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prologue 異世界入り

人とは、見慣れない姿の物を見てしまうと反射的に驚いてしまう物である。同時に、未知への恐怖と好奇心も生まれてくるのは人間の本能に限りなく近い事なのだ。そして、此処に一人の少年がいつもと変わらないありふれた一人暮らしを絶賛満喫中だった。


「んんっ・・・はぁ~~・・やっぱりいいなぁ・・・・一人で旅行に来て正解だな。」

この少年。竹取鏡夜(たけとり きょうや)は、学校の夏休みを利用してバイトで溜めた貯金をちょこっと使って海岸線と山の良く見えるリゾート地へ旅行に来ていた。今は旅館の人に案内された部屋で伸びをしながら大自然に浸っている感じだ。


「いやぁ~。やっぱり心をリラックスさせようと此処にしたのは正解・・「・・・」!?」

感傷に浸っていた鏡夜だが、ふと背後から誰かの声が聞こえた気がした。一瞬気味が悪くなった鏡夜だがそんな気持ちは直ぐに消し飛んだ。耳を澄ませると、隣の部屋から怒号が飛び交うのが聞こえて来た。十中八九隣の部屋の人が喧嘩でもしているのだろう。そして、先程の空耳もこれだったのだと安心した鏡夜はホッとして胸を撫で下ろした。暫く景色を眺めていた鏡夜は、時間を見計らって旅館の大食堂へ移動した。


「うはぁ!美味そうな御馳走ばっか!いいよな。一人だもんな。」

目を輝かせて皿を手に握りしめた鏡夜は、ハイテンションになっていたが途中で周りの目を気にして声を抑えた。彼の見た目は、明るい性格に似合わずクールそうな顔立ちをしている。そんな顔で不抜けた事を叫ぶようでは廻りの視線が痛い。なので、鏡夜はなるべくクールに振舞うようにしているのだ。料理を皿に移して席まで運んだ鏡夜は、料理を物凄いスピードで完食すると部屋へ戻った。


「いやぁ、食った食った。満足だねぇ・・・」

満腹感に浸っていた鏡夜だったが、唐突に運命の湾曲は訪れた。鏡夜の座っていた位置いきなり人一人が通れる程度の大穴が開き、鏡夜はその中に落ちそうになった。


「なっ!なんだこりゃぁ!」

突然すぎる出来事に驚く鏡夜だが、反射的に掴んだ畳のおかげで何とか助かりそうだった。そのまま自慢の運動神経を駆使して這い上がろうとした。しかし、それは叶わなかった。突如下の方から何かが鏡夜の足を掴むと、鏡夜を穴の中へと一瞬で引きずり込んでしまった。その直後には穴は閉じ、そこには誰も居なくなっていた。


「うわあぁぁぁぁぁぁあ!」

穴の中を落ちていく鏡夜は、意味もなく叫んでいた。これも人間の本能というものだろう。とにかく鏡夜の頭の中には絶望が手招きをしている状態だった。このままではいけないと思った鏡夜だが、手を伸ばしても何処にも届きそうになかった。そこで早くも諦めた鏡夜は、全てを任せて目を瞑った。しかし!


「・フフン♪・・フフ・・ぁん!」

鏡夜の耳元に誰か少女の歌声が聞こえたかと思った瞬間、何か柔らかい物に衝突して衝撃が消え去った。その時に少女の声が色気を帯びた声になっていたが、鏡夜は恐る恐る顔をあげて見た。そこには一人の少女が顔を赤くして鏡夜の目の前にいる。しかしこの少女。何処かおかしい。何と言うか、自分とあまり年も変わらないようなのだが、見た目にかなりの違いが見られた。まず最初に、彼女の体が半透明に透き通っている時点で理解不能だった。普通、体が半分透けている人間なんていない。しかもこの少女、鏡夜が落ちた場所の形はスライムのように崩れている。


「え?え?ええっ?」

何が何だか分からなかった鏡夜だが、それは少女の方も同じのようで鏡夜を見て目を輝かせていた。好奇心旺盛な子と思った鏡夜だったが、次の少女の発言によってその考えは一瞬で砕け散った。


「ねぇ!人間さん?私とえっちな事・・・しよう?」

いきなりすぎる発言を受けた鏡夜は、気が動転しすぎて頭が回らなくなり始めていた。その間にも鏡夜ににじり寄って来た少女は、鏡夜に手を掛けようとした。そこでやっと理性が働いた鏡夜は、その手をかわして走り出した。行き先など何処でもいい。とにかくあの発情スライム少女から逃げ出せればどうでもよかった。


「・・・はぁ・・はぁ・・やったか・・!?」

暫く走って息も切れた鏡夜は、走って来た道を見て見た。そこにはもう先程の少女の姿は無い。安心した鏡夜だったが、今度は後ろから誰かが近付く音がしたので無意識のうちに怖い表情で振り向いていた。そこには、鏡夜の顔を見て怖がったのか小さな女の子が泣きそうな顔をしてブルブルと震えていた。しかし、この女の子にも違和感だ。見た目的には成長の遅い幼児体型で片が済みそうだが、どう見ても子供にしては小さすぎるような気がした。すると、限界が来たのか女の子は泣きながら走って逃げて行った。少し可哀そうな事をしたかなと思った鏡夜は、足元に転がっている石などを蹴って平たい場所を作ってそこに腰を下ろした。周りの景色は、先程の旅館からは想像もできないほどの大草原だった。その風を浴びながら寛ぐことにした鏡夜は、そのまま少しの間を同じ恰好で過ごした。

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