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stage8 到着

あれから橋を渡った鏡夜達は、特に危ない事柄に巻き込まれる事も無く山の3合目あたりで野宿をする準備に入っていた。因みに、ライムは暗い夜道を危険が無いか捜索に、ピリカはそれに同行。シグレは晩御飯を釣りに沢へ出向きリナも山菜摘みに出かけた。よって、今の鏡夜は一人きりである。


「ふうぅ・・・・よしっ!後少しで薪が切れそうだし、そこら辺から・・・・」

事前に熾しておいた炎の火種を確認し、そろそろ底を尽きると思い始めていた鏡夜は適当な近場から木の枝でも拾ってこようと立ち上がった。しかし、目線の先に何かが居るのを見つけた鏡夜はその場で動きを止めてしまった。もしもあれが相当大きな獣で、そんな奴に暴れられたらひとたまりも無い。そう思って鏡夜は動きを止めたのだ。


「ふぅん、やっぱり男だったかぁ。それじゃ、私たちもそろそろ発情期だしぃ?誘拐・・・しちゃおっか♪」

「えっ?ちょっ・・・」

鏡夜の心配事は外れた。茂みから出て来たのは、猛牛に似た形の捩れた剛角に派手で扇情的なパンク系にも見える短い服装。そして何より、その背中に持つ彼女ほどもある大きな銃剣。間違いない。彼女は[ベヒモス]と呼ばれる強大な力を持った種族である。しかし、どうにも彼女の言っている事に関して良い予感が鏡夜はしなかった。その直後、背中の銃剣を引き抜いて鏡夜に斬り付けて来た女性は、鏡夜がそれをかわしたと知ると、とても悔しそうな表情で怒っていた。その表情が何故か可愛い。まるで強大な力が有るとは思えないほど子供の様な姿に見えてしまう。


「かわすな、かわすな!かわすなぁ!!」

「かわさなかったら死んでるぞ?!殺す気か!」

「いいから黙って誘拐されてよぉ!それで、皆と《ニャンニャン》してよぉ!」

彼女の言っている事は可笑しい。あの剣の刀身は地面にめり込んでいるのではない。地面を斬っていたのだ。そんな物が体に触れれば、どうなるかなんて一目瞭然だ。それなのに彼女は非殺傷である「誘拐」と言う選択を取っている。見た目からすれば殺しに来ているとしか思えない。


「なんだよニャンニャンって!俺だったら何の役にも立たないと思うぞ?その役目!」

「いいの!アンタは皆の補給源になってくれればそれでいいの!」

「・・・・輸血か何かなのか?!」

「違うもんっ!アンタの男の部分を・・・その・・・えっと・・えと・・///」

何度か同じように剣戟をかわしていった鏡夜だが、今彼女に対して持っている疑問を全てぶつけた。その内容の意味も分からない鏡夜にとって、彼女の言っている事は支離滅裂過ぎた。しかし、鏡夜が間違った答えを導き出してしまうとその剣戟を一層強めた女性は、怒りも乗せて斬ろうと構えた。しかし、説明の途中で顔を真っ赤に紅潮させてしまった。しかも剣戟も止んでいる。


「俺の男の部分?なんだそりゃ。それに、アンタみたいな可愛い子が、こんな物騒な物を振り回してちゃ危ないだろ?」

「うぅ・・・・私を馬鹿に・・・するなぁ・・・」

「あぁ、分かったよ。ところで、君の名前は?」

「えっ?殺しにきた相手の名前を聞くの?アンタ面白いじゃん。私の名前はムート。見ての通りのベヒモスだよ。」

「それで・・・・俺達のキャンプまで何しに来たんだ?まさか俺達の後を付けていた訳でも無いし・・・」

鏡夜は、先程まで闘っていた筈の少女を自分たちのキャンプに招いた。そして鏡夜は思った。先程は暗がりで見えにくかったが、ムートは扇情的な服装を着こんでいると言うだけであって見た目はリナとそこまで大差のない少女だと分かった。彼女が言うには、ベヒモスと言うのは処女を捨ててしまえば定期的に男性とHな事をしなければ禁断症状を起こし、最終的には同族の肉を食い荒らし、近場の街を荒し尽して自分も命を絶つと言う。なので、彼女が彼氏候補を探しに来たのも自分や家族の為なのだろうと鏡夜は考えた。


「・・・さて、そろそろ仲間が戻ってくる。この辺りでお引き取り願いた・・ムグッ!」

少しの間ムートと話していた鏡夜だったが、月の角度と星の位置を見てムートに注意を促した。皆が帰ってきて、自分たちの仲間が女性を一人連れて二人きりでいたと分かれば、皆どんな行動に出るか怖くて分からない。故に彼女を帰らせる事を勧めた鏡夜だったが、言葉が綴られ終わる直前に鏡夜の口は動けなくなってしまった。


「それじゃ、鏡夜?また会おうね♪」

「あぁ・・・・またな・・・・・なんで俺の名前を・・?」

短く軽いキスをしたムートは、直ぐにその場を離れて紅い顔のまま現れた茂みへと鏡夜に手を振りながら向かって姿を消した。それから数拍置いてムートが自分の名前を知っていた事に疑問を持った鏡夜。鏡夜は先程の話の時に、考えて見れば自分の名前を教えていない。なのに何故、彼女は鏡夜の名前を知っていたのだろうか。しかし、その考えはシグレが魚を持って戻ってきた事によってかき消された。その後に戻ってきたライムとピリカも含めて、野宿での晩御飯が始まった。その時に一番がっついていたのはリナだった。


「ふぅ♪それじゃ、おやすみぃ♪」

「おやすみなさぁい♪」

「お兄ちゃんと一緒だぁい♪」

「おやすみ。皆」

「・・・おやすみ・・・・」

晩御飯も食べ終わり、暫く雑談などで盛り上がった皆は夜も更けて今は全員で眠ろうとしている所だ。それぞれに大きな葉っぱを水で洗って焚火で乾燥。それを布団として利用していた。因みにリナだけは何も要らないらしく鏡夜の傍で三角座りをして眠ろうとしていた。ピリカはバッグの部屋の蓋を開けて鏡夜のすぐ近くで就寝。ライムも鏡夜に寄り添うほど近くで笑顔を作りながら就寝。シグレは、鞘に収めた剣を抱いて警戒を緩めつつ就寝した。因みに、焚火を起こしている為なのか獣は寄って来ない。そして、あっという間に朝が訪れた。


「到着したな。目的地に。」

「ええ。此処が女性たちの憧れの街、その名も[アレンジタウン]。此処に来たからには、色々な買い物をして行く事を強く奨めています♪」

「あれ?シグレの口調が戻って・・「五月蠅い!」キャンッ!」

山を下った鏡夜達は、あっという間に目的地へ到着した。アレンジタウンは、流石に女性たちの憧れの場所で有るだけの事はあるようで、大都市と呼べるほどに大きな街だった。その入り口に立った鏡夜達は、シグレの説明の下でこの町に付いての大まかな説明を聞いた。しかしその途中で、鏡夜の肩に留まって暇そうに足をブラブラさせていたピリカが、ついつい呟いてしまったのをシグレは見逃さずピリカに襲いかかろうとした。しかしピリカは、可愛らしい声を上げながら鏡夜の背中に回り込んで貼りついた。直ぐに鏡夜も止めに入ったので事なきを得たが、これが少し状況が違っていればどうなっていたのか分からない。


「フフ~ン♪フフ・・・・げっ!この前の・・」

鏡夜達が街の中に入って暫く行くと、とあるファッションブランドの専門店の前で鼻歌を歌いながら服を選んでいる女性が居た。彼女の下半身は大きな蜘蛛を形取っていて、歩くのも早そうな形をしている。そう、彼女の種族はアラクネである。そして、彼女の名前はアーリャ。ついこの間に鏡夜達を襲うが失敗して退散して行ったアラクネの一人である。あの後彼女は、友人と別れてこの町へ買い物に行く事にしていたのだ。そして、ここで彼らと出くわしたと言う訳だ。


「あぁあぁっ!この前のアラクネ団!「誰が団よ!誰が!」」

「キサマ!また鏡夜を狙って来たのか?!」

「いけません!鏡夜参はお守りします!」

「お兄ちゃんは私が・・ちょっ!お兄ちゃんやめてよ!」

それぞれにアラクネに対して警戒していた鏡夜達一行だったが、一人だけ身構えていない者が居た。リナだ。リナは身構えるどころか武器に手を掛けようともせずの鏡夜の数歩後ろに居る。いつものように無口だ。それを見て、一番状況が分かっているのがリナだと分かったシグレ達は構えを解いた。


「・・・・ワーウルフ警備隊・・・」

リナが指差す方向には、まだ遠い位置だが警備服っぽい物を来たワーウルフと呼ばれる半人半狼の種族が数人の束になって街を見回っていた。彼女たちは忠義に厚く、主と認めた者に対してはどんな命令でも忠実にこなすとシグレから以前に聞いていた鏡夜は、ワーウルフ達の想像を膨らませて居たりした。因みにアーリャは、ライムのスライム状のアレを付けたくなかったのか既に退散している。


「・・・・・疑問点を上げて良いか?」

「どうしたんだ?別にかまわないぞ?」

「さっきから人間の男性はちょくちょく見かけているんだが、魔物の男性が居ないんだが・・・」

「・・・鏡夜、もしかしてアッチ系なの「馬鹿!違うっ!」あぁ。私たち魔物には男性と言う性別は存在しない。これは繁殖の制限化と呼ばれる現象で、人間には男女共に存在しているんだが、魔物には女性しか存在しないんだ。だから私たちには、発情期と言うものが存在する。そうでもしてし・・・子孫を残さないと生き残れないからな。」

街をまた歩き出して疑問を感じた鏡夜が、ふとシグレに聞いてみた。その問いに、シグレは少しでも分かりやすいようにと説明をしてくれた。それによれば、人間以外の種族には男性と呼べる性別が存在しないらしい。しかし、鏡夜にはそこまで重要視するような問題でも無かった為にそこまで長い時間は取らなかった。そして、鏡夜達は仲良く街の中を練り歩いて行く。

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