こんにちは
やあ久しぶり
そんな声に私は顔を向けた。
そこには少年が立っていた。
最初はわからなかったよ。なんせ久しぶりだったからね。
でもすぐにわかった。私のカーディガンを持っていたから。
これ、ありがとう
そういって君は私のカーディガンをこちらに渡す。
寒く、なかった?
私は少しだけ心配していた。
おかげさまで、朝まで寝ちゃってたよ
君は照れくさそうに笑う。
それは、よかった
私もなんだか嬉しくなってしまったんだ。
この日から、私と君はよくこの場所で話すようになったよね。
家はどこなのか、とか歳はいくつなのか、とか
私は曖昧にしか答えられなかったけど、それでも君は気にしなかった。
その代わりに君は色んなことを教えてくれたよね。
お気に入りの場所から見える街に君は住んでいること、
三人兄弟で長男だということ、
父親は単身赴任で、母親はとても優しい人だということ、
たまに帰ってくる父親はいつもお土産を持ってきてくれること、
私は君の話を聞いているだけで楽しい気持ちになれたんだよ。
とても幸せな家族なんだってこともすごく伝わった。
そろそろお昼だから私は帰ろうとした。
もう帰っちゃうの?
君は少し寂しそうに聞いてきたよね。
私はそんな君がかわいそうに思えてしまったよ。
だからその日はお昼に家に戻ったりもしないで一日中二人でお話してた。
元々家に帰る必要もそんなになかったからね。
強いて言うなら、読み終わってしまった本の代わりを取りに行きたかったくらいかな。
でも、君は私が本に集中する暇が無いくらい話をするから、
取りに戻っても多分読むことはできなかったかな。
でも、嫌じゃ無かったよ?
私もお話しするのは大好きだから。
君の話はどれも私にとっては新鮮なお話で、すごく魅力的だった。
次の日も、その次の日も君はあの場所に来て私とお話してくれた。
私も毎日君の話を聞けるのがとても楽しみだった。
いつしか本を読む時間より、君と話している時間のほうが長くなっていた。
でも、私はうれしかったんだ。
家にある本はもう何十回も読んでしまっていたから。
内容なんて、全部知ってるんだ。
でも君の話は私の知らない世界のお話だから、すごく楽しくて。
いつの間にか君のお話に夢中になっていた。
ある日、君は弟と喧嘩をしてしまったと言っていたね。
私は喧嘩なんてしたことが無いけれど、君はすごく悲しそうだった。
きっとすぐ仲直りできるよ
私は君をなんとかして悲しみから救ってあげたかった。
でも、なんて言ってあげればいいのかわからなくて、
私はそんなことしか言えなかった。
うん。ありがとう
君は小さく笑ってくれた。
よかった、元気になってくれたのかな?なんて思った。
そして、私は少しずつ君のことが気になってしまっていた。




