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気付く


ガウゥンンン…と脳に衝撃の波紋が広がる。


笑ったのだ。


千葉が。


…知らない男に。


それは、殺傷能力抜群の斬れ味だった。

クラスの前の廊下で、俊は見てしまった。

特に仲のいい様子には見えなかったが、二言三言話して、ふっと彼女が笑ったのだ。

遠慮がちに、控えめに。

でも、思わず笑ってしまったと、あの白い手を添えて彼女は知らない男に笑うのだ。

眉を垂らして、目を少し細めて。

あんな顔…見たことない。

悔しいのか悲しいのか衝撃を受けたのか落ち込んだのか、はたまたそれ全部か。

そんなどうしようもない感情を背おって、俊は廊下を歩く。


彼女の方は…見なかった。


ひたすら心臓が痛かった。




久しぶりに空を見つめてボケーッとする。


いつもいつもボールを追いかけているからつい忘れてしまうが、俊の頭上にはいつでもこんなにデカい空が広がっているのだ。


…はぁ。


空に逃がす、ため息。


あの、地味に衝撃的だった一件で、俊はまざまざと思い知らされたのだ。

変わらないと思っていた、彼女との関係。

…変わっていないと思っていた。

彼女が歌って、俊が聞く。

グラウンドで、野球をしながら。

クラスが変わっても、これだけは。

これだけは変わらないと。


でも、違うかもしれない。


変わるかもしれない。

彼女が明日から急に気が変わって歌わなくなるかもしれない。

急に気が変わって…、


あの爆弾が根本から無くなるかもしれない。


俊は後悔した。


なんで、なんでなんで。


いくらでも、いくらでもあったじゃないか。

なんで、自分から動かなかったんだ。

なんで。


もう、既にクラスは離れてしまった。

彼女から直接聞いたわけではない。

俊のどこが気に入ったのかまったく分からない。

本気じゃないかもしれない。


…そんな事はどうでも良かったのだと今、俊は知る。


赤くなる前の空をもう一度見上げた。



彼女がどうのこうのじゃない。



自分が、


彼女の事を好きだったのだ。





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