第九十一話「こちらから上書きしますわ、おほほほほ」
アプリシアの王宮の、王族の私的エリアにある一室。
座面が開いた2つの収納ソファ。
そこに国王、王太子、公爵令嬢、伯爵令嬢が立っている。
どう見ても異様な光景である。
「感情に任せた軽率な行動で君の名誉を傷つけたこと、本当に申し訳ない」
「……殿下、名誉が傷ついたというのであればわたくしだけでなく、あの後すぐに殿下がプロポーズされたアカリ嬢もですわ」
「…私は別に構いませんわ。
ハルカ嬢には名誉より安定運用の方が大事ですし、一番名誉が傷ついたのは殿下でしょうし、それに私には先日良い縁談がありましたから」
「おほほほほ?
初耳なんですがどういうことですの?
あと殿下、わたくし名誉が傷つくのは自力で修復しましたけど、流石にアレは感情的にも傷がつきましたわ。
人として謝罪するとしたら、まずそちらでしょうに」
「そうですわね。
名誉より心の方が重要ですわね…。
………って宇宙人に感情ありましたの?
あ、縁談があったのは最近ハルカ嬢も何度もお会いしている方ですわ」
国王陛下が頭を抱える。
「一人前になっても無意識に人の気を逆撫でする言い回しは治ってなかったか…」
「おほほほほ、因みに名誉が傷ついたというのであれば、未婚のままお互いバツイチのようなもの、更に公衆の面前でプロポーズ拒否された殿下の方が傷が深かったですわね、おほほほほ!
あ、これは嫌味ですわよ?
今ここで嘲笑ったのでもう結構ですわ」
「……余の今の立場で言う事が許されるのかわからないが、もう一度婚約し直してもらえないだろうか?」
「おほほほほ、お断りですの。
殿下、やり直しではなく、わたくしから新しく婚約を申し出させていただきますわ。
失敗した過去は消せなくても、上書きできますもの」
ハルカは蓋を開けた指輪のケースをヨシチェックに差し出した。
リングには小さな黄鉄鉱の立方体があしらわれていた。




