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stage6 無口な彼女はスケルトン

鏡夜がライム達と一緒に川の字になって眠って次の日の朝が来た。一番最初に目を覚ましたのは鏡夜。その次に、悪い夢でも見ていたのか慌てて飛び起きたのがシグレだった。そして、ライムとピリカはそれから暫くしてから目を覚ました。早々にチェックアウトした鏡夜達は、街の途中の駄菓子屋で幾つかのお菓子を買ってから町を出た。


「それにしても、これ美味いよ!」

鏡夜が食べているのは、何やらゼリーの様なコンニャクの様な食べ物だった。歯触りは非常によく食べやすい。味も結構美味しい。さらにはコンパクトサイズなので持ち運びにも便利。水に浸すと膨張して大きくなるなどと、面白いお菓子だった。


「私のおススメだったのだが、気に入ってもらえて嬉しいよ・・・鏡夜・・」

鏡夜の後ろで同じものを食べていたシグレが、鏡夜に満面の笑みを見せた。そして、鏡夜を以前のように「主」では無く「鏡夜」と呼んで少し顔を赤らめていた。その様子を見てシグレの素振りを可愛いと思った鏡夜は、悪戯っぽく笑ってやるとシグレの頭を掻きむしるように撫でていた。その後ろでは、その光景を羨ましそうに見つめるライムとピリカがいた。


「それにしても・・・あとどれくらいなんでしょうかねぇ。」

暫く歩いて町が見えなくなった頃に、不意にライムが空を見上げた。空は雲が所々に出ている。それがたまに影となって鏡夜達を太陽の日差しから少しばかり遮ってくれていた。そんな中、シグレは不意に地面に手を突いた。


「みんな!こんな所に面白いやつがいたぞ?」

シグレは、地面からその面白い奴を引っこ抜いた。その姿は何処となく人の形のようにもなんとなく見えなくはないような植物の根だった。その根はシグレの言った通り面白かった。シグレがその根の部分を千切ってやると、千切った先から新しい根が生えて来た。しかも、前の物よりも幾分か成長している。物理法則を無視しているかのような再生スピードだが、やはりここは異世界。物理法則も曖昧なのかもしれないと鏡夜は感じた。


「さて、調子も取り戻したし・・・元気に・・・ん?」

鏡夜が、全員の腕を自分の元へと並べさせて号令をした。そして心身ともに好調な状態になった鏡夜達は再び目的地を目指して進もうと進行方向を向いた。するとその方向には一人の少女がこちらへと近づいてくるのが見えた。その手には古びた盾と錆びついた剣を持っていた。足取りはとても遅く、ライムでも追い越せてしまうほどなのだろう。しかし、格好がどうも危険じみていた。重要な部分はきちんと隠れてはいるが、殆んど裸に近い状態だったのだ。マントの様な物を着ているのでどうにか隠れている状態だ。そして、その少女はこちらが少女を認識したと分かると徐々に足のペースを速めてこちらに迫って来た。あっという間に鏡夜達の傍まで来た少女は、無言のまま切りかかろうとした。もちろんそれをシグレが許す筈が無い。背中の剣を手にとってその攻撃を防いだ。


「なんなんだ!いきなり!私たちはまだ・・『グゥゥゥゥ・・』・・へ?」

鏡夜への奇襲に失敗し。今度はターゲットをシグレに変えた少女が、二の太刀を繰り出そうと踏み込んだ。来ると分かったシグレはそれに対応するために足を踏ん張りながら少女へ呼びかけた。その時、少女のお腹の音が響いた。鏡夜やシグレ、ライムやピリカでは無い。方向的にシグレと対峙している少女のお腹から聞こえて来たのだ。試しに鏡夜がポケットの中に入っていた余りの分の駄菓子を一つ、少女に与えて見た。すると少女は構えを解いて鏡夜に近づくとその駄菓子を無言で貰って食べ始めた。その間に鏡夜はその少女を見て見た。良く見ればまだ幼く見える。成長期を通って思春期に来た位の女の子の体格からして年齢は13才くらいだろうと鏡夜は推測した。


「・・・・美味しかった・・」

鏡夜から貰った駄菓子を食べ終えた少女は、率直な感想を鏡夜にボソリと伝えるとゆっくりと鏡夜の腕に抱きついた。どうやら鏡夜はこの少女に気に入られたらしい。鏡夜が離れるように伝えると、特に嫌そうな顔もすることなく離れてくれた。そして鏡夜が進もうとすると少女も付いて来ていた。


「しょうがないか。君も連れて行くよ。君の名前は?」

鏡夜が、いつまでも別れてくれそうにない少女に折れて彼女を連れていくことを決めた。そして鏡夜は少女の名前を聞いていた。これからは一緒に行くのだから名前くらい知っておかないと可笑しいだろう。そして、数拍の間を置いてから少女は自分の名前を「・・・・リナ・・」とだけ小声で伝えた。どうにも彼女は内気と言うか人見知りのように思えた鏡夜だが、シグレの説明で「彼女はスケルトンと言われる種類で、基は人間だったものが別の魂を死んでから入れられて再び動きだすようになったのがスケルトンなんだ。あっ!予備知識だけどスケルトンは発生条件に幾つも条件があるから出てくるのは稀だよ!」と教えてくれた。以前の説明とでは堅苦しさが消えていて聞きやすかった鏡夜は、簡単にリナの事を理解した。今更だが思う事がある。このパーティは文字通りの異色になりかけている。鏡夜はまともな人間だが、ライムはスライム種故に体が薄い半透明の水色。ピリカは妖精で人の肌とは同じ色だが、羽が黄色っぽい色をしている。シグレは基になる部分は人と大差ないのだが、リザード種特有の尻尾や顔の頬の一部に耳の部分などトカゲの名残とも思えるような個所には緑っぽい皮膚が存在している。そしてリナはと言うと、体が全体的に青ざめて血の引いた肌の様な色をしている。しかも彼女の下半身は腐敗していた為なのか骨がうっすらと見える。


「ささ・・気を取り直して!レッツ・ゴー!」

少し空気を乱してしまったかのように気を落としてしまった鏡夜だが、その隣でシグレが鏡夜の代わりに号令をかけてくれて少し心が和んだ。そして鏡夜達は改めて目的地へ向かって歩き出した。

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