10話 男
「見ぃ~つけた~~~!」
「「ッ!?」」
突然、甲高い声がした。
前を向くと、赤服の男がさっきの俺のように曲がり角から頭だけを出してこっちを見ていた。
「あっれぇ?……お前誰?」
いや、あんたこそ誰だよ。
言葉通りに見つかったかと思ったが、どうやら女の子の方は俺が死角になって見えてはいないようだ。
それにしても何者だ、この人。
髪の毛で隠れて分かりにくいが、右側のまゆげから頬の真ん中辺りまで縦筋の傷がある。
アニメとかではよくあるが、現実でこのような傷がある人間はヤバい気がする。
「ここに、こーんぐらいのおんなのこ見なかったかぁ~?」
手で適当に身長を表して聞いてくる。
「み、見てません。」
「……本当ぉ~に、本当ぉ~か~?」
「は、はい。」
この質問、数十分前ぐらいにも連続で数回聞いた気がする。
「お、俺はこの道を歩いてきましたからこっち側にはいないと思いますが。」
「…………」
少しの間俺の顔を見た後、無言で通り過ぎようとする赤服男。
俺は小刻みに移動して後ろの死角範囲を見つからないように変える。
時々振り返ってくるたびにドキッとする。
というかあの大剣に関してはノーコメントで良かったのか?
思いっきり銃刀法違反だと思うのだが。
「……行ったみたいだぞ。」
「そう。」
「そう、って。一応助けたんだが?」
「……ありがとう。それじゃ。」
「って、だからちょっと待て。」
「これ以上一緒にいるとあなたにも危険が及ぶわよ。」
……ふむ、たしかにそうなんだがー。
「だからって、困ってる人をほっとく訳にはいかないだろ。」
「……あの人の目を見たでしょ?狂ってる。」
狂ってるとは言わないが、確かに常人とは違う目をしていた。何を考えているか分からない。
「といっても、一人だとまた追われるのがオチだと思うが。」
今は気付いてなかっただけだが、もし後で見つけられても俺と入るのが分かっているなら襲われることは無いと思う。
俺のことは知られてしまっているが、見てないとしか言ってないし。
「いや、でも……」
<グゥゥゥゥ~>
「…………」
音と共に顔を赤くして目を背ける前の女の子。
「……家くるか?」
「へ?」
「いや、腹減ってるっぽいから。それに俺もまだ食ってないし。」
「そ、そういうことなら。」
何かあっさり了解したな。腹がそうとう減っているのか?それともただ単に飯に弱いのか。
「走るぞ。雨降りそうだし。」
ちなみに、男が行った道が本来の道だったから少し回り道を行くことになった。
何を食べるか考えながら走る。
「あ、な、名前!」
突然思い出したかのように聞いてくる。
「名前? 上夜 仁だけど。」
「上夜?……そう。私は如月 空。よろしくね。」
ん?何か変な間があったような……。まぁ、いいか。
「ああ、よろしく。」
もうすぐ第1章終了!
早く3章になってほしいとつくづく思う。
しかし4章辺りからどうしようか悩むww