序章・第二部
現在、俺は全く状況が理解できていない。
起きたことを落ち着いて考えてみよう。
1、まず俺は警察署から帰る最中だった。
2、姉御も途中で合流した。
3、姉貴に押し倒されて謎の爆発を回避した。
4、姉貴と姉御が変な服に着替えた?
5、銀色の怪物と戦い始めた。
ダメださっぱり整理できない。
と、思っている間に次々に二人は怪物を打ち落とす。
「ったく…キリが無い…!あいつ等、空間移動出来ないんじゃ無かったの!?」
「もしかしたら、移動可能な空母が出来たのかもしれません。もしくは移動システムを自ら完成させたとか…!?」
「…どうやら前者みたいね…!」
突然空中に黒い穴が開き、中から巨大な飛行機状の物体が現れた。
物体からは、銀色の怪物が大量に落ちてくる。
二人は地上に落とすまいと、ひたすら撃ち続ける。
すると、一筋の光が物体から落とされ、地面に激突した。
土煙の中から、人型をした影が現れる。
「ヒューマンタイプ…!?好多、逃げて下さい!」
逃げろと言われて簡単に逃げられるわけが無い。
足が震えてどうしようも無かった。
「好多!」
空にいたはずの姉御が、瞬時に俺の前に立った。
「こんのおぉぉぉぉぉ!」
二丁の銃が突然、二丁の剣に姿を変えた。姉貴はそれで斬りかかる。
怪物はそれを腕で防ぐ。
すると、怪物の腕から刃が出た。と、思いきや突然姿を消した。
一瞬だけ、姉御の後ろに気配を感じた。
「…姉御っ後ろだぁ!」
言うのが遅かった。怪物は姉御を切りつけて再び消えた。
「エリ!うぉおぉぉぉぉぉぉ!」
『BLAST SMASH!』
銃から電子音が流れると同時に、姉貴は乱射
すると弾丸は空中に停止した。
「シュゥゥゥゥゥゥトォッ!」
叫びと共に弾丸は怪物の群れに向かって飛び、次々に撃破していった。
この攻撃により、どうやら怪物達は混乱状態に陥ったらしい。
「エリっ!」
姉貴も瞬時に移動した。
「大丈夫ですか、エリ!?」
「何とか…お姉ちゃん…。」
「はい…?」
「これ、使わせて貰うから…!」
姉御はポケットから赤と青のブレスレッドを取り出した。
「…!?ダメです!それは私たちには使うことが出来ません!」
「やってもないのにそんなこと言うんじゃないの!」
姉貴を振りほどくと、右腕に赤、左腕に青のブレスレッドを付けた。
「行くわよ…!セェェェトッ…アァァァァプ!」
ブレスレッドを交差させた瞬間、姉御は後ろに吹き飛んだ。
「エリっ!」
「姉御っ!」
「あっちゃ~、ミスった~。」
「…エリ…それを貸して下さい。」
姉貴は姉御からブレスレッドを受け取り、再び同じ動作をする。
しかし、姉貴も後ろに吹き飛んだ。
ここまでで分かるのは、今が絶望的だと言うこと。
そして、切り札みたいなモノすら使えないと言うこと。
そして、もう一つ分かったのは
「姉貴、それって“稀少技能者”にしか使えないってことか…?」
「「!?」」
どうやら的中したらしい。
「…貸せ…」
「ダメです…!」
「貸せ…!使える奴が使わずに「死ぬ」のと、使える奴が使って「死ぬ」の…どっちが良い…!?」
二人は互いに顔を見合わせてから、何かを認めるかのように俺にブレスレッドを託した。
「好多…絶対に死なないで下さい…。」
両腕にそれぞれのブレスレッドを巻いて、二人に微笑んだ。
もし…この戦いが、誰かの為になるかとしたら…
信頼の無い俺が、この戦いで、誰かの為になるかとしたら…
喜んで死んでやる。
「セットォォッ・アァァァァァップッ!」
俺の周囲が眩い光と蒸気に包まれた。
全身が暖かい太陽光を浴びているような
そんな感覚。
そして、気がつくと、俺は紅い服に身を包んでいた。
右腕には巨大な鉄の塊、いや、これはモニターが付いているから機械の塊だろうか。そのようなモノがが装着されていた。
すると、機械のモニターが青く光って
『システムノキドウヲカクニン。ゴキゲンヨウ、セルマハト。』
~続く~




