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天翼王国銀河戦記  作者: ニコライ
第1章
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第1話












「何でこんなことに!」


「それより……向こうだよね?」


「そう言ってた」


「待ってよ!」


「急げ!遅れるな!」


「速く!頑張って!」


「でもぉ!」


「急がないと死ぬぞ!」


「このまま真っ直ぐ……きゃっ⁉︎」


「こっちだ!」


「う、うん!」


「そんな、こんなの……」


「諦めるな!」


「諦めないで、生きるんだ!」


「そうだよ。きっと避難してるよ」


「そう、だよね。ごめん」


「くっそ、ここも!」


「落ち着いて」


「あ、ごめん。だけど……」


「こっちだよ!」


「ありがと!ほら!」


「ありがと!」


「どういたしまして」


「よ、よけっ!」


「なっ……」






「うわぁぁぁぁぁ!?」












 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー











 新王国歴7267年4月1日




「状況は?」


 右手の人差し指にはめたシュミルを通じて、艦橋へ問いかける。応答したのは……ポーラか。こいつがわざわざやることじゃないんだが。

 ()かされなくても(いそ)ぐが、居住区画にいたせいですれ違う相手が多い。翼が当たらないよう注意しないと邪魔になる。


『アルストバーン星系外縁部に正体不明の艦隊が出現しました。データに無い艦なので、敵かどうかは分かりません』

「サイズと数は?」

『最低でも20km級、最大が30km超えです。最外縁のレーダーが捉えたのみなので不確実ですが、確認されただけでも2000はいます』

「艦隊速度と、星系中央部までの到達予想時間は?」

『極めて遅く、このまま進むならば1000年以上かかるでしょう。ですが、この星系に来たということは……』

「分かった。俺もすぐに向かう」

『了解です』

「万が一も無いだろうが……急ぐか」


 最も近い転送機を使い、艦橋へ向かう。幹部クラス専用エリアにいたのは、蒼い翼に同色で肩まである髪、青い肌と碧眼と青づくしのポーラ。

 彼女以外にはシェーンもいた。赤紫の翼と長髪に隠れているが、既に準備はかなり進めているようだ。


「遅くなった」

「いえ。早い方です、先生」

「……大丈夫」

「俺の気持ちの問題だ。気にしなくていいぞ」

「それでもです。何回も言ってる通りですから」


 ポーラは昔俺の生徒だったことがあり、その時からずっと先生と呼ばれている。

 何度かやめろとは言ったんだが……この通りだ。


「それで、詳しい状況は?」

「不明艦隊は先ほどの通りです。準惑星設置の大型レーダーとはいえ、範囲に一瞬かかった程度なので、得られた情報は少ないです。当艦隊は既に半数が展開済み、機動兵器も発艦準備が進んでいます」

「分かった。シェーン、この艦に不備は無いな?」

「……うん……この艦に問題は無い」

「艦隊もですね。異常の報告は入ってませんよ」

「メルナか、確認済みなんだな」

「ええ。データがシュミルに送られてきていましたから」

「そうか、ありがとう」


 今来たのが俺の右腕のメルナ。書類もスケジューリングも非常に仕事が早く、軍事一辺倒の俺としては嬉しい副官だ。その白い肌と金の髪と眼と翼から、戦女神とか呼ばれてた時期もあったな。

 肩より少し下まである、カールのかかった髪は……戦女神のイメージとは違う気もするんだが。

 まあ、今はそんな場合じゃない。


「さて、今度はどんな奴らか……」

「味方だけはありえませんね」

「まあな。あいつらとの戦争で利用できるような相手なら良いんだが」

「あの速度から推測される技術力だと、使い物になりません。早く追い払うべきです」

「そうなんだよな……役に立つ連中が来た試しがないぞ」


 艦橋へは次第に人が入ってきて、席は8割ほど埋まってきたか。残りの数十人も、5分もしない内に揃うだろう。

 あいにく、艦隊参謀長と艦隊参謀7人、さらに航空参謀7人は第11艦隊の訓練に付き合うために本土星系へ、揚陸参謀長と揚陸参謀7人は陸軍との模擬戦闘のためこの星系の第4惑星に行っている。

 こんな時に来るなんてくじ運が悪いが……まあ、あの程度の艦隊なら脅威にもならないだろう。特攻をしてきたとしても、戦艦に当てさせれば問題ない。


「ごめん、遅れちゃった!」

「この程度、問題にはならないぞ」

「でも、最後の方だもん。お兄ちゃん、ごめんね」

「接敵までは時間がある。戦時中じゃないから、気にするな」

「そう言われても気にしちゃうもん」


 慌てて入ってきた彼女はレイ。俺の義理の妹、正確には養妹だ。

 紅い翼とショートの髪、銀色の眼と翠色の肌という、俺達の種族の中でも特に派手な配色だったりする。

 遅れた理由は……寝ていたからだろう。彼女は今の時間、ちょうど長めの非番だった。そうでなければ、ここまで遅くならないからな。


「レイちゃん、寝癖がついてますよ?」

「あ……」

「直してあげるわ。動かないでね」

「はーい。ありがと、メルナお姉ちゃん」

「どういたしまして」

「まったく。時々抜けてるな、レイは」

「ごめんね」


 そんなことをしているうちに、操艦要員やオペレーターは全員席に着く。

 ここは早く終わらせるが吉だ。


「さて、そろそろ行くぞ」

「ええ。ガイル、命令をお願いします」

「全艦戦闘準備、3ヶ戦術艦隊と1ヶゲート艦隊を残して不明艦隊の調査に向かう。潜宙艦隊は近くまで亜空間ワープで接近した後、最大深度で先行。不明艦隊の背後を取れ」

「了解です」


 異次元で最大深度なら、現実の1000倍以上早く進める。

 専用の装置(ソナー)を使っても見つけづらいので、潜宙艦は偵察させるのにちょうど良い。


「駆逐艦と巡洋艦はこの艦の左右に、戦艦は上下に広がれ。要塞艦は周囲に陣を作り、残りは要塞艦の背後につけ」

「艦隊配置、急ぎなさい」


 もっとも大切かつ囮にしやすい要塞艦は、中央に配置する。

 この艦ごと行くのだから、小型の戦闘艦は無視して誘いに乗るだろう。


「潜宙艦隊が不明艦隊の背後を取り次第、この艦隊陣形のまま亜空間ワープで不明艦隊の目前に展開するぞ」

「お兄ちゃん、航空部隊は?」

「状況に応じて出す。準備はさせておけ」

「了解♪」


 レイは航空オペレーターを通じ、機動兵器パイロット達に準備させる。

 駆逐艦やフリーゲートも速いが、やはり飛行型機動兵器には劣る。状況次第とは言ったが、この作戦には欠かせないだろう。


「いつも通り、そういうこということですね」

「やること、変わんないもん」

「先生が指示を間違えたこと、ほとんど無いですし」

「言い過ぎだ。さて、2年半ぶりだがしっかりやるぞ」

「「「「「了解」」」」」


 俺の命令に従い、艦隊が動き始めた。

 何百、何千、何万回もやってきたことだ。自分の手足のように操れる。


「陣形、整いました」

「航空部隊準備完了。いつでもいけるよ、お兄ちゃん」

「潜宙艦隊、最大深度で安定して航行中。予定通りですね」

「……この艦も含めて……全艦の亜空間ワープ装置に、問題は無い」

「なら、潜宙艦艦隊が着くまで待機だ」

「了解」


 情報が届くまで待機、いつものことだ。この距離で慌てる必要は無い。

 もし今ワープで攻めてきても、十分対応できる。


「潜宙艦隊が不明艦隊の直下に到着しました」

「正確な大きさと数は?」

「36km級大型空母が37、35km級大型戦艦が52、28km級空母が243、27km級戦艦が328、22km級巡洋艦が631、20km級駆逐艦が1143、合計2434隻です」

「要塞艦並のサイズでその数か……機動兵器は確認できるか?」

「はい。メインモニターに出します」

「艦隊配置も一緒に頼む」


 モニターと言うが、昔のような平面画面に出すわけではない。

 俺達指揮要員や操艦員と個別の命令や上申に対応するオペレーター、その間に巨大な立体映像が展開された。


「箱型か。あいつらの影響は無いな」


 映った機体は、幾つかの直方体を組み合わせたような形をしている。全長は……平均で約120mか。また万が一としても、大気圏内での運用など一切考えていないんだろう。空力的に不合理な場所に武器がついていた。

 マニュピレーターも無いし、超が付くほど旧式の宇宙探査機を見ているみたいだ。


「艦隊配置に特徴は無いですね」

「ああ、教科書通りの球形陣だ。移動なら良いが……急な接敵を考えてないのか?」

「艦隊速度のわりに、レーダーの性能が高いんじゃないかな?少なくとも、向こうにしては」

「……そう、かも……技術の発展の仕方は、文明それぞれだし」


 まあ過去には、連射速度が速いくせに艦の速度が遅かったり、有効射程は長いのにレーダーの範囲が狭い、なんて連中もいたからな。それと比べれば常識の範囲内か。

 っと、そろそろ動くべきか。


「亜空間ワープ準備。ステルスも解いておけ」

「了解、ステルス装置解除」

「全艦、亜空間ワープ準備」

「アーマーディレスト、ワープ準備」

「機動兵器部隊、艦隊がワープ準備。情報の確認を忘れないようにね」

「全艦、準備完了しましたよ」

「亜空間ワープ開始」


 命令と同時に艦首にワームホールができ、艦尾まで動いていく。そして亜空間へ入った。


「到着、今」

「艦隊の状況を確認しろ」

「前方に不明艦隊を確認しました。潜宙艦艦隊の情報通りです」


 今回は距離が短いから、ワープはすぐに終わった。手早く艦隊の状況を調べ、問題が無いことを確認する。

 不明艦隊は突然目の前に艦隊が現れたため、警戒しているようだ。


「あの艦隊からの通信は?」

「今の所はまだ……いえ、電波で入っています」

「音声だけか?」

「映像も入っているようです」

「解読できるな?」

「簡単です。メインモニターの一部を使います」


 ポーラ以下オペレーター20人が指示をし、人工知能にハッキングをさせる。

 通信用ということで、難解なシステムでは無かったのだろう、一瞬で映像が流れ始めた。


『アルゲ ゼルデ デミ ガルゼス……』


 まあ、言葉が通じるわけないか。

 一方ハイナ達は電波を辿って艦隊のコンピューターにたどり着き、数秒でプロテクトを突破していた。

 相手は黒い肌に捻れた角を持つ種族。今までに見た覚えは無いから、確実に初見だ。

 このまま通信するだけでも言語データは集まるんだが、手早くいこう。


「情報は集まったか?」

「はい……音声変換まで、あと5秒」

「なら、出来しだい変換してくれ」

「了解」


 得た情報を元に、コンピューターが音を合わせていく。

 データさえ集まっていれば、時間のかかる作業ではない。


『……えるか。そこの艦隊、聞こえるか』

「聞こえる。何の用だ」

『ふむ、何者だ』

「名前を聞く時は、自分から名乗るべきだろ?」

『黙れ若造。鳥風情が我々の名を聞けるだけでも、ありがたく思え』


 ……確かに俺達は鳥類から進化して、背中にデカい翼はある。確かに俺の見た目は20歳の頃から変わっていない。

 だが、そこまで言われる筋合いは無いはずだ。

 あれか?俺の見た目か?黒眼黒髪な上に、薄い茶色の肌と黒い翼なんていう地味な見た目だからか?

 だったら、言い返すべきか?俺の30分の1も生きられない種族が粋がるな、と。


「……バーディスランド王国軍第1戦略艦隊、旗艦アーマーディレスト。俺は第1戦略艦隊司令長官のガイル-シュルトハイン、階級は元帥だ」

『ならばバーディスランド王国へ偉大なるフォルクス皇国皇王フィラド28世に代わって命ずる。我らが軍門に下れ、さもなくば滅びよ』

「……この程度の連中か」

『何か言ったか?』

「通信を切れ。こいつらに価値は無い」

『おい貴様!まだ話は』


 こんな頭の沸いた連中、相手にするだけ無駄だった。

 我慢する必要はないな。


「全艦戦闘用意。制限はかけるが遠慮は無しだ」


 合図を出すと同時に脳波操作装置と思考加速装置が起動し、俺達は500倍に時間が加速された仮想空間へ潜り込む。

 これが俺達の中核の1つ。

 相対性理論から外れた艦を操っている以上、反応速度は遅くできない。人工知能では人の柔軟な発想に勝てない以上、人間が速くなるしかない。


「よくもまあ、あんな強気に出てこれたな」

「ハッキングされてたこと、気づかなかったのでしょう。知らないというのは恐ろしいことですね」

「確かに。ポーラ、今の結果は?」

「敵艦隊の発射したレーザーは、14%が命中しました。ですが、合計してもシールド1基にすら至っていません」

「これで確定か。弱小国家の攻撃なんて気にするな。要塞艦は前進、戦闘艦は左右に展開して半包囲しろ。航空部隊も発艦、撹乱してやれ」


 敵艦隊の機関は重水素型核融合炉、推進機はプラズマ噴流、主兵装はレーザーと電磁砲(レールガン)。 ワープ可能距離は無理をしても最大10光年。シールドの出力もフリゲート(ファルゲン級)の1億分の1以下。

 こんな敵、逃すのも難しいし、負けることなんて不可能だ。

 だが、容赦はしない。


「了解です。艦隊前進、半包囲陣形を取ってください」


 参謀総長のポーラ-ミュルティス大将。情報処理能力が特段に高く、かなり頼りにしてる。代わりに指揮はそんなに得意じゃないが、俺がいるから問題ない。

 ポーラの発言を受け、艦隊は敵の進路に蓋をするように動いていく。


「……アーマーディレスト、前進」


 アーマーディレスト艦長のシェーン-ハイシェス中将。指揮能力も艦隊運用もまあまあ上手いが、その本質は個艦操作。あれを真似できる奴は……数億人に1人いれば良い方か。

 この艦は1番デカイから囮にしやすいし、あいつらに破壊なんてできるわけがない。


「航空部隊発艦。逃さないでね」


 航空参謀長のレイ-シュルトハイン中将。見た目通り若いんだが、飛行型機動兵器の指揮には定評がある。俺と同じか少し低いくらいだな。

 レイがそう言うと同時に、空母や揚陸艦や要塞艦から機動兵器が飛び立つ。まだ1割かその程度だが、すでに敵艦隊を覆い尽くさんばかりだ。


「ガイル、準備は全て終わりましたよ」


 そして副司令のメルナ-ファルトルム大将。先に言ったように事務系の仕事も得意だが、戦術戦略に関してもかなりの才がある。そうでなかったら、副司令じゃなくて秘書か何かだろう。

 ちなみに戦闘艦も機動兵器も数が多いせいで、敵戦艦の主砲クラスが機動兵器をかすめることも何回かあった。だが、その機動兵器は意に介さず進み続ける。まあ、当然だな。威力が足りない。


「使用兵器は陽電子砲(両用砲)と反物質弾頭ミサイルのみ、潜宙艦隊は別命あるまで待機。格の違いを見せつけてやれ、攻撃開始」

「全艦陽電子砲(両用砲)発射開始」

「機動兵器、第1波ミサイル攻撃開始」

「潜宙艦、別命あるまで待機」


 指揮官クラスが4人、旗艦艦長を含めても5人しかいないが、この程度で混乱するほどヤワな指揮系統は組んでない。

 オペレーターを中継して命令を伝達していく。


「次の航空部隊は戦艦群と敵艦隊の背後、計3ヶ所から突入させろ。上下の抵抗が特に厚い」

制空戦闘機(アーレス)戦闘攻撃機(リングステ)は敵機動兵器の追撃をして。他の機体は退いてね」

「駆逐艦、巡洋艦は再度ミサイル攻撃を開始してください。戦艦は敵艦隊へ近付き、敵大型艦を優先して撃破してください」

「全要塞艦、斉射の用意を」

「……斉射!」


 そして時間を加速できるのに、連射速度が遅くては意味が無い。1門だけでも体感では数秒に1発、現実では1秒に百発以上、雨あられと降り注いでいることだろう。

 敵にしても、気がついたら艦隊が壊滅しているんだ。慌てないわけがない。


「ガイル、あの艦隊から通信が来てますよ。繋げばいいですね?」

「旗艦は残ってたか、頼む。一時攻撃停止」


 再びモニターに映った顔。さっきは偉そうだったが、今の顔には脂汗が流れ、表情に余裕がない。いいざまだ。

 と言っても、こっちが時間を加速している分、会話に開きが出てしまうのだが。だが、思考加速をやめることなんてしない。


「何の用だ?」

『……こ、降伏する。これ以上の攻撃は……』

「断る。先に仕掛けてきたのはそっちだぞ」

『……な、何故だ!降伏すると言っただろう!……』

「すぐに死ぬ連中に、そんなことを言う必要は無い。情報を抜き取っても一切気付かないような連中は、特にな」

『……何だと!それなら先に仕掛けたのは貴様らではないか!……』

「すぐに言葉が通じたのに、それに気付かなかった奴らが悪い。それで、話は終わりだな?切れ」


 少し時間を取りすぎたな……異星人に温情なんて必要ないのに。

 そして攻撃再開直後、敵旗艦にも陽電子砲(両用砲)が直撃し、対消滅反応のエネルギーに飲み込まれて消え去った。


「戦闘終了、戦闘態勢解除。よくやった」

「これくらい、苦労の中には入りません」

「わたしも。大丈夫だよ」


 仮想空間から戻ったところで、後始末を始めるか。


「それでポーラ、敵母星の位置は?」

「ここから495光年、ちょうど第7戦略艦隊の近くです」

「なら、情報を送って適当に潰してもらえ。手に入れたデータは全て送っておけよ」

「了解です」

「それといつも通り敵艦隊の残骸は回収、爆発物の類は対空砲で処理しておけ」

「了解」


 滅多に無いが、稀にミサイルが近接信管等で残っている場合がある。作業にあたる工作艦(オルファン級)が被害を受けないよう、先に戦闘艦が確認していた。

 もちろん、工作艦(オルファン級)にも後で確認させる、というか勝手にやる。何回もやってるからな。

 他には残敵がいないか潜宙艦に探しに行かせたり、どうしてもと訴える技術官連中を工作艦(オルファン級)に乗せさせたりしていると……メルナが寄りかかってきた。

 というか、こんな所で押し付けるな。


「それでガイル、今夜は私でしたよね?」

「そうだが、ここで言うな」

「隠すような仲じゃないでしょう?」

「だとしてもな……」

「メルナお姉ちゃん、良いなぁ」

「レイは3日前だったでしょう?決まりじゃない」

「先生、もう少し増やしてあげられませんか?」

「今でもギリギリなんだぞ。任務も考えると、毎日は無理だと言ってるだろ」

「……残念」

「お前らな……」


 まさかシェーンまで乗るとは。黄色い肌からのぞく茶色の眼をこちらへ向けてくるが、仕事が残っているためかこっちまでは来ない。

 というか、4人とも俺の嫁みたいなものとはいえ、戸籍上は結婚してないだろ……まあその戸籍自体、俺達には怪しいものだから、関係ないと言えば関係ない。

 役所でも、実際の夫婦みたいに扱われてるしな。

 そして何故かオペレーターや操艦員からの生暖かい視線が向けられるが……お前らにも相手はいるだろう。というか、同じことをやっていたりするだろう。


「はぁ……レイ、さっきまで寝てたんだろ?後の処理はやるから、先に休んでおけ」

「いいの?」

「ああ。どうせ、残りはデブリ回収と解析だけだ。ほとんど技官の仕事で、俺達のやる仕事は少ない」

「他にもいたら?」

「その場合でも、まだ主力がいるとは考えづらい。データ通りなら、あの艦隊だけで7000万人は乗っていたみたいだからな」

「そっか、分かった。お兄ちゃん、ありがと」

「気にするな。おやすみ」

「うん!おやすみ♪」


 そう言って、レイはすれ違いざまにキスをしてくる。

 やっぱり、レイはこう元気な方がいい。


「レイちゃん、いいですね」

「先生、どうですか?」

「……わたしも」

「……お前ら」


 今後しばらく、大変になりそうだな……












・シェミル

 指輪型の情報通信機器。バーディスランドの国民は乳幼児を除いてほぼ全員が所有している。元々はただの通信機器だったが、今は身分証も兼ねている。

 操作法としては手や指の動き、そして視線を使う。だが、耳につける専用の機器と同期させると音が耳元で聞けるだけでなく、脳波を読み取らせて使うことができる。この機器も国民ほぼ全員が所有している。

 軍事用のものも見た目は変わらないが、情報保全の観点から軍事的な処理もシュミルを介して行うことが多いため、情報処理能力は段違い。



・バーディスランド王国

 シュルトバーン星系全てを領土とした国家。発祥の第3惑星だけでなく、2つの惑星と3つの衛星をテラフォーミングし、さらに多数のコロニーを所有する。

 人口は現在50兆人。



・バーディスランド王国民

 海鳥から進化した人型。背中から上半身を簡単に覆えるほど大きな翼が生えており、その翼を使って飛べる。また海鳥から進化したため、短時間なら海にも潜れる。骨は軽いが丈夫。

 髪や目、翼や肌の色はカラフルで、極彩色の者も多い。インコのような南国の鳥みたいな感じ。基本的に、髪と翼の色は同じ。

 男女比は1:1.8ほどで、一夫多妻も法律で認められている。ただ一夫一妻の方が多いのは事実。



・戦略艦隊

 全11ヶ艦隊いる、バーディスランド王国の軍備の中核を担う艦隊。うち10ヶ艦隊は休暇時を除き常に任務に就いている。

 なお、男女比は約1対3.5であり、男は肩身が狭い思いをすることがよくある。


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