Y-35 銀の嵐
シシルは袖から
忘れていたのか帽子を取り出して被った
「これ、前から持ってたけど
私がエヴィリゴンと同一の存在になるから使いたくなかったんだ…
でも、今はもう
何もためらわずに使えるよ…好多のお陰で…」
そう言ってシシルは俺に微笑んだ
顔色を変えて4体のエヴィリゴンのど真ん中に入った
エヴィリゴンは身構えている
どうやらシシルが同一の存在に等しいと判断し
攻撃対象であるかを判定しているようだ
精神集中をしているのか
シシルは少しも動かなかった
30秒後
シシルが構えを取った
エヴィリゴンも警戒しているのか構えを取る
静まりかえった室内には
爆炎の音がメラメラと静かに唸っている
チバールがシシルに飛びかかった
背後からの攻撃
それをシシルは見切り
右足で跳び回転蹴りをチバールに
さらにもう一匹に連続して跳び裏回転蹴りをかます
俺の右方向、シシルの左方向に豪快に吹き飛んだ
接近してきたカンフェリス二体の内
シシルから左の方を掌底で吹き飛ばし
右の方の正拳突きを防ぐ
攻撃を払い、拳を連打し
最後に正拳突きで吹き飛ばした
「好多、伏せて!」
そう言うとシシルは両手を水平に突き出す
俺が伏せたのを見越すと
銃を二丁取り出し
腕に着いていた盾と共に
回転しながら弾丸を発射した
四体のエヴィリゴンはそれをもろに食らい
全て爆散した
恐ろしい強さだ
LEVELⅣを四体まとめて
ほとんど攻撃を食らわずに倒したなんて
しかし、休む暇は無かった
何かいる
俺たち以外に二体
敵の位置を読み取った
「シシル!後ろに二体!」
シシルは振り向き両手を突き出したと思いきや
持っていた銃を剣に変え、エヴィリゴンがいると思われる方向に射出した
姿を消していた二体のエヴィリゴンに直撃した
シシルは左右の腕を同時に横に振った
剣が突き刺さったエヴィリゴンは
それと同じ軌跡を辿りながら壁に叩きつけられる
剣のみがシシルの元に戻ってきた
どうやら、シシルは剣にワイヤー状の物を巻き付け
射出していたようだ
エヴィリゴンが起き上がる
一体はカルメルド
もう一体は
ナイテレスだった
俺の方を向き
何かを宣告するかのようにモノアイを光らせる
カルメルドがシシルに向けて舌を伸ばした
シシルは右腕を前に出すが
舌に巻かれてしまう
後ろから切りつけに掛かるナイテレス
だが、それから2秒ほど後
カルメルドの舌が微塵切りになった
僅か一瞬でシシルはワイヤーを舌に絡ませ
粘土を糸で切る様に
ワイヤーを袖内部で引っ張り
舌を切り落としたのだ
後ろから迫るナイテレスを
振り向きながら切りつけ
回転してさらに連続で切りつけた
カルメルドが接近する
右手の剣を逆手で持ち
カルメルドの腹を貫いた
そのまま腹を切り
右足で回転蹴りを放った
カルメルドと距離を離し
ペンダントに手をかざす
『SMASH・BLAST!』
剣と剣の柄を合体させ
頭上で高速回転させる
竜巻が発生し
そこから光波が5回発射され
カルメルドに全て当たる
さらに合体させた剣が槍のように飛び
カルメルドを貫いた
ワイヤーでシシルがそれを追い
引き抜きながら切り倒した
「メルト…バースト…!」
シシルが呟くとカルメルドは爆発した
だが、どうやらシシルはこの僅か数分で
ナイテレスの存在を完全に忘れていたらしい
後ろからのナイテレスが歩み寄る
奇襲を掛けられるシシル
防御すれば速いのだが
それをする程判断出来る時間がなかったようだ
間一髪回避
今までに見た事がないくらい焦った表情をしていた
「こ、好多ー…ちょっとまずいんだけど…」
弱々しく助けを求めるシシル
こちらのパス解析は既に済んでいた
「任せときな!」
意気揚々と俺は返事を返す
鉄の地球を付けたまま
俺は取ってを引く
空いた天井から光が差し込む
目を開けると
ライズフレイマーは槍のような形状に変わっていた
~続く~




