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打撃


慰めのようなものだった。


担任から「硬式は無理だけど、軟式なら通常の部活と一緒の扱いだから入れますよ。」という言葉で、そんな堅い決意もなくフラフラと入部届けにサインした。


帰宅して、何の高揚感もなくバリカンのコンセントを入れる。


「半年ぶりか。」


バリバリと音をならしながら肩に半年分の髪が落ちる。

後ろはいつも弟にしてもらっていたけれど、その日は生憎友達のうちに泊まるとかで不在だった。

手探りでバックも刈り、ふぅと息をつく。


「…。」


鏡の中のこの投げやりな顔。

流石にこんな表情のまま行くのは失礼だ。

俊は気合いを入れるようにパンパンと自分の頬を両手で叩いた。



「もったいない!」


口々に周りから非難めいたヤジが飛ぶ。

…そんなこと言われても。

半年前までこの髪型だったわけだし。


「滝井!どしたんだよその頭(笑)」


「あー、部活入った。」


「部活?」


「軟式。」


「あー、野球ね!これまた似合わない所に(笑)」


に、似合わない?


「似合わないってなんなんだよ…。俺中学野球部入ってたんだけど。」


「へー、想像つかねぇ!」


こんな感じで周りからは散々の言われようだった。



キーンコーンカーンコーン……


「ふぅ…」


放課後。


なんだかやっとチャイムが鳴った…って気分。

俊はやっぱりどうしても晴れない顔のまま荷造りを始めた。


「(後頭部かゆ…。)」


剃りたての頭が寒くて痒い。

いつも…、頭を刈る時は、自然と姿勢が真っ直ぐになるような、そんな儀式めいた神聖さがあったのに。

いつまで立ってもこの横になったままの気持ちは何なのだろう。


はぁ…


「(軟式なんて…軟式のなの字も知らないのに…俺何やってんだろう…。やっぱり、行くのやめるか…?)」



ばしぃぃいぃん!!



そのとき。

後頭部に結構な衝撃を食らった。


「?!」


まるで、全部心の中を見透かされて、叱られたような。


しっかりしなよ!といわれたような、そんな気がした。



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