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天翼王国銀河戦記  作者: ニコライ
第2章

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第4話

 

 新王国歴7267年5月25日




「ポーラ、どこだ!」

「……姫様、本当ですか?」


 連絡を受け、俺とシェーンは急いで艦橋へ駆け込んだ。艦橋にはまだ半分ほどしかいないが、その顔に浮かぶ表情は多種多様だった。


「発見場所は3ヶ所、いずれも王国から1万光年以内です」

「数は?」

「発見した数は3000万から5000万です。ですが、レーダーの範囲に入りきっていないことも考えると、最低でもこの2〜3倍はいると思われます」

「昨日の反応は偵察艦隊だったようですね。全て怪しんでいた星系ですよ」

「……姫様、準備はどうですか?」

「大丈夫よ。既に戦闘準備態勢は出してあるわ。戦闘艦も要塞艦も、全て収容されているわね」

「発令は俺達が入ってくるのと同時か。早いな」

「いえ、他のことに気を取られてしまっていて……」

「早いんだから気にするな。それでこの話、父さんには?」

「もうしてあります」

「よくやった」


 そしてちょうどそのタイミングで、シュミルに通信が入った。


『貴方、もう聞いたわね?』

「ああ。そっちの準備は?」

『できてるわ。あとはおじさん次第よ』

「リーリア。父さんは恐らく、第1と第4を分けるだろう。だから……そっちは頼むぞ」

『分かってるわ。だから、貴方も頑張って』

「当然だ。誰に言ってる?」

『愛しのガイル-シュルトハインよ』

「なら、俺も愛しのリーリア-メティスレインを信じる」

『こほん、そろそろこっちの話も聞いてくれるか?』


 と、声をかけられてその方向に向くと、メインスクリーンに父さんが映っていた。

 俺としたことが、気づかなかった。


「父さん、決まったのか?」

『そうだ。ガイル、リーリア』

「ああ」

『はい』

『お前達2人はそれぞれ第1、第4戦略艦隊を率い、この2点の帝国軍を殲滅しろ』

「残りの1つはどうするんだ?」

『そこは第5と第7に行かせる。心配するな』

「分かった、こっちは任せてくれ」


 予想通り、不安は無い。こう思ったそのタイミングで、レイが駆け込んできた。

 戦闘になったわけじゃないんだから、そこまで慌てる必要は無いぞ。


「お兄ちゃん、ごめん!」

「レイ、大丈夫だ」

「それで、どうなったの?行くの?」

「ああ。リーリアとはここで別れるけどな」

「そっか……リーリアお姉ちゃん、頑張ってね」

『ええ、ちゃんと仕事をしてくるわ』

「それだとまるで俺がちゃんと仕事をしないみたいだな」

『大丈夫よ。貴方は立派な人だもの。だから、行ってくるわね』

「ああ、行ってこい」


 そうして、第4戦略艦隊旗艦(ダルティリンディス)は亜空間ワープでこの星系から飛び去っていく。


「俺達も行くぞ。アーマーディレスト、亜空間ワープ用意」

「座標確認、重力状況よし」

「亜空間ワープ用意、よし」

「戦闘準備態勢、配置よし」

「全兵装使用可能、確認」

「ジェネレーター出力正常」

「シールド、異常ありません」

「……アーマーディレスト、準備完了」

「分かった。亜空間ワープ開始」

「……ワープ」


 そして俺達も、新たな戦場へ向けて飛び立つ。











 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー











「ざっと1億ってところか。もしかしたら、この数の艦隊が大量にいるかもしれないな」

「え、それって大変だよ。全部……」

「流石に全てを潰せるとは思えない。見つけた艦隊を殲滅して、少しでも帝国軍の活動を阻害することを考えろ」

「……大丈夫」

「30倍ですが、問題ありませんね」

「ああ。少し面倒だが、この程度ならそう時間もかからない」


 数光年先にある星系を映した映像を見て、今どうするべきか考える。

 ここはアルストバーン星系より6724光年、ファルトバーン星系。惑星の1つには、中世レベルの文明がある。こんな所も狙うわけか。

 なお、この映像もケンティスバーン星系の時と同じく、潜り込ませた潜宙艦のソナー情報から作り出した映像だ。

 ただ今回は、その潜入が大変だった。


「……帝国……ここを攻める、の?」

「ああ。異次元に帝国の潜宙艦の反応がある。集まるだけなら、異次元に潜る必要なんてない」

「そっか。じゃあお兄ちゃん、どうするの?」

「そうだな……とりあえず、どうにかしてこいつらは殲滅する。それは確定事項だ」

「もちろんです」

「その上で、できる限り迅速に対処しないといけない。見つけた場所以外の星系にも、帝国軍がいる可能性が高いからな」

「当然ですね」

「だから、ここでどうするか……」


 帝国艦隊は惑星へ向いた円錐形の陣を敷いており、その底面中央部付近に機動要塞は固まっている。惑星までの距離は約100万km、戦闘するには十分な距離だ。


「ポーラ、帝国艦隊の情報はどれだけ正確に分かってる?」

「はい。現在確認されている艦艇数は9869万5493隻、最大でプラスマイナス100万の誤差があります。また、機動要塞の数は50、こちらは確定情報です。先生、機動要塞が少ないようですが……」

「もしかしたら、旗艦は1隻かもしれないな……お」


 そうだ。これ、結構面白いな。


「お兄ちゃん?」

「良いことを思いついた」

「良いこと、ですか?」

「……悪いこと?」

「まあ確かに、悪いことかもしれないな。ただ……」


 その対象は俺達ではなく……


「帝国軍にとっては、だ」


 さあ、悪夢のような事態を起こしてやろうか。











 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー











「準備は全て完了しました」

「全艦戦闘用意、作戦開始。囮艦隊は亜空間ワープ開始」

「囮艦隊、亜空間ワープ開始」


 作戦の第1段階として、帝国艦隊前方10万kmの地点に、アーマーディレスト直属とした艦以外の9割を向かわせる。

 たった数光年なら、亜空間ワープにもそんなに時間はかからない。


「囮艦隊、亜空間ワープ終了」

「敵艦隊の反応を確認」

「囮艦隊、烈型砲撃方陣にて攻撃を開始」

「潜宙艦隊、敵潜宙艦隊を捕捉。攻撃開始」

「敵艦隊、ほぼ同時に攻撃を開始しました」


 さらに攻撃を始めさせることで、注意を逸らす。囮攻撃の基本だが、これが無ければ全てが始まらない。


「敵艦隊、陣形を固持。足を止めました」

「先生」

「よし、アーマーディレストも亜空間ワープをしろ。敵艦隊の(・・・・)後方に(・・・)突っ込め(・・・・)!」

「……了解、ワープ」


 そして帝国艦隊の注意が囮へ向いたところで、アーマーディレストと直掩艦隊を使って背後から奇襲をする。

 ワープ終了後、目の前には帝国軍の機動要塞が見えていた。


「攻撃開始」

「……発射」


 圧倒的な火力でもって、機動要塞をデブリと変容させていく。

 陽電子砲(両用砲)でさえ、1発で帝国軍戦艦を破壊できる。そんな艦が重力子砲(主砲)重粒子砲(副砲)、大量のミサイルを放っているんだ。攻撃を集中させれば、機動要塞を落とすことなんて容易い。

 だが、完璧とも程遠い。この欠点だらけの作戦を成功させるには、時間管理が最も重要になる。


「シェーン、撃ち続けろ。レイ」

「航空部隊はもう発艦してるよ。気の早い人はもう攻撃しちゃってる」

「それで良い。敵が立ち直る前に叩きのめすぞ」

「はーい。じゃあ、こっちの機動要塞とかは貰うね」

「ああ、任せた」


 攻撃そのもののタイミングを合わせる必要が無く、ミサイルや砲を撃ち続ければ沈められるため、航空部隊にとって帝国艦艇は狙いやすい相手だ。機動要塞相手でも、1万機単位で連携する俺達からすれば難しいことじゃない。

 爆撃機(ケイフィ)重爆撃機(バドラ)が対艦ミサイルをハードポイントに造成し、一斉に発射する。

 さらに別の重爆撃機(バドラ)は200m級駆逐艦に接近すると、変形してレーザーソードで切り裂いた。

 制空戦闘機(アーレス)戦闘攻撃機(リングス)は僅かに発艦してくる人型機動兵器を迎撃、蹂躙している。マイクロミサイルどころか、ロングライフルやレーザーソードも使ってどんどん撃墜していく。さらに駆逐艦や巡洋艦の艦隊相手には数十機単位で連携攻撃を行い、丸ごと沈めていく。まるでゲームだな。

 また攻撃機(ルバート)は戦艦や空母に狙いを決め、1隻ごとに1機といった感じで確実にトドメを刺していた。


「直掩艦隊、突撃します」

「艦隊陣形はこの通りでー、こっちとあっちを優先かなー。ガイルー?」

「ああ、それでいい。蹂躙しろ」

「りょうかーい」


 直掩とした戦闘艦や要塞艦も負けてはいない。

 火力と耐久を考えて戦艦を多めにした戦闘艦部隊は、数隻ごとの集中斉射で確実に帝国艦艇を沈めている。

 要塞艦は言わずもがな。むしろ1隻で数十隻を蹂躙し、数百隻相手に優勢を作り続け、機動要塞をタイマンで沈める。

 現在、戦況は圧倒的に有利だ。


「機動要塞撃沈数、12隻になりました」

「手を休めるな。後のことは無視だ。最大効率で攻撃を続けろ」

「囮艦隊は通常通りの攻撃を続けてくださいね。こちらが失敗したら、第2段階になりますので」

「囮艦隊の艦隊運動もこっちが指示するよー」

「航空部隊は、もっともっと沈めて!右、攻撃が少ないよ!」

「潜宙艦隊、敵潜宙艦隊の排除に成功しました」

「潜宙艦隊は魚雷攻撃を開始。潜宙戦艦(ゼルファン級)は機動要塞を優先して狙え」

「……撃ち続けて」


 とはいえこうしている間にも、タイムリミットは刻一刻と近づいている。敵陣を後方から一方的に食い破っているが、常に包囲殲滅の危機にある。

 タイミングを間違えれば、負けるのは俺達だ。


「よし、そろそろ……」

「敵艦隊全艦の反応低下を確認。旗艦を撃沈した模様!」

「攻撃続行!囮艦隊もこっちに呼び寄せろ!潜宙艦隊全力攻撃開始!」


 だが、旗艦が落ちたなら退く必要は無い。徹底的に叩き、手早く全てを沈めよう。

 長引くと何が起こるか分からないからな。


「雑兵だが数は多い、油断するなよ」

「うん、もちろんだよ」

「潜宙艦隊、全力攻撃始めー」

「囮艦隊、敵艦隊から500kmの位置への亜空間ワープ終了」

「攻撃を開始させますね」

「遠慮はするな。殲滅しろ」


 その後は、まあ何も無い。

 旗艦が落ちた帝国艦隊なんて、具の無いノーラスのようなもの。殲滅なんて簡単だ。


「作戦終了、戦闘態勢解除。ポーラ、損耗率はどうだ?」

「全体では5.2%、戦闘艦は3.9%、航空部隊は6.1%です。アーマーディレスト直掩とした艦隊では6.7%、航空部隊では8.1%になります。また、要塞艦に撃沈されたものはありませんが、中破が4、小破が12あります」

「予想より被害が大きいな……要塞艦の被害について送ってくれ」

「はい」


 ポーラからシュミルへデータを送ってもらい、確認する。

 相変わらず、上手くまとめられているな。


「このあたりで少し被害が増えてるか。まあ、それなら……ん?」


 これは……もしかすると……


「ラグニル、このデータをすぐに解析しろ」

『何だい?これから回収に忙しくなるんだろう?』

「こっちの方が優先だ。多分、お前の興味も引く」

『そうかい。まあ、一応見るだけ……へえ』

「もう分かったのか?」

『経験的な勘に近いものだよ。ただ、面白そうだ』

「任せる。終わったらすぐに連絡してくれ」


 あいつに任せれば、そう時間もかからないだろう。

 俺の予想通りなら、これはポーラじゃなくラグニル向きの仕事だ。


「先生?」

「ガイル?」

「お兄ちゃん?」

「……何か、あった?」

「ああ。まだ予感程度なんだが……」

「何かあるんですね。そしてそれは、ラグニルに任せることが最適なんでしょう」

「そうだ。ポーラ、すまないな」

「いえ、先生の判断なら、間違っていないと思います」

「そこまで万能じゃないぞ」


 その後しばらく、ラグニルとその直属以外の技官達も使って帝国艦艇の調査などをしていると、いきなりラグニルの顔が目の前に現れた。

 もちろん空間投影だが……おい、コールはどこいった。


『分かったよ』

「早いな」

『そこは僕の腕の見せどころさ。それより、キミの懸念が当たったみたいだね』

「というと、やっぱり変わってたか」

『そうだよ。帝国軍は無人艦のAI強化、もしくは仕様変更をしたらしい。限定的かもしれないけどね』

「具体的には?」

『500年前までと比べて、砲撃の統一性と連携性に大きな違いが見られるよ。まるで系統樹を変えたかのようだ。もしかしたら最終決戦、もしくは3日前の戦いから学んだのかもしれないね。それと旗艦撃沈後、数百隻単位だけど、集団戦闘を取っている場所が何ヶ所かある。指揮されてるってほどじゃないけど、単一目標への砲撃だね。これに関しては詳しく調べた方がいいかな?』

「ああ、頼む……気づかなかったな」

『それと所々、帝国艦艇とは思えない動きをする場所があるね。多分アルゴリズムの変更なんだろうけど……もっとデータをくれるかい?前のも、他のもだよ』

「ああ。ポーラ」

「はい、先生」

『ありがとう。ちゃんと調べてみるよ。アルゴリズムも暴ければいいかな』

「頼んだ」


 冗談のように言ってるが、ラグニルならやりかねない。

 アルゴリズムが解析できれば、多少は楽になるな。期待せずに待っておこう。


「確かに、これは私向きではありません」

「まあ、そういうことだ。それでポーラ、他の場所はどうなった?」

「第4艦隊は本艦隊とほぼ同じ時間に終了した模様です。第5と第7は……先ほど終了したそうです」

「他に帝国艦隊の反応は?」

「ありません」

「怪しい反応は?」

「戦略艦隊総司令部の担当となりましたので、私は追っていません。データの共有を申請しますか?」

「いや、いい。それより戦力回復が先だ。ハーヴェ」

「おう」

「修復の指揮を取れ。暇してた分働け」

「仕方ねぇだろ。揚陸部隊を動かさねぇと仕事が無ぇんだからよ」

「だったら仕事は受けておけ。今、他にやることは無い」

「了ー解。おらお前ら、さっさとやんぞ。にしても、ひっでぇ作戦だったなぁ」

「こっちの損耗を防げる最良を取っただけだ。何度も通じる手じゃない。それよりさっさとやれ」

「へーい」


 そう言って、ハーヴェは揚陸参謀達も仕事に取り掛からせる。

 それに他にも、仕事は色々とあるのだ。


「お兄ちゃん、わたし達は?」

「レイとメルナはメリーアと一緒に警戒担当だな。シェーンは一応、アーマーディレストの総点検をさせろ。ポーラは総司令部からの情報待ち、及び戦闘情報の普段通りの解析だ。良いな?」

「はーい」

「ええ」

「りょうかーい」

「分かりました」

「頼むぞ」


 俺は、残ってる工作艦(オルファン級)の護衛指揮をやろう。

 今回も技官どもはごねるだろうからな。












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