第九十七話「もう一組ですわ、おほほほほ」
「ここで皆様にお知らせです。
実は本日、もう一組の婚約が公式発表となります。
それではお二人、どうぞ」
聴衆がどよめき出した。
アジャイリア日日新聞の記者早々に三脚を畳んで撤収準備をしている。
別室から記者会見に会場に入ってきたのはアカリと、セルベール外務大臣であった。
「セルベール・H・ピロリです。
現在外務大臣を務めております」
「アカリ・P・キターですわ」
「お二人は昔から親交があったと伺っておりますが…」
「キター伯爵と私の父、ガスターは貴族学院時代からの親友でして…」
「ですから私の家とガスター宰相様の家とは昔から家族ぐるみの付き合いでしたの」
「でしたら、ヨシチェック殿下とハルカ嬢のように幼少期から縁談になっていてもおかしくなさそうですが…」
「まぁ、それは私がアカリ嬢より10歳上で、しかも最近まで駐セグメンティア大使として赴任しておりましたし…」
「私が貴族学院を卒業するタイミングで殿下がめちゃくちゃしてくださいましたし…」
「ここで余の悪口なのか!?」
「おほほほほ、事実ですわね」
「お二人は昔から息が合っていると評判だそうですね」
「ええ、私は頭痛に悩まされますし、セルベール様は胃を痛めている、悩みを抱えた者同士ですわ!」
「その悩みの種が同じですからね…。
まったく、外務省に無断で大陸跨いで勝手に他国を開発とか、どうかしている…。
今回のスタッキア件だって私が外務大臣として同行して外交でなんとかしようとしたのに温泉作るとか言い出すし、やってられない」
「おほほほほ!?」
珍しくハルカが扇子で口元を覆っている。
しかし、目が笑っていない。
そしてその扇子は貴族令嬢が使うような物ではなく、鉄扇だった。




