8話 荒ぶる教師
「職員室、職員室……」
あれから三十分後。
まだ携帯探してます。
教室に戻ったら伊瀬がへこたれていて、携帯の事を聞いたら通りすがりの教師が持っていったらしい。
で、そこら辺にいた教師に聞いたら急用で帰ったらしく、携帯のことを言ったら他の教師に預けたと言っていた。
そしてその教師は職員室に戻ったらしい。
「あ、ここか。」
やっぱり無駄に広い気がする。
『住──の様子──うだ?』
『それ──入者の報告が……』
話し中か?
声は小さく聞こえにくい。
何か中に入るタイミングが分からないな。
『なに、──開いたのか?いや、それより──の身は無事なのか。』
『何故──が開いた情報はなく。──んの方は、また所在が掴めな──っており……』
『あの──カが。今すぐに見つけ――……おい、そこ。扉の前にいるのは誰だ。』
げっ!
もたもたしてたら気づかれてしまった。 何か深刻な雰囲気だったからなー。
というかよく気付いたな。
そう思ってると扉が開く。
「何のようだ。」
「いや、ここに俺の携帯があるって聞いてー……」
出てきたのは、長い金髪の、男性。
前に垂れかかった髪を、かきあげた状態でM状のようにセットしたような髪型。
後ろに長い髪は縛ってある。
何というか……男にしては珍しい独特の髪型だった。
関わってはヤバいというのを本能的に感じる。
「携帯?ああ、これのことか。」
そう言って内ポケットから俺の携帯を出す。預けた教師と言うのはどうやらこの人だったようだ。
「そ、それっす!で、では俺はここでー。」
そう言い、携帯を取って退散しようとする俺の肩を掴むロン毛教師。
「な、何すか?」
「お前、さっき話を聞いていなかったか?」
「えーっと……何も聞いてません。」
実際は途切れ途切れに聞こえていた。
といっても全く意味が分からなかったので聞いていないのと同じだろう。
「本当か?」
「はいはい、本当本当。」
「本当に本当か?」
しつこいなー。
証拠なんてないんだからいくら聞いても分からないってー。
「ええええ、本当本当。」
「嘘だな。」
「へーへー、そうそ…う?」
「……こんなベタな方法に引っかかる奴が存在したのか。」
「い、今のはつられただけで……」
「真剣に否定しているのならミスすることはないだろう。」
「う……。はめやがったな!?」
「嘘をつくのが悪い。」
「でも内容は全く分からなかったからさ。別に大丈夫だろ?」
「一応、そういうわけにはいかないんだ。こっちの事情には従ってもらう。」
え、何そっちの事情って。
「知るか、このロン毛教師!」
「ロン…!?」
いきなり黙る日本人金髪ロン毛教師。
しかしその数瞬後。
「今日がお前の命日だ。」
ええええええ!!?
「待てやゴルァ!」
「うぉぉぉぉぉ!?」
反射的に足が動き出した。
鬼の形相で拳を振り上げて追いかけてくるロン毛教師。マジでこぇぇ!
「何だよ!髪型に何かこだわりでもあったのかよ!?」
「うるさい、黙れ。さっさとシネ!」
「ちょ、あんたそれが教師の言葉か!?」
何とか撒こうと遠回り気味に走り回った結果、もう門から出ることにした。
結構な大人のくせに意外に体力ありやがる。
よし、校門が見えてきた。
一気に走って門を突っ切る!
「なっ!?……バカな。今は……」
何かいきなり驚愕し始めたロン毛教師。
よく分からんが今の内にダーッシュ!
「ま、待て!」
「待つわけねーだろ。さらば!」
ということで逃亡成功。
雲行きが怪しくなってきたので、そのまま走っている。
「ふー、何だあの教師。もう関わりたくねー。」
何かやっぱり危険を感じる。
「昼飯はスタミナがつくものを食おう。」
そう思っていると、後ろから誰かがいきなり突っ込んできた。
俺ってそういう体当たり運でもあるの?
そして、あろうことかぶつかった張本人はそのままどこかへ走り出そうとする。
「おい、ちょっと待てよ!」
引き止めようと肩を掴む。
そして振り返ってまず見えたのは、今にも泣きそうな女の子の顔だった。