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天翼王国銀河戦記  作者: ニコライ
第2章

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第2話

 

 新王国歴7267年5月22日




「貴方……久しぶりね」

「リーリアこそ、元気そうでなによりだ」

「当然よ、と言いたいけど、少し寂しかったわ」

「それもそうだろうな。じゃあ、来い」

「ええ……!」


 第1戦術会議室にて、転送装置から出てきたリーリアを受け止める。リーリアは嬉しさに顔を綻ばせているし、多分俺も同じなんだろう。机みたいな邪魔なものが無いから、こういうのには楽だ。

 ただ、前後にいるのがなぁ……


「先生、今から軍議なのですが」

「リーリア、ガイル、今は止めて」


 苦言を呈する人間が揃ってる。

 片方は俺の後ろ、第1戦略艦隊(ウチ)の参謀総長ポーラ。そしてもう片方は俺の前、第4戦略艦隊参謀総長のヘルガ-ダッティスティ、階級は当然大将。

 転送装置から出てきたばかりでこれを見て、また呆れているようだ。


「良いでしょう、ヘルガ。久しぶりの再会なのよ?」

「それはいつも通り。それに、ここにいるのは身内だけじゃない」

「つれないわね」


 ヘルガはいつも通り厳しい……ただまあ、身内だけじゃないのは事実だから、仕方ないか。


「声をかけなくてすまないな、アッザーディア元帥」

「あ……」

「問題ありません。こちらにも準備がありましたので」

「いや、私達は個人的なことだったし……」

「自分達も無いとは言いません。であろう?レストよ」

「そうだね、ゲン」


 アッザーディア元帥の後ろで答えたのは、第9戦略艦隊参謀総長のレスト-バルグーア大将。彼の方がアッザーディア元帥より年上なので、この2人の間だとこんな感じの話し方になる。

 それより、話を始めよう。


「じゃあリーリア、現状の説明を頼む」

「ええ、ヘルガ」

「はい」


 返事と共に、中央に立体映像が出される。

 戦略艦隊総会議で出たものよりも詳しい、本格的な戦術用のものだ。


「現在のケンティスバーン星系の状況が、これ」

「帝国艦隊の位置はここ、さっきと変わってないわ。ただ陣形は少し変わってて、今は全長5000km、直径500kmの円筒形よ」

「待機状態か何か……この映像はリアルタイムか?」

「ええ、潜宙艦を大量に潜ませているわ。もっとも、これはソナーから解析した映像だけど」

「正確ならそれでいい。ワープとかは確認されたのか?」

「いいえ。艦隊陣形の変更はあったけど、進軍も援軍も無かったわ。これだけで終わらせるつもりみたいね」

「なるほど……帝国軍の潜宙艦どうだ?」

「ソナーにそれらしい反応は何も映ってないわ。ワープ準備のために通常空間に戻ってるって考えてるけど」

「多分その通りだ。ただ、警戒は怠るなよ」

「ええ、もちろんよ」

「1つ、よろしいでしょうか?」

「良いわよ、アッザーディア元帥」

「敵の保有する機動要塞の数はどれほどでしょうか?」

「現在の推定値は、200プラスマイナス20。精度99.864%」

「まあ、約200隻ってところよ。それを踏まえて、貴方はどんな指揮をする?」


 リーリアにそう言われて、面白い作戦でも立ててやろうかとも思った。

 だがまあ……数の差は10倍程度だから、奇策を使わなくてもいける。


「作戦は至極単純だ。まず第4の分艦隊が突撃し、帝国艦隊の陣形を乱す」

「いいわよ、楽勝ね。被害も大きいでしょうけど」

「距離があるからな……そこは諦めてくれ。そしてそれが終わったタイミングで第1と第4が同時に亜空間ワープ、帝国艦隊後方以外の全方位に包囲網を敷き、攻撃を開始する」

「後方以外、なのですか?」

「ああ、逃走する艦隊を出すには、その方がいい」

「そのような部隊がいるでしょうか?」

「規模と配置から見て、機動要塞タイプの旗艦の数は3〜10隻だ。後方に布陣している艦隊が動いてもおかしくない。逃走だとしても、包囲網突破攻撃だとしてもな。そして、そこが第9の出番だ」

「は!」

「最後に第9は後方に動いた帝国艦隊に対し、俺の合図で亜空間ワープを開始、包囲円陣でもって攻撃を始めろ」

「了解しました」


 詳細は後で詰めるとして、今はこれくらいで良いだろう。


「作戦開始は30分後、09:15だ。総員準備にかかれ」


 敬礼に敬礼で返し、軍議を終える。

 すると第9の2人は普通に帰り、ヘルガは何か言いたそうな目で見ながら転送装置に乗り、ポーラは笑顔で艦橋へ戻っていったため、ここには俺とリーリアだけが残された。


「リーリア、危険な役目を押し付けてごめんな」

「大丈夫よ。どのみち、遅いから第4戦略艦隊旗艦(ダルティリンディス)は参加できないし、人的被害は無いわ。それより、何か要望があるんでしょ?」

「バレてるか。最初はできる限り、ド派手にやってくれないか?」

「派手に?まあいいけど……ああ、そういうこと」

「多分その通りだな」

「貴方も大概物好きよね」

「そうか?ただまあ……」


 こっちの方が都合が良いんだ。


「帝国本土まで届いてくれれば、こっちの手間も無くなるだろ?」


 恐怖でも届けてくれれば、なお良いな。











 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー











「時間だ。戦闘用意、作戦開始。リーリア」

『任せなさい。第1次攻撃艦隊、亜空間ワープ開始!』


 それを合図に第4戦略艦隊より、第1次攻撃艦隊に選抜された戦闘艦群が亜空間ワープを開始する。

 なお、この第1次攻撃艦隊は速度を重視しているが、後で必要なフリゲート(ファルゲン級)は入っていない。つまりいるのは軽駆逐艦(アルネーア級)から高速戦艦(アルドレア級)まで、合計20万隻だ。

 またこの他にも、飛行型機動兵器が中に入っていたりしがみついたりしていて、戦力的には倍近くなっているだろう。母艦からの距離が半光年となってしまうが、陽動だから問題はない。


「第1次攻撃艦隊、亜空間ワープ終了」

「敵艦隊、未だ反応無し」

「第1次攻撃艦隊、攻撃開始します」


 第1次攻撃艦隊は帝国艦隊のすぐ近くのあらゆる場所に出現し、最大戦速で突貫した。そして、全砲門を用いての最大火力投射を行なっていく。

 駆逐艦は曲がったり反転したりと不規則な動きをしているが、高速戦艦(アルドレア級)は直進しかしていない。まあ、上回るサイズの敵はほとんどいないんだからいいか。


「航空部隊、全機離艦完了。攻撃を始めます」

「敵艦隊、応戦開始」

「敵は機動兵器、以前と同じ人型機動兵器を発艦させています」

「リーリア」

『もちろんあっちが優先よ。航空部隊、敵機動兵器との航空戦を開始』


 人型といっても、帝国軍のものは薪にマッチョの手足をつけたようなアンバランスな形をしている。そしてこいつはノロイし、(やわ)いし、武装は手足に内蔵されているものばかりだから、慣れれば対処は楽なんだよな。

 っと、第1次攻撃艦隊に同行した飛行型機動兵器も人型へ変形し、近距離格闘戦が始まった。だが機動力と武装、そして練度の差により、この距離の不利を覆して、圧倒的な撃墜比を叩き出している。

 ただ、艦が多いのと遠いせいで被害も大きいか。


「敵艦撃沈数、1万を超えました」

「被撃沈数、現在291隻」

「航空部隊損耗率1%を突破」

「流石に、損耗も激しいか」

『だから無人艦だけに行かせたんでしょ?』

「当然だ。無駄な人的損耗を出すべきじゃない」

『当然ね……そこ、一斉射!』

「敵機動要塞5隻撃沈!」

「……凄い」

「やった!」


 小さな30km級とはいえ、ミサイルの集中砲火だけで上手く沈めたものだ。まあ、シールドさえ削りきってしまえばこっちのものだけどな。

 それにしても流石はリーリア、指揮が上手い。機動要塞(アレ)を沈めるのはかなり大変なのに、何気なくやっていた。

 っと、今度は100km級が1隻沈んだか。


「大暴れだな」

『貴方が言ったんじゃない』

「まあそうだな。リーリア、1000秒だぞ」

『分かってるわ。500万は沈めたいわね』

「おいおい、5%もか」

『これでも控えめな方よ。この一群は転進、こっちへ向かわせて』

「そこの艦艇はこっちだ。集中砲火を浴びるぞ」

『ここはこっちで、それはあっち、このあたりを包囲するように動きなさい』

「今だ。ミサイル全弾発射」


 何故か俺も途中から参加して、50km級機動要塞を2隻撃沈した。越権行為とか言う奴はいない。そもそも、第1と第4は2つまとめて俺達2人の部下みたいなものだからな。

 そうしていたらすぐに時間は過ぎ、次の作戦へ移行する時間だ。


「敵艦撃沈数、600万を突破」

「被撃沈数、現在1万4837隻」

「敵機動要塞、34隻を撃破」

「航空部隊損耗率、3%を突破」

「まもなくタイムリミットです」

「リーリア、他の艦隊の準備は良いか?」

『もちろんよ。貴方の方こそ、大丈夫よね?』

「当然だ。さて、そろそろ……」

「3、2、1、時間です」

「『艦隊、亜空間ワープ開始』」


 半光年程度、ワープはすぐに終わる。帝国艦隊より約1万kmの位置、そこへチューブ状になるよう2ヶ戦略艦隊は布陣した。

 確かに、数の差は10倍ある。だが要塞艦を戦闘艦に換算すれば4〜6倍程度になるし、火力を考えればほぼ同程度だ。そして、練度では圧倒している。


「全艦、展開完了しました」

『こっちも終了』

「分かった」

『全艦』

「撃てぇ!」


 第1(俺達)が上半分、第4(リーリア達)が下半分、作戦通り後方以外の全方位を包囲した。そしてそのまま砲撃が開始される。

 第1次攻撃艦隊と違って向けられる砲は限られるが、元々火力の質は圧倒してる。シールドを削るのに多少時間がかかるだろうが……これならすぐに終わるな。

 事前に展開していた潜宙艦隊も帝国軍潜宙艦隊と戦闘を始めている。どうやらこっちの方が早く終わりそうだ。

 また飛行型機動兵器も発艦し、既に進み始めている。とはいえ到着まで現実でも20秒、加速空間内では3時間近く(約1万秒)かかってしまう。

 機動兵器は強力な平気だが、それまでに色々と処理しておきたい。


「まず機動要塞の直掩を狙え。次に陣形が乱れている所だ」

『ミサイルは第1と同時斉射よ。ガイル』

「ああ、片側一斉射だ。準備しておけ」

『ここのエリアへの砲撃、中央付近へ集中させて。その後、奥にいる空母を狙うわよ』

「今のうちに言っておくが、航空部隊はまず敵機動兵器の排除だ。接敵次第、攻撃を開始しろ」

『今よ、放ちなさい』


 ミサイルは到達まで時間がかかるが、砲撃なら遅くても30秒程度だ。そして、たった1万kmしか無くても、帝国軍相手なら圧倒的な差を作り出す。

 第1次攻撃艦隊でも大暴れだった高速戦艦(アルドレア級)が、200m級戦艦や500m級巡洋艦を一方的に沈めていく。

 戦艦(ギロスィア級)大型戦艦(ザックバッハ級)数百隻からの砲撃が、1000m級戦艦の群れを蹂躙する。

 そして要塞艦の一斉射は、2000m級戦艦や2500m級空母を容易く引きちぎる。

 さっきのミサイル戦と違って、砲撃万歳といった状況だな。

 さらに、余裕のある潜宙艦はこっち(通常空間)にも魚雷を撃っていて、どうやらその被害も馬鹿にならないみたいだ。


『順調ね』

「ああ。だがリーリア、帝国の援軍には気をつけろ」

『当然よ。潜宙艦隊を星系中に広げてるけど……援軍どころか偵察艦すら引っかからないわね』

「こっちもだな。やっぱりこれで全部か?」

『警戒して悪いことはないわ。それより、今の状況をどう思う?』

「そうだな……ポーラ、現時点での帝国軍機動要塞の撃沈数はいくつだ?」

「現在52隻です」

「4分の1か。まあまあじゃないか?」

『まあまあ、ね。まだ始まったばかりなのに』

「奇襲で相当有利に運んだからな。無人艦ばっかりのクセに反応が遅いってのは何なんだか……それより、そろそろじゃないか?」

『何が?』

「第3段階だ。そろそろ動いてもおかしくないぞ」

『確かに……』


 反応がとてつもなく鈍いとはいえ、そろそろ……お。


『ちょうど良いわね。貴方の予想通り、動き出したわよ』

「ああ。アッザーディア元帥、作戦開始だ」

『了解しました』


 命令通りワープしてきた第9戦略艦隊は第9戦略艦隊旗艦(リンファスフィザー)を中心にしたすり鉢状の陣形を取り、変針した一部の帝国艦隊を抑え込む。

 いや、叩き潰していく。


「決まったな。レイ、全航空部隊の指揮を任せる。ポーラ、旗艦の特定を開始してくれ」

「はーい。多いけど、頑張るね」

「今からですか?」

「もう見せる時間は終わった。次は素早く仕留めるぞ」

「分かりました」

『ヘルガ、あなたも協力しなさい』

『了解』

「頼むぞ」


 もう王国軍が襲撃したということは、帝国には伝わってるはずだ。なら、時間をかける必要は無い。まあ、帝国軍の旗艦は長距離での砲撃戦中は見つけにくい、というか見つける前に終わってしまうんだが……

 この近距離なら、割と早く見つかるだろう。


「ミサイル、まもなく着弾します」

『貴方、誘導は?』

「アーマーディレストからの一括管理にしてある。そっちもだろ?」

『もちろん。そっちに任せるわ』

「最初からな。ポーラ、頼む」

「はい。3、2、ミサイル、着弾……敵艦艇の20%を撃沈しました」


 距離が長いから落とされた数も多いとはいえ、発射数が多いから得るものも多い。そして、落とした艦には47隻の機動要塞も含まれていた。砲撃で沈んだ分も含めると、これで過半数だ。

 ああそれと、今沈めた機動要塞の中に旗艦が何隻かいたらしい。見るからに動きが悪くなっている場所が結構ある。


「お兄ちゃん、リーリアお姉ちゃん、もうすぐ着くよ」

「分かった、頼む」

『お願いね』

「任せて!ポーラお姉ちゃん」

「敵艦隊の予測回避パターン、及び予測防空攻撃パターン、送りました」

「ありがと!」


 さらに航空部隊による攻撃も始まり、一層殲滅が早まっていく。

 制空戦闘機(アーレス)戦闘攻撃機(リングス)が帝国の人型機動兵器を次々と落としていき、爆撃機(ケイフィ)重爆撃機(バドラ)は悠々と艦艇への攻撃を行っている。いくつかオーバーキルもあるような……まあ、沈められないよりはマシか。

 戦況は圧倒的に俺達が有利。後は……


「ポーラ、旗艦の特定はどうだ?」

「まだ少し……来ました。残り5隻、全て機動要塞です」

「リーリア、この2隻は任せた」

『ええ』

「『フリゲート(ファルゲン級)、突撃』」


 最後の1手を打つ、それだけだ。

 フリゲート(ファルゲン級)は亜空間ワープで敵旗艦の目前へと出現し、大型対艦ミサイルを一斉に発射する。機動要塞の持つシールド容量は莫大だが、それも一瞬で消し飛び、巨大な艦体は砕け散った。

 真っ二つのものもあれば、粉々に砕け散ったものもある。良い感じだ。捕虜を取ろうとしても、揚陸部隊が侵入したら自爆されるだけだからな。

 それくらいなら、偶然に任せた方がまだ期待できるだろう。


「敵艦隊、全艦反応性低下。全ての旗艦を撃沈したと考えられます」

「分かった。後は掃討戦だ。一気に行くぞ」

『了解よ』

『は!』


 帝国軍艦艇は旗艦さえ沈めてしまえば、連携が取れなくなる。それどころか、単独での戦闘能力さえ大きく落ちる。そして逃げるという発想すらなく、その場で雑な攻撃を繰り返すだけだ。

 だから、こんなの相手に苦戦なんてありえない。敵の数だけは多いが、損耗はほぼゼロで殲滅し終えた。


「作戦終了、戦闘態勢解除。ポーラ、被害状況を教えてくれ」

「はい。総戦力損耗率は1.7%、航空部隊の損耗率は3.4%です。内訳は必要ですか?」

「頼む。ああ、戦略艦隊ごとでいいぞ」

「分かりました。第9戦略艦隊は0.9%と2.2%、第1戦略艦隊は2.0%と3.9%、そして第4戦略艦隊は2.2%と4.1%です」

『いいスコアね。少し物足りないけど』

「10倍の差があったんだぞ。あれで一応、性能的な戦力比はイコールだからな?」

『海軍でもこの倍はやれるし、生体義鎧(私達)からしたらもっと多いじゃない。それに、今回のは最初から反応が遅かったわ』

「確かに。練度が低かったのかもしれないな……ああそうだ。ポーラ、ラグニルを出してくれ」


 500年で帝国軍の練度が落ちたのなら大歓迎だが、まあそれは無いな。辺境の未発達惑星を攻めるだけなら、未熟者で十分だとでも思ったか?シュベールどもが。

 っと、これを考えているのは後だな。


『やあ、呼んだかい?』

「ああ。敵艦隊の残骸を漁って、何か残ってないか探してほしい。帝国の正確な位置や現状が分かればいいんだが、今の帝国軍艦艇の性能でもいいぞ」

『ちゃんと部下はつけてくれるんだよね?』

「当然だ。技官全員に、工作艦(オルファン級)輸送艦(ガッザレス級)の全て、第1だけじゃなく第4にも出させる」

『いいね』

「それと、後でもう1つ頼まれてくれるか?」

『分かったよ、何だい?』

「メルナの手伝いだ。少し忙しくなるぞ」

『今まで暇だったからね。忙しいのは大歓迎さ』

「じゃあ、追って連絡させる」


 あいつも大概だよな、まったく。


「ガイル、別の仕事ですか?」

「ああ、後で説明する。それとポーラにも……リーリア」

『どうしたの?』

「ヘルガをポーラのサポートにつけてくれ。それと、第4戦略艦隊旗艦(ダルティリンディス)のコンピューターのこっちのコンピューターへの接続もだ」

『いいわよ。ヘルガ』

『了解。ポーラ、よろしく』

「はい。先生からは何も聞いていませんけれど」

「それはもう少し待て。アッザーディア元帥」

『どういたしましたか?』

「第9戦略艦隊はアルストバーン星系に戻って、父さんの指示に従ってくれ。それと、総帥府や王国議会への説明も頼む」

『了解しました』


 帝国軍がここに来るかもしれないが、第1と第4(俺達)なら大丈夫だ。それで、メルナとポーラにはアレをやってもらうとして……2人ともメルナの手伝いをさせるか。やることの種類はメルナの方が多いからな。

 4人に頼みごとをして、俺の仕事は取り敢えず終わった。……仕事を押し付けたとも言う。


「さて、リーリア」

『貴方?どうしたの?』

「俺の部屋に来い」

『……え?ちょっと待って、終わったばかりよ?』

「約束だろ?」

『でもまだ……』

「じゃあ、俺がそっちに行くか。無理矢理にでも部屋に連れ込めばいいな」

『いや、そんな……』

「さてと。じゃあ、あとは頼む」

「え?あ、はい」

『わ、分かったわ!分かったから!だから、その……す、少し待ってて。お願いよ』

「ああ。30分な」

『ええ……あんな挑発しなければ良かったわ……』


 土の上のドルってやつだ、それはな。












・シールド

王国軍のものは常時更新式だが、帝国軍は貯蓄エネルギー放出式で、貯め込んだエネルギーで敵の攻撃を無効化する。

貯蓄式はシールドエネルギー総量をたやすく増やせるが、シールドを破られれば簡単に沈められる。そのため特に長期戦では、一斉同時攻撃でないと破れない王国製シールドに分がある。



・戦力損耗率

 王国軍にてよく使われる、戦闘結果の指標。

 戦闘艦や機動要塞、要塞艦に点数を付け、その減少具合を割合にすることで、総数からどれだけ減ったのかを分かりやすく表している。

 王国軍は数が多いため、被害数を言われるよりこっちの方が分かりやすい。もちろん、どの艦が沈んだとか、どれだけ機動兵器が減ったといったデータも評価には用いられる。



・シュベール

 王国本星に住む、狐に似た6本足の獣。童話などでは大抵悪役。

 帝国人は狐に似た人型なので、王国ではこの蔑称が用いられている。



・土の上のドル

 覆水盆に返らず、後の祭り、などと同じ意味。

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