

「感謝します。ではお聞きしますが、貴国はどうするつもりでしょうか?」

「どう、とは?」

「貴国がどのように動くのか、ということです。帝国との戦闘をどのように進めるつもりなのか、我が連邦との関係をどうするのか、このような店になります」

「自分は軍人ですので、国政までは関与いたしません」


 酷い詭弁もあったものだ。

 俺の影響力を考えれば、国政を変えることだってできるのにな。


「では、貴方個人の考えで構いません」


 ちっ


「自分の考え、ですか。そうですね……まず、帝国を滅ぼすことは決定事項でしょう。そして連邦政府とは、友好を保てればいいと思っております。敵を増やすような愚策はしたくありません」

「それは……」

「他意はありませんよ?あくまで、軍人である自分の考えです」


 あくまで俺の考えだ。

 連邦(そっち)が敵対しなければ、戦端は開かれない。


「なるほど。連邦政府はより友好的な関係を望んでいるのですが、どうでしょうか?」

「連邦に取り込みたいと?」

「あ、い、いえ、そこまでは……」

「失言でした。忘れていただけますか?」

「え、ええ」


 流石に文官だと、殺気に潰れるだけか。

 護衛は多少反応したが、全員動きが遅い。陸軍軍人の半分ってところだな。


「大丈夫ですか?気分が悪いようでしたら、ここまででも……」

「い、いえ、大丈夫です。お気遣いはありがたいですが」

「そうですか」


 酷い茶番だよな、本当に。

 そう思ったところで、ポーラから少し様子の違う連絡が届く。他者不可視のウィンドウに投影されたそれは、高度にステルス化された連邦軍の部隊が戦略艦隊(こちら)を偵察しているという情報だった。


「それで……もうそろそろ時間です。シュルトハイン閣下、昼食会としてもよろしいですか?」

(ポーラ、いつの情報だ?)

「ええ、構いません」

(30分前に発見、3分前に艦隊へ接触直前の位置に到着していました)

「では、お持ちしろ。ものを間違えるな」

(敵対行動は?)

「間違えるな、とは?」

(確認されていません。調査だけの模様です)

「連邦の食物にはあなた方にとって毒となるものもありますので、それを除いた料理を持てということです。混ざっていては大変なので」

(なら、静観だ。だが万が一に備えて、秘密裏に航空部隊を近くに配置させておけ)

「そうなのですか?」

(了解です)

「ええ。具体的には、食肉や野菜などの一部になります」

(メルナとリーリアも、それでいいな?」

「なるほど。お気遣い感謝します」

(ええ、大丈夫ですよ)

(いいわ。ただし、もし手を出してきたら……)

「いえ、当然のことです」

(叩きのめす。当然だ)


 これが愚策だってことは、流石に理解しろよ?












・猿

 バーディスランドにおける猿は、地球にいるものに似ているものの、2対4本の腕を持つ哺乳類。

 またこの猿の中から、4腕2脚の人が誕生し、滅ぼされた。


・フロッグ

 カエルに似たバーディスランドに住む生物。

 腕と脚の間にヒレを持ち、地球のカエルより泳ぐのが速い。また淡水だけでなく、海で暮らすフロッグもいる。

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